『街へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
. 街へ
歩道橋の上、白い息が生きていることを知らせてくれている。
「こんな寒い日に、お前なんて格好してんだ?」
ゴミが散乱する部屋、コンビニ裏のゴミ箱、無人販売所、スーパーのバックヤード、そんな、そんな世界しか知らなかったの。
初めて乗った大きな車は、冷たい空気を纏いながら大きな街へ走り出す
あの日、丸まった私に声をかけた貴方が、手を引いてくれた貴方が、私の世界を広げてくれたの。
【街へ】
明日は街へ行きましょう。
静かなところがよいでしょう。
貴方はうるさい場所が苦手でしたから。
花壇のある道を歩きましょう。
貴方はお花が好きでしたから。
気に入りそうな喫茶店を調べておきましょう。
貴方はお洒落なお店が大層お好きでしたね。
行きつく先は決めなくても大丈夫でしょう。
いつだって私たちはそうだった。
「だから、明日もきっと良い日になるでしょう。」
貴方がいた日をなぞれば、きっと。
街へ
遠いところへ行こう。
誰も自分を知らない遠いところへ。
過去のことなんか全部忘れて、新しい自分へと生まれ変わるんだ。そうしたら、きっと今よりももっと素敵な自分になれてて、隣にはもっと素敵な人もいてくれてるはずだから。
家は大きくなくてもいいから、居心地が良くて、景色がいいところにしよう。朝になったらカーテンを開けて、大きい伸びをするんだ。庭には畑を作って絵本に出てくるような大きなカブとカボチャを育てよう。豪華じゃなくてもいいから、毎日おいしくて、お腹いっぱいになれるご飯を。もちろん、人生のお供に動物も飼おう。犬がいいな。麦畑みたいな毛並みをしたゴールデンレトリバーがいいな。毎日その相棒と草原を走り回るんだ。
新鮮な空気を肺いっぱいに吸って、青空に向かって懐かしい歌を歌う。アコギなんかも弾いちゃったりして。
夜は星空を眺めながら、羊を数える。1匹…2匹…。
それで、なんの悪夢を見ることもなく、朝日を怯えるなんてこともない日常が、送れるはずだから。
それができたら、どんなに幸せなんだろうと、埃を被ったカーテンを見て、そう思った。
街へ
私が小さい頃
街へ里へ下りるというときは
怖くて仕方ありませんでした
山に暮らしてる獣の子が来たぞー!
そうやって子供達に罵られ避けられ
里に暮らしている親戚も気まずい環境に
うちには近寄らないでほしいと釘を刺す始末
日常の買い物だけしてそのまま山に戻り
また静かな生活が始まる
そんなあるとき
街へ引っ越すということに
あの街に行くのか
怖くて怖くて泣いたことだけは鮮明に覚えています
そのときに祖母が言いました
あの街には行かない
他の街に行くから大丈夫
そして今いる街へと引っ越してきました
あの街と違い誰も白い目で見ることなく
獣の子と呼ばれることもありません
結局小中高といじめられることにはなりましたが
それでもあの場所にいるよりは生きていられます
街へ行くことの恐怖を思い出しては
今の平穏な日々を噛み締められるありがたさ
あの街は今どうなっているのか
何十年経ってもそんなことは一切思わないほど
忘れたい街です
このお話は1/24から投稿している連続小説『過ぎ去った未来』の第五話です。
※この物語はフィクションです。登場する人物および団体は、実在のものとは一切関係ありません。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
掌編小説『過ぎ去った未来』第五話
その日、二十歳の坂部真一は、大学の授業をサボって部屋でひとり何もしない時間を過ごしていた。
空虚で無駄な時間の使い方だと分かってはいたが、特別やりたいこともない。であれば、重い腰を上げて簡単なバイトでもして小銭を稼ごうかと思い立ってみるが、結局面倒な気持ちに押し負けて、散らかった部屋の中でゴロゴロしているうちに日が暮れる。
