たやは

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鐘の音

おかしい。鐘の音がしない。
今日は朝から学校行事のオリエンテーリングのため、この湿原にきている。このコースはチェックポイントに鐘があり、その鐘を鳴らすことでチェックポイントがクリアーとなる。だから、さっきからチェックポイントを通る人たちが次々に鐘を鳴らしていたのに、今は音が全くしない。私たちがが最後なのだろうか?

「ねえ。鐘の音しないよね」
「そう。うーん。道を間違がったのかな」

そんなはずはない。湿原はそれほど広くないし、至る所に先生がいた。間違える前に誰かが声をかけてきそうだ。

でも、鐘の音がしない。
私たちは本当にあの湿原にいるのだろうか?鐘の音どころか人や鳥の声、気配すらしない。強い風が足元を吹き抜けていき、冷や汗が背中を流れる。

怖い!
怖い!
ここはさっきの湿原ではない。
何処?ここは何処なの。

カーン。カーン。

「鐘の音するよ。道合ってたじゃん」

本当だ。鐘の音がする。このまま進めばチェックポイントのはず。早く、早く鐘のところまで行かなければ捕まる。

え?

捕まる? 何に?

鐘の音は、雨が降ったあとや空気が澄んでいるときはよく聞こえるという。
鐘の音は何か危険を知らせたり、予感や警告であるとも言われる。

じゃあ鐘の音が聞こえない時は…
それは何かが迫ってくるための序章なのかもしれない。

「鐘まてもう少しだよ。頑張ろう」

何かが私の足首を掴んだのはその時だった。

8/5/2024, 11:53:43 AM