『私の名前』
私に名前をつけてください。
これが私が貴方からもらう一番最初の形ある愛情です。
だから、どうか。
適当になんてことはやめてくださいね。
愛されていたことを。
生まれてからいつまでも。
噛みしめていたいので。
『未来』
眼前に伸びる果てしなく続く道のりが、あまりにも遠すぎて座り込んでしまった。
もう歩けない。もう立てない。
進む目的もよく分からないのに、歩き続ける意味なんてあるんだろうか。
もう休みたい。蹲ってしまいたい。
どのくらいそのままぼうっとしていただろうか。
いつの間にか涙が頬を伝っている。
視界の先が滲んでも、道は変わらずそこにある。
道の果てが見えなくて、何度も打ちのめされるばかりだけれど。
決してこの道は僕の前からは消えない。
僕が歩き続ける限り、僕を見放さない唯一のもの。
僕は再び立ち上がり、歩き出していた。
『世界の終わりに君と』
世界の終わりに君と見た景色を
僕は覚えていられるかな
世界の終わりに君と居たことを
僕は覚えていたいのだけれど
『天国と地獄』
バイバイ、さよなら。
いってらっしゃいな。
気が向いたらまたおいで。
天国にもなれば地獄にもなる。
ここはそういうとこだから。
もう来たくなければ、来なくてもいいけれど。
もしも懲りずにまた、ここを訪れたいと思うなら。
その時は再び歓迎するよ。
『人生』という名の元で。
貴方が生まれ変わるのを待ってるね。
『恋物語』
「やはり恋なんてくだらないな。この世でいちばん馬鹿げた物語だ」
あなたに一冊の本を薦めた。
私のお気に入りの恋物語。
リアリストのあなたには、少々非現実に甘過ぎてお気に召さなかったみたいだけれど。
「早いですね。もう読み終わったんですか?」
「君が僕に薦めてくれた本を、いちばんに読むのは当然だろ」
そう言って彼は私に本を返却する。
「僕は君と同じ景色を見たくて、こうして一緒にいるんだから」
甘過ぎてくだらない恋物語も、君とだから読めるんだよ。
嬉しいことを言ってくれた彼に思わず顔が綻ぶ。
次はどんな恋物語を、彼と読もうかしら。