『誰にも言えない秘密』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
誰にも言えない秘密。なんだろうね。人に言えないことって沢山あるからなんとも。基本秘密主義だからね俺は。言わないでいいならなにも言いたくない。
それでもあえて言うなら小説を書いていることか。といっても典型的なワナビ、それもだめだめなやつなんだけどね。完結させた作品なんてごく短い短編くらいでなにも書いてないも同然。
作品のプロットを考えて設定を書いて力尽きる。プロローグぐらいなら書いたこともあったけど書いてもそのくらいだな。
どうにも飽きっぽいというか書けないんだよな。書くまでが大変というか、やる気が出ないんよ。気づいたらネット見てだらだらしてる。だってそっちの方が楽で楽しいから。
でも書きたいという気持ちはあるんだ。なら書けという話なんだけどいかんせん長年の怠け癖が染み付いてて結局なーんもせずに一日が終わる。
頭の中にある話をアウトプットしたい。それをうまく形にしたい。でもうまくいかないしそもそも始めることすらろくにできやしない。
大事なのは習慣なんだよな。小説を何時に書く。そういう習慣を作ることができれば俺だって小説を書けるはずなんだ。
量をこなせば質だって上がる。書き始めなきゃいけないし書き続けなきゃいけないんだ。早く小説を書く習慣を作らなければ。
お題 『誰にも言えない秘密』
「明日も来るね」なんて言ったけど、これが最後なんだ。
【誰にも言えない秘密】
私には、クラスメイトの誰にも言えない秘密があります。みんなを騙すのは心苦しいですが、神様との約束ですから、しかたありません。私の本来の仕事を休んで中学校へ通わせてもらうかわりに、「誰にも君の正体をバラしちゃいけないよ」と神様からかたく言いつけられているのです。私の正体がバレると、街に大混乱が起きてしまうから、だそうです。
「おはよーコンちゃん!」
神社から学校までの通学路を二本足で歩いていると、私を見つけたお友達が背後から抱きついてくれました。
「コンちゃん、今日も尻尾……ううん、後ろ姿が可愛いね!」
あけみちゃんは学校でいちばん仲良しなお友達です。可愛いものが大好きな、ごくごく普通の人間の女の子です。こんなふうに人間の子とお友達になって、きゃっきゃと会話しながら一緒に登校できるなんて、思ってもみないことでした。ああ、勇気を出して神様にお願いしてよかった! 憧れの学校に通えて、コンはいま、とても満足しています。
教室に入ると、クラスメイトのみんなが温かく迎えてくれます。
「尾崎さん、おはよう。今日もモフ……ううん、なんでもない。湿気が多いから髪が広がりやすくて大変だよね」
「コンちゃん、ちょっと抱きついてもいい?」
「俺も俺も!」
「男子はだめ!」
こんなふうに、みんなが私を囲んでわいわい笑顔になってくれるので、私も嬉しくなります。
そんなとき、後ろの席の神田くんは、もの言いたげな目で私を見つめています。彼はすごく無口な子で、席が近いのにほとんど喋ったことがありません。でも、しょっちゅう目が合います。もしかして、私のことが好きなのでしょうか? クールなイケメン神田くんとの恋の予感……なんて、そんな青春、私にはまだ早いですね! まずは人間の子たちとの暮らしに馴染まないと!