これまでだって何度かバイトというものをしたことがあったが、どれも長続きはせず、数日顔を出したほどでバックレるように辞める日々が続いていた。
このまま何もせず、ただぼうっとして、気づいたら大人になってそれなりにいい暮らしをしていないだろうか。
坂部が虚空を眺めながらそんな妄想に浸っていると、まるでブラウン管テレビのスイッチが切れるときのように、突然視界が真っ暗になった。
❖
次の瞬間、坂部はネオンの光る夜の繁華街に一人立っていた。
それまでの部屋着はどこへやら。サイズの合わない縒れたスーツに身を包み、視界の下で膨れた腹がワイシャツのボタンを押し出している。全く理解ができなかった。
何か手がかりを探してズボンのポケットを弄ると、アルミケースのなかに『坂部真一』と書かれた名刺を見つけた。聞いたことのない会社名と営業部長という肩書きが、自分の名前の上に乗っかっている。いつの間にかとても長い時間が経過していることをうっすらと察知した。
それを決定づけたのは、ズボンの後ろポケットに入っていたプラスチックの板にガラスが付いたようなカメラだった。
ピロンと不思議な音がして、手元のガラス面がぼんやりと光を宿す。坂部は思わず手を滑らせ、奇妙な板はアスファルトのうえで小さく跳ねた。
坂部は恐る恐る板を拾い上げ、光の出処を覗き込む。そこには封筒を模したイラストの横に、『【重要】明日の会議について』という短い文章が記されている。自然と指が文字をなぞり、画面がするると動き始める。
何がどうなっているのか、坂部には全く理解ができなかったが、何かの雑誌で特集されていた『未来の技術』の記事を思い出した。未来では一人がひとつ、電話とパソコンを一緒にしたようなものを持っていて、世界中のすべてのことをその機械の中で見ることができるようになるのだと。
どうやら本当に時間を超えて、未来に来てしまったらしい。坂部は恐怖と不安を感じながらも、その奥から沸き上がる喜びに笑みを漏らした。
自分がどこに住んでいるのかは分からなかったが、帰巣本能と言うやつなのか、朝日が昇るまでには何とか家にたどり着くことができた。同じような家が立ち並ぶ住宅展示場のような街の中で、これが自分の家だという妙な確信があった。
玄関には鍵がかかっていたが、ポケットの中に入っていた鍵ですんなりと開き、中に入るとなぜか二階の廊下の先に自分の部屋があることが分かった。
その日は布団に倒れ込むように眠り込んでしまった。いつもより柔らかい布団に体を包まれながら、雑誌やドラマなどで見かけて憧れていた理想の家庭像のなかに自分がいるような心地がした。
翌朝、けたたましいメロディと、あなた、という女性の声で目を覚ます。
「昨日は随分と遅くまで飲んでたのね」
目を開けると、そこにはジーンズに身丈より少し大きめに見えるTシャツを来た女性が立っていた。口調は割と穏やかだが、どこかこちらを心配しているような雰囲気が漂った。
「今日は仕事行かなくていいの?」
女性は、坂部が昨晩ベッドに放り投げたままにしていた未来の電話を指差しながら告げる。電話は震えながら、けたたましい音を鳴らしている。画面に表示された『社長』の文字に嫌な予感がする。
坂部が画面に描かれた受話器のマークに触れた途端、画面の向こうから男性の声が響いた。
『大丈夫か、君らしくもない』
少し想像すれば、それが遅刻への戒めであるとすぐに分かった。坂部は心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、どう応えてよいやら分からず、とりあえず謝罪を口にした。
「あっ、すいません、ちょっと寝坊しちゃって……」
『どうした、何があった。ひとまずすぐに来てくれ』
矢継ぎ早に飛び出す言葉に追いつけないまま、ちょうど昨晩から着ていたスーツで、そのまま会社へ向かった。
