逃れられない呪縛』の作文集

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逃れられない呪縛』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

5/24/2023, 8:35:31 AM

今日のテーマ
《逃れられない呪縛》





膝の上に陣取り、しがみつくようにシャツをぎゅっと握り締めたまま、すやすやと寝息を立てている。
健やかな寝顔はいつまでだって見ていられるくらい可愛くて、愛おしい。
起こさないよう注意しながら柔らかな頬を指先でつつく。
すると、鬱陶しかったのか、むずがるように眉を寄せて顔を背けられてしまった。
そのまま額を擦り付けるように胸に顔を埋めてしまう。
男の硬い胸板なんかを枕にしたって大して寝心地も良くないだろうに。
そう思いながらも、甘えられていることが嬉しくて顔が自然とにやけてしまう。

「重くない? 替わろうか?」
「いや、大丈夫」
「でも、あなた、疲れてるのに」
「それはおまえも同じだろ。俺が抱っこしてるから、寝てていいよ」

これだけしっかりしがみついてるのに、引き剥がしたりしたらきっと起きて泣き出してしまうだろう。
普段は仕事にかまけてあまり構ってやれないからこそ、こんな時くらいは父親らしく頼られたい。
それは可愛い我が子にだけでなく、妻に対しても言えることだ。
労う気持ちはちゃんとあるけど、それを伝え切れている自信はあまりない。
だからせめて、こういう時くらい気を抜かせてやりたいと思う。

「……じゃあ、ちょっとだけ寝るね」
「ん」
「何かあったら起こして」

遠慮がちに言った妻は、だけど寝室に行くことはなく、そのままぽすんと隣に座る。
そしてこちらに凭れ掛かるように、俺の肩に頭を預けてきた。

「重かったら言って」
「いや、平気だけど」
「じゃあ、おやすみなさい」

欠伸を噛み殺しながら妻が言う。
程なく肩の重みが増して、彼女が寝入ったのが伝わってきた。
いつのまにか手には指が絡められていて、動くことも儘ならない。
人によっては逃れられない呪縛のように感じられるのかもしれないが、俺にとってそれはとても心地良いもので。

愛する妻子による幸せの呪縛とその重みを味わいながら、俺も休日の午睡を堪能することにした。

5/24/2023, 7:52:11 AM

一錠、一錠、ぷちぷちと丁寧に取り出し、
溶け出す前に胃に流し込む

その行為だけで気分が落ち着くのだから
人間とは複雑で簡単な生き物だ

同じ薬を大量摂取して亡くなった方のニュースが繰り返し報道されている

掌にある小さな爆弾を飲み込む日々を考える
いつになったら私はこの戦争を終わらせることができるのだろう
武器など望んだわけではないのに
もうこれなしでは生きていけないなんて

虚しさと絶望が爆弾には乗っている

5/24/2023, 7:48:35 AM

この気持ちから逃れることができるのなら、どんなに幸せだろう。
もしあなたに出会っていなかったら。
もしあなたに恋をしなかったら。
でも、それはできないから。

あなたを諦めることはできない。
あなたを愛することしかできない。
だったらそれでいいじゃないか。
もしあなたとの一生の別れが来たら
この愛を伝える。
逃れることのできない、この気持ちを。

5/24/2023, 7:29:06 AM

逃げられない呪縛

‪”‬出来損ない‪”‬、‪”‬なんにも出来ない‪”‬、‪”‬なにやっても無駄‪”‬、‪”‬無能‪”‬、‪”‬役立ず‪”‬
この言葉のせいで、どれだけ苦しんだことか。
この言葉で、どれだけ泣いたことか。
‪”‬ 努力しても無駄 ‪”‬ 。
そう思わせたのは、この言葉のせいだろうか。
親に1度、いいや。
覚えていないだけで何回も言われた。
‪”役立ず‪”‬と。
きっとこれは、濮がなにしても何やっても、親の望んだ結果や、行動ができないせいでストレスが溜まったことが原因なのかもしれない。
しかし、この言葉のせいでどれだけ傷ついたのか、親はわかっていない。
そう、全ては親の責任である。
濮にこう思わせたのも、全部、全部……





















