『花咲いて』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
色々と考えたけど、今一番欲しいものは、新しいクーラーかな、寒かったら服を着ればなんとかなるけど、暑さは服を脱ぐにも限度があるし。もしもタイムマシンがあったなら、未来の冷暖房を見てみたいな。とあるゲームみたいに、景趣を変えると色とりどりの花咲いてるのを見れて、温度管理も確りしてるなら最高じゃないか?
「花咲いて」
初めての出産が終わり、入院中
助産師さんから「桜が見頃ですよ。少し遠いけど待合室の窓からよく見えるので、良かったら見てみてください」と言われ人気のない待合室からぼんやりと遠くの桜を眺めた
産院の病棟はいつも快適な温度に保たれているため季節感が狂う。ちょうど季節の変わり目だったのもあり、入院するとき着ていったコートは退院のときには必要なくなっていた
それでも乳児にはまだ肌寒いからと言われ、おくるみでぐるぐる巻きにされた我が子を抱いて近くで見る桜は、春の始まりを感じさせた
ある日、宇宙から隕石が落ちてきて、生き物も建物も、何もかもなくなってしまった。
その星を作った神様は、荒れ果てた星を見て大層悲しんだ。
「愛情込めて育ててきた星が、こんな姿になるなんて……」
昨日まで豊かに生命が生きていた星が、今じゃ見る影もない。
また一からやり直すしかない。
失った命の分まで、もっと素敵な星を作ろう。
そう思った神様は、星のお掃除を始めて、少しずつ少しずつ、長い年月をかけて星を作り直す。
崩壊した建物も、倒れた木々たちもブラックホールに捨てる。
神様は、ようやく綺麗になった星に、最後に小さな虹色の種を蒔いて、キラキラ光る水を揚げた。
「素敵な星になりますように」
そう願って、毎日毎日、お世話を続ける。
1000年ほど経って、やっと芽が出た。
「やったー!」と神様は大喜び。
さらに気合を入れて、大切にお世話をする。
さらに3000年経って、ようやく蕾が膨らみ始めた。
「もうすぐ咲きそうだ!」
そう思っていたのに、一向に花は咲かない。
「おかしいな」と神様。
暗い宇宙で毎日お世話を続けたけど、どうしても花は咲かなかった。
「もうダメかもしれない……」
神様がしょぼんと俯いていると、やがて、太陽の遣いがやってきた。
「神様、そんなに落ち込んでどうしたんだい?」
「太陽の遣いくん。実は、新しい星を作ろうと思って花を育てていたんだけど、あと少しのところで咲かないんだ」
太陽の遣いが目をやると、そこには神様と同じように元気のない蕾。
「神様、どうやってお世話をしたんだい?」
「どうって、そりゃあ、毎日水をやって、たくさん愛情を注いだんだよ」
「それだけ?」
「何かまずいのかい?」
「神様、大事なことを忘れているよ」
そう言うと太陽の遣いは得意げに胸を張った。
「花を咲かせるには、太陽の光がなくっちゃ」
「あっ!そういえばそうだったね」
うっかり者の神様。
大事なことを思い出せたみたい。
そうして、太陽の遣いが蕾に陽の光を与えた。
すると蕾はむくむく膨らんで、綺麗な虹色の花が咲いた。
「綺麗だね!」
「あぁ。君のおかげだよ。ありがとう!」
虹色の花が咲くと、そこから自然が広がって、やがて生命が生まれた。
あとは生命たちが頑張る番だからと、神様はお家に帰って行った。
虹色の花から生まれた星は、花がたくさん咲く、温かくて賑やかな星になりましたとさ。
お題『花咲いて』
ゆーとへ。
ゆーとと遊べなくなってから約10ヶ月が経ったんだよ。
最後にボイチャした時も本当は辛かったんだよね。何で
我慢するの。我慢しなくていいんだよ?私には我慢するなって言ってくるくせにゆーとが我慢してたらダメでしょ笑嫌なこと、辛いこと、悲しかった事があったら
泣いてもいいんだよ。周りの人や信頼できる人に相談してもいいんだよ。我慢しないで少しでも気持ちが楽になるように工夫してね。
勉強はどお?体調も大丈夫?まぁ、ゆーとだから大丈夫って信じてるよ。私も私なりに頑張ってるよ。クラスには
友達いないし友達は減っていくし笑でもいつもゆーとの事思い出して頑張ってるよ。いつも勇気沢山貰ってるよ。
ありがとう。何度も言うけど私はゆーとの味方だからね。絶対裏切らないよ。だからゆーとも裏切らないでね笑信じてるからね。
さて(?)こっからが本題ですよ〜。まず1個目はね、
そろそろ1回帰ってきてくれませんか!?さすがに
もう10ヶ月くらい話してないし声聞いてないし、遊んでないんですよ!?さすがに寂しいって笑ゆーとは寂しい
かい?笑さすがに寂しいって言ってくれよな!!笑
私はねー、結構寂しい笑早く話したいよ。早く笑いたいよ。また沢山一緒に笑いたい。たくさんボイチャしたい。沢山思い出創りたい。だから1回帰ってきてくれませんかね〜^^
まぁ、ゆーとのペースでいいよ。無理しなくていいよ。
今は勉強でいっぱいだろうから頑張れ。友達関係とかさ
恋愛関係もあるだろうからそっちに集中してくれて
いいからね。私の事はいいから今は現実で沢山楽しんで。ゆーとが笑ってるならそれで私は十分嬉しいから。
だから、今は自分のしたい事を沢山やって、今の人生を
楽しんでね。「死にたい」とか「どうせ俺は要らない」とか言うなよー笑また辛いことがあったら相談
乗るし、リア友でもいいから相談乗ってもらえよ!!