学校では先生たちも優しくて、授業でうっかりミスをしても、「人間はこうなのよ」と、丁寧に教えてくれます。人間生活にまだ慣れていない私には、とても頼もしい存在です。なかでも、担任の飯坂先生は面倒見がよくて、クラスメイトからも大人気。体育の先生でもあるので、体格ががっしりしていて、神様のほっそりした体つきとは正反対です。人間の大人ってこんなに大きくなれるんだなって、驚きの目で見上げちゃいます。先生のジャージ、いまにもはちきれそうです。
「尾崎ー! かけっこは二足だぞ!」
そうでした、いくら四つ足のほうが早いからって、狐みたいに駆けちゃいけません。私はいま、人間なのですから。
飯坂先生の体育が終わると、お昼ご飯の時間。お腹はちょうどよくぺこぺこです。この中学校はシリツだから、憧れの給食ではなく、お弁当です。最初はちょっと残念に思っていましたが、神様が毎朝持たせてくださるお弁当がおいしいので、いまではすっかり楽しみな時間になっています。
「コンちゃん、油揚げあげるー。あたし苦手だからさー」
あけみちゃんが私のお弁当箱に、ひょいと油揚げを入れてくれました。最近、あけみちゃんのお弁当には、油揚げが入っていることが多いのです。ご家族はきっと、あけみちゃんが油揚げ苦手なことを知らないんですね。私は大好物なので、両手を合わせて、ありがたくいただきます。
でも私、油揚げ大好きなこと、まだ誰にも言ってなかった気がします。なのに、どうしてあけみちゃんに知られてるんでしょう。ひょっとして、食べるときの顔でバレちゃったのでしょうか。いけませんね、もっと気を引き締めないと。うっかり正体までバレかねません。
神様、優しいクラスメイトと先生がたに囲まれて、私は毎日幸せです。学校に通わせてくださり、ありがとうございます。この素敵な日々を守るため、卒業まで頑張って正体を隠し通しますね!
※ ※ ※
僕の前の席の尾崎コンは、どう見ても狐っ娘だ。しかし、本人(本狐)は、どうやら人間に化けているつもりらしい。それなら、できれば耳と尻尾はうまく隠してほしい。授業中、ふさふさの尻尾が揺れたり、耳がひょこひょこ動いたりするのが気になってしかたがない。
入学式の日は、彼女を中心にクラスがざわついていた。クラスメイトたちがおそるおそる「尾崎さんて……狐だよね?」と尋ねたとき、彼女は「え、違うよ、人間だよ、ちょっと目つきがきついだけだよ、やだなぁ、あはは」と焦りながらも必死に誤魔化していた。それを見たクラスメイトたちの顔には、ああ、この子は人間のつもりなんだな、という温かな笑みが浮かんだ。以降、正体バレバレなこと本人には内緒にしておこうね、という暗黙の了解が生まれた。中学校初日にして、クラスが一致団結した瞬間だった。
まあ、尾崎コンが神社住まいの神使の狐だからといって、このクラスじゃ、たいしたことではない。コンといちばん仲がいい九堂あけみさんはルーマニア出身の吸血鬼だし、コンの隣の席の二階堂大地くんは悪魔と人間のハーフだ。ついでに言うと学級委員長は魔法少女で、担任の飯坂先生は異世界に召喚されて勇者やってた過去がある。他にも、隠れヒーローやってる子とか、性別偽ってる子とか、異星人とか。このクラスには、秘密を抱えている者たちが多すぎる。
だからこそ、僕もこのクラスを選んだ。コンと僕が紛れ込むには、うってつけだったから。
僕の正体がコンの奉公先の神様で、神様だからクラスメイト全員の秘密をお見通しだなんて、誰にも言えない。もちろん、コンにだって僕の正体は秘密。コンが楽しんでいる学校生活を、ぶち壊したくはないからね。コンの変身がガバガバすぎて初日から正体バレバレなのは誤算だったけど、クラスメイトはみんな、コンへの注目を利用して、自分の正体を上手に隠している。コンという隠れ蓑でクラスがうまくいっているなら、それでいい。僕は神様らしく、後ろでそっと見守ってるよ。だからコン、せめてモフモフの尻尾は隠してくれ。
言っちゃ駄目って決まりはないよ。
ただ、後が面倒だから黙ってるだけで。
だからほら、葉を隠すなら木の枝に、木を隠すなら森の中に、なんて言ってるといつの間にか嘘と秘密まみれのジャングルが生まれたりする。
そしたらもう終わりだよ。
森は隠せないからナパーム弾……ってなるじゃん。
無かったことに、じゃなくて全部無くすんだよ。
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誰にも言えない秘密
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所感:
秘密なんて「ある」と思われた時点で秘密じゃない。
秘密と言うほどの秘密はないかなぁ
しいて言うなら
結婚して十数年、子供何人か産んでるうちに
いつの間に10kgも体重増えてたことかな。
でも痩せてもゴツゴツしないし、太っても腕や脚は太らないせいか、それほど太ったように見えないらしくて。
旦那からも「変わらないねー」って言われるから、変わってないってことにしてます!
