『赤い糸』
私とあなたは赤い糸で結ばれている。
そう思っていた。
私があなたを好きになったのはあなたの席が私の右斜め前になったときのことだった。
私はあなたの後ろ姿が好きだった。
何事にも真剣に取り組み、何事にも全力。
あなたのその姿に惚れ込んだのだった。
その年のバレンタイン。
私はあなたにチョコをあげる決意をした。
それと同時にこの気持ちを伝えようとも。
「ねぇ今日の放課後17時までに体育館裏に来て欲しい」
そうあなたに声を掛けた。
あなたはただ、「分かった」とだけ言い、その場から離れていった。
その日の放課後あなたは約束通り17時に体育館裏に来てくれた。
「呼び出してごめんね。でもどうしても渡したいものがあって」
と言って、前日に夜な夜な作ったチョコを取り出した。
「チョコ」
言うって決めたんでしょ。言わなきゃ。
「ずっとあなたのことが好きでした。付き、」
「待って。俺から言わせて。ずっと好きでした。こんな俺で良ければ付き合ってください」
「はい!私でよければよろしくお願いします」
そうやって始まった私たちの恋愛は嘘だったってこと?
最初っから私なんか目にも入ってなかったってこと?
私の心を支配したかっただけなの?
なんて、今頃聞いても遅いか。
あなたは婚約指輪と私がこれまであげた全てのものを置いて消えてしまったのだから。
私たちは『赤い糸』で結ばれているんじゃなかったの?
それなのになんで私だけ残して、あなたは私の前から消えたの?
答えてくれるわけもなくただ問い続け、私は彼を追っていった。
6/30/2024, 5:43:12 PM