名刺に書かれた住所の地名からなんとなく位置は分かるものの、駅の仕組みや電車の乗り継ぎもよく分からず、坂部は見たこともないような高いビルの並ぶ都会の真ん中でひとり途方に暮れた。
電話が震える。発信元は再び社長からだった。
『何をしてるんだ、まさかまだ家にいるのか?』
「いや、なんていうか、その……道に迷っちゃって」
口から出る言葉には迷いしかないが、そんな不安を電話の声がますます煽る。
『ふざけてるのか、もういい。話は明日だ』
――ああ、面倒くさい。
心の中で思ったはずの言葉は自然と声に漏れていたようだ。
『今、なんと?』
社長の声には動揺すら見えた。坂部は深い溜息をついた。仕方ないだろう、突然こんなところに飛ばされ、北も南も判別のつかないないところで、何をどうしてよいやら分からないんだ。
こいつを持っていたらどこまでも追いかけられる。坂部は怖くなって手元の電話をその場に放り投げて逃げた。
辺りの景色は何一つ見覚えがなかったが、とりあえず目の前の道をひたすら走った。脂肪の乗った体は想像以上に重たかった。腕や足を上げようにも、まるで水の入ったポリタンクを持ち上げるような重労働に感じた。
立ち止まった途端に汗が拭き出してくる。ふと見慣れた牛丼チェーンの名前が目に入り、腹が鳴った。
考えたら朝から何も食べてない。
空腹に耐えられず、店に入る。何やら見慣れない薄っぺらいテレビのようなものに牛丼の画像が映っていて、画面が言うとおりに触っていたら店員が牛丼を持ってきた。
牛丼の大盛りに、サラダとみそ汁のセットをつけて、唐揚げもひとつ追加した。はて、大盛りとはこんな量だったか、もっとこんもり肉が盛られていた気もするが、と思いながら、いつものように腹にかき込んでいく。
しかし、半分ほど食べたところで胃が苦しくなってくる。腹はこんなにもデカいのに、どうしてこんなにも入らないものか。そんな愚痴と一緒に無理やり胃に詰め込んでいく。
会計の仕方も坂部が知っている方法とは違っていたが、店員が笑顔で教えてくれて何とかなった。それならあんたが最初からやってくれとも思ったが、口には出さなかった。
それよりも、あの量で千円札一枚では足りないことに驚いた。この世界は何かがおかしい。
――さて、これからどうしたものか。
坂部はどこを目指すでもなく、ただぶらぶらと街を歩いた。歩きながら、SF雑誌に描かれていた『未来予想図』のイラストの方が遥かに未来的だ、と感じた。空飛ぶ車もなければ、ロボットも歩いていない。建物は相変わらずコンクリートで、人間は相変わらず人間の見た目をしている。
パチンコ屋の壁を流れる文字と煌びやかな電飾に、坂部は思わず足を止めた。
自動ドアが開いた瞬間、激しい音楽と銀玉がジャラジャラ流れる音が混ざり合いながら耳を劈く。坂部にはそれが心地よかった。欲望を刺激する音であった。
操られるようにして台の前に腰掛け、萬札を差し込む。途端に高精細なアニメが狂ったように踊り、台が激しく震動する。
何が『当たり』かも判別できない。だが、網膜を焼く連続的な閃光を浴びるたび、五十歳の理性は二十歳の欲望に塗りつぶされていく。気づけば萬札は電子の海へ溶け、自堕落な本能だけが膨らんでいく。当たるはずのない下手な鉄砲玉は、虚しく穴の中へと消えていった。
それはまるで、この先、坂部の身に待ち受ける人生の厳しさを象徴しているようだった。失われた三十年が想像以上の重さを持ってのしかかることになろうとは、この時の坂部はまだ知る由もない。
『過ぎ去った未来』第六話に続く
遠くなくていい。
歩いていける
コンビニでいい。
いいから!
とにかく
外に出たい!
歩きたい!
タクシーで
街を見る
じゃなくて
あそこで
自由に
歩き回りたい。
お店で
商品を見て
自分で選んで
買い物をしたい。
早く
街に
出かけたい!
