『街の明かり』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
街の明かり…
高校を卒業して就職した年に
先輩の車に乗せてもらったことがある。
夜の街は暗かった。
「目を開けるなよ」と言われ
車がどこかに停まるまで
私は目を閉じていた。
「いいよ」の合図で目を開けると
そこは山の上
眼下には無数の光の粒。
とてもとても綺麗だった。
何万ドルの夜景か
それよりも私を喜ばせようとした先輩の気持ちが嬉しかった。
その日から七年が過ぎて私は結婚した。
あの日に先輩が見せてくれた光の粒のひとつに
私は今住んでいる。
私の明かりは、誰かの心を震わせることがあるだろうか。
「では、今回の打ち合わせはコレで終了という事で。後日議事録をお送りしますので、ご確認をお願いします」
「お疲れ様でした。これからお帰りですか?」
「はい、19時半頃の新幹線で」
「大変ですね。気をつけてお帰りください」
「ありがとうございます。それでは、また」
月に1度、東京での会議。
新幹線で2時間以上かけて移動して、1時間もかからない会議に出席。
終わったらまた2時間以上かけて会社へ戻る。
連日の残業と、休日出勤。
仕事の効率をあげて、時間内に終わるよう頑張れば、その分だけ仕事が追加される。
何かトラブルが起きれば、帰宅は日を跨ぐことはざらで、独身者ともなれば、家庭のある社員よりも融通が効くため、出張の回数も多くなる。
今月の出張は既に4回、全て日帰り。
しかも、あと2回出張が予定されている、もちろん日帰りだ。
移動中も、当然仕事だ。
会議資料の作成、仕様書の確認、見積書の確認、スケジュール調整、報告書の作成などなど、ネットが繋がれば今はどこでも仕事が出来る。
つまり、どこにいても働くことを強要される。
「ふぅ…、あと5分、間に合ってよかった」
人身事故による電車の遅延。
ホームに溢れかえる人の群れと、運転再開直後にホームへ着いた車両の人熱れ。
何に掴まる必要も無いほどに込み合った車内は、異様なほど静かだった。
線路の上を走る車輪の音と、車内に流れる車掌の詫びの言葉。
誰が、こんな時間に、こんな場所で…と口に出すことを押し殺した負の感情が充満した世界。
チラチラと、出入口上部のモニターを確認して、新幹線の出発時刻に間に合うかどうか計算する。
間に合わなければ、1本後のは全席埋まっていて予約が取れなかったから、最終になってしまう。
そうなれば家に着くのは日を跨ぐし、明日も休日出勤だ、早く休みたい。
東京駅でドアが開くと同時に、混雑するホームへと滑り降りる。
歩き慣れてしまった通路を人を避けながら小走りに進んで新幹線の改札を通過し、ホームを目指す。
エスカレーターを上って、指定した席がある車両番号の看板を目指して歩いた。
どこからとも無く流れてくる、鼻をくすぐる肉の匂い。
焼肉だろうか…、1度匂いを認識すると、腹まで減ってくる始末。
今日は時間が無かったせいで、弁当を買えなかった。
せめて飲み物を、と、近くの自動販売機でペットボトルのお茶と缶コーヒーを買った。
新幹線は折り返しのための車内清掃中だが、それもじきに終わる。
ふと、缶コーヒーを手に取り顔をあげると、そこには無数の灯りがあった。
東京駅を囲み、見下ろすような高層ビルの群れ。
煌々とした電気の灯りが、本来暗いはずの夜を昼へと変えている。
「街のあかりが……キレイね…♪」
ついつい、口を出た古い歌。
懐かしの〜とか、そんなテレビ番組で耳にすることの多い歌。
「キレイ…ね…」
何故だろう、この灯りの下で数え切れないほどの人間が働いているのかと思うと、吐き気がした。
その仕事を楽しいと思いながら働いているのは、一体どれほどの割合なのだろうか。
かくいう私も、かつて楽しかった仕事が今では苦痛でしかない。
何故働いているのか?