_____________いいや、違うな。

親が言ったのは‪”‬役に立てない‪”‬と言っただけで
‪”‬無能‪”‬だとか、‪”‬なにやっても無駄‪”‬だとかは
‪親の言葉を自分が勝手に”‬役立ず‪”‬と解釈して、
自分自身で勝手に傷ついているだけなのかもしれない。
‪”‬役立ず‪”‬という言葉から、自分を呪縛する言葉へと木の根っこのようにして、どんどん大きくなっていったのかもしれない……
結局、自分で自分を呪縛して、勝手に苦しんでいるだけだったのだ。



















自分で自分を呪ったくせに、今更逃げたいなんて
馬鹿馬鹿しいね  、

5/24/2023, 7:02:36 AM

【逃れられない呪縛】
(長文です)

父が病気で亡くなったとき、私は小学1年生だった。周りの人は早い死を悼み、嘆く祖母を見て
「親より先に死ぬのは一番の親不孝だ」
と言った。その言葉は幼い私にとって親不孝の定義になった。
親より先に死んではならない。
それは還暦を過ぎた今でも記憶に残り呪縛となっている。
その後、母は女手ひとつで私たち兄弟を育ててくれた。その時々に言葉でしつけ教えを受けてきた。その言葉は私にとって逃れられない呪縛となった。
「あの家は父親がいないから、あぁなった(非行に走った、ぐれた、後ろ指をさされるようなこと)と言われたくない。」
私は少なくても人前では良い子になり、正義感の強い人間になった(ように見えるかも)。しかし自分自身では、本当はどこかひねくれて可愛げのない裏表のある人間だということに気づいている。
「人に迷惑をかけてはいけない」
私は人に迷惑をかけるどころかボランティア活動をするようになった。しかし人は迷惑をかけないで生きることは無理だとわかっているので、どうしたら迷惑かけずに生きられるかと人知れず悩んでいる。
「人間は雨風しのいで飲んで食べて生きていられれば良い」
しかし大人になって、それは貧乏を正当化する言葉だと知ったが、そのときは時すでに遅く、私はあばら屋に住み欲もなく多くを望まない、けれど内心はお金もほしい、素敵な家に住みたい、たまには旅行も行きたい…という欲深い矛盾に満ちた気持ちを抱え葛藤しながら生きている。
そして結婚するとき母が言った。
「出た口は引っ込まない(姑に口ごたえをしてはいけない)」
私は、その通りにしようと努力した。姑に何を言われても、とりあえず黙って時をやり過ごした。けれど私は言われたことを夫に言い喧嘩になり、そのストレスを子どもにぶつけるようになった。心も体も限界になっていた。そんな時その愚痴を姑で苦労した叔母に話したら叔母が言った。
「我慢なんてしなくて良いのよ!」
私は泣いた。少し呪縛がほどけたような気がした。でもその叔母は病気で数年後に他界した。もっといろんなことを話して呪縛をほどきたかったのに。それを境に少しずつ姑に口ごたえするようになった。しかし口ごたえできなかった頃の心の鉛はずっと沈殿したままである。
結婚してから舅や姑の言葉が呪縛となった。個人商店で家族だけの自営業なので休みはなく元旦以外は店を閉めない。夫が休みを決めようと提案したが、舅は言った。
「店は閉めない、お前たちだけ休めば良い」
家と店が同じ建物なので私たちは家でのんびりというということはできなかった。店を閉めてはいけないという呪縛。それは諦めとなり、やがて習慣になった。人は諦めると努力することをやめる。私は店のために努力することをやめた。
子どもが小学生になり夫婦で行事に出かけた時たまたま店が忙しく姑がお客さんに不満を言った。
「ひとりの子どもに2人で出かけてる」
帰宅した私たちに姑は何も言わなかった。後でそのお客さんから言葉を聞いた。それ以降、子どもの行事に行くのは夫婦のどちらかひとりになった。夫の弟夫婦はいつも2人で行事に参加していることを聞いた。呪縛のない人が羨ましかった。
以前、私が働いていたところから臨時で(時短)働いてくれないかと電話がきた。姑が言った。
「そんなところより商売の方が収入が良い(儲かる)」
「女が稼ぐと威張るようになる」
時はバブル崩壊を迎えていた。年々売り上げは減り私たちへの給料も減った。舅姑たちは高度経済成長期しか知らずバブル崩壊後も良くなると信じ女は男の稼ぎで暮らせば良いと思っていた世代。そういう人に従わなければならないという呪縛。