#街へ
夜、ふと街へ出て、散歩をする。
特に何もある訳ではないが、少しだけ特別な感じがする。
きらめく街灯、静かに寝静まった建物、点滅する信号。
見慣れているはずのものも、なんだかひどく新鮮に感じる。
今日はママとお買い物
今日はママと街へお買い物
電車に乗って街へ行く
その予定だったのに
お兄ちゃんが熱出して
中止になったお買い物
私は部屋の隅で体育座りしてむくれてた
そんな私にママがギュッとしてくれて
私は一気に上機嫌
街へのお買い物は来週ね
街へ
バスの窓から 揺れる世界
見慣れた坂を 下りきれば
名前も知らない 物語
待っている気がして 街へ向かう
空ばかり見ていると
透き通ってきちゃうよ
時には街の
雑踏を聞こう
………街へ
街へ
今は街じゃなく
田舎がいい
人があまり居ないところ
人が疲れる
人となるべく関わりたく無い
私はわがままなのかもしれない
合わない人とは関わりたく無い
関わりたく無いだけ
けど向こうが来る
私はそれをどう回避したらいいかわからない
だから私は街じゃなく
田舎へ行きたい
街へ。
街へ行きたい。
でも風が
強くて
大変。
幼少期のノスタルジックな思い出
特別な日 家族で街にお出かけ
デパート屋上にはアドバルーン
お目当ては 屋上の遊園地
デパートのエレベーターには
ステキな制服のエレベーターガール
エレベーターの浮遊感の中
こんなお姉さんになりたいと
憧れの眼差しで屋上階へ向かう
屋上遊園地には数種類の遊具
2人乗りの回転飛行機に乗る
回転中に 少し傾いた機体が
ビルから はみ出てビビる
お昼は デパート最上階の
ファミリーレストラン
特別な日だけのハンバーグセット
弟のお子様ランチのオマケが羨ましくて
触って 弟とケンカになる
夜は近所の銭湯へ
お湯が熱すぎてなかなか入れない
のぼせて飲む湯上がりのコーヒー牛乳
お婆さんが肩たたき機で小刻みに揺れているのを見て 弟と顔を見合わせ こっそり笑った
脱衣所に貼ってある怪談映画のポスター
思い出して帰り道が少し怖い
家の寝床には豚の蚊取り線香と裸電球
蚊帳の中で 楽しかった街での一日を
弟と語りながら 眠りにつく
#街に
宇宙の果てまでも
I love…私の子ども達
#I love…
街は渦巻く雲海の彼方にあった。
この時代、永く続いた戦争の果てに、地平は腐食性の毒素と放射性物質に覆われた地獄と化していた。
絶滅寸前まで追い詰められた人々は、戦時中の戦略兵器である半生体機械昆虫『大甲機蟲』に街を背負わせ、空へと飛ばしたのだ。
衛星爆撃で舞い上がったチリと攻性ナノマシン群が入り混じった雲海よりも高く、大甲機蟲は飛翔する。有害な紫外線やナノマシンを遮断する特殊な力場を纏って。過去に実在したコオイムシのように、大甲機蟲は背負った街とそこに住まう人々を守っていた。
茉莉花は、操縦席の風防から徐々に近づいてくる大甲機蟲を仰ぎ見ていた。現存する6柱の雌型大甲機蟲のうちの1柱。『白星老君』。広げた七色の4枚翅は視界の彼方まで続き、氷と鉄錆に覆われた積層装甲板が山脈のように聳え立つ。無数のヴェイパートレイルが白い尾を引く麓、霞の中に無数の灯りが見えた。あれが、蟲の街だ。
「さすがにでかいなー」
茉莉花は笑う。彼女が搭乗するのも機蟲だが、雄型で、比べ物にならないくらい小型だ。体内をキャビンに改造した古株で、銘を『瑞風』といった。
茉莉花は白星老君から目を逸らさないまま、送声菅を取り上げる。
「こちらは蟲追い。機銘は瑞風。貴蟲に着艦願います」
機蟲は触覚から電波を発して交信する。その生態を利用して、この距離ならば声を届けることができる。