働かなければお金が貰えない。
お金がなければ、生活できない。
家賃も払えない、水道だって、電気だって、ガス代だって、電話代だって、全てお金が必要だ。
それだけじゃない、保険も税金も、食べ物もお金がなきゃ買えない。
では、何故心を壊してまで働く必要がある?
それは……。
政府は70歳まで働けと言う。
人生100年時代、70まで働いても残り30年ある。
バカなのか?
その30年は確約されていない。
それならば、その30年を若い時に使わせてくれ。
生まれて50歳まで、自由に生きさせてくれ。
50を超えたら働くから、死ぬまで働いてやるから。
「街の明かりがキレイに思えない時点でアウトだよな」
金なんてどうにでもなる。
どうせ独り身独身貴族。
自分が生きていける分だけ稼げれば良い。
「よし、会社辞めるぞー!」
街の明かり
いつもの街並みなのに明かりが眩しくて
帽子を深く被り目を伏せた。
自分でじんわり沈んでいるなと感じる。
こういうときは足掻かず
薄いサングラスもつけて
ゆっくり沈んでおこう。
夜の国道
誰かが光の粒の入った箱を蹴っとばかして散らかしたような
都会ほどじゃないだろうけど、わたしの街。
坂道を下って光の粒にダイブする。
デコレーションされた工場の光が出迎える。
一際大きな粒を纏わせる。
道を進み中にすっかり入ってしまうとふつうの景色。
でもあの坂の上から見るとここは……
「街の明かり」
「街の明かり」
賑やかな街の明かりを滅多に目にすることがない。
確かな光源はまばらな街灯と
夜の闇に溶ける月明かりだけ。
《街の明かり》
街の明かりは
私には眩しすぎる
遠くから、そっと眺めるぐらいが丁度いい
わかば(あおば)
【街の明かり】(300字)
この街は今日も眠らない。人々は午前二時を過ぎても道を行き交い、林立したビルは煌々と明かりを灯し続けている。
ブラック企業ばかりが集まっているわけではない。飲み屋街があるわけでもない。そもそも、この街には会社も飲み屋も存在しない。五日前まではあったが、すべて機能しなくなった。同時に、明かりを消す者もいなくなった。
立ち並ぶビルの一つ、とある研究所から漏れたゾンビウィルスは、瞬く間に街に広がった。近隣の地域もどんどん汚染され、国は大混乱に陥っている。
いつかは電気の供給も絶えるだろう。その日まで、この街は昼も夜も変わらずに明かりを灯し続ける。昼夜もなく蠢く新しい住民たちが、光を忘れていようとも。
------------
普段は忘れていますが、電気が絶えず供給され続けているって、めちゃくちゃありがたいことですね。とくにエアコン必須のこの時期は!
しばらくはお休み、もしくは300字が続きます。
100万ドルの夜景。その言葉の由来をなんというのだったか。
引っ越す前の親友と、初めてのお泊まり会の夜に布団の中でひそひそと語らったことを、なんとなくは覚えてはいるが、その内容までは思い出せないことが微妙に気持ち悪くて、私はぎゅっと眉を顰めた。
目の前にはがたん、と一定のリズムで揺れるわずかに濁ったガラスを通して遠ざかる山の木々と、日が落ちつつある光に照らされている街並みがあった。
ぼんやりとロープウェイの冷たい手すりと義務的な硬さのソファの座席に座る。スマホのカメラアプリを起動し、かしゃ、と窓の外の風景を数枚撮り、周囲を見ると同じく百万ドルの夜景を見にきたのであろう観光客が、さわさわと話していた。
「百万ドルの夜景」
「そうです」
「なんでそのチョイスなんですか?」
「映画特集です」
「あー」
そういえば。週刊誌をメインに出版している我が社は今は大きなニュースがないらしく、ちらほらとオフィスには人が集まるだけとなっていた。そして、今度の週刊誌の内容は、映画特集、ということは1ヶ月前には決まっていたことだった。
なぜなら、次ヒットすると予想される定番のアニメ映画の舞台が、百万ドルの夜景として有名な六甲山が舞台、という情報を入手した編集長がそれに被せよう、と提案したのだ。
「で、だれが写真を撮りに?」
「沢辺さんで」
「…了解です」
小規模な会社であるため、写真はプロの写真家ではなく、社員がその足で撮りに行かねばならない。伝達事項を伝えにきた同僚が私のデスクに分厚い紙の束がおいてあるのを申し訳なさげに見ながら、無慈悲にそう伝えた。
冷たくないですか、こんなに仕事溜まっているのに!? という文句を喉の奥にぐっと閉じ込めて愛想笑い程度に笑った。彼女も仕事だ。
…百万ドルの夜景、百万ドルの夜景ね…。
その言葉に目の前から去りつつある同僚の後ろ姿を見ながら、幼い頃の記憶がわずかに蘇る。
お母さんから聞いたの!
