『赤い糸』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『赤い糸』
私とあなたは赤い糸で結ばれている。
そう思っていた。
私があなたを好きになったのはあなたの席が私の右斜め前になったときのことだった。
私はあなたの後ろ姿が好きだった。
何事にも真剣に取り組み、何事にも全力。
あなたのその姿に惚れ込んだのだった。
その年のバレンタイン。
私はあなたにチョコをあげる決意をした。
それと同時にこの気持ちを伝えようとも。
「ねぇ今日の放課後17時までに体育館裏に来て欲しい」
そうあなたに声を掛けた。
あなたはただ、「分かった」とだけ言い、その場から離れていった。
その日の放課後あなたは約束通り17時に体育館裏に来てくれた。
「呼び出してごめんね。でもどうしても渡したいものがあって」
と言って、前日に夜な夜な作ったチョコを取り出した。
「チョコ」
言うって決めたんでしょ。言わなきゃ。
「ずっとあなたのことが好きでした。付き、」
「待って。俺から言わせて。ずっと好きでした。こんな俺で良ければ付き合ってください」
「はい!私でよければよろしくお願いします」
そうやって始まった私たちの恋愛は嘘だったってこと?
最初っから私なんか目にも入ってなかったってこと?
私の心を支配したかっただけなの?
なんて、今頃聞いても遅いか。
あなたは婚約指輪と私がこれまであげた全てのものを置いて消えてしまったのだから。
私たちは『赤い糸』で結ばれているんじゃなかったの?
それなのになんで私だけ残して、あなたは私の前から消えたの?
答えてくれるわけもなくただ問い続け、私は彼を追っていった。
:赤い糸
鼻血と鼻水が混ざったドロドロの赤い糸が伸びていく。僕の鼻と貴方の拳を繋いでいる。
「ごめん、ごめんなさい……こんなことするつもりじゃなかった」
鉄臭い、汚い、ベチャベチョ。鼻、折れてないといいな。ジンジン、痛いな。唖然とした? そんなことない。また、殴られただけ。
「痛いよな、今氷を取ってくる、冷やさないと……」
鼻の奥がドクドク波打って鼻水を生成している。切れたとこから血液が流れて鼻血が垂れていく。赤い糸、汚いなぁ。
赤い糸……ねえ、どこ行ったの。僕をおいて、どこかへ行ってしまった。僕をおいて、行かないで。血まみれ、僕、あのとき、どうしたら良かったのかな。違う選択を取っていたら、僕は今でも……。赤い、糸、あかぁい血で、縫い合わせてしまったかもしれない。違う生地同士を、無理やり。血まみれにしてしまった。
――つめたい
「少し我慢してね」
鼻に氷を押し付けられて、今度はキンキン頭まで痛くなってきた。グリグリ押し付けられて体温で溶けた氷が液体となって、鼻血と絡まり口周りを染めていく。ああ、汚いなぁ。鉄の味。
お前の拳も血まみれで、全く痛そうじゃない。暴力で繋がった赤い糸。結局こういう濃度にあるのだと思う。お前も俺もクソ野郎だ。暴力賛成と笑ってないまぜにしてなあなあにしている。
「もう十分冷えたかな。念の為病院に行こう。折れてなければいいんだが……」
痛い。優しさ。肉体。それでいい。暴力だげが肯定してくれる。痛い。怖い。ずっとずっと罰してくれ。ずっとずっと裁かせてくれ。ずっと、ずっと。
「……うん、ありがとう。ありがとう。ありがとう」
ありがとう。許してくれてありがとう。
納豆の糸ほどならば
繋がりは
あると信じて
手を伸ばす
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「見えないのに、なんで赤ってわかるんだよ!」
などと思ってしまう捻くれた人間には、縁はなさそうな運命の赤い糸ですが、因果関係の糸も、気持ちの糸もきっとあるよなとは思っています。
時に気持ちの糸は、手を伸ばさなければ簡単に切れてしまうものであったとしても。
___________
小指で繋がった運命の赤い糸のお話の由来と考えられるお話も調べて面白かったです。
中国の足首を繋ぐ見えない紅い縄のお話。その赤い縄は結婚を示唆しているとのお話でしたが、殺人未遂事件の加害者と被害者であるとも言えるのではと思ってしまいました。
古事記の赤い土のついた糸をたどって子作り相手の身元を探る話も面白かったです。赤い土は魔除けだそうで、糸の先が悪い物だったら赤い土はどんな風に作用していただろうかと考えてしまいます。
赤い糸
見えて欲しいけど
見えて欲しくない
だって
あなたと繋がっていなかったら怖いから
ただただひたすらに
あなたを想い身体とこころが疼く
その甘くしびれる感覚に
いまは酔いしれたい
赤い糸と
言えば
タカミーだね。
「赤い糸が
小指に絡みつく」なんて
聴いてたのは
高校卒業したくらい?