溜め込まないでね。本当に人に優しすぎるんだよ。
ゆーとは、もう少し自分にも優しくして大切にしてよ。
私の事はいいからね。お願いだから自分の事も大切に
してね。家庭の事情で辛いことも沢山あるのは知ってる。辛いこといっぱいあるの知ってるよ。でも、それでも笑ってるよね。笑わなくていいよ。辛いことがあるなら泣きなよ。我慢する必要ない。私も人の事言えないけどね笑でも私はゆーとに幸せになって欲しいし、人生を楽しんで欲しい。沢山笑って欲しい。だから我慢しすぎちゃダメだよ。泣きたい時は泣きなさい笑
次!2個目はね、今の生活は楽しい?昔はよく家の事で悩んだりしていたけど今はどんな感じ?楽しければ
いいよ。まあ、辛いことがあったらマジで誰かに相談
しなね。絶対共感してくれる人とか一緒に泣いてくれる人、アドバイスをくれる人が1人はいるから。だから
勇気出して相談するんだぞ。負けないで頑張れ。
応援してるよ。本当に今の生活を楽しんで欲しい。
2年生の勉強とか3年の勉強で追い込みの時期かもしれないけどたまには休憩して、遊んだりしてね。無理しすぎは
ダメだからね。
長くなりそうだからここら辺で終わるよ。まあ、最後
まで見てくれたか分かんないけど、とにかく!!
今の生活と友情、恋愛その他もろもろを楽しんで。
私の事は考えなくていいから、ゆーとらしくこれからも
沢山笑って、泣いて、時には怒ったりしててね。
いつか必ずまた遊べるって信じてるからね。絶対に
裏切ったりしないから。また絶対遊ぼう。笑おう。
沢山話そうね。思い出話でもなんでもいいから、絶対に
ボイチャもしようね。いつまでも待ってるよ。
あと、
相棒になってくれてありがとう。相棒がゆーとで本当に
良かった。ゆーとだったから生きる意味を知ったし、
笑い方をしれた気がするんだよね。だから、本当に
ありがとう。感謝しかないよ。私も恩返しできるように
頑張るね。いつもありがとう。これからもずっと
大好きです。たまには私の事、思い出してね。
ルルより。
『花咲いて』
天上の楽園とは果たしてどのようなものか。天国は様々な創作物のモチーフにされ、楽園は様々な創作物にそれぞれの意味で登場する。作品の世界に没入し、楽園を踏破するとき、私は至上の美しさを垣間見るのだろう。花が咲き、天使が泉のほとりで休んでいるような。
私がいま読んでいる小説(と呼ぶのが正しくはないと思うが)にも楽園が存在する。
いまから楽園に足を踏み入れるのが、頗る楽しみだ。
花咲いて
私は、愛乃と、陽規のことで
大きな大きな心の傷になっている
あなた2人に会っていなかったら、きっと、今の自分ではないでしょう………
でも、闇落ちキャラクターが好きになったキッカケにもなった2人です。
だけど、振られた方が今でも心に傷ついているんだよ…
だから、また新しい彼氏ができてもディズニーで振られるんじゃないか?その不安が積もり、
だから………今、恋愛もできないと思うし、
尚更、ディズニーランドのシンデレラ城前で振ったの?と質問したいぐらい
過去は過去だけど、今の私は、心に傷ついた
シンデレラ、白雪姫が幼稚園児から好きだったから、、
もし、近くに、闇落ち死柄木弔、エレンイェーガー、
荼毘などがいたら、慰めてほしいぐらい
なんで?なんで?