でも人生は選択の連続である。ほどくことができたかどうかはわからないが、その呪縛の糸を1本ずつほどく努力をしないことを選択したのも自分である。ただ、そういう選択をしないような呪縛があったのかもしれないとも思う。
幼いころからの躾や教育の中にそういう呪縛があったとすれば、それをふりほどくことは至難の技である。


#11

5/24/2023, 6:47:19 AM

今日も能天気に生きようと頑張ったけど無理だったよ

                      完

5/24/2023, 6:47:00 AM

人から好意を向けられるのが苦手だった

「好きです」
「私は猫が好き」
中学生のときはそう言って知らんぷりした

「好きです」
「それでどうしたいの?」
高校生のときはそう言って撤回させた

「好きです」
「私は好きじゃない」
大学生のときはそう言って突き放した


社会人になった

「好きです」

なんとなく、いいなと思ってる人だった
でも、私は

「私じゃ君を幸せにできない」
「好きだから、私以外の人と幸せになってほしい」

そう言って、呪った

どうか、誰も私に好意を向けないで

〜逃れられない呪縛〜

5/24/2023, 6:30:34 AM

逃れられない呪縛

何かが間違っているのかもしれない。伸ばした髪は君のためなんかじゃない。お金がないからだよ。あの日公園で飲んだペットボトルのジュースおいしかったね。川辺を鴨を眺めて散歩したとき笑ったね。ショッピングモールをぐるりと周るだけで楽しいね。ぜんぶ嫌になる。たまにどうしようもなく。馬鹿みたいだと蹴飛ばしたい。好きは減っていくってほんとうですか。馬鹿みたい。常套句が頭をよぎる。馬鹿みたい。

5/24/2023, 5:25:46 AM

「逃れられない呪縛」

私の呪縛は、''自分はできて当然''というレッテルだ。

自分が出来ること、得意なことは限られているはずなのに、
ひとつ出来ないと、私はダメな人間だと錯覚してしまう。

これがプライドというものか。
幼い頃から形成されてきたこの感覚は、
無意識だからこそ逃れられない呪縛として、私に付きまとう。

だから私は自己肯定感も低い。
ありのままの自分ではなく、
あこがれの自分に焦点を当てている。
そりゃ現実の自分とのギャップを感じながら
肯定することができないのは当たり前だ。

この呪縛を解く鍵は、
本物の自分を見つけること。認めること。愛すること。

一生限りの人生。
あの人になり変わるなんて出来ない。
自分を変えることもそう簡単じゃない。

だから、
まっさらな自分を取り戻そう。
そしたら明日はきっと明るい。

#1

5/24/2023, 4:52:06 AM

【逃れられない呪縛】

僕らは必ず何かに縛られている

身近なものであれば学校の校則、国のルール…

よく良く考えれば、家族、自分の名前、寿命…
例を挙げると数え切れない程思いつく

この世界に自由なんて無い、少なくとも僕はそう思う。

もし"本当の自由"を求めるなら何も考え無い方がいい。

この世界に自由なんて存在しないのだから

5/24/2023, 4:43:37 AM

暗闇の中

 光に向かって

 走って

 走って 走って 走って

 いつかあの光の元に行けると信じ

 走り続けたけど

 あぁ

 今世も辿り着けなかった

 時間が足りなかった

 いつの間にか

 命の終わりが追いついていた

             『逃れられない呪縛』より

5/24/2023, 4:40:59 AM

会ってはいけない君と、
また会っちゃったね


私は1ヶ月生きました。
皆さんのおかげです。ありがとうございます

5/24/2023, 4:31:28 AM

逃れられない呪縛
私の周りを死ぬまで着いてくる「呪い」
周りの人が聞いたら大したことの無いものなのかもしれないでも、
私にとってこれは十分すぎるほど大きい呪縛
いつになったら…