赤い糸は
細いのが
何本も?
あれとこれが好きじゃなくて
あれもこれも好きな
欲張りだった。
これは僕がまだ高校生の時に友達との会話でまだ彼女とは出会っていない頃の話。
「赤い糸ってあると思う?」と友達に聞かれたので「ある人にはあるんじゃない?」と言うと「お前冷た!それじゃあ彼女できないぞ」と言われたので僕は意地を張ってしまい「できるし!」と言ってしまった。
「てか好きな人とかいねーの?この学校に」と聞かれ数秒考えた。「今はまだいないかな」と答えると「俺、お前の将来不安だわ笑」と少し笑うように言ったので「心配しなくてもいつかできるから安心しろ笑」と言った。
高校を卒業して友達と一緒の大学に進学し僕は今の彼女と出逢い付き合う運びになった。その友達はとても驚いていたけど喜んでくれた。
赤い糸で結ばれた僕達は今とても幸せです。
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theme 赤い糸 2024-07-01
運命の人と繋がっている赤い糸。見えているのは私だけらしい。もちろん彼氏である雅人からもその糸が伸びている。だがその先にいるのは私ではなく、私の親友の真美だった。真美は勉強も運動もできてオマケにとても可愛い。そんな真美が大好き。でも、雅人の運命の人だということは気に食わなかった。雅人が私以外の誰かと一緒になるなんて想像出来ないし、想像もしたくない。だから私はある決断をした。
「この糸を切ってしまおう」
運命は変えられる。私はそう信じハサミを手に取った。
赤い糸 絡まる 左薬指
その先には愛しい人 ようやく解けた
今では お揃いの指輪が
それぞれの指を 守ってくれているね
私は他人の赤い糸が見える。いや、正確に言うと他人の首に巻き付いている糸が見える。
この能力は生まれつきで、物心ついた頃に赤い糸が見え始めたのはその頃だった。
その赤い糸がついた人は私のおばあちゃんだった。その時私はおばあちゃんの家にいて手作りの餅を食べていたのだが、その時餅を食べておばあちゃんの様子がおかしくなったのだ。苦しい苦しいと言ってどうやら餅を詰まらせたようだった。
私はどうする事も出来なくおばあちゃんは息をしなくなった。するとスルスルと首の糸が取れて地面にはたと落ち、次第にシミが広がっていくように黒く変色した糸を好奇心で触ってみたくなった私は、その糸に触れると触ったところからすっと糸が白く変わっていった。白色はその頃の謎の勘で大丈夫な色だと思い、何故かその頃の私はその糸をおばあちゃんの首に巻きつけた。
するとおばあちゃんは息を吹き返し喉に詰まった餅を吐き出して何事もなかったようにけろっとしていた。後から連絡したお母さんが来ておばあちゃんを叱っていたのは懐かしい思い出だ。
私は頭が悪いなりに考えた結果運命と思うことにした。
ん?何故こんな事を思いふけっているかって?
だっておかしいと思わないか?仮に寿命や運命で死んでしまうとして何故私が糸に触れると生き返るのか。あぁ、一応何十回も試して生き返ったから事実だと思う。
そこである共通点を見つけたんだ。
死がある程度近くになると糸が赤くなり、そして後ろの方で糸がリボン結びになっているんだ。
そこでだな…実は今通り魔に刺されてるんだ。
いきなり過ぎてわからないって?私もわからない。
ただ通り魔の糸が赤くリボン結びになっている事に私は気づいてね。
解きたくない?いや解いちゃおう!
