『落ちていく』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
落ちていく
幼い頃は父が朝早くからいれるコーヒーの香りだけは好きだった。
味は苦くて、色は黒くて苦手だった。
あんなもの飲める大人はすごいな、なんて思っていた。
ぽたぽたコーヒーがカップに落ちていく。
あの黒くて苦いものを飲めるようになったら私はきっと大人の仲間入りができたという事かもしれない。
そうやって想像してるとコンっと目の前にコップを置かれた。
父がホットココアを入れてくれたのだ。
「まだココアだよね。」って笑いながら言った。
うん、そうだね、まだわたしはココアかもしれない。
父にお礼を言いながらコーヒーの香りだけ堪能して、ココアを飲んだ。
「6月18日あたりが『落下』ってお題で、農耕行事をネタにして書いたのよ。『泥落とし』とか、『虫送り』とかいうのが、あるらしいじゃん」
題目の配信日、11月23日は、神社で「新嘗祭(にいなめさい)」なる農耕儀礼が開催されるとか。
某所在住物書きは己の過去投稿分を、スワイプで辿ろうとして面倒になって、結局それを諦めた。
「で、11月23日配信が『落ちていく』だもん。これは神社の新嘗祭に絡めて、『昔は神社の高い所から餅を撒き落として、参拝者に配ってた』みたいな話を書いたら、イッパツじゃね?と思ったの」
はぁ。 ため息ひとつ吐き、物書きが呟いた。
「俺の執筆スキルじゃ、ぜってー堅苦しくて読めたもんじゃねぇハナシしか出てこねぇよなっていう」
――――――
「雪国の田舎出身」っていう職場の先輩の、「田舎」までは分からないけど、「雪国」が一体どこだったのか、突然正解が目の前に降ってきた。
それは職場で聞いてたお昼のニュースだった。
お昼休憩が始まると、誰が操作してるとも知らないけど、休憩室のテレビの電源が入る。
別に誰が観てるとも聞いてるとも知らないけど、そのテレビはいっつもニュース番組が映ってる。
いつも通り午前の仕事が終わって、いつも通り先輩と一緒のテーブルで、いつも通りにお弁当広げてコーヒー持ってきて、
今日も面倒な客が来たとか、そういえば昨日近所の神社でニイナメサイという祭りがあってとか、
なんでもない話をしながら、いつも通り、ランチを一緒に食べてたら、
先輩が、ふと、スープジャーを突っつくレンゲスプーンの手をとめて、テレビの方を見た。
映ってたのは、先輩が3日前、11月21日にスマホで私に見せてくれた、「実家の両親が写真を撮って送ってくれたイチョウの木」。
「昔々のイタズラ狐が、自分の犯したイタズラの始末をつけるために、イチョウに化けた」っていうおとぎ話がある、「イタズラ狐の大銀杏」。
これから段々天気が荒れてくる現地で、実質的に昨日が最後の見頃でしたって、
「北国」の樹齢何百年とも知れぬイチョウの木が、紹介されてた。
「おっと」
今まで私に、どこ出身とも教えてくれなかった先輩が、軽いアチャー顔で呟いた。
「とうとうバレたか」
先輩が言ってた「故郷」の話に、段々、オチがついていく。先輩の「故郷の雪国」がオチていく。
テレビの中で「私はただいま、◯◯地区のイチョウの大木の前に来ております」って語ってるレポーターの寒そうな声が、「雪国」に、落ちていく。
先輩は半年以上前、3月の中頃、「最高気温氷点下は3月で終わる」って、「なんなら雪が4月に」って言ってた。
そりゃそうだ。
その翌月、4月の最初あたり、低糖質バイキングの屋外席で、北海道出身っていう店員さんと雪国あるあるで盛り上がってた。
そりゃそうだ。
5月6月の30℃予報でデロンデロンに溶けて、7月はざるラーメンだか、ざる中華だかを教えてくれた。
そりゃ、そうだ。
先輩の故郷は、雪国だったんだ。
「来年連れてって」
テレビのキレイで大きなな黄色を、それを見上げるちっぽけな観光客を見ながら、ポツリ呟いた。
「画像なら3日前見せただろう」
先輩はスープジャーつんつんを再開して、随分そっけないけど、表情がちょっと穏やかだ。
「わざわざ遠い、何も無いあの街まで行く必要など」
先輩は言った。
「それでも行きたいというなら……まぁ、まぁ。
うん。お前が凍るだろう最低体感2桁の、真冬以外であれば。検討してやっても」
落ちていく
今好きな人がいるんだけどさ、もう愛してるって言っていいくらい好きなの。
かっこいいし、性格、面白さ、運動神経だって抜群で、完璧なの!!