5/24/2023, 4:03:01 AM

私がいたのは暗い場所。
待って待って待ち続けて、
遂に光が差し込んだ。

滑らかな手に抱えられ、
箱からするりと抜け出した。
隣に並ぶはよく似た仲間。

注がれ飲まれ洗われて、
繰り返される私の仕事、
仲間の彼が心の支え。

するりと手から抜け落ちて、
彼の元へと堕ちていく、
何かが床で砕けて散った。

テーマ「逃れられない呪縛」

5/24/2023, 3:49:58 AM

僕は、昔から、人と話すことが苦手だった。
僕は、昔から、忘れることが苦手だった。
僕は、昔から、騙すことが苦手だった。

僕は、昔から、何もかもが苦手だった。


僕にとって、人と話すといつことは、気力が大いに必要なことだった。
いや、正確に言うならば、いつの頃からか、とにかく気力がもっていかれるようになった。
きっかけは何だっただろう。
高校で仲のいい友達2人だけが同じになって、僕だけが違うクラスになってしまったことだろうか。
それとも、中学校になってから恋人に避けられて、関係が自然消滅してしまったことだろうか。
いや、小学生4年生で転校し、転校先で人見知りを自覚してしまったからだろうか。

これら全てが違うなら、おそらく、僕が自覚していなかっただけで、もともと人と話すということは、かなり気力を使うことだったのだと思う。

小学生の頃は、仲間にいれてほしい、と声を掛けられないタイプだった。
中学生の頃は、人前で立つと手足や声が震えて、汗が止まらなかった。
高校生の頃は、ペアワークにも関わらず、隣の人に無言の時間を提供してしまった。

ここまで来ると、僕もまずいと感じるようになった。
少しでもこの苦手を克服するために、僕は高校1年生の5月、バイト先に接客業であるコンビニを選んだ。

最初は声が小さく、元気がないような接客だったと思う。が、慣れてくると、段々とお客さんに笑いかけ、元気な声で接することが出来るようになってきた。
だが、これが出来るのはお客さんに対してのみだった。同じバイト先の先輩との雑談などは、1ミリも盛り上がらなかった。
しばらくして、先輩たちとも仲良くなれなきゃ意味が無いと思い立った。
そして、ネットの記事やまとめを読み漁り、「とにかく質問をする」というのを実行してみた。
結果としては、かなり会話が弾むようになった。
先輩と喋る時は常に汗が止まらなかったが、それでもなんとか雑談を成立させることが出来た。

相変わらず、人前では緊張して頭が真っ白になり、汗が止まらなかったが、手足や声の震えはなくなっていた。

多少なりとも、バイトのおかげで、人とのコミュニケーションのとり方は改善された。

しかし、高校最後のクラス替えで、僕は1人になってしまった。簡単に言うと、知り合いのいないクラスに入り込んでしまった。
よりにもよって、仲のいい2人だけは同じクラスになって喜んでいた。僕だけが違うクラス。
5分の休み時間や移動教室は常に一緒。ゆったりと歩きながら楽しそうにおしゃべりをしているその様子を、僕の手に入れることが出来なかったそれを見る度に、それから目を逸らして早足で目的の教室へ向かった。

僕は、家に帰って泣いた。
彼らが憎かった。
僕を置いてけぼりにしておきながら楽しそうに笑う2人が、夢の中にまで出てきて、その時、何故か持っていた包丁でズタズタに切り裂いてしまおうかと思った。
だが、それは叶わなかった。
腕を振り上げて包丁を彼らに向けるどころか、体が勝手に手の力を抜き、包丁を落としてしまった。
包丁はおそらく、僕の彼らへの憎しみの現れだったのだろう。
だが、僕はそれを捨ててしまった。
捨てることを僕の本能が選んだ。
分かっていたのだ。自分は、夢の中であっても彼らを傷つけることは出来ない。彼らは大切な友人で、こんな僕を友達だと言って、昼ご飯に誘ってくれる。
この憎しみは、僕の我儘にすぎない。
僕が、過剰に彼らに執着してしまっているという証明にすぎない。
だから僕は、1年間をひとりぼっちで過ごし、卒業アルバムは買わなかった。