死なば諸共だよ。
あ、生きてる。
あー現在病院ですね。どうやら生き延びたみたいです。
明らかに心臓貫いてるのに何で死んでないか分からないって言われてますね。
それに何故通り魔が死んでいるのか聞いてきてますね。
まあ仕方ないかー
……………
流石に何十人も糸をほどいたせいで警察官が来てる。
まあいつもどうり証拠ないから大丈夫か
アニメの世界や漫画の世界では、運命の人は赤い糸で結ばれてるとか、そういうお話があったりする。
もし、現実世界でも、そうであったなら僕は、
赤い糸をどこまでも追いかけて、運命の人を探すだろうな
〈お題:赤い糸〉
当時、紡がれた言の葉に私は運命を感じていた。
「ありがとう」
遠い空の向こう側からカーテンを薙いで、微かに残光が差し込む先には一通の手紙があった。
赤黒い封筒に包まれたその手紙の中には、私への想いが綴られている。
私はその手紙に込められた想いと引き換えに未来を得て余生を過ごしたのである。
「ありがとう…」
もう充分です。私はその手紙に恩人を重ねては心の中で詫びている。感謝の念は日を追うごとに、死への恐怖を掻き立てるからである。
難病だった私をこの歳まで掬ってくれた。
もう、手紙を手に取る事すら叶わない。
「…ごめんなさい」
アナタの元へ向かうには遅すぎたから。
きっと、私を私と判らないでしょうから。
運命の赤い糸で私を留めたアナタには、もう。
「こわいよ…」
人は生まれつき、小指に運命の赤い糸が繋がっているらしい。
だからワタシと貴方が結ばれることはないんですよ、なんて
金属で出来ている君はそう言い、寂しげに笑ったんだ。
『赤い糸』
赤い糸をちぎったことがあります
小学生の頃のことです
赤い糸の言い伝えを知り、
そんな人いらない!と思い
小指に結ばれているという赤い糸を
ちぎりました
今思うと
ちぎらなければよかったと思うことがあります
そうすれば
あの人と
何もしなくても結ばれていたかもしれないからです
それが自分にしか見えないと知ったのは、小学校に入学する少し前。
家の庭で遊んでいたら、お爺さんに声をかけられた。
長い白い髭に、少し広い額。そして真っ白な髪の毛。
見た事がない服を着ていたけれど、気にはならなかった。
「坊主、それが見えるのか?」
「坊主じゃないよ、健人だよ。コレね、時々ここにあるんだ。けど触れないの。不思議だよね」
しゃがんだ足元には小指くらいの太さの紐。色は赤。
目には見えるのに、触れることが出来ない。
触ろうとすると、手のひらをすぅっと通り抜けていく。
「そうか、健人。いいことを教えてやろう。それはな普通の人には見えないんじゃ」
「そうなの?」
「あぁ、そうじゃ」
紐の話をすると両親は困った顔をした。
友達には、そんなの見えないと言われた。
「じゃあボクは普通の人じゃないの?」
「そうなるのぅ」
「そうなんだ。…お爺さんも?」
そう聞くと、お爺さんは愉快そうに笑いこくりと頷いた。
普通では無いという、特別感と、お爺さんと一緒と言う、親近感。
「それは人と人の縁を結ぶ紐じゃから、ワシ以外は触れないんじゃ」
「ふぅん?」
「いいか、健人。この紐のことはワシと健人との秘密じゃ」
「秘密…」
「そうじゃ、ふたりだけの秘密じゃ」
「うん、お爺さんとボクだけの秘密!」
ふたりで秘密を共有する、たったそれだけで、お爺さんを無条件で信じた。
良く言えば純真で、悪く言えば単純。
「ふぉっふぉっ、いい子じゃ、いい子じゃ。そうじゃのう、健人、ちょっとこっちへ」
手招きされて、素直にお爺さんのそばへ行く。
すっと右手を握られた次の瞬間、手首にあの紐がぐるりと2周巻きついていた。
「御守りじゃ」
「御守り?」
「あぁ、健人を守ってくれるんじゃ。それとな、あの紐と同じでワシと健人にしか見えん」
「紐と一緒?あれ、でも触れるよ」
そう、触れた。摘むと指の間に紐が存在する。
けれど触っている感覚がない。不思議な感じだ。
「うむ、少々細工をしたからのぅ。切ったりはできぬし、外すことも、外れることも無い」
「ふぅん…うん。ありがとう、お爺さん!」
「どういたしまして、じゃ。では、また会おう、健人」
お爺さんは、ふぉっふぉっと笑いながら去って行った。
「純粋すぎ…いや、子供だったから仕方が無いのか?」
色褪せることも、汚れることも無く、あの紐は今でも右手首に巻きついている。
またあの日以降、何度かあのお爺さんに会った。けれど、会う度に外見が違った。