…へえ、なにが?
幼い頃の私がぽちぽちとゲーム機をいじりながら、時折手を離せるタイミングを見計らって、彼女を見遣る。くるりとしたボブがトレードマークである彼女はラベンダーの香りを纏わせ、目を輝かせて、こう言った。
百万ドルの夜景ってね! 六甲山の…が…なんだから…なんだって!
目を瞑る。どうしてもその先から思い出せない。親にねだって、ようやく行われたお泊まり会。そしてそのすぐに親から告げられた引っ越し。あれ以降彼女も父親の職場の移転の関係ですぐに引っ越した、と聞き、連絡もついていないというのに。
徐に常備してあるチョコに手を伸ばすと、ざくり、とした食感に甘ったるい後味が残る。それが過去に対する後悔のようにも思えて、私はため息をついた。
ーらんらんらん、らん、らんらん…
綺麗にライトアップされた高台には人が大勢集まっていて、観光地と呼ばれるのも頷けるほどだった。
ラベンダーが有名なのか、ラベンダーのポプリやらが売られている店を背景に、恋人たちから家族まで、様々な人の黒い輪郭だけが見える。それを歩きながら1枚だけ写真に撮り、さらに上の、人が少ない高台を目指し、階段を登り続けた。
静かに人が二、三人、立っているのを眺めながら、ふう、と息を吐く。そんなに高いイメージはなかったのだが、予想に反して随分長い階段を登る羽目になったのだ。
しかし、その苦労の甲斐はあって、テラスにあった椅子に座ると、そこから見える景色は絶景だった。夜であってもなお、活動し続ける人々の家の電気は灯り、程よい夜の風が吹く。汗をかいた肌にその気持ちよさが沁み、目を細めながら、何か資料の足しにならないかと近くの壁にあるプレートを見ると、百万ドルの夜景と呼ばれることになった由来が黒い石のプレートに彫られていた。
『ここ、六甲山が百万ドルの夜景と呼ばれることになった由来は、数十年前、関西電力の社長が、ここからの景色の電気代を計算すると約100万ドルになったことに由来すると考えられています…』
思わずその文章に目を見開く。じゃあ、お泊まり会のとき、友人が言ったのは。今なら、あの時彼女が言った内容が補完できる気がした。それもかなり正確に。きっと、あの時彼女は六甲山がなんで呼ばれることになったのかを言おうとしていて、その内容がここだったのだ。
そう思うと欠けていたピースがつながり、知らず知らずのうちに抱えていた胸のわだかまりがすっと、消えていくような心持ちがした。
あの後あなたはどこに引っ越して、どんな人生を今送っているのかな。心の中で、百万ドルの夜景を見つめながらそう思う。きっと今見ている神戸の夜景の中にあなたはいるだろうか。夜の風の中、数多の街の明かりが応えるように、ちかちか光り続けていて。バッグのラベンダーのキーホルダーからほのかに控えめな香りが香ったように思えた。
街の明かり
田舎の夜とか体験すると街の明かりはありがたいものなんだなって実感できる。光のない夜ってのは闇なんだってわかる。
あまりにも自然にありすぎてそのありがたさは実感しにくいけど明かりがないと夜って怖いからな。夜に明かりなしで歩くのは無理だ。
そんなありがたい明かりの話はこのくらいにしよう。あまり書きたいお題じゃないから話が弾まない。
ドクターストーンで初めて電球を作ったシーンの絵はすごかったとか初めて電球を作ったのはエジソンらしいとか書こうと思えば書けるかもだけどもういいだろ。