ただ、残念な事に僕は、忘れることが苦手だった。
卒業アルバムを買わなかったのは、あのひとりぼっちの日々を忘れるためだった。
が、高校を卒業してから、僕は度々、辛い思い出や黒歴史を急に思い出すようになった。

あのスピーチ発表の時の僕は、手足や声が震えていて、さぞ滑稽だっただろうな。
あの時の僕は、今考えると強迫性障害を軽く患っていて死ぬほど手洗いしていたな。
あの体育の時の僕は、張り切りすぎて走っている時に思いっきり転んでいたな。
あの時の僕は、
あの時の、
あの、

フラッシュバックのように、その嫌な思い出が蘇るのはいつも突然だった。
その度に、恥ずかしくてこの世から消えたくなったり、胸が苦しくなったり、頭を強く打ち付けて記憶を消したくなったりした。
嫌な思い出ほど忘れられないもので、バイトや学校での失敗、幼稚園の頃のやらかしまで鮮明に蘇ってくる。
こんな症状が割と頻繁に起こったため、僕はかなり参ってしまった。
そんな時見ていたテレビで、催眠術を体験する、というコーナーを放送していた。
僕は、これだ!っと思った。
自分に催眠術、つまり暗示を掛けてしまえばいいのではないかと思った。
「この思い出の主人公は僕では無い」
という暗示(思い込み)を。
ただ、これがなかなか上手くいかなかった。
強く思い込んでみても、やはり完全にそのフラッシュバックを消すことは出来なかった。
だが、とにかくその記憶を忘れたフリをした。
さらに、その際、1度指パッチンをすることにしてみた。
何かしらの動作と関連付けることでパブロフの犬のような現象を起こせるのではないかと考えたためだ。
すると、3ヶ月ほどで記憶にモヤをかけられるようになった。
残念ながら、今でも完全に消し去ることは出来ない。
しかし、指パッチンをすると、「さっきまで何かを考えていたけれど、なんだっけ?」という感じになる。
もちろん、一時的に記憶にモヤをかけられるだけなので、段々と思い出してはきてしまう。
だが、こうして僕は、嫌な記憶のフラッシュバックを一時的に忘れることができるようになった。



ただ、僕は運が悪いようで、人を騙すことが苦手だったようだ。
これを自覚したのは最近のことだ。

人見知りをそれなりに改善し、忘れることも一時的にだが、可能としてきた。
しかし、1週間前、バイト先でボディタッチが多い子に大事にしているものを急に触られた時、怒りが湧き上がった。その子はそれなりに仲良くしている子だった。
その子の恋愛相談を受けるくらいには。
だが、とにかく腹が立ったのだ。
「とても気に入って買ったもので、汚れないように気をつけている」という話をしたばかりなのに、なぜ触ろうという気になるのか意味がわからなかった。
「ここふわふわだね。」といってそこを擦る指を反対に曲げたいような気持ちだった。
だが、そんな怒りを出さないように笑って誤魔化した。しかし、もうその子に対して、心の底から笑いかけることは出来ないな、と感じた。
今でも、怒りは収まらない。

そして、今日、保健室の先生に聞きたいことがあった。
保健室では、お悩み相談なども可能で、今回は別の用事だが、また今度にでも、1週間前のバイト先でのことについて話してみようかな、と考えていた。
僕は保健室の扉を3回ノックして、「はい」という返事が聞こえたから、部屋に入った。
すると、「今電話中だから、椅子に座って待っててください。」と言われた。
保健室の椅子は先生の目の前にしか無かった。
目の前に座るの嫌だなー立ってよーかなーと思いながら、少しづつ椅子に近づいていた。
「外の椅子に座って待っててくれる?今電話中だから。」
先程よりも大きな怒ったような声で先生が言った。
「あ、はい、すみません失礼しました」
と言って、僕は外の椅子にぽつんと座っていた。
そして、急に怒りが湧いてきた。
あの先生の感じは完全に怒っていた。が、電話中だから、外で待てなんて習ったことがない。
先生は最初、「椅子で待て」とは言ったが「外の椅子で待て」とは言っていない。
具体的に指示しなかったそちらが悪いのに、僕はなぜ軽く怒鳴られたのだろうか。
しばくして、先生は優しい声で「お待たせしました」と声をかけてくれた。
この人だけには悩みを打ち明けたくないな、と思いながら、僕は声をかけてきた赤の他人に笑顔を向けた。