受声菅から、慌てたような気配があった。
『こちらは白星老君管制室だ。きみは、蟲追いか? 驚いたな。この辺りでは、もう何年も蟲追いは見ていない。・・・・・・待て、瑞風といったか? その機蟲は、柊の』
「父は4年前に、ナノマシンに食い殺されました。私は娘の茉莉花。この程、父の瑞風を継承しました。早速ですが、西凪洋で2齢から4齢までの雄型を4柱連れて来ました。代替わりはしましたが、変わらぬお取引をお願いできないでしょうか」
『蟲を連れているのか! ありがたい。プラントの調子が悪かったところだ。全部引き取ろう。うん、貴蟲の着艦を許可する。4番腔を使ってくれ。・・・・・・父君のことは、残念だった。柊殿には長年助けてもらった。君にも、末永くお願いしたい』
「はは、ありがとうございます。何とか、長生きできるようがんばりますね。ところで、そちらに蟲術師はおられますか?」
『蟲術師? 随分懐かしいな。残念だが、ここでは何代も前に途絶えてしまった。もう、新しい雌型の発生はあり得ないからな』
「・・・・・・ですよね。変なことを聞きました。すみせん。それでは、4番腔で着艦します。よろしくお願いします」
交信を終えると、茉莉花は大きく伸びをしてひっくり返った。
「だめか。取引が終わったら、早々に移動だな。次は東峰海域を回ってみるかー」
横になった茉莉花に、青白く柔らかな外装を持つ蟲が寄り添った。
「翠」
茉莉花が名を呼ぶと、言葉が分かるのか、嬉しげに蠢く。それは、先代の蟲追い師である父が、命と引き換えに守った機蟲。存在しないはずの、7番目の雌型大甲機蟲。その初令態
だった。
「おまえ、どうしようかね。雌型の幼体の扱いは、蟲術師の秘奥だからね。完全な失伝しちゃう前に、誰かわかる人を探し出さないと」
父の後を継いで早々に大きな問題を抱えてしまった。茉莉花は苦笑しながら、差し当たり白星老君に着艦するために、瑞風の操作菅を操るのだった。
(街へ)
とある7月の土曜日の午後
フレンチアルプスの麓の
湖のほとりの学生寮に1人着いた
初めて1人で海外に来て
長距離列車に乗ってたどり着いた
他の学生達が到着するのは明日
夏の午後の光に溢れた寮はしんと静かだった
窓から湖が見える小さな部屋
荷物を置いて
到着した安堵感と
これから始まる生活の期待と少しの不安と
日本から遠く離れた心細さ
でも辺りの景色にどこか
日本の山と湖のそれに似た懐かしさを感じて
安心して癒されて少し元気が出た
湖の横の道を1人歩いて旧市街へ
今日からの暮らしに必要な物を買いに行った
街へ
俺は魔王軍の四天王ガルバスの1人息子チャイガス。人間の街ポワニールへ向かっている所だ。人間達が俺の姿を見たら悲鳴を上げるだろうな。ライオンの顔に前に突き出た角が2本。腕はゴリラ、足はカンガルー。人間からはそんな風に見えるのではないか?相手を威圧するために発達したこの体躯が故、人間を恐怖に落とし入れないかが不安だ。しかしどうしてもポワニールに行かなければならない。そして魔王軍と人間側の戦いを止めるのだ。
魔王軍はいま、ポワニールの街に作られたポワニール砦に向けて進軍中だ。総大将は我が父ガルバス。総勢1,000体のモンスターを率いている。対する砦の守備隊は1,000から2,000人で数の上では対等だろう。ただし個の力ではモンスターは人間の力を凌駕する。魔王軍の勝利を疑う者はいないだろう。しかし私たち親子は違う。魔王軍は敗れるだろう。そして父は敗戦の責任を取らされ厳罰。魔王様の性格を考えると死罪は免れないだろう。
魔王軍が敗れる理由とは?