ある時は、20歳くらいのお兄さんだったり、30後半のイケオジだったり、はたまた俺と同じくらいの年齢の子供だったり。そう言えば金髪の美女の時もあった。
不思議なのは、どんな外見でもひと目であのお爺さんだとわかること。
そしてそれを自分は普通に受け入れている。
流石に、お爺さんではないので名前を聞いた。
だが答えてもらえなかったので、勝手にジンさんと呼ぶことにした。
何となく嬉しそうだったので、良かったんだと思う。
ジンさんとは、2、3言葉を交わして別れる時もあれば、カフェでお茶をしたり、居酒屋で飲み明かすこともある。
「赤い紐…ねぇ…」
赤い紐は今もチラホラと見えている。
都心に出ればそれなりの数の紐が、絡み合うことなく存在しているのを見かける。
そして友達との待ち合わせの時とかに紐を観察していて、わかったことがある。
まずは色。
基本は赤だが、紐によって色味が若干違ったりする。
濃い赤、薄い赤、斑な赤、濃いのと薄いのがシマシマになっていたりと、様々ある。
色味に何か意味があるのかも知れないが、今はまだ分からない。
そして紐の先。
これは例外なく、人の右足首に巻きついている。
と言っても、全部確認したわけではなくジンさんに聞いたら答えてくれた。
それと、巻き付きは1人に対して1本のみ。同時に2本3本の巻き付きは絶対にない。
不思議なのは紐は足首で結ばれているわけではなく、足首に巻きついているだけなこと。
結ばれているのはひとつも見たことがない。
これもジンさんに聞いたけど、答えてはくれなかった。
因みに俺の右手首の紐は結ばれていないけど、他の巻きつきとは明らかに違う。
それから、消失。
文字通り、紐が消える。すぅっと空気に溶けるように。
これは、繋がれた先のどちらかが亡くなると起きる現象のようだった。
事実、祖父が亡くなった時、祖父と祖母を繋いでいた紐が消失する瞬間を見た。
最後に、全員が誰かと繋がっているわけじゃない。
誰かと繋がっていても、その相手が伴侶とは限らない。
これもジンさんに確認済み。
事実、俺の両親は繋がっていないし、従姉妹の旦那は幼なじみと繋がっていた。
紐はあくまでも運命。
その運命に従うか、逆らうかは本人次第。
そして、その選択を観察するのがジンさんの趣味。
ターゲットの近くで観察するのがいちばん楽しいから、ターゲットに不審がられないように外見を変えているらしい。
ただひとつ言えるのは、運命に従った方が幸福になれるということ。
だって、いちばん幸福になれるから繋いでいるんだ、とはジンさんのお言葉。
残念なのは普通の人には、その運命が見えないということ。
「ん?」
俺は自分の右手首の紐をじっと見た。20年変わることの無い赤い紐。
自分の右手だけで完結してしまっている俺はどうなるのだろうか?
「運命って分からないから楽しいんだよ。健人は運命が見えちゃってるでしょ?だからもう、自己完結させちゃったんだぁ」
「え、ジンさん?」
ふへへへっと、締まらない顔で笑ったジンさんは、グラスに注がれた日本酒"赤い糸"を一気に呑み干した。
赤い糸なんてほんとうにあるのかな。ぜったいに運命だと思っていた人が死んだ。ほんとうに容易く死んだ。赤い糸があるというのなら俺のことを繋いだまま、そっちに引っ張ってほしい。いまでもまだ赤い糸が繋がっているというなら、地獄にだって落ちる覚悟が俺にはあるから。
赤い糸🧶これを見ている貴方は
赤い糸の運命の人と出会っていますか?
何故か皆さんは
赤い糸=運命の人 と改訳をしてしまう人が
多いと思います。
それは自分が謎に思ってしまいますw
別に赤じゃなくてさ青でも良くねー?って思いました
赤い糸で結ばれた私達はもう誰にも負けないくらい愛で埋もれている
「赤い糸」
紡いで先染め
小指に巻き付け
夕陽のような足元を
たどたどしく解いては
誰とも知れぬ幻想を
ひとりひとりと
すり抜ける
運命の赤い糸、なんて概念があって。
どうやら運命の相手と小指にある見えない赤い糸て結ばれてるらしい。
さて、僕にはその糸が見える。そして、権力者に結ばれてる赤い糸がどうも僕に繋がれてないように見える。
どうするか、などという考えは愚問で、彼女の赤い糸を特殊なハサミで切って僕の赤い糸と結びつけて、つなぎ目を丁寧に撫でると元から繋がっていたように見える。
本当は良くないかもしれないが、仕方ない。
僕は彼女の運命が欲しいから。
赤い糸。それは誰かと誰かを結ぶ運命の糸。
あー。暑い。クソ暑い。なんでこんな暑いかな〜。クーラー全然来ないよ。こんなん先週、席替えで喜んだ俺が馬鹿みたいじゃん。窓側のしかも一番後ろの席でラッキーと思ったのになあ。最悪。