[お題:誰にも言えない秘密]
[タイトル:鏡の中では]
高校一年生になった津々楽都にとって、最も忌むべきものは鏡だ。
母に選んで貰った洗顔クリームを使い、都は顔を白色で満たした。しっかりと肌に馴染ませつつ、必要な皮脂までこぞって落としてしまわないよう、素早く落とす。
そして化粧水、乳液、クリームと一通りを終えるとパッと顔を上げる。
洗面所の鏡に映る都の顔は、相変わらず普通の顔だ。
平凡な女子高生の顔。二重で、童顔で、少し膨れていて、思春期ニキビにはそれなりに抗えている。そんな普通な顔を、都は睨みつける。
気に入らない。
そんな思いの丈を目力に変えて繰り出すと、鏡の中の自分も同じ顔をする。鏡の中の顔が崩れると、都は少し気が晴れた。
少し断っておくと、これは都が自分の顔を嫌っているという事ではない。そんな風に思うのは自分の母に対してあまりにも失礼で、その実、都は母を尊敬していた。
だからこそ、順調に成長を続ける自分の顔が気に入らなかった。都には自分の顔が時限爆弾にしか思えない。
鏡に映る都が問う。果たしてお前の顔は、一体どちらの母親に似るのだろう?
津々楽奏恵と津々楽美珠がパートナーシップ宣誓を行なったのは、都が産まれる三年前だ。それを聞いたのは都が小学生の頃、自分の名前の由来を調べる宿題を出された時だ。
「『都』は人で溢れているから、色んな人といっぱい関わって欲しい、って意味があるのよ」
そう言ったのは奏恵の方の母だ。美珠もうんうんと強く頷いている。
当時の都は、深く考えずにこれを聞いていた。同性パートナーの両親の口から出る『色んな人』が、その実どんな意味合いを持っているかなんて、小学五年生に分かるはずも無かった。
「まぁ、ぶっちゃけると都が元気なら何でもいいんだけどね」
美珠のその言葉に、奏恵は「それじゃ宿題にならないでしょ」と返す。けれどその顔は優しさに溢れていて、決して美珠の言葉を否定するものじゃない。
「他にどんな名前がありましたか?」
都は担任が示した質問リストに従って尋ねた。
「他? 他ねぇ・・・・・・」
「あ、ほらあれは? ミエとか」
「ミエ?」
ミエについて、美珠は適当な紙にスラスラとその漢字を書いた。
「『美恵』って、お母さんたちの名前?」
「そう。二人から一文字ずつ取って、美恵。都が産まれる前はこうしようって言ってなかったっけ」
曖昧に尋ねる美珠に対して、奏恵はきちんとその時のことを覚えているようだ。
「その名前考えてたのもっと前だったと思うけど・・・・・・確か、パート──じゃなくて結婚した時に、子供できたら一文字ずつ取ろうみたいな話してて・・・・・・」
「あー、そうだっけ」
盛り上がる二人に対して、都は何故か寂しさを覚えた。何か質問して混ざらなきゃ、という気持ちが沸々と湧き上がる。
「えと、結婚っていつしたの?」
「・・・・・・そうねぇ、都が産まれる三年前かな」
実のところ、厳密には結婚ではないのだが、それを都が知るのはもう少し後になっての事だ。
「それじゃあ・・・・・・」
「うん?」
言葉を詰まらせる都に、奏恵が心配そうに顔を見る。
「・・・・・・いや、やっぱり何でもない」
「そう? 宿題はこんな感じでいいの?」
「うん。大丈夫」
その実、都には他に気になることがあった。それは最近、友人の神志名鈴音に言われて気になり出した事だ。
「都ちゃんのお母さんってどっちなんだろうね?」
「どういう事?」