でもめっちゃモテてるから、ライバル凄くてさ、高嶺の花の人も私の好きな人が好きなんだって。
勝てる気ないよ……だってそんな私可愛くないもん。
「○○ちゃんだけ見てるよ??」って言われたけど、そんなこと言われたら
「堕ちちゃうんだけど…」
[落ちていく]
どんどん取り返しがつかなくなって
やめようと…やめよって思うのに
辞められない。
周りと自分を比べては比例して
周りを憎んで、
幸せになりたいそれだけなのに
気持ちがどんどん落ちていって、
這い上ることが出来なくなってた
落葉が、落ちていく。
もう秋も終わりだ。
冬が来る。
「冷たッ」
蛇口から勢いよく吹きでる水に触れるやいなや、彼女はぴくりと身を震わせて小さく叫んだ。
「え、何なに。どうしたの」
「水! 触ったら指先が凍っちゃいそうに冷たいの」
「そんなになの? えーどれどれ……うわっ!」
結果なんて見え見えだったのに、誘いに乗せられ同じように驚くと、それが嬉しかったのか彼女はくすくすと柔らかく笑った。
「でしょう? 外の水ってこんなに冷たいんだね。この歳になって公園なんて来なくなっちゃったからすっかり忘れてた」
「まあ今日、木枯らしもびゅうびゅう吹いてるし余計に、だろうねえ」
「だよねえ。……して、これからこの極寒の水でドロドロになった手を洗わねばならないのだが」
煌びやかなネイルが施された彼女の細い指先はケチャップで真っ赤になっており、芳ばしい香りも漂ってくる。
お揃いで買った具だくさんホットドッグを、先ほどまで公園のベンチに座って幸せそうに頬張っていた。……が、急転直下。彼女がうっかり手を滑らせ、ホットドッグは原型を留めずに地面へ墜落。その後始末で二人して手をどろどろにさせながらてんやわんやしていた。……というのが事の顛末だ。
「落としちゃったものはしょうがないじゃん。ほら美織、お先にどうぞ」
「ええ〜〜やだよう…………先行ってよ」
「美織のほうがどろっどろじゃん。爪先にケチャップが入ったらどうするの! ほら早く」
「うええそんなあ……むうう……ああやだな……ヒャアアア!」
裏表のない性格をそのまま表したような素っ頓狂な叫び声が白昼の公園に響きわたる。彼女は取り繕うことをすっかり忘れ、目を思いっきり見開き身体をぷるぷる震わせている。
艶やかな化粧もボディラインにフィットした服装もばっちり決まった普段の姿からは想像できないほど、あどけなく笑ったり大人気なく怒ったりするだなんて。
知り得なかった彼女の一面に触れ、驚きととほんの少しの郷愁とともに、私の心はことんと鍵が落ちて開かれた。
あぁ、
腹が立つ。
悪い人
じゃないけど
文句が
止まらない。
あの時
パッと
上手く
言い返せなかったなぁ。
腹が立つ。
なんて
言い返したら
良かったかな?
やっぱり
納得出来ない。
あの人のせいだ、
あの人のせいだ。
あの人が
ああだったから。
#落ちていく
気がついたら空中にいて
あと数分で地面に到達
背中を確認するとパラシュートはない
全身に風が刺さり この速度のままだと衝突死
ぶつかる直前思い出す 手を広げれば空中で止まる
そのひらめきも間に合わず 地面に落ちテイク2
すかさずシーンが切り替わりまた空中
今度は素早く手を広げ 空中停止しほっと一息
わけのわからない夢の中
なんの疑いもなくわけのわからない思考をしている
思考さえも夢の中 受け入れている自分が怖い
『落ちていく』
暗い、昏い穴をオレは落ちていく。それはまるで永劫とも思えるように長い。
途切れつつある意識の中、オレはさっきまでの出来事を回想する。
まさか、青銅の小僧なんかにこのオレが負けるとはなぁ。しかも、黄金聖衣には逃げられた上、丸裸の相手に、オレの縄張りでやられたときたもんだ。言い訳のしようもねぇ。まったく、末代までの笑い者だぜ。
――ま、このオレにゃ相応しい末路だったかもしれねぇがな。
オレは今でも自分の行いが間違っていたとは思っていねぇし、やってきたことに後悔も反省もねぇ。だが、自分の行いが到底褒められたモンじゃねぇことぐらい自分でも分かってる。だから、自分の行いが回り回って自分に返ってきた、因果応報だと言われても、はいそうですねとしか言えねぇ。
それに、オレ自身畳の上で死ねるとか、ましてや極楽に行けるなんかこれっぽっちも思っちゃいねぇ。望んでこの手を血に染めたオレには、地獄が相応しい。
あとは、オレに青臭い説教をしてきたあいつがこの先どこまで行けるのか。その結末を見られねぇのはちょっと残念だな。
ともあれ、オレは一抜けだ。じゃあな、シュラ、アフロディーテ、それにサガ。先に地獄で待ってるぜ。
「奈落」と書いてある紙を拾いました。太いゴシック体の文字でした。手のひらの半分に収まるくらいのちいさな紙でした。
途方をなくしてしまったようで、つまりは大人でも迷子になるんですね。いつもなにか苦しそうだった。解答欄の空欄は埋まりましたか。
果てまで行くの。って君が言うから内心困った気持ちになりました。果てなんて無いのに。宇宙は光より早く拡大していて、人間たちがどれだけ走ろうと追いつきようもない。電車を追いかけるより無謀です。あるいは、もしかしたら、やさしい眠りにつくよりも。
とはいっても、君は電撃を駆け上っていって、それで、一体どこまでいくの。君のために、小さな町を作ってあげますよ。作るのはパン屋さんが好きだけど、君は食べるのがあんまり好きじゃないね。よだかではないのだから、どこまでもいけるわけじゃない。仕方がないから、帰っておいで。
言葉というのは文化の副産物のようなもので、つまりは届くとは限らないんですね。底が抜けたコップには、いくら注いだって意味をなさない。奈落は君の名前だったかもしれません。最後に小さな町も、君の奈落に落としておくね。
[落ちていく]
コロコロ、コロコロ転がって、
ストーンと落ちていく
コロコロ、コロコロ転がって、
ストーンと落ちていく
ああ、楽しい
あ〜たのし!
