『蝶よ花よ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
蝶よ花よ、と大切に育てるのはたぶん悪いことじゃあない。
でも大切にしすぎて教えなきゃいけないことを教えないのは違うと思う。
箱入りにしたいわけじゃない。
いろんなことをしって危ないことは危ないんだよ。
お礼や謝罪はしっかりしなきゃだよ、そういう育て方の方が幾分か素敵じゃない?
季節が巡るたびに思う。ただ、何があったのかまではよく覚えていないのに、前も嗅いだような匂いが鼻につくなって。その度に胸がきゅっとなる。
やっぱり、過去に戻れないなら、どうしようもないなら、せめてあの人が私にかけた言葉、行動全て思い出したい。
そんなことすら考えず、ただ自由に飛び回ったり、自由に茎を伸ばして生きたりしている…蝶よ花よ、時々私は全てから逃げて君たちになりたくなる。
蝶よ花よ!そう言う風に育ちたかったな。
まあ、所詮、お金持ちの家の事。蝶よ花よかぁ。うらやましいなぁ。その点、私は自分の事は自分でやる。
家での遊び相手はリカちゃんとか、強制的にお友達とは、お外で遊ぶとか。なぞルール
でも、まあ、そう言う逞しさの中で生きている現在。これもまた、自分らしいか。
叶わなかった恋ばかりだから
未練がそれぞれにあってそれぞれに思い出がある。
でも全部ただのひとりよがりで
貴方と同じ思い出を共有したことにはならない。
共有できた思い出が同じ想いだったとも限らない。
あの時の嬉しさやちょっとしたことで傷ついたことは貴方はきっと知らない。
貴方はきっと何も感じていない。
全て私の中で完結している。
私が恋した貴方達は私じゃない誰かを想ってる。
未練も何も始まらなかった私と違って1歩先の未練を知ってる。
知ってる。
知らないでほしかった。
知っててほしくなかった。
私で知ってもらいたかった。
今はただ胸が痛い虚しい寂しい苦しい
もしも時間を巻き戻せるなら、まだ普通に話せる関係だったあの頃に戻りたい。
次は上手くやれる、なんて自信はないけれどもう一度だけあのキラキラした甘い時間に戻りたい。
あの歌に出てくる貴方の私だけに見せてくれるあの顔も
あの優しさも2人の思い出の場所だって何も無いけれど、
何も始まらなかった恋ばかりだけど
それぞれに想いがあってそれぞれが私を成長させてくれた。
いい思い出にできるように今は自分磨きをがんばるだけ。
_蝶よ花よ
何故こんなにも儚ないの、風にゆり揺られ、思いのままに流される、帰る場所はまだ遠い
【蝶よ花よ】
何よりも大切にした
傷が付かないように
大切に大切に守った
それでもやはり
蝶は飛んでいくし
花は散った
仕方のない事だった
蝶よ花よ
すべてはつながっている
関係しあって影響を与えあってる
蝶は軽やかに飛び回っている
花には朝露が降りてどこか儚げな雰囲気を纏っている
それはそれだけだ そのままで十分だ それに意味があるんだ
『蝶よ花よ』
「多く女児に対し、非常に可愛がり大切にすること」
と、辞書にある
かつては女児だったわたしに
その記憶はない
“お姉ちゃん”でもあったから
むしろ、下のきょうだい達を
うらやましく思っていた
ひとつ覚えているのは
もう女児ではない、高校生の冬休み
同級生に届いた仕分けのアルバイト募集
わたしには案内が来ないまま
あれは両親が隠していたのだと
大人になってから聞いた
理由を説明されたはずだけど覚えていない
それも「大切」の一種だったのか
わからない
「お前、箱入りだよな」
「……脈絡もなくなんですの本当」
「果物って大体箱に入ってる?」
「表面の保護や運搬の楽さも考えると箱が妥当でしょう…?」
「だよな…!?やっぱお嬢様だよなお前安心した、ました」
「今更雑に取り繕っても遅いと思いますわよ」
「ところで水って何飲んでんの」
「中庭の井戸水」
「井戸水だよな〜!!」
「謎のニヤケ顔が無性に苛つくので一発ど突きます、えい」
「掛け声からは想像つかない音が今俺の鳩尾から」
「安心しなさい、峰打ちです」
「どう見ても拳だったが!?」
人体からしちゃいけない音だったろ今。ゴキャって言った。
俺は聞いた。アイツの骨格何でできてんの?鉄骨?