言ったはず
私は白雪姫、シンデレラが好きだと。
なんで、彼処で降るのかが理解できなかったし
ディズニーは、夢の国だし、少しは、考えてよ。と、
菅田将暉似だった陽規に言いたい
そして、愛乃も怒っていたし、今思えば
彼女の言いなりだった
私を降り回さないで………
家族、違う人の意見を聞けば良かった
花咲いて。
花は咲くもんだ。
咲かなかった花があるなら、それは花と呼ぶんかいな。と思ってしまう今日のお題。
つまり難しいから適当に想像の花を咲き散らかして逃げたい。
雪月花、花鳥風月とか、花は引っ張りだこだなあと思う。
雪月花を初めて聞いたのはどこのタイミングだろう。
何巻かは忘れたが、初期のコナンのマンガで「雪月花」を題材にした話があった。
知ったのはたぶんその時だ。
怪盗キッドが盗むんだか盗まないんだか。
刑事に化けて、化けられた刑事を日テレのバッグに詰めて、詰めただけでなく、マスクを被らされて。
やけに手のこんだことしたのに、結局盗まないんかーい、と思ったかも。
その時は、「雪月花」という美しい名前の持つ花があるんだなあと思っていたが、実際は別々のテーマで、どれも美しいよね〜、それを写し取った3枚の絵も美しいよね〜という奴だった。
花を含む自然物は、詩情というものがあるようで、僕はいまいちこの日本語がよくわかってないで本を読んでいた。
詩情を調べると「詩的な趣」
詩的を調べると「詩の趣」
詩ってなんやねん、と調べると、
「心に感じたことを言葉で表したもの」と出てきた。
正直言って、わからん。
もう少し調べてみると、「物体から出る芳香剤のようなもの」と出てきた。なるほど。
例えば同じ花があったとして、陰気なところに咲く花と、家中で咲く花があったとする。
両者の花の匂いは同じだけど、見る人によって違ったニュアンスがある。
花単体は変わらないけど、花の周りを見たら違う。
オーラと言うべきか、空気が違うというべきか。
その機微を観察者たる人間が汲み取って、言語化あるいは心情化し、文字を残したり、芸術品や創作に取り組むようになる。
同じ花の種類でも、時期や場所、背丈や葉の色合い、影の作り方、太陽に向けるツルなど、周囲に及ぼす影響は違う。
どうやら視覚的作用から脳に及ぼすまでの一瞬の間に、「物体から出る芳香剤のようなもの」を言葉という俎上に乗せ、第三者へ旅させることで、可愛い子には旅をさせよ的な感じで、喚起させていると。
「花咲いて」と書くことで、花が咲いたあと、何があったのか。
想像のありかを示す道しるべ的な役目をしているのかなって。その花の匂いに流されて、物語は始まるのかもね、と思ったりもした。
小さな雨粒が、ため池をさわさわと揺らす。
ため池に跳ねる雨粒と、東屋の屋根から伝って落ちてくる水が一種のハーモニーを作り上げている。私は、この雨の時節の静かな騒々しさが結構好きだったりする。隣では、雨で濡れそぼった君の肩口が、小さく震えている。
「ハンカチ、使う?」
そう言ってポケットの中のハンカチを取り出して差し出す。
「いいよ、日向ちゃんだって濡れてるじゃん。それにあたし、結構丈夫だし」
私は尚もハンカチを差し出そうとしたが、藤原さんはどうしても受け取ろうとしなかったので、仕方なくハンカチをポケットにしまう。
部活帰りに二人で歩いていた私たちは、両方とも天気予報を見ておらず、急に降り出した雨にびっくりしながら近くの公園の東屋で雨宿りすることになった。
「そういえば、もう大会まで二週間だね」
藤原さんが頰杖をついたままそう話しかける。私は、そうだね、そろそろ小道具も仕上げて行かないと、としどろもどろに答える。
藤原さんとは小学校も同じだったが、私とは違って派手なグループに居たので、そんなに関わりは無かった。私たちの関係性の転換点となったのは中学校に入った時だ。中学校では珍しい演劇部という部活に入った私たちは、元々家が近かったのもあって、すぐに仲良くなった。派手でスタイルが良くて、明るく皆に人気者の藤原さんは役者を、対する私は照明をやっていた。隠と陽、と言う属性がぴったり当てはまる私たちは、まさに部活での仕事もそんな感じで、こうして藤原さんの隣にいるのも、本当は少し烏滸がましく感じている。