放課後、小学校からの帰り道で鈴音の質問に都は困惑してしまう。都は周りに自分の両親がどちらも母親である事は隠していない。友人たちも特段気にするような素振りを見せなかったので、都がその手の話題で気に病んだ事は無かった。
だから、この時はまだ鈴音の質問の意図は全く分からなかった。
「いやさ、ほら、保健の授業で習ったじゃん。子供って男女から出来るんだって、都ちゃんはどうなんだろうって」
「え、あー。確かに、どうなんだろう」
この時になって、都はようやく理解した。今までは父親が居なくても特段気にすることは無かったが、それは父親が全く存在していないという話ではない。自分が存在しているという事が、父親がいる証拠だった。
だとしたら、ようやく鈴音の疑問に立ち返る。
都を産んだのは、一体どちらなのだろうか、と。
そんな疑問を抱えながら、都は中学生になった。この時になると、都は父親については寧ろどうでもよくなってきていた。
何かあったから、というわけではない。寧ろ何もなさすぎて、興味を無くしていた。鈴音もあれ以降父親について言及する事は無かった。中学生にもなると、それがどれほどセンシティブな話題であるかに気付き始めたのだ。
けれど、いくら話題を避けていても、当人である都が逃げ切れるわけが無い。友人たちが美容やファッションについての話をするので、当然、都もそれを知りたがった。必然的に鏡の前に立つことが増えて、それは自分の顔をより意識させた。
小学生の頃からずっと成長した自分の顔。まだまだ大人らしくはないその顔に、しかし確実に大人に近づいているという感覚があった。
母親に近づいている。どちらかの母親に。
「私って母親似らしいんだけど、都はどう思う?」
鈴音のそんな言葉を思い出す。彼女の母親の写真を見せられて、そう尋ねられたのだ。確かに鈴音と彼女の母は似ていた。
鈴音にとっては何気ないその質問が、都の心に波風を立てた。
どちらの母も間違いなく都を愛している。都もまた、母親の事が好きだった。だからこそ、どちらが産んだのかを言わない言わない母親たちに不信感を募らせた。
母親たちにとっては、どうでもいい事なのかも知れない。都は間違いなく二人の娘で、どちらが産んだのかは重要じゃない。養子縁組や再婚などで、血の繋がっていない親子なんてごまんといる。
そして間違いなく、都の遺伝子は片方からしか貰っていない。血の繋がりをどうでもいいと切り捨てるには、都はまだまだ年月が足りない。特に身体の成長と性を意識する度、どうしても頭に母親たちの顔が浮かんだ。
ある日、都は意を決して二人に尋ねた。
「私はどっちの子供なの?」
反抗期というのもあったのかも知れない。それがどれだけ残酷な質問か、その瞬間まで全く気づいていなかった。
奏恵はそれを聞くと、途端に泣き崩れてしまった。ごめんなさいと繰り返す奏恵に呆気に取られていると、美珠が都を優しく抱きしめた。
美珠がどんな顔をしているのかは分からない。ただそうされていると、何故か自分も涙が出てきそうになった。
「どちらが産んだのかなんてどうでもいいでしょ?」
そう言った美珠に、都は言葉も返せず頷いた。
ようやく都は気づいた。どちらが産んだのかなんてどうでもいい、というのは母親たちの願望だった。努めてそうでなくてはならないのだ。二人の娘であるというのなら、遺伝子に拘ってはいけない。たとえ心の端で気にしていても、口に出してはいけない。都が二人の娘だというのなら、絶対に。