「で、本題は?」
「クラスの奴と話しててお嬢って育ちがいいだろうって」
「それで?」
「じゃあ生まれてきてから食べてる果物全部箱に入ってんだろって」
「大体わかりました、何となく」
「んじゃお嬢は果物は箱から生えてくると思ってんじゃねーのって」
「人を馬鹿にしすぎでは?」
「いや絶対そう言う時期あった、絶対ある」
「ありませんわよ」
「笹本さんに聞いてみようぜ」
「嫌です私が覚えていない失態がありそうで嫌です」
「大丈夫俺もなんか失態言うから」
「自分が覚えていて自分の意思で相手に話すのと自分の知らない失態を目の前で暴露されるのって大分重みが違いますけど!?平等を気取らないでほしいのですけど!?」
大丈夫大丈夫、と適当な事をいいながら勝手知ったる邸内を行く。笹本さん何処だろう。夕方だから商店街まで買い物か、それとももう帰り着いて晩飯の支度か。いやはや普段あれだけ怖がらされている分反撃ができるとなればワクワクが止まらない。まぁコイツとてわざとじゃないのはわかっているが。淑女に恥をかかせるとか男としてマジで無いです、と脳内のお嬢がげんなりしている。本物隣にいるけど。邸内にはいない様だ。門を出たところで商店街の方向から丸々膨らんだ風呂敷を背負って歩いてくる笹本さんが見えた。
「やった笹本さんいた!お帰りなさい、荷物持ちます」
「笹本逃げてください!ソイツ今悪の権化です!荷物は私が持ちますので!」
「お二人ともどうなさったのですかや、荷物持ちはありがたいですけんども…」
「笹本さんお嬢のなんか恥ずかしい話ない!?具体的には果物は全部桐の箱から生まれてくるって勘違いしてたとか!!」
「ありませんわよね!?ありませんわよね!?あっても無いと言ってください笹本ぉ!!」
「…………そうですねぇ」
「う、裏切りですか笹本…!」
嘘だ!と絶望するお嬢に対して笹本が鋭い目を向ける。珍しいな、いつも大体お嬢の味方なのに。厳しいけど。
お嬢が生まれた時から一緒の長い付き合いらしい。
乳母的なやつ?お嬢やっぱお嬢だよな。お嬢の身の回り全般と護衛、武術を嗜むスーパー女性、笹本さん。
味方ならありがたいがマジで敵に回られたくない人。
今目の前でお嬢裏切ったけど。
「お嬢様、先日怪我をなさった時ご自分で手当てなさいましたね。あれだけ呼んでくださいと言っておいたのに…」
「だって夜遅かったですし、縫うくらい私にも出来ますし」
「お嬢様」
「す、すみませんでした!!ね、謝りましたから笹本、いいですよね」
「あれはお嬢様が…6つくらいの頃でしたかね」
「笹本ぉ!?」
「それこそ果物の箱の話です。お嬢様はあの木箱の中には大体果物が入っているのだと思っていたのでしょう、実際間違いではありませんでした」
「まぁ実際スーパーとかだとパックの方が多いんだよな」
「木箱は珍しいですよね。ダンボールならわかりますが。マお嬢様は果物が入っている所を見る機会が多かった。ここまではいいですね」
「え、私なんかやらかしましたか…?覚えがありませんが…?」
「チビすぎたんじゃねぇの?」
俺だって一番古い記憶は6歳とか5歳だ。それも鮮明に覚えているわけじゃ無い、朧げで、断片的で。
心当たりが全く無い分自分の失態というより他人事に思えたのか、続きが気になりだしたらしい。
妨害されるよりマシだ、流石笹本さん。
「当時柳谷邸をよく使っていた陰陽師、七竈さんと言います。かの方は偉大な人形使いであらせられまして、十より少ないですがそれでも多くの形代様を持っておいででした」
「…………めちゃくちゃやべー人じゃん」
「その方私達の上司ですわよ」
「めちゃくちゃやべー人じゃん」
「そうですわよ」
形代。陰陽師の武器。一つ作れる様になるまで10年、扱える様になるまで8年、使いこなすまで15年、壊れるときは一瞬。矢ツ宮殿、昔は七竈って名前で人形遣いだったのか。イメージつかないな。組み手やってる所と書類仕事してるところしか知らない。ガタイいいし。頭脳派と言うか技術派というか。階級が上がると呼び名が変わるらしい。