落ちていく
恋に地獄に
落ちていく
彼が結婚してるだなんて
知らなかったのよ私
結婚指輪をしてたでしょって
指輪、彼指輪なんてして無かったわ
ほんとよ
嘘なんて言ってないわ
あなたと会う今日まで知らなかったのよ
こうなったら私彼に地獄を見せてやるわ
いいえ私も地獄に落ちないと
ほんとにごめんなさい
─────『落ちていく』
木の葉が
落ちていく
刻々と
冬の訪れを待つように
散る瞬間まで人々を魅了するのに
地べたに足を置けば踏まれて終わり
人間なんかに花を語る資格なんてない
#110 落ちていく
あの時の悲しみに
落ちていく
部屋の隅っこ
膝を抱えて
目は見開いて
それでいて
何も映さず通り過ぎていく
体は現実の中に生きているのに
頭の中のイカれた8ミリフィルムが
ふざけた走馬灯を作り出す
見たくないと思うほど鮮明になっていく
アリジゴクの罠に嵌ったように
戻らなければと藻搔くほど
落ちていく心、止められず加速して
---
悲しみの記憶は『思い出す』行為を繰り返すほどに強固に定着していきます。
牛の反芻と一緒ですね。戻しては噛み砕いて心に吸収させているんですから、辛くて当たり前です。
滑稽に見えるかもしれませんが、本人は飲み込めば消えると信じて必死なんです。
#落ちていく
なにかから落ちていく夢
最近見なくなった
あれは何だったたのか
日々のストレスから
もしくは責任感
肩の荷でも降りたのかな
落ちた。
深い深い穴へ、転げて落ちていった。
僕は何の為に生まれてきたのだろうか。僕は、僕の生きる意味を見つけたかった。少なくとも、きっとこの今の状況に陥る為ではなかった。そんな、考えてもどうしようもないことを考えてしまう。
そうやって、永遠とも思えるような長い闇の中を落ちていく。
どうしようもないことはわかっている。でも、本当はこんなところで諦めたくない……。
深くて暗い底まで落ちた。
……そう、これ以上下なんてなかった。
視界が開けた。
そこには、思っていたよりも綺麗な世界が広がっていた。
穴の中では綺麗な歌声が響いている。
ふと見上げると、僕が落ちてきた穴から、僕を落とした張本人が落ちてきた。
そいつも、この状況を見て驚いていた。
「ねずみ!?」
そこはねずみの世界だった。
「おじいさん、おむすびをありがとう」
ねずみはおむすびである僕を捕まえた。そして、僕はちゃんとねずみに食べてもらえた。安心した。
僕を落とした張本人のおじいさんは、僕をねずみに与えたお礼に、なんか小槌を貰っていた。
それ、1番体を張った僕が貰うべきでは? まぁもう食べられしまっているし、僕自身の役目は全うできたからいいんだけど。
僕はわかった。
諦めたらそこで試合(?)終了だ。どんなに闇に落ちようと、その先には素敵な未来が待ち受けていることもあるんだと。
僕は役目を果たせて。ねずみは僕を美味しいって言って食べて。なんかおじいさんも幸せになったみたいだし。
めでたしめでたし。
『落ちていく』
紅葉の綺麗な道で
堕天使に会った
空から落ちてきたとか
天国とか地獄とか運命とか
そんな話を聞いていたら
上も下もよく分からなくて
高所恐怖症になった
羽のない人間が宙を舞うなんて
変な表現だ
なんて呟いたら
地面の中に引きずり込まれた
ずっと深く
落ちていく
このままどこまで行くのだろう。
浮遊感が不快
光も差し込まない
そんなところで夢から覚めて
ジェットコースターが嫌いになった
『落ちていく』
落ちていく
周りが見えなくなる。
それしか考えられなくなる。
気持ちが沈んでいく。
落ちていく
それは
環境を変え、
行動を変え、
思考を変え、
『転換する時』のこと
落ちていく
今日も貴方の沼に落ちていく…貴方と同棲して早二週間…今までよりも毎日毎日、好きが溢れていって、どんどん貴方の沼に落ちていく…そして、どんどん貴方の虜になっていく…貴方が好きだ!ずーっと、この先何年経っても!永遠にこの気持ちを大事にしたい!これからも永遠にそばにいたいです!これからもこんな私のそばにいて下さい!それとも、今のままの私じゃ、駄目…ですか…?