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赤い糸。それは誰かと誰かを結ぶ運命の糸。

あー。暑い。クソ暑い。なんでこんな暑いかな〜。クーラー全然来ないよ。こんなん先週、席替えで喜んだ俺が馬鹿みたいじゃん。窓側のしかも一番後ろの席でラッキーと思ったのになあ。最悪。
あーだったら、こーだったら時を遡らせることなど出来ないのに、教室の隅の席で思う。身体が溶けていそうなほど暑い。空の色は青なのだから涼しくはならないかと外を見る。
なんだあれ。
学校の門の前に一人の女の子がいた。同い年くらいだろうか。何をしているんだろう、何故あそこにいるんだろう、学校は?等と女の子の事で頭が一杯になる。突然、頭に痛みがはしる。
先生だった。「ちゃんと授業を聞きなさい」とわざわざご丁寧に俺の席まで来て教科書で叩きやがった。
ぜってーゆるさねー。

ーーーーー

昇降口。靴と上履きを交換する。靴を履き、いざいかんと一歩前進する。目があった。あの女の子だ。窓から見えたあの。急いで駆け寄る。聞きたかった。何故そこにいるのか、誰かを待っているのか。
後ろから背中を叩かれた感触がした。多分あいつか。ふざけんないてーよと言ってやろうと振り返る。やっぱりあいつだった。言ってやったら「ゲームやろうぜ」と笑顔で言われた。時間指定付きで。そして、走っていってしまった。女の子に聞きたいことがあるんだったと思い出し、女の子がいる方向に目を向けるが、そこには誰もいなかった。

ーーーーー

授業中。また窓の外を見る。あの日から一週間が経った。時が過ぎていき、そして三ヶ月が経ったある日のこと。
あれ?女の子がいない。
女の子がいない。そのことだけでちょっとした悲しみのような寂しさのようなものが心をざわざわとさせた。楽しみになっていた。あの女の子と会えるのが。これは特殊な出会いだったから惹かれたのではない。惚れたのだ。気になった。女の子のことが知りたいと思うほど気持ちは強くなった。

ーーーーー

あの日と同じ、学校の門の前にいる女の子と目があった。
あれ、あの子がいる!!
女の子は「こっちよ」と言わんばかりに手招きしている。
俺のことだ!きっとそうだ!
女の子のいるところまで駆ける。女の子はそんな俺の姿を見て微笑んだ。「そんな必死にならなくていいのに」と言葉を添えて。
初めて声を聞けた嬉しさで声が出ない。この日まで考えていた言葉を紡ぐための口が言うことを聞かない。
女の子は「ちょっと寄り道しちゃおう」と言った。

ーーーーー

公園にて、俺と女の子はブランコに乗っていた。
女の子は「お礼を言いたいの」と言った。
俺はすかさず「なんで?」と聞き返した。
すると、「私、実は幽霊なんだ」へへ…と眉を八の字にしながら言った。
俺は別に驚かなかった。納得した気持ちでいっぱいだった。だからみんな気づかなかったんだ。門の前に女の子がいること。
「昔話していいかな…それともそんな話聞きたくないかな」
問いかける目で俺に聞いてくる。勿論俺はそんなことないし、女の子の話だったらと喜んで返事を返した。
「私、心臓が弱かったんだ。幼稚園の頃には病院にいて、ママとパパからは学校には行けないってお医者さんから言われたって。でね、私、気づいたときには死んじゃってて学校の門の前にいたんだよね。それできみが見つけてくれて、でも私きみと話せなかったんだ話したかったけど…なんでだろう……。ねえ…私と友だちになってくれる?」
突然の質問に戸惑ったが、俺は迷わず、「友だちになろうぜ!」と公園全体に聞こえる声で言った。
「そっか。私と友だちになってくれるんだね…。とっても嬉しいよ。ありがとう。でもお別れなんだ。ごめんね。私、心があたたかくなっちゃって。見つけてくれたきみに心が…。私、私…」
女の子から光が漏れ出したような気がした。気のせいかと思ったが何度目をこすってもこすっても光の粒が女の子から漏れ出す。
さよならなの?やっとしゃべれたのに?どうして?なんで泣いてるの?会えなくなるの?あれ、目がぼやけてきちゃった。なんでかな。なんでかな…。
ギュッと手を握られた感触がする。女の子だ。女の子がおれの手を握っている。目の前に女の子がいる。さっきまで光の粒だったものがさらに大きな粒になって漏れ出していた。
「ねえ、きっと会えるよね?そうだよね?」
「うん…きっと会えるよ。私、待ってるから…ずっと…」
おれは自分の小指と女の子の小指をからませる。
「ずっとずっと待っててねぜったいだよ」
「うんぜったいに会おうね」
女の子から漏れ出す光が強くなり、女の子は光で包まれていく。
「おれたちは赤い糸でつながっているんだ、それを忘れないでね待っててねぜったいにぜったいだよ!」
光は空へと昇っていき、完全に消えたと思ったとき、女の子の声がした。
「ぜったいに」







6/30/2024, 4:06:23 PM