それ以降、都はその話題を口に出さなくなった。都は奏恵と美珠の娘である、という事だけが重要だと自分に言い聞かせたのだ。それは大変な事では無かった。どちらなのかを知っている母親たちに比べると、全くと言っていいほど大変じゃない。
けれど遺伝子は残酷に真実を告げる。大人になる程どちらかに近づく。鏡の中の都が、誰も言わない秘密を暴こうともがいている。鏡の中の自分は二人の娘ではなく、どちらかの娘だった。
都は高校生になった。より大人になったが、どちらに近いかは意識しなければ分からない。自分が童顔である事に都は感謝した。
「行ってきます」
都は二人の母に告げる。母二人も同じように返した。
それを聞くと、都は玄関の扉を開ける。二人の顔は見ないまま、都は学校に向かう。
朝には母の顔を見ないのが通例になっていた。鏡を見た直後だと、どうしても意識してしまうからだ。
通学途中、道の端に猫を見つけた。特徴的な白と茶の真鱈模様の猫だ。その後ろには子猫がいる。白地に上から黒のソースを垂らしたような模様。
都が近づくと、二匹は一目散に逃げ出した。二匹で知らない家の塀の中へと入っていく。
都はそれに満足して、改めて学校に向かった。
夏休み明け、街は少し異様な雰囲気を帯びていた。
「ご協力お願いします!」
駅前で40代くらいの女性と50代くらいの男性が必死にチラシを配っていた。
「お願いします。幼なじみなんです」
横からチラシを差し出す自分と同い年ぐらいの女の子が立っていた。少しやつれ、目の下にくまが浮かび上がっていた。
私は受け取ると軽く会釈し商店街へ向けて歩いていく。
「ミチ!」
後ろから肩を叩かれ向くとそこには同じクラスの陽子が立っていた。
「さっき駅前のチラシもらってたでしょ?まだ必死に探してるんだね」
「そうみたい。幼なじみだって言ってた。あの子少し痩せていたね……」
「そうなんだー」
8月──1人の男子大学生が行方不明になった。
名前は山中ユウキ。友人と山に出かけたあと行方不明になったらしい。
その後警察が捜査していたけど、何故かすぐに打ち切られ家族だけが今も探している。
「でもどこに行っちゃったんだろうね?」
「え、なにが?」
「だーかーら、行方不明の人!」
あぁとつぶやき少し考える。
「さぁ、わからない」
「だよねー。そういえば、また小学校のニワトリがいなくなったんだって!」
返答に興味がなくなった陽子は別の話をしはじめ、別れるまで行方不明の話は出なかった。
『あなたに秘密はありますか?』
ふとショーケースの中にあるテレビから聞こえてきた。
ぼーっとそのテレビを見ていた。へそくりがある人、奥さんに内緒でキャバクラに行った人、借金がある人などいろんな秘密が出てきていた。
私の秘密。確かにそれは人には言えないことだ。
家の近くにあるコンビニへよりお茶とカルボナーラを買って家路についた。
カリ、カリっと部屋の奥から引っ掻き音が聴こえる。
カルボナーラを温めつつ、ラジオを流す。懐かしい曲が流れていた。
私の好きな人がよく聞いていた曲だ。恋愛曲を歌うバンドだ。
私は苦手だったけど、彼が聴くのならと思いを私も聴いた。
チン!とカルボナーラが温まり、席について手を合わせた。
「あ、ご飯忘れてた」
もう一度立ち上がり、シンク下に入っているクーラーボックスの中から死んだニワトリを取り出す。
部屋の奥に進み、リビングの横にある扉の前にくる。中から「ううううう」と獣のような唸りが聞こえる。