ややこしい。
「で?なにかあったんですか昔の矢ツ宮殿」
「当時七竈様は子供が苦手でありました。何もしていなくとも近くにいると怖がられ泣かれ親を呼ばれ警官が来るなど日常茶飯事」
「強面だもんな」
「不憫ですわ……」
「そのままでも強面の上、笑顔も不得意でいらっしゃった為、基本近寄らなかったそうです」
「ガキの方から寄ってくるんだよな……そう言う人に限って……」
「その頃のお嬢様は基本周りが大人でしたし、とりあえず七竈様を怖がる様なことはありませんでした」
「同年代の方が少ない環境でしたからね」
「…………かと言って特別親しいわけでもなく。石蕗センサーも普通でしたし。そんなある日、七竈様は沢山の真新しい桐の箱を持っていらっしゃいました」
「……ありましたっけ!?」
「七竈様には歳の離れた妹御がいたそうです、お嬢様を重ねていらっしゃった所もあるでしょう、その縁で度々出張先からお土産を買ってきていただいた事がありました」
「え、意外……めっちゃ意外」
「全く思い出せないんですけれど……笹本それ本当にありましたっけ……!?」
「お嬢様が忘れてしまっても無理もないと思いますよ、本当に小さかった頃の話ですし……心なしか途方に暮れる彼に、お嬢様は尋ねました『ななかまど様、任務お疲れ様です』『お荷物おもちいたします』『表の箱はいかがなさいますか』」
「めちゃくちゃ流暢に喋りますね」
「続きは…?」
「いつもならその流れで「箱は柳谷さん達へのお土産です、美味しいうちに召し上がってください」と続くんですがね、その日は違ったんですよ」
「…………ほうほう?」
「『私の部屋に運んでください、形代様は重量があるので2人以上でお運びしてください』」
「あ—————」
「普段もっと立派な箱に入っている形代さまでしたが、その時は任務の途中で大破してしまったらしく。幸い形代さまは傷もなく無事でしたが」
そう言うことはよくある。しかし結果無事だったからと言ってそこから裸で運ぶかといえばそんなわけもなく。
出先がなんとか空き箱を調達し、それが桐っぽい箱だった。元は素麺が入ったでかい箱だったらしい。漢字読めなかったんだろうな。6歳じゃな。そして当時任務に出た陰陽師を玄関先で出迎えに行く責任感ある幼子が「お土産の気配を察知した顔」から「考えが至らず形代様を荷物だと思い込んでしまったことに対する後悔の顔」になってしまったのは。
「その時のお嬢様の顔がよっぽど堪えたんでしょうねぇ……次の日、美味しそうな果物をいくつも買ってきてくださって。我々使用人、みんなで美味しくいただきました」
「七竈様の果物のお土産話は回数が多すぎてどれだかさっぱりわからないんですけど……」
「そのせいじゃねぇか忘れてんの。6歳だし」
「というわけで、『お嬢様が大きな桐の箱をみてお土産だと勘違いした話』でしたが、如何でしょう」
「どっちかって言えば『矢ツ宮殿の不憫な話』ですかね」
「本当に覚えていません……ありましたっけ……かと言って矢ツ宮様に直接聞くほどの話でも……しかも聞いたところでなんともならないですし!矢ツ宮様私に気を遣って何も言わなさそうですし!」
「古傷っぽいよな。あの人お嬢に対してかなり甘いし」
「……今度、日頃の感謝を込めて何か贈り物でもしましょうか……」
「何の日にするんだ?父の日?勤労感謝の日?敬老の日?」
「失礼ですわよ!!」
数ヶ月後。矢ツ宮殿の43回目の誕生日、豆大福と万年筆をプレゼントに持って行くお嬢と笹本さんの姿が見られた。俺?部屋で素麺食ってた。
ついでにお嬢のフォロー。
Q.いつもの立派な箱が見当たらない時点でクソデカ木箱に形代様がある事に気づかなかったんですか?