その一、モチベーションが低い。
魔王と聞いてどんな印象を持つだろうか?圧倒的な力と恐怖でモンスターを縛り、一糸乱れぬ軍団を率いる支配者?勿論、魔王様の力は圧倒的だ。街1つ滅すくらい訳ないだろう。だがモンスターは邪な生き物だ。人の命令を黙って聞くようないい子ちゃんはいない。モンスターが魔王軍に加わっているのは、みんなが魔王様に従ってるからただなんとなく、程度のことだ。つまり魔王軍は脆弱な命令系統の下に成り立っているのだ。
そのニ、我慢強くない。モンスターは怠惰な生き物だ。
弱い者いじめは好きだが、痛い思いをしてまで戦いに身を投じる者などいない。戦いが始まって20分もすれば(砦の防御力があれば粘れるだろう。)戦線を離脱するモンスターが増えていくはずた。
その参、作戦がない。モンスターは利己的な生き物だ。協力して物事にあたると言うことがない。故に作戦行動など取レルはずがないのだ。これらの理由から魔王軍の敗戦は濃厚だ。砦を守るのは英雄ヘルムルト。戦場で見かけたことがあるが手強い相手だ。
魔王軍の弱さについて語ってしまったが、交渉の席でその様なことを言うつもりはない。むしろモンスターが本気を出せば砦などひとたまりがないと言うことを強調しよう。まぁ、実際本気を出せばモンスターは強い。本気を出せば。
俺が人間側に交渉したいのは停戦し、安全を保証される土地を提供してくれることだ。その土地を守るためならモンスター達は魔王軍と戦うことも厭わない。それは人間側にもメリットだろう。つまり、モンスターの中に人間に協力的な集団と敵対的な集団を作るのだ。なぜモンスターは人間を襲うのか?それは俺にも分からない。俺自身、人間を食べたことはあるが特別美味しいとは思わなかった。ケモノの肉の方が美味いくらいだ。思い当たるのはモンスターのプライドの高さだ。偉そうに正義を掲げ、そのくせ人間以外に残虐な行為を行う。そんな人間が恐怖におののき悲鳴をあげる様はモンスターの自尊心を満足させるかもしれない。しかし人間は執念深く、モンスターが滅びるまで戦おうとする。人間の怒りを買って痛い目を見たモンスターのどれほど多いことか。きっとモンスターの中にもただの自己満足のためにリスクを犯したくないと考える者はいるはずだ。そいつらを集めて第3勢力を作る。それが俺の目的だ。
きっと上手くいく。大事なのは距離感だ。魔王軍と人間勢力の間を行ったり来たり、どちらにも敵対せず、どちらにも味方をせず。ただし、それもこれも交渉の機会が得られるかどうかにかかってくる。
もちろん俺も馬鹿ではない。モンスターの中でも猛々しい見た目の俺が、いきなり人間の街に現れたら話を聞く間もなく襲われるだろう。
前もって、ヘルムルト将軍には俺の望みを書状にしたため送っている。俺には人間というものがよく分からないが、書状を読んでくれているだろうか?読んだとして、会談に応じてくれるだろうか?無理だ。何度そう思ったか。しかし、もう引き返せない。もうポワニールの街は目の前だ。ここまでがむしゃらに走ってきたが、ひどく足が重い。魔王軍を抜けた時に追手にやられた足の傷が痛む。少々血を流し過ぎたようだ。意識が朦朧としてくる。ちょっと気を抜いた際に木の根に足を取られて派手に転倒してしまった。
なんとか立ちあがろうとするが足に力が入らない。あと少し、あと少しでポワニールの街だと言うのに。俺は這いつくばって少しずつ少しずつ街へ向かった。まだか?まだ着かないか?ふと、街の温もりが伝わってくる気がした。
「チャイガス殿ですね。私はヘルムルトと言うものです。ようこそポワニールの街へいらっしゃました。」
街へ、人間の街へ来て本当に良かった。
街へ
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2024.1.29 藍
サフランに、八角、出汁に染み込ませて
何をつくろうか。
鳥を丸ごと茹でて、とろみのあるおかゆもいい、
お肉に、片栗粉をまぶして下味をつけ
チンゲン菜と、サッと炒める。
懐かしい味を思い出す、、、。
街では、お正月にむけてせわしさが続く
お正月を迎え終わった人並みは
恋人たちの街へとロマンチックに変化していく、、。
コートの、ポケットに恋人たちは
手のひらを重ね、笑顔で黒髪をなびかせる
雪と、イルミネーションと恋人たちの行き交う街はひとつの画となっていく
また、いい写真が撮れた。
私の本棚には、世界の写真集とロマンチックな本が並び増えていく。
来年は、もっと幸せ大き年でありますように。
笑顔が少しづつ咲く一年で、ありますように、
心を込めて、、
そんな僕の街は、今日は静かで寒い。
深々と、寒さが伝わる空間で
僕は、そっと
暖かい空気とまじ合うのを無言で受け止めた。
今夜は、寒そうだな、、
なべみて、映画食べる?
