「これは、二人だけの秘密だよ」
そう言って彼と約束を交わした。互いの小指を絡めると、彼は嬉しそうに、けれど、どこか鋭い眼差しを湛えて微笑んだ。そしてその数ヶ月後、白い病室の白いベッドの上で、あっけなく彼は逝ってしまった。
私と彼の二人だけの秘め事を、私のこの胸に刻み込むようにして残したまま。
まったく、何てことをしてくれたのだ。
きっと彼は約束を交わした二人だけの秘密を、私が彼に許可もなく誰かに打ち明けるなんて、できないことをわかっていたのだろう。
こうして私は彼を過去の思い出として、誰かに話せなくなってしまった。
こんなことになるなら、秘密なんて簡単に持たなければよかった。
私の頰を熱い雫が伝う。だって私は彼のことを、忘れたままで生きられなくなってしまったのだから。
【誰にも言えない秘密】
6/6/2023, 1:52:11 AM