「そういえば日向ちゃんはなんで照明をやろうと思ったの?」
揺れる水面を眺めながら藤原さんが私に聞いてくる。私も同じ様に水面を眺めながら、
「私、舞台演劇が好きだけど、あんまり人前に出るのが得意じゃなくって、だから、せめて舞台で演技する人たちを、陰からでも、明るく照らしたいな、ってそう、思って」
半分、嘘をつく。人前に出るのが得意なのは本当だった。でも、私が本当に照らしていたいのは、舞台で演技する人たち、なんて言う漠然としたものじゃなくって、藤原さん、だけだった。雨に打たれて冷え切ったはずの体が火照り出す。藤原さんは私の答えを聞くと、そうなんだあ、と少し平坦な声で言った後、
「私はね、私が舞台の上で輝くのを、見せたい人がいて。最初はただただ目立てるから、楽しそうだから、って理由なんだったんだけど、今ではもう、その人の目にどれだけ魅力的に写るか、それだけを考えてる」
膝を抱えながらそう言う彼女の横顔は、恋をしている表情をしていて、やっぱり藤原さんにもそういう相手がいるんだな、と思って私は少し胸が痛くなった。何の気もない風を装って、
「因みに、どんな人なの?」
と聞いてみる。すると藤原さんはまっすぐ私の目をみながら顔を紅色に染めて、
「その人はね、ちょっと地味で、引っ込み思案で、でも面白くて、優しくて、小柄なのに意外と包容力があって、可愛い人」
と言ってくる。私は藤原さんの思わせぶりな態度に動揺しつつ、
「可愛い人って、女の人なんだ」
と呟き、藤原さんにそういう相手が居ない事に、内心大きく安堵する。すると藤原さんは少し怒ったように
「………後、自分が十分魅力的な事にも気づかずに人の魅力を引き出すのに躍起になってて、鈍感な人かな」
と尚も”その人”の特徴を言ってくる。私は心音のボリュームが大きくなっていくのに気付きながら、
「その人は、随分自信がないんだね」
と言ってみる。藤原さんは、
「そう、自分に自信がなくて、ここまで言ってもまだ気づいてないフリをしてて、未だに私の事を藤原さん、って呼んでくる人」
と言ってくる。いつの間にか藤原さんが私の近くまで来ていて、藤原さんの肩と、私の肩がピト、とくっつく。
「そんな事言われると、私勘違いしちゃうじゃん」
私はそう言葉を絞り出すのが精一杯だった。藤原さんが自らの腕を私の腕に絡めてくる。
「勘違いじゃ、ないんじゃない?」
そういう藤原さんの声は、普段の元気いっぱいな声でも、たまに見せるローテンションな声でも無く、いつもよりも可愛くて、そして、震えていた。
「でも、私なんか、別にそんな魅力なんかないし……」
焦って変なことを口走ってしまう。藤原さんは真っ赤な顔に微笑みを浮かべて
「さっき散々言ったのに、まだ言われ足りないの?」
と言い、耳元にその瑞々しい唇を近づけ、
「優しくて、可愛くて、辛い時でもそっと見守ってくれるところ、ずっと大好きだったんだけどなあ」
と言ってくる。頭の中が藤原さんの声で蹂躙される。私は顔を真っ赤にしながら
「分かった、分かったから!……その、ほんとに、私なんかが好きなんだ……」
と一旦藤原さんを振りほどく。藤原さんは自分のしている事に気がついたのか、少し焦った様子で
「いや、そうだよね、き、急に言われても困るもんね、こんな、ただの友達から、なんて」
と弁明してくる。覚悟を決めなきゃ。そう思った私は、そんな藤原さんの手をそっと握って、
「私もね、さっき、舞台に立つ人たちを照らしたい、って言ってたけど」
藤原さんの大粒の瞳がハッと見開かれる。
「実は、あれ、半分嘘なんだよね。本当は、藤原さんだけを、照らしたくて、一番美しい貴女を、一番美しく見せたくて、だから、照明をやってるの」
驚愕で固まっている藤原さんの、細くて美しい指を、私の指と絡める。
「だから、私も藤原さんの事が好き、なんだ」
と言い放つ。藤原さんはもう暫く固まった後
「…………本当に?」
と聞いてくる。少し余裕が出てきた私は
「本当だよ。ていうか、藤原さんから先に告ってきたんでしょ」
と返す。藤原さんは、そうなんだ、そっかあ、と一人でひとしきり呟いた後、
「じゃあ、これからもよろしくお願い、します」