いや
鍋食って、映画観る?
そっと、壁につぶやき
ひとり、泣きたくなった、一夜。。。
キャンドル、がそっと
じぶんを、照らした。。
『街へ』
私は山の麓の集落で生まれ育った。
今ではトンネルが通り、街まで車で30分ほどで行けるようになったが、当時はまだ街に行くまで1時間ほどかかっていた。
当然、歩くには長すぎる距離なので、集落の人々の移動手段は主に自家用車か、1日2本、朝と夕方に1本ずつのバスだけだった。
小学校に上がった年、私は初めて一人バスに乗り、街まで買い物に行くことになった。
その当時、私は一人で街に行きたいお年頃で、流行りのかわいい動物の絵がついたボールペンが欲しいからと、母に駄々をこねたのだ。
普段、買い物をしに街に行く時は父の軽自動車を使っていて、時々私も一緒に連れて行ってもらっていたが、バスに乗るのは以前母と乗ったきりで2度目だった。
「いってきまーす」
「くれぐれも帰りのバスには乗り遅れないようにね」
「はぁーい」
母にバス代とボールペン代をもらった私はそれをお気に入りのポシェットにしまい、緊張しながらも心踊るような気持ちで朝早くにバスへと乗り込んだ。
最初こそ窓からの景色を眺めて街への期待を膨らませていたものの、早起きをしたせいか、すぐに私のまぶたはゆっくりと落ちていった。
乗り物の振動というのは不思議なもので、私はゆりかごに揺られるようにだんだんと眠たくなっていったのだ。
夢の中で鳴るアナウンスにハッと目を覚ますと、そこはすでに降りるはずのバス停だった。
慌てて飛び降りたバスを見送り、振り返った私は、目の前に現れた街並みに困惑した。
何度も訪れたことがあるはずの景色が、いつもと全く違って見えたのだ。カラフルな街並みをカラフルな装いの人々が歩き、辺りからは嗅いだことのない甘い香りがふんわりと漂ってきた。
気のせいかなと街をしばらく歩き回ってみても、やはりそこにはいつもと違う不思議な景色が広がっていた。
「すみません、近くに文房具屋さんはありませんか?」
道行く人にそう尋ねてみても首を横に振るばかりで、目当ての店は見つからない。
「すみません、かわいい動物のボールペンを探してるんですが、知りませんか?」
そう尋ねてもやはり同じだった。
どうしたらいいのか訳も分からず泣きそうになっていた私の元に、遠くから一人のお兄さんが近づいてきた。
赤いトンガリ帽にオレンジの大きな襟がついた青いシャツ。黄色いズボンの広がった裾をヒラヒラとなびかせながら歩くそのお兄さんは、まるで小さい頃に読んだ絵本の中から飛び出してきたようだった。
「やぁ、お嬢さん。動物のボールペンをお探しなのかい?」
私がコクリと頷くと、彼は「じゃあ、ついてきて」と行って歩き出した。
彼は人混みの中をかき分けて進んでいく。見失わないように必死に足を動かすと、やがて人混みの中を抜けて大きな広場に出た。
広場の真ん中には大きくてカラフルな三角屋根のテントが立っていて、中からはたくさんの歓声が聞こえてくる。テントの周りにはこれまたカラフルな旗がいくつも立っていて、私はその光景に目を奪われた。
「これは何?」
「この街で一番人気のサーカスだよ。君はサーカスを見るのは初めてかい?」
「サーカスって、絵本とかで見るあのサーカス?」
「そうさ。ちょっとこっちへおいで」
人差し指を口に当てて私を手招いた。
カラフルなお兄さんはテントの裏側に回ると、身を潜めながら小さな入り口をくぐった。私も同じようにマネをする。
テントの中は木の骨組みに支えられていて、表からは想像のつかないような手作り感が溢れていた。
「このハシゴを登るよ。さぁ手を貸して」
ヒンヤリとした彼の手を握ってハシゴを登ると、大人が2人入れるか入れないかくらいの小さな屋根裏部屋に出た。
「ほら、ここから覗いてごらん」
言われた通りテントの布に空いた小さな穴を覗いてみると、そこからはサーカスのステージがよく見下ろせた。