僕は、僕自身を騙しきれなかった。人見知りではないと自分を騙すことも、あれは嫌な記憶ではないと自分を騙すことも。
友人を包丁で刺さなかったのは、夢の中であっても傷つけなくないからだと自分を騙してきた。
だが、違う。
あれが夢だとわかっていたら、きっと僕は楽しそうに、あの日見た2人の笑顔と同じくらい素敵な笑顔を浮かべて血飛沫を浴びていたことだろう。
嫌な思い出を指パッチンで一時的に消すことが出来ると自分を騙してきた。
だが、違う。
あんなのは、本当にただの暗示で、一時的にでも消せている訳では無い。消せていると思い込んでいるだけなのだ。
そう、思い込んできただけだった。
何もかも出来たと思い込んできた。

何もかも出来なかったから。


結局、僕は昔から、人見知りで、失敗を引き摺り、友人を夢の中で殺し、現実から目を背ける、ただの僕から変わることができていない。

そんな自分から逃れることができていない。






逃れられない呪縛

5/24/2023, 3:47:38 AM

34 逃れられない呪縛


我が家はメシマズの家系である。
逃れられぬ因業、つきまとう人生の影、それがメシマズである。
レシピの通りに作れば失敗しないでしょ?などという正論は、メシマズの呪縛の前には無意味である。
レシピ通りに作っても、何故かカレーはしょっぱいし豚汁の味はしない。そういうものである。
そんなメシマズの末裔たる私は、イタリアンレストランのシェフと結婚し、男女の双子を産んだ。
果たしてこの子たちは、メシマズとして生きるのかメシウマとして生きるのか。
夫は両方をメシウマにしたいと張り切っている。
私は余計なことをせず、市販のベビーフードやクックドゥを使い、最新の注意を持って子供たちを育てようと思う。それが私に注げる、最大限の愛情である。そういう愛も、あるのである。

5/24/2023, 3:45:26 AM

「勘違いしないで。
 逃げられないんじゃなくて、逃げたくないだけだから。」

DVされてる知り合いがそう言ってた。

「あの人はアタシの助けがないと死んでしまうの!!」

急に言った知り合いの目はつま先から頭のてっぺんが一気に冷えるほど怖かった。
もう何年も彼女とは連絡を取ってない、それ位怖かった。

この小説のテーマを見て思う、
あれ以上の呪縛はきっとないんだろう、と。




あの時言えばよかったね、
その腕じゃウエディングドレス着れないよって。

5/24/2023, 3:35:59 AM

細い細い銀鎖で作られたネックレス。

少し力を込めればちぎれてしまいそうな銀細工。

浮気してるくせに律儀にクリスマスプレゼントとして嫁が渡してきたプレゼント。

もう離婚したから“元”嫁ではあるが。


“ソレ”を未だに身につけているのは自分でも気付いていない未練なのかなわなのか。

『もう未練なんてない、新しい恋がしたい』

なんて言っているけれど、自分自身で気付かないくらい深い深い心の底でまだ彼女に縛られているのかもしれない。

きっとこの“呪縛”が解かれるのは心の底から愛し愛される相手に出会えた時なのだ……そう思いつつ今日もネックレスをつけバスに揺られている。

5/24/2023, 3:23:59 AM

そもそも呪縛というのは、社会生活から生まれたものではないか?と思う。
そりゃ他の生き物とかは呪いとかそういうのには無縁の生活を送ってるわけで。
社会性があり、規律があり、営みのルールがあり。
そういうものがあって初めて呪縛、束縛されてるな、と感じるんじゃないか。と。
だから、本来は呪縛なんてもんは存在してないんじゃないかとすら思う。
本人がそう思ってるだけ。とも思う。

もちろん社会生活的に駄目なもんは駄目だろうけど、「逃れられない呪縛がある、逃げられない」と思ってるのは本人だけかもしれないよ、って話。

5/24/2023, 3:23:30 AM

逃れられない呪縛。
 
 もし見えない呪縛があったとしたら。
 生まれながらに呪われている。
 哀しい者。
 人間に呪縛はあるのだろうか。

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