A.後で知ったのですけれど、その形代様を運んでいた箱もいろんな術式が仕込まれていまして、なんと手のひらサイズまで圧縮?とにかく小さくできるらしく。
それで着物の袖口などに入れていらした事が多かった、らしいです。まぁ楽ですし。私の中であの立派な箱と形代様はセットで記憶に結びついていました。そして矢ツ宮様はよくお土産をくださる方で、そこそこの頻度で私は大きな木箱と手ぶらの矢ツ宮様という組み合わせを目にしていました。そしていずれも大きな木箱はお土産だったのです。おそらく。刷り込みです。
であればどこで私が矢ツ宮様の形代様を見たのだという話になるかと思います。
任務で怪我をされ、お部屋でご飯を食べることは珍しくありません。そのご飯を届ける際や怪我の手当をさせていただいた時見ていました。
気がつかなかったのはそういうわけです、たぶん。
【蝶よ花よ】
そんな育て方はされた事ないが
そうしたい事はあるな
ど~やら俺は
幸せ者らしい
「あー、電球とうとうきれたか。新しいのあるか?俺がつけてやるよ。お前ちっさいし。」
そう言って私のことをおちょくるこの男は私の想い人。
2年も会う度に「好き」だと伝える私に「蝶よ花よと育てられたお前に俺みたいな男は不釣り合いだよ。友達くらいが丁度いい。」といつも笑ってはぐらかす。好きじゃないならそう伝えてくれればいいのに。はぐらかされると希望が捨てられないじゃない。
でも、もう疲れた。思い続けるのも、希望を抱き続けるのも。
彼は鼻筋が通って、鋭くでも優しく綺麗な二重の目。瞳の奥はいつもどこか寂しそうで私の心を掴んで離さない。
「ありがとう。」私はおちょくられたことはスルーして電球を手渡す。
彼は不思議そうに私の顔を覗き込む。
「お前体調悪かったりする?」心配そうに眉をひそめ私を見つめる。
いつも会うと「好き!」と言い続けていたのに、今日は言わなかったことに気がついたのだろう。こうやって私の心の機微を感じ取ってくれる彼が好きだった。
「もしかして会ってない間、何かあった?」彼は私の頭をぽんぽんと子供をあやすような優しい声と手つきで問いかける。この大きくたくましい手が好きだった。少し掠れた低い声が好きだった。そう再確認させられた私の心は、雑巾を絞った様にギュッと締め付けられた。
確かに、あっていない数週間の間で私は変わった。そしてそのことを彼に伝えないと。
「あのね、私彼氏が出来たの。」まだ心のどこかで彼のことが好きだと叫んでるのを聞こえないふりして、私はどことなく引き攣った笑顔で彼に伝える。
「そっか…」目が泳いで動揺を隠せない様子だった。いつも感情が表に出ない彼には珍しいことだった。なんで貴方がそんな傷付いた顔をするの。捨てたはずの思いが、希望がまた再燃しそうだったが一生懸命抑えた。
「彼とはね、友達が紹介してくれて出会ったの。すごくいい人でね、私のこと一目惚れしたって言ってくれて。」私はつらつらと聞かれてもいない彼氏との出会いを語った。話続けないとこの空気に耐えれなかったから。
まだ本当は貴方が好きだと口が滑りそうだった
から。
彼の顔を見れずに私はただただ話し続けた。彼の目を見てしまったら、寂しそうな瞳に吸い込まれてしまうのではないかと危惧したから。
ずっと何も言わずに聞いていた彼が急に口を開いた。
「お前が幸せならそれでいいよ。」傷付いた心を誤魔化す様な笑顔をまたするから、私はそれを見ないふりしてキッチンへ向かった。
「コーヒー淹れようか!!」私がコーヒーメーカーに手を伸ばした瞬間、背後に温もりと同時に彼の匂いに包まれた。
「ずっと好きって言ってくれてたから、どこにも行かないって心のどこかで慢心してたんだと思う。他の男と一緒にいるお前を想像したくない。ずっと避けてたくせに、今更かよって思うかもしれないけど。いかないで。」ずっと聞きたかった言葉が背後から、苦しそうな辛そうな声で聞こえてくる。嬉しいはずの言葉が、どこか喜べず複雑で私の心はミキサーにかけられたようにぐちゃぐちゃだ。
2年も待った。私は伝え続けた。彼の思いは一時的な事で、きっと私が自分のものになった途端きっと気の迷いだったと思うでしょ?