「ここは秘密の特等席なんだ」
私はそこから見える初めてのサーカスに夢中になった。
人間離れした団員達、中に人間が入っているのではと疑うような賢い動物たち。ある者はクルッと回り、ある者はピョンと飛び越え、体の大きなゾウが火の輪っかをくぐり抜けた時には、観客たちと一緒になって私も大きな拍手をした。
「どうだいサーカスは。素晴らしいだろ?」
「はい!」
「俺ももうすぐこの舞台に立つんだ」
「お兄さんもサーカスに出るんですか?」
「あぁ、そうさ」
彼は誇らしげに頷いた。
「観客が出てくる前に、土産屋でボールペンを探そう」
ハシゴを降り、中のテントの下をくぐり抜けると、そこにはサーカスをモチーフにした様々なお土産が並んでいた。
「ボールペンはここだね」
ウマやライオン、トラにクマ。そして演目の中で私が一番感動した火をくぐるゾウのボールペンもあった。元々欲しいと思っていた猫のボールペンはなかったが、私はそのゾウのボールペンをとても気に入った。
「これにします!」
「実は、僕もそれがオススメだったんだ」
お兄さんはそう言って優しく笑った。
ボールペンの会計を済ませてテントの外に出ると、外はもう空がオレンジ色に染まっていた。
「この街にはもっと楽しい場所があるんだ。せっかくだから、もう少し見て回らないかい?」
本当は、私もそうしたかった。だが、バスに乗り遅れると母に怒られてしまう。
正直にそう伝えると、お兄さんはバス停まで私を送ってくれた。
「さぁ、バスが来たよ」
「はい。今日はありがとうございました! とっても楽しかったです!」
「それは良かった。今度はぜひ、僕がステージに立ってる姿を見にきて。また特等席を用意しておくからさ」
私を見てそう言った彼は、片目を閉じて笑った。
そこから家へ着くまでの記憶はなぜかはっきりしない。ただ、次の日の朝、起きたら枕元にゾウのボールペンが転がっていた。
それからその話を家族や友達にしたが、街にサーカスが来ていたと言っても誰も信じてはくれなかった。
直接サーカスを見てもらえば分かるだろうと、数日後に両親と街に行って探してもみたが、サーカスどころかあのカラフルな街並みすらどこにもなかった。
今でもあの時の観客の歓声とステージ上から伝わる火の熱さははっきりと覚えていて、あれが夢の中だったとは思えない。
でもしばらくすると、それを唯一裏付ける証拠だったボールペンもどこかに失くしてしまったので、私はその記憶に自信が持てなくなった。
大学入学で遠くの町に引っ越し、そこで就職と結婚、出産を経た私は、17年ぶりに生まれ故郷に帰ってきた。
「あのね、お母さん。街にかわいい文房具がたくさん置いてある新しいお店ができたって、舞ちゃんが言ってたんだけどね」
娘はそう小学校の友達の名前を出すと、バスに乗って一人でその店に行きたいと言い出した。
昔と違って今は、昔の半分ほどの時間があれば街まで行くことができる。ただ、バスの本数は相変わらずだ。
「バスに乗り遅れたら帰ってこられないからね」
翌朝そう言って私が見送ると、「分かった分かった」と娘は頷き、意気揚々と家を出て行った。
夕方、眠そうな目で帰ってきた娘が手にしていたものを見て、私は驚いた。
あの時私が買ったものと同じゾウのボールペンを、彼女が握りしめていたのだ。
夕食も食べずにすぐに布団に潜り、眠ってしまった娘の寝顔を私は見つめる。
心なしかいつもより楽しそうな寝顔をしている気がする。
一体どんな夢を見ているのだろうか。もしかしたら、サーカスの続きを楽しんでいるのかもしれない。
私はそんな不思議なことを考えながら、静かに寝息を立てる娘の頭をそっと撫でた。
街の灯りがあんなに遠くに見える。
陽だまりのように暖かかった君やあの人達。
この街を出てゆく今は、なにも残さず忘れてゆけばいい。
僕の靴音が夜の空に響く。
人知れぬ街で、もう一度生きてみようと。
さぁ、次の街へ。