とよそよそしく言う。そんな藤原さんの姿が面白くて、私は思わず笑ってしまう。藤原さんが恥ずかしそうに、ちょっと、笑わないでよ、と言ってくる。私はごめんごめん、といいながら笑いを納めて、
「こちらこそ、よろしくお願いします」
と言って上半身だけで礼をする。
池の水面で芽吹き出している睡蓮の鮮やかな緑色が、ふと目に入った。
「花は結構、いろんなお題で書いてきたわな……」
花咲いたスミレの砂糖漬け。咲いた花びらの形を星に見立てた「星空」に「流れ星」、それからつい先日、前々回投稿分で書いた白い花と、花言葉。
そろそろ花ネタも枯渇間近かな。某所在住物書きは己の過去投稿分を辿りながら呟いた。
「ぶっちゃけ、てっとり早く季節感出せるし、花言葉仕込めるから便利なんよ。なにより簡単に少しオシャレになるし。多分」
今ならニラとかミニトマトとか、あとバジルなんかも咲いてるのかな。物書きは思考し、ふと冷やしトマトやらピザやらを食いたくなり、そして冷えた飲み物の在庫を確認した。
炭酸飲料とノンアルは在庫十分。
氷はちゃんと、必要数、製氷室にあっただろうか。
――――――
今日は夏の土用の丑の日。つい先日、別にうなぎでなくても「う」が付く食べ物であれば何でも良いことに気付いた物書きです。
今の時期、かつ今回のお題であれば、丁度東京は、「『ウ』バユリ」の花咲いて見頃の頃。
情報によれば食えるそうですが、食い方が分かりません、気にしません。
その土用の丑の日から、少し前に遡る晴れの頃。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の森の中では、神社に住む不思議な不思議な子狐が、お庭の草刈りと整備で切られた花の1本1本を、
ガブリ!小ちゃな牙で噛み切り、花びらを傷つけぬよう優しく咥え持って、とってって、ちってって。
参拝前に手と口を洗い清めるための場所、清い湧き水が溜まり続ける大きな石の器に歩いていきます。
手水、チョウズと言います。
子狐はこの手水を、季節の花で埋め尽くして、花手水を作ろうとしているのです。
コンコン子狐、まだ人間を学んでいる最中の子供なので、美的センスなんてありません。
水にさせば元気になりそうな花の茎を、良さげにかじり整え、手水の石器の上に飛び乗り、ぽいちょ。
花咲いて間もないであろうそれらを、だけど環境整備や在来種保護、外来種調整等々のために切られたそれらを、水の上に浮かべるのです。
水の上で花咲いて、少しの間の生を得るそれらが作り出す花手水は、神社敷地内の草刈りとお庭整備が実施される間だけの、はかない絶景。
人間に化けたお父さん狐やおじいちゃん狐が、大学の植物学・農学部の人間と一緒に、
丁寧に、極力機械を使わず、刈るべき花と切るべき枝を正確に刈り、整え、引っこ抜いていくのを、
子狐コンコン、別に誇りに思うでも、尊敬するでもなく、素通りしたりイタズラしたり、背中をよじ登り肩に乗っかって見学したりもするのでした。
さて。手水に花を落とし終えて、満足した様子のコンコン子狐。なんだかおなかが空いてきました。
あと数日で夏の土用の丑の日という頃。神社の湧き水流れる小川に、ニホンウナギが隠れています。
この稲荷神社の子狐の同胞、ごん太という化け狐のうなぎ養殖屋さんが、弱った規格外うなぎや病気の廃棄うなぎを、激安価格で譲ってくれるのです。
それらのうなぎは、稲荷神社のご利益ゆたかな清い湧き水の中で、快適な余生を過ごしておるのです。
そろそろ1匹くらい上等に育ってるだろうなぁ。
こやこや、コンコン、じゅるり。
「うなぎつかまえたら、かかさん、おいしいものいっぱい作ってくれるだろうなぁ」
蒲焼き、うなたま、白焼きに串焼き、ひつまぶし。
コンコン子狐、優しいお母さん狐がうなぎ料理を作ってくれるのを想像して、尻尾をビタンビタン。
絶賛セカンドライフ満喫中なうなぎの潜む小川を、じーっと、覗き込みます。
セリやヤブニンジンの花咲いて白く色づく小川は、キラキラ、木漏れ日が反射して踊ります。
うなぎは子狐ごときに捕まる気はさらさら無いので、子狐がこちらを覗くのを、まんまる煽り目とぱっくり半開きの口で、穴の中から覗き返します。
「どのうなぎが、いちばん、おいしいかなぁ」
頭を出すうなぎに向かって、ガブリ!コンコン子狐が小ちゃな牙を突っ込みますが、