だから言う。過去の私と決別するために。少しの貴方への思いを切り離すために。私は声を精一杯振り絞った。
「もう遅いよ、、、」
私を抱きしめる彼の腕が力強くなる。
それを私は振り払ってキッチンを後にした。
彼の寂しそうな後ろ姿を見ないようにベランダへ出た。そうでもしないと彼の胸の中に居心地の良さを覚えてしまう。冬の寒い風で彼の温もりを消すように全身に浴び続けた。
彼がそっとベランダの窓を開け「取り乱してごめん。帰るから、リビングに戻っておいで。ずっと風に当たってたら風邪ひくよ。」そう言って窓を閉めた。
わたしはずっと振り向けず背中で彼を見送った。
付き合っていなかったのに恋人とお別れしたような気分だ。
「さよなら。」玄関をでた彼に小さな声で別れを告げるのが精一杯だった。
蝶よ花よ
蝶や花しか知らないんじゃないかってくらい大切に育てられたら
どうして恋まで辿り着けようか
もっと彼の人を引き立てて
あの桃源郷で歌い
いつしか私が引き寄せられるであろう
蝶よ花よ
お嬢様…そう呼ばれていた君が、何故、僕の所に…
初めて会った時、君は、周りの取り巻きから、ちやほやされていて、貧乏人の僕なんか、まるで意識していなかった…時々すれ違う事はあったけれど、君の瞳には、僕の存在なんて、まるでなかったようだね…僕をも、住む世界が違う人に、興味なんて無かった…
それがある時、君が僕にぶつかってきたのに、謝らないのに注意してから、何故か絡んで来るようになって…そして、今、こうして一緒に歩いている…
蝶よ花よ
愛する君よ
今日も美しくあれ
いつもでなくてもいい
刹那でも構わないから
輝く君であれ
蝶よ花よ
蝶よ、どうしたら空を飛べるのですか?
花よ、どうしてそんなに美しく、役に立てるのですか?
そう問いかけたって返事はない。
私達が求めている物は教えてくれない。自分で試行錯誤しながら、探していくしかないのだ。
作品No.130【2024/08/08 テーマ:蝶よ花よ】
蝶よ花よと、大切にされたこともあった。それさえも、遠い昔の話になってしまったけれど。
あの頃は、自分がこの世で一番美しいと信じていた。万人に愛されて当然だ——と。
でもそれは、ひと時の夢幻だった。
あの頃の私を知る人がなくなり、この世に残されて幾年月。色艶を失った身体だけが、私として存在している。
美しい私は、もういない。私を愛でてくれる人も、もういない。
いつまで、生きていればいいのだろう。失っていくばかりなのに、虚しいばかりなのに——いったい、いつまで。
蝶よ花よ
8/8。私の誕生日。
LINEには友達からのお祝いメッセージ。
家族からも誕生日プレゼントとおめでとうの言葉。
美味しいものもたくさん食べた。
まだまだ短い時間しか生きていないけど、
蝶よ花よと大切に育てられてきたなぁと思う。
そう思わないと、きっと誰かに怒られる。
来年も、再来年も、何年経っても、
自分が幸せになれる誕生日を過ごせるよう、
頑張ろうと思う。
蝶よ花よ…(゜゜)…愛されるイメージ
今日は昨日と違って睡眠もバッチリだし、寝落ちせず書ききるぞ!