「あー、ちょっと臭うな……。まーいっか」
ドアを開けると部屋の奥隅に人影が見える。
この人は私の愛しい人。
「ユウキさん、ご飯持ってきたよ」
そう声をかけるとドタドタと這いつくばってニワトリに貪りつく。
バキバキと音を立てて骨を砕き、滴る血を啜る。
「いつか、私もそんなふうに食べてしまうのかな?」
なんて言葉をかけてもユウキはこちらを見ることなくニワトリを食べ続けていた。
この人はもう人間ではない。
あの日山に私も行っていた。ストーカーと言うやつだ。わかっている。
ユウキとユウキの男の友人と女の子二人で山に登っていた。
山頂まで登り終えると無事下山していた。ここまでは良かった。
友人たちが悪ふざけでユウキを置き去りに車を走らせて行ってしまった。
文句をユウキはどこかに電話をしまた山の方へ向かっていった。その後を追った私だが彼を途中で見失ってしまった。
仕方なく下山した私は彼の友人たちが戻っていることに気づいた。彼らは私を見るとユウキを知らないかと写真を見せて聞いてきた。
多分彼だと思うといい上を指す。
彼らはすぐに山の入り口へ戻っていた。
最終的に彼を見つけたのは私だった。
早朝もう一度彼を見失った場所から探していった。
上に行ったり崖の下を覗いたり探していった。山頂近かく雑木林の中に彼は横たわっていた。
見るからに彼は亡くなっていた。私は怖くなりその場から逃げてしまった。
彼が亡くなったこと、そして事故ではないことがわかった。
首元には締められたような跡があったからだ。ホテルに戻った私は逃げてしまったことを後悔しもう一度深夜に彼のもとに行ってみることにした。
そこにはもう誰もいなかった。ただ鼻をつく悪臭が漂っていた。臭いを頼りに辿っていく。
ガサガサと物音がした。そこにいたのは死んだはずのユウキだった。
鹿の首に噛みつきジュルジュルと血を啜っていた。
私は何が起きたのかわからずその場にへたり込んでしまった。
その後はよく覚えていない。気がついたら彼を家に連れ帰っていた。
食われるかもしれないリスクを負いながらも私は彼を見捨てることができなかった。
「ずっとは無理でも入れるまで一緒にいてね」
人間性のない彼に言っても届かないのはわかってる。言わずにはいられないのが恋と言うものだろうか。
「蜉ゥ縺代※縲∬ィア縺輔↑縺??√≠縺?▽」
食事を終えたユウキは時折喋ることがある。だが言語として成り立っておらず、私には理解できない。
それでも私は一緒にいる。私の秘密はゾンビになった好きな人と暮らしてること。
その人は誰かに殺されたこと。行方不明の男子大学生であること。
誰にも言えない秘密だ。
そして私は彼をこんな目にした人を許さない。
私は彼の頭をひと撫でし、部屋をあとにする。
【宵闇ララバイ】
「誰にも言えない秘密」
それは、
「閻魔さまが知っていればいいこと」なので、
ここには書きません(笑)
けど……実は私…………
―――――
「狭い部屋」
その小さな部屋に入り、ドアを閉めると、
周囲の音が遠くなる。
賑やかな蝉の声も聞こえないちょっとした異世界
さあ、楽聖たちが遺した書を読み解きながら、どこまでも広がる音の世界へ旅に出よう。
え?秘密?ないないそんなん!
あたしはそんなんすぐバレちゃう人間だからさ、隠そうと思ったって無駄だってわかってるじゃん?
ね、意味ないんだって。
だからぁ、この話はおしまい!ね!