うなぎの方が何枚もウワテ。子狐がどれだけ牙を立てても、子狐がどれだけ手を突っ込んでも、
のらり、くらり、にゅるり、ぬらり。
ぜーんぜん、捕まりません。
「うぅ、すべる、にげるっ」
お母さん狐がお昼ごはんで呼びに来るまで、コンコン子狐はうなぎを追いかけ続け、うなぎは子狐と遊び続けましたとさ。 おしまい、おしまい。
きる
きる
きる
きる
きる
きる
きる
きる
きる
きる
たれる
「」
ようやく寒さが緩み始めた頃、梅の花が1輪、ぽつんと花開いているのを見つけた。きっと昔の私だったら、気にかけることもなく、足速に通り過ぎていただろう。まだ開ききっていない、小さな花弁。一体私はいつから、花を眺めるということを覚えたのか。
春を待たずに旅立ってしまった妻は、この花を見て何を思っただろう。小さな花さえ見つけては私の腕を引き、花に疎い私にひとつひとつ教えてくれた。ああ、見て、綺麗に咲いているわ。昔より増えた目尻のシワをいっそう深めて無邪気に咲っていた妻の顔は、昔と変わらず喜びに満ちていた。
なあ、空の上にはどんな花が咲いているんだ。無機質な石の前に、妻がいっとう好きだった花を供える。どうか彼女の好きな物で溢れていますようにと願いながら。
お題:花咲いて
お題『花咲いて』
私が一方的に推しているクラスメイトから「一緒に帰ろう」と言われた時、天変地異でも起きたのかと思った。
推しはクラスでも目立つグループに所属していて、私は目立たない大人しい子が集まってるグループに所属している。彼は目立つグループの中で一番容姿端麗で、一緒になって騒ぐことは少なく、時折バカをやっているグループの中心核の男子に対して眉を下げて淑やかに笑っているのが印象的だ。
だが、彼と私じゃ住む世界が違うので「推し」として影でコソコソ崇め奉っている。親しい友人には知れ渡っていて、私が隠し撮り写真とともに推しを布教する度、「きもい」「どんびきだわ」と言われつつも友達をやめないでいてくれる。
さて、そんな彼がどうして私のような教室の有象無象と一緒に帰ろうと思ったのか。私は顔中から冷や汗を流し続けている。
もしかして、影で盗撮しているのがバレたか
友達とひそひそ話しているキモい内容がバレたか
私は推しをチラ見する。推しは私のことなんて見ないで前だけ向いて歩いている。これはあれなのか、歩いていたら道中にカーストトップ集団がいて、そいつらに取り囲まれてあれこれ嫌なことを言われて精神的にフルボッコにされたあげく、明日からの学校生活が地獄になるやつなのか?
そしたら、推しが足を止めた。
「ちょっと公園で話さない?」
「あ、はい」
推しは尚も私のことを見ずにすたすた歩いていってしまう。なんだろう、すごく怖い。しかし、ブランコの前まで行くと推しがそこに座った。ごめん、ぶっちゃけ尊すぎて死ねる。
私は推しの斜め前に立つと、推しが視線を向けてくる。その顔面のよさが眩しすぎて正直失明するんじゃないかと思う。
「あのさ」
「はい」
「いつも俺のこと、見てくるよね」
あー、はい。バレてました。もう終わりです。明日からの学校生活、地獄です。
私は絶望的な気持ちになっている一方で、予想とはまったく異なる反応をされた。なんと、推しは私から顔をそらしながら赤面しているではないか。
可愛い、尊いと「なぜ?」という気持ちが複雑に私の中で絡み合っている。
「そんなに見られると、その……俺、意識しちゃうというか……」
「はい?」
「あの、その……す、好きです」
「え!?」
さすがに驚きすぎて言葉が出ない。嘘だ。ドッキリなのか。いや、推しが顔を真赤にしているから多分違うんだろう。
それにしても私の何が推しの何かの花を咲かせてしまったんだ!
私は「顔を赤くして尊い、写真撮りたい」と思うと同時にこんなストーカー野郎のことを好きになる推しのことがなんだか心配になって、混乱しすぎて感情の着地点を失った。
花咲いて、あとは
しおれて枯れて落ちておしまい、じゃない
次につながる何かをどこかに蓄えて
ときが来たらまた咲く
咲いてるときだけ
生きてるわけじゃなくて
見てないだけで
ずっと、ちゃんと、生きてる
駅の構内ってなんでこんな殺風景なんだ?