あーだったら、こーだったら時を遡らせることなど出来ないのに、教室の隅の席で思う。身体が溶けていそうなほど暑い。空の色は青なのだから涼しくはならないかと外を見る。
なんだあれ。
学校の門の前に一人の女の子がいた。同い年くらいだろうか。何をしているんだろう、何故あそこにいるんだろう、学校は?等と女の子の事で頭が一杯になる。突然、頭に痛みがはしる。
先生だった。「ちゃんと授業を聞きなさい」とわざわざご丁寧に俺の席まで来て教科書で叩きやがった。
ぜってーゆるさねー。
ーーーーー
昇降口。靴と上履きを交換する。靴を履き、いざいかんと一歩前進する。目があった。あの女の子だ。窓から見えたあの。急いで駆け寄る。聞きたかった。何故そこにいるのか、誰かを待っているのか。
後ろから背中を叩かれた感触がした。多分あいつか。ふざけんないてーよと言ってやろうと振り返る。やっぱりあいつだった。言ってやったら「ゲームやろうぜ」と笑顔で言われた。時間指定付きで。そして、走っていってしまった。女の子に聞きたいことがあるんだったと思い出し、女の子がいる方向に目を向けるが、そこには誰もいなかった。
ーーーーー
授業中。また窓の外を見る。あの日から一週間が経った。時が過ぎていき、そして三ヶ月が経ったある日のこと。
あれ?女の子がいない。
女の子がいない。そのことだけでちょっとした悲しみのような寂しさのようなものが心をざわざわとさせた。楽しみになっていた。あの女の子と会えるのが。これは特殊な出会いだったから惹かれたのではない。惚れたのだ。気になった。女の子のことが知りたいと思うほど気持ちは強くなった。
ーーーーー
あの日と同じ、学校の門の前にいる女の子と目があった。
あれ、あの子がいる!!
女の子は「こっちよ」と言わんばかりに手招きしている。
俺のことだ!きっとそうだ!
女の子のいるところまで駆ける。女の子はそんな俺の姿を見て微笑んだ。「そんな必死にならなくていいのに」と言葉を添えて。
初めて声を聞けた嬉しさで声が出ない。この日まで考えていた言葉を紡ぐための口が言うことを聞かない。
女の子は「ちょっと寄り道しちゃおう」と言った。
ーーーーー
公園にて、俺と女の子はブランコに乗っていた。
女の子は「お礼を言いたいの」と言った。
俺はすかさず「なんで?」と聞き返した。
すると、「私、実は幽霊なんだ」へへ…と眉を八の字にしながら言った。
俺は別に驚かなかった。納得した気持ちでいっぱいだった。だからみんな気づかなかったんだ。門の前に女の子がいること。
「昔話していいかな…それともそんな話聞きたくないかな」
問いかける目で俺に聞いてくる。勿論俺はそんなことないし、女の子の話だったらと喜んで返事を返した。
「私、心臓が弱かったんだ。幼稚園の頃には病院にいて、ママとパパからは学校には行けないってお医者さんから言われたって。でね、私、気づいたときには死んじゃってて学校の門の前にいたんだよね。それできみが見つけてくれて、でも私きみと話せなかったんだ話したかったけど…なんでだろう……。ねえ…私と友だちになってくれる?」
突然の質問に戸惑ったが、俺は迷わず、「友だちになろうぜ!」と公園全体に聞こえる声で言った。
「そっか。私と友だちになってくれるんだね…。とっても嬉しいよ。ありがとう。でもお別れなんだ。ごめんね。私、心があたたかくなっちゃって。見つけてくれたきみに心が…。私、私…」
女の子から光が漏れ出したような気がした。気のせいかと思ったが何度目をこすってもこすっても光の粒が女の子から漏れ出す。
さよならなの?やっとしゃべれたのに?どうして?なんで泣いてるの?会えなくなるの?あれ、目がぼやけてきちゃった。なんでかな。なんでかな…。
ギュッと手を握られた感触がする。女の子だ。女の子がおれの手を握っている。目の前に女の子がいる。さっきまで光の粒だったものがさらに大きな粒になって漏れ出していた。
「ねえ、きっと会えるよね?そうだよね?」
「うん…きっと会えるよ。私、待ってるから…ずっと…」
おれは自分の小指と女の子の小指をからませる。
「ずっとずっと待っててねぜったいだよ」
「うんぜったいに会おうね」
女の子から漏れ出す光が強くなり、女の子は光で包まれていく。
「おれたちは赤い糸でつながっているんだ、それを忘れないでね待っててねぜったいにぜったいだよ!」
光は空へと昇っていき、完全に消えたと思ったとき、女の子の声がした。
「ぜったいに」