これが彼女との最期の会話だった。
秘密はない、と言っていた彼女は、病気で呆気なく亡くなってしまった。
優しさからの嘘だとはわかっているが、嘘を信じてしまった己の未熟さがもどかしい。
人は皆、誰にも言えない秘密を抱えている。
「誰にも言えない秘密」
日本海の荒波が育てた逞しい広背筋から生まれた力が拳へと伝わり彼女のボディに突き刺さった。
土台無理だったんじゃ、穏やかな湖で生まれた淡水人魚の彼女にいくらボクシングを叩き込んでも海水人魚に勝てるわけねぇわ。
満身創痍の彼女をそっと湖に戻す…斜めに泳いどる…もうダメかもしれん。
「じゃあの」
わしはそう呟いて広島へ帰った。
他の誰かに言えない想いを抱えた私達は
同士で戦友のようだった。
君の目に映るのは私の大嫌いなアイツで。
私の目に映るのは君の大嫌いなあの子で。
別にお互いの想いを吐露しあったことなんてない
『目は口ほどに物を言う』ていう言葉があるように
それは本当だと君を見て思う。
多分、君の目にも私はそう映っていたかも知れない。
目の前で繰り広げられる
目にしたくもない恋愛模様に辟易していた。
目を逸らすようにそっぽを向いて
空を見つめ小さく息を吐いてきた、何度も。何度も。
きっと君も同じだったと思う。
時々、その肩が寂しそうだったことを覚えてる。
今までずっと手放すことが出来なかった想いも
今日をもって空に還すよ。
すべてがキラキラ輝いていた。
あの子と過ごす時間が。
辛くて苦しくっても。
幸せだった。
あの子を幸せにするのは私の大っ嫌いなアイツしかいないって嫌でも知ってるから。
君も辛くて苦しかった?
でもきっと幸せだったときもあるでしょ?
ちらりと見えたアイツから受け取ったブートニア。
アイツからの感謝の気持ちだったかも知れない。次はお前な、的なものだったかも知れないけれど、同士のような私から見れば、最後の引導を渡されたようなものだ。
きっと、私の受け取ったブーケと君の受け取ったブートニアの行き先はきっといっしょ。
でも吹っ切れたように見えたのか気のせいかな。
ありがとう。
同士と思える君がいたから、私はあの娘の知る私でいられたよ。
ありがとう。
私のあの子への想いに気づかぬふりをしてくれて。
いつかのあの日のよう空を見つめて息を吐く。
誰にも言えない秘密(想い)に、さようなら。
2023.6.6/誰にも言えない秘密
少年は誰にも言えない秘密を抱えてる。
少年は自分が捕まると思ってる。
決してわざとではない。
ただ、たまたま他の人のテストが見えてしまった。
少年はカンニングしてしまった。
けど正直者の彼は見えた答えを書いていない。
それなのに罪悪感が消えない。
純粋で弱い心の少年は悩んでいた。
誰にも言えない秘密。
ちょっとだけ、教えてあげる。
とか。
誰にも言ってないから、言わないで。
とか。
とても魅力的に聞こえてしまうもの。
隠されると、みたくなる。
秘密にされると、聞きたくなる。
で、誰かに教えたくなる。
いつの間にか、知ってる人が増えていく。
誰にも言わないから、秘密です。
誰にも言えないで、構いません。
(言っても良いこと、嫌なこと自分で決めればいいものです。)
(ただ、助けてって想いは、言葉にできたらいい…。)
私には秘密がある。
私の秘密は、死ぬことだ。常日頃から死にたいと考えている。これは、誰にも言えない私だけの秘密だ。
僕には秘密がある。
僕の秘密は、とっても可愛い彼女がいることだ。
彼女は、誰が見ても可愛い。そんな彼女が僕の恋人ってことは秘密だ。
私には秘密がある。
私の寿命はあと半年だ。私には彼氏がいる。でも、彼氏にはまだ、この寿命のことを言えないでいる。
教えて、嫌われたら嫌だからだ。この秘密は内緒だ。
誰にだって言えない秘密は一つや二つあるだろう。秘密があって別に悪いことではない。