乗り換えのふとした通り道なんて、つまんないったらありゃしない
毎日通る道だからもう少し余裕と面白味が欲しいわけよ
なんだそのコンクリート
なんだその壁
なんだその天井
絵画でも飾っとけや
殺風景って名前が主人公のドラマがあったな
殺風景ー殺風景ー
って心の中で歌ってみたところで殺風景は変わらない
それにしても殺風景ってすごい言葉だな
どんな風景だよ
殺風景ー殺風景ー
なんて思っていたら駅の中にも花が咲いていた
花屋があった
花咲いて 完
花咲いて…
花を咲かせるのって難しい。
水、肥料、光
何より気候、季節が合っているか
私に育てられる種を選ぼう。
そして土つくりからはじめるのだ。
花も、夢も
大きく咲かせるためには
ある程度の条件が必要なのだ。
『花咲いて』
学校から持ち帰られた小さなプランターにはアサガオが植えられている。発芽や双葉と本葉の観察を経て伸びた葉っぱにはあちこちにつぼみらしきものがあり、こどもたちは毎朝ラジオ体操帰りにそのつぼみを眺めたり、いつ開くのかと話しかけたりキッズカメラで写真に収めたりと楽しみに観察を続けていた。
昨晩から雨がよく降り、近所の広場でのラジオ体操が中止となった朝。リビングで体操を終えたこどもたちが軒先のアサガオの様子を見るために玄関を開けた途端に喜色ばんだ声を上げた。キッチンの手を止めて見に行った先には薄青色のアサガオが一輪、こちらに向かって微笑むように咲いていた。こどもたちはドタドタとカメラを取りに家を駆け回る。次第に明るくなっていく雨上がりの空から強い日差しが差し込んで、テレビの天気予報が梅雨明けを知らせていた。
花咲いて
最近色々なことがあってかなり気分が落ち込んでいた。
何にもいいことないや〜。とやけになっていたとき、まだ咲かないのかな?と2ヶ月程前から気になっていた花咲が咲いていた。
私にもいいことがあったじゃん。
花が咲いて幾数月
散る間際の花の色も美しい
その一生を持って世界を彩る美しき色彩の一部となる
私たち人間も、美しく散る一端となりたい
抽象画が好きだ。
タイトルや解説で絵の細部までこだわって説明している風景画や人物画も好きだけど、特別何の説明もない、タイトルもついてない抽象画が好きだ。観た人が思うがままに解釈して感想を言い合える、そんな雰囲気があるから。
でも大半の人は何を描いているか分からないと言って、抽象画を敬遠する。そこが面白いところなのにと思って勧めても、皆大抵首を振る。私には芸術がわからない、と。
だからだろうか、僕の絵がバズらないのは。
親に頼み込んで、奨学金も借りて、絵の勉強のために美大へ入った。似たような境遇の人とつるみながら絵を描きまくる日々を過ごした。就活の時期で周りがどんどん企業から内定をもらう中、どうしても絵の仕事をしたかった僕は、思い切ってインフルエンサーの世界へ飛び込んだ。
今はなんでも自分発信が有利に働く時代だと感じた。だから僕も自分から自分の絵を公開していった。それでもなかなか高評価は稼げないし、フォロワーも増えない。もっとバズるような絵を描かなきゃと、実家の自分の部屋に引きこもりとにかく絵を描いた。
他のものが視界に入って絵の妨げにならないように、部屋は暗くして間接照明でキャンバスだけを照らした。そのうち学校へ行く時間も、風呂に入る時間も、スマホを開く時間も、食べる時間も、トイレに行く時間も、寝る時間も。絵を描く行為以外の時間がもったいなくて煩わしく感じるようになった。どんどん自分を追い込んだ。
一体どのくらいの時間を絵に注ぎ込んで過ごしたのだろう。僕の筆が止まったのは、たった一本の電話だった。着信音が耳に入ってきて、集中力が切れたのだ。
キャンバスへ向けていた筆を下ろすと、腕はだらんとしてまるで力が入らなかった。筆が指先から滑り落ちた。カシャンと床に落ちた筆を拾い上げる力が出ない。筆を持った手を見ると手首から指先にかけて微かに痺れていて、腱鞘炎になっているようだった。
反対の手に持っていたパレットを無造作に椅子へ置いた。周りは絵の具と筆、キャンバスだらけで足の踏み場がない。掻き分けてベッドのそばにあるスマホを取り上げた。充電器に差しっぱなしだったため、スマホと繋がっていたコードを取り外す。まだ電話は鳴り続けている。表示を見ると大学の同期のケンジからだった。
「はい」
僕は邪魔された八つ当たりのように、イライラしながら電話に出た。
「もしもし、トシヤ? 久しぶり」
ケンジは僕の苛立ちを気にした様子もなく、あっけらかんとした声で話し出した。
「お前全然学校来ないんだもん。大丈夫? 単位足りてる?」