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辞書によるところ
蝶よ花よ=子供をこの上なく大切に育てる様。
多く女児に使う。
蝶よ花よ=箱入り娘の等式で結んでも差し支えはなさそうだ。
さて、自分はどうだったろうかと考える。
親や親族にそれなりに大切にされてきたという実感はある。
自分の事を「箱入り娘」と言うのは、何だか照れてしまうが。…まあ、良いか?
「箱入り娘」は、親や親族、出会う人にそれなりに大切にされてきたが、それ以外からも大切にされてきたことを誇りに思っている。
それは、言葉だ。
「箱入り娘」が困っている時、悩んでいる時、いつも言葉が「箱入り娘」を助けてくれた。
その種類は豊富だった。
励ましの言葉から、戒めの言葉、慰めの言葉、未来を示唆する言葉まで。
本やテレビ、ラジオ、人との会話。
言葉という言葉を介して「箱入り娘」の元に届いた。
言葉が届くたびに「箱入り娘」は、「生きなさい」と背中を押されているのを感じた。
力強く、時に優しいその気配に
「箱入り娘」は、言葉に生かされているのだと信じるようになっていった。
「箱入り娘」は年頃になると、自身に降り積もった言葉を使ってこの世界について考えるようになった。
何故?何故?何故?と言葉を投げかける度に、それまで受け取っていた言葉達が光り出す。
「これが答えかもしれない。いや、こっちも答えかもしれない」
パズルのピースを当てはめるように、言葉を当てはめ、言葉と戯れていた。そうするうちに、見えているものの奥に、隠れているものが見えるようになっていた。
それに気付くと、世界により色が満ちていくのを感じた。
蝶よ花よと大切にされた「箱入り娘」だったが、
テンプレートという、便利で、誰とも摩擦の起こらない画期的な道具を使ううちに、語彙を失うことになる。
それと同時に、かつて見えていた景色までも、表面しか見えなくなっていた。
それに気付いた「箱入り娘」は、ここで言葉と向き合うようになるのだった。
少しずつではあるが、取り戻した言葉で紡ごう。
雨に凍える人に、優しい言葉の傘をさそう。
己の道を行く人に、そっとエールを風にのせよう。
孤独に震える人に、静かに寄り添い一人ではないと伝えよう。
言葉は人を救う。
「箱入り娘」はそれを信じて、今日も言葉と向き合っている。
蝶よ花よ
貴方は蝶よ花よと私を扱ってくれて、
誰よりも、世界一、宇宙一、私を愛してくれる。
そんな貴方が私は好き。
大好きなの。
会うたびに愛が増して、
会えなくても愛は増してく一方で。
そんな事思っていた頃が懐かしい気がする。
貴方が会えなくても、私はいつでも会えるのにね。
何で会えないか。
私はそんなこと聞けなかった、怖かったから。
都合のいい女でありたくなかったから、
都合のいい時だけ呼び出してくる関係が。
でもどんどん泥沼にはまって動けなくなっていく。
そんなの自分でも分かっていた。
だからこそ、早いうちに別れたかった。
だけど、別れを切り出そうとしても切り出せなかった。
だって、怖かったから。
自己中なのかもしれない。
都合のいい時だけ会うのも、
きっと私が都合のいい女だからなのかもしれない。
それでもいい。
もっと早く別れればよかった。
この世に自己中以外の愛があるの?
それなら教えて欲しかった。
これから、
ピアノの調律が狂っていくように、
貴方との関係も狂っていくなんて夢にも思わなかった。
【蝶よ花よ】
ー美しくあれー
ーNo.3ー