でも、悪いことや、悩みは、秘密にしないで誰かに相談しよ。
相談することは、とても勇気がいる。でも、相談をして少しでも気が楽になるな。相談しよ。
人によって秘密は様々だ。そんな、誰かの秘密を私だけが、僕だけが知れたってなると、うれしいよね。
秘密は誰にでもあるもの。
そこの見ている君にもあるはずだよ。
《秘密》 恋
『誰にも言えない秘密』
だから、これは僕が墓場まで持っていく
僕が言わなきゃいいんだから
君は何も心配しなくていい
今度は僕が約束を守る番だ
その手は赤く染まっていた
誰にも言えない秘密
誰にもいえないならここにも書けない
秘密は一生秘密、墓場まで持ってくよ
人はみんなたくさんの秘密を持っている
どんなに仲のいい友達でも、相手が家族であっても
秘密を言い合える仲間であっても。
どんな人だって他人に言ったことのない秘密を持っている。
だからって、問い詰めて聞き出すのではなく
秘密があるのは当たり前と受け入れることが大事だと思う。
いつか、その秘密を相手が打ち明けてくれた時
自分がどれだけ信頼されているかわかるだろう。
「これは、二人だけの秘密だよ」
そう言って彼と約束を交わした。互いの小指を絡めると、彼は嬉しそうに、けれど、どこか鋭い眼差しを湛えて微笑んだ。そしてその数ヶ月後、白い病室の白いベッドの上で、あっけなく彼は逝ってしまった。
私と彼の二人だけの秘め事を、私のこの胸に刻み込むようにして残したまま。
まったく、何てことをしてくれたのだ。
きっと彼は約束を交わした二人だけの秘密を、私が彼に許可もなく誰かに打ち明けるなんて、できないことをわかっていたのだろう。
こうして私は彼を過去の思い出として、誰かに話せなくなってしまった。
こんなことになるなら、秘密なんて簡単に持たなければよかった。
私の頰を熱い雫が伝う。だって私は彼のことを、忘れたままで生きられなくなってしまったのだから。
【誰にも言えない秘密】
誰にも言えない秘密はいつしか箱のなかに入っていた。自分でも忘れてしまっていた埃の被った秘密を持ち上げて埃を払う。貴女が居たはずの狭い狭い部屋に持っていってもなんだか寂しく感じる昔は秘密を見るだけで胸が高鳴っていたのに。この秘密を抱き締めて今日も眠る。
『誰にも言えない秘密』
私にも、一つだけ出来てしまった。あまり人には漏らしたくない秘密が。でもちょっとだけ抱えきれなくなってきたからここに吐き出させてもらおう。
私には、最近職場で本格的に苦手になった先輩がいる。
入社3ヶ月目くらいからずっとやんわりとこの人苦手かもしれないな位には思っていたが、ここ最近で本格的に苦手になってしまったのだ。
ポジションが前後になろうものなら、その瞬間に胃にズーンと重いものが伸し掛るような感覚がして、心に大きな石が詰まったような心地になる。
何も言われないようにちゃんとしなきゃという思いに囚われて、自分なりの理想のキャスト像を演じることが出来なくなるのだ。
口調が突き放すみたいに冷たいのだ。何か私に注意する時の口調なんてきついの一言に尽きる。多分、相手も私のこと使えないやつだとか仕事が出来ない奴だとかなんだとか思って嫌っているのだろうと察せられるような口調だ。
それだけならまだしも、私との物の受け渡し方も雑だ。昨日なんて、「遺失物でーす」の一言だけで殆ど押し付けるようにして渡してきたのだ。他の人にもそうなのかと問いたくなったが、多分私だからだろう。お願いしますの一言も言えんのかと思ったが、言えない人なんだろう。正直少し先輩のことは人として見下げ果てている。
あまりマイナスな発言はしたくないので誰にも言っていないが、その先輩には早々に退職して貰えるように毎日星に願っているので、どうか早めに退職していただきたい。