「うっせぇな、余計なお世話だよ」
元々卒業単位ギリギリしか講義を入れていなかったため、通学してない今、留年しそうとは頭の片隅で思った。
「で、何。なんか用事あったんだろ」
「えっ、もっと世間話楽しもうぜ」
「僕今忙しいから」
「いやマジ何やってんの? やばいバイトとか変な宗教とかハマってないよな? 大丈夫だよな?」
「大丈夫だから! 要件!」
僕が大きな声を出すと、スピーカーからため息が聞こえた。それがさらにイライラしてしまい、思わず舌打ちが漏れた。電話に入ってしまったか、気にする余裕は僕になかった。
「俺、今度個展やるんだよ」
スマホから聞こえた声に、僕は言葉を失った。何も返事ができない僕に構わず、ケンジは珍しく真面目な声で話を続けた。
「俺さ、入学してからずっとSNSでショート動画出しててさ。絵を描いているところを二分くらいの動画にして投稿してたんだ。三年続けてフォロワーも増えたし、バズる動画も出てきたら企業側から声が掛かってさ」
夢だったんだよね、個展開くの。
そんな夢、全世界のクリエイター共通だろうが。
声には出ない悪態を心の中でついた。
「トシヤには観に来てほしいんだ。ほら、入学してからトシヤには世話になりっぱなしだろう? だから招待ってことで」
それ以降のケンジの声は僕の耳に入ってこなかった。僕自身、自分がどんな返事をしたのかすら思い出せない。いつの間にかケンジとの通話は終わっていて、トーク欄にはケンジの個展の詳細が送られてきていた。でもそれに何か返す気にならなかった。
ケンジは水彩の分野で、僕とは畑違いだった。にも関わらず、たまたま被ったスケッチの講義でたまたま隣に座っていた僕に「影の濃淡ってむずくね?」と突然話しかけてきたのがケンジだった。話すようになってからはどうやって美大に入ったんだ、と思うくらい美術の基本みたいな質問を繰り返していた。僕がうんざりしながらも、何だかんだ答えているうちにつるむようになったのだが。
そういえばケンジにSNSで公開するのも良いと勧めたのは僕だった。僕は写真しか投稿してないけど、ケンジは最初から動画を撮っていた。完成系だけを観て欲しい僕と違い、ケンジは描いている工程から視聴者に楽しんでほしいと言っていた。実際水彩絵の具を手に取らない油絵専門の僕には、描き方や色の重ね方の違いが面白く、投稿を楽しみにしていた。最初は僕を含む周りからしか高評価を押してもらえなかったのに。
久々にケンジのアカウントを見た。ショート動画を人気順にすると、一番左上の動画が百万回再生を記録していた。スクロールして他の動画を見ても、軒並み十万から二十万回再生されている。
ケンジの絵は水彩の風景画が中心で、絵の中に描かれる人物は誰もが生き生きとしていた。僕の描く抽象画とは違って、何を描いたのか分かりやすくて人ウケのいいナチュラルな色彩で描かれていた。
海外旅行の際の街中。
都心の賑わうオープンカフェ。
全面ガラス張りのビルに反射する空。
防波堤に腰を下ろしてアイスを食べる高校生。
夕暮れ時に走って帰る子どもたちの後ろ姿。
酒を酌み交わす客で大賑わいの大衆居酒屋。
どれもありふれた風景なのに、ケンジの絵は人を惹きつけた。魅了されて、スクロールする手が止まらない。それもだんだん嫌になってきて、スマホを投げ出した。
「あっ」
投げてしまったスマホは、壁に立てかけて乾燥中のキャンバスのど真ん中に当たった。昨日仕上げたばかりの絵だった。慌ててキャンバスに駆け寄って傷がないか確認したら、スマホが当たった真ん中に大きな凹みができてしまった。その凹みを見て、俺は何もかもがどうでも良くなった。
まだSNS用の写真を撮ってないのに。
SNSで高評価を集めて、フォロワーが増えればケンジみたいに個展ができるかもしれない。事実、ついさっきまではその夢を目指していたはずだ。でも今考えると、知らない画家の人気のない抽象画なんて観たい人はきっといない。
だから、綺麗に写真を投稿する必要がない。
僕は絵の全体と凹んだ所を乱雑に写真を撮って、明度だけ明るくして投稿した。これ以降、しばらくはSNSから離れようと思って通知を切った。
今からでも美大生の就活って間に合うんだろうか。
僕は絵を描いてご飯を食べていくことを諦めて、一般企業へ就職することをたった今決めた。絵から離れると、脳みそがぐるぐる活発に動いていることがわかる。
まずは部屋の掃除、次に家族へ謝罪。明日は大学へ行って単位がどうなるか相談。段取りを決めながら部屋の電気をつけて、カーテンを開けた。窓から降り注ぐ日差しが眩しくて、目をギュッと閉じた。
【誤ってスマホをキャンバスにぶつけてしまい穴