たまき

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#110 落ちていく


あの時の悲しみに
落ちていく


部屋の隅っこ
膝を抱えて
目は見開いて
それでいて
何も映さず通り過ぎていく

体は現実の中に生きているのに

頭の中のイカれた8ミリフィルムが
ふざけた走馬灯を作り出す
見たくないと思うほど鮮明になっていく

アリジゴクの罠に嵌ったように
戻らなければと藻搔くほど
落ちていく心、止められず加速して


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悲しみの記憶は『思い出す』行為を繰り返すほどに強固に定着していきます。
牛の反芻と一緒ですね。戻しては噛み砕いて心に吸収させているんですから、辛くて当たり前です。
滑稽に見えるかもしれませんが、本人は飲み込めば消えると信じて必死なんです。

11/23/2023, 10:51:17 PM