それより今日は日射しが強かった。そろそろ夜勤明けの帰りがきつくなるだろうと思って帽子を持っていってよかった。あまりにも暑い。
夏はとにかく頭を守らないとな。日傘や帽子で日射しから身を守るのだ。
街の明かり。5作目
夜の静かな時間。ひとりだけの時間。
横たわっていると
窓の外に、街の明かりがひらひらと見える。
明かりの数だけ、人がいる。生活がある。
私と同じことを考えている人が、
同じことをしている人が、
私の、いわゆる運命の人とかいう人が、
この無数の街の明かりの中に存在しているのかな。
【街の明かり】
とても綺麗ね
港街での
輝き放つ
青光り
街の明かり。
街の明かりには
それぞれの
事情がある。
もういない
母にも
街の明かりを。
あー逢いたい。
夜景を見た。
電気が
明かりが
ある現代だからこそ
見れる景色。
もし
もっと
昔に
産まれていたら
こんな景色は
見れなかったのだろう。
キレイで
日常の
モヤモヤも
忘れてしまう。
写真では
味わえない
キレイさを
しっかり
目に焼き付ける。
#街の明かり
街の明かりが温かくて
ホッとしたのを覚えてる。
いつもはそう思っていないのに
遠くから帰ってきたら
温かいなってずっと不安だった訳じゃなかったけど
街の明かりを見たら
帰ってきたって実感して
落ち着いた。
ここが私の居場所なんだって。
─────『街の明かり』
旅に出て
慣れ親しんだ街の明かりを
みつけると
何故かホッとする
お帰りってね
_街の明かり
今日は何処かぼやけてみえて
涙と一緒に夜の街に溶けてしまいたくて。
[街明かりが消える]
明るい街。キラキラと煜いているのを窓から見ている。皆、綺麗だね。とか言ってるのかな。
電気代凄そう。なんてあまりに可愛げのないことを考えている。
街が煜いているのに私はどこか醒めている。
何か人肌が恋しい。
こんなときは彼に電話する。
「もしもし、街明かりが消えたら家に来て」
「了解~、ほんといつも気まぐれだな」
「知ってるくせに」
お題『街の明かり』
会社から出ると、人々の喧騒と夜でも明るい街に毎回のように驚かされる。
明るすぎる飲み屋街で、だいたいお店の前に客引きがいてたまに人と帰ったりしていると声をかけられたりする。
会社がその中に位置しているからどうしてもこれは逃れようがない。騒がしいのも楽しくていいが、いつもこれだとさすがにしんどいと思う。
かといって、僕の地元のように夜になると明かりが消えてお店がすぐに閉まってしまうような寂れた街も勘弁だ。
飲み屋のキャッチをかわしながら帰路について、やっと自分の最寄り駅に着く。閑静な住宅街で、駅前はスーパーがあって、しばらく歩けば等間隔に並べられたランプが街をほんのり明るく照らす。
家に着いて街の喧騒から離れられたことに安堵しながら、我ながらいい場所に住めたなと思う。
夜が遅くなると街の明かりは僕を攻撃してくる。
最近の東京はどこへ行っても暗くない。まるで昔の大英帝国のように。
夜の東京を探索するのは楽しいが、物騒なことに巻き込まれることもある。だが、東京というひとつの文化を体験できるのは非常に趣深い。
こんなことをしているから、不眠症になってしまったのだ。
街の明かり
街の安全安心に繋がる役割がある。
明かりがあることによって、人に見られてる意識もあり、犯罪行為の抑制にも繋がる。
犯罪に巻き込まれる子供や女性のほか、若者の悪質な行為等も抑止力になる。
家族にも薄暗い道を避けて安全に帰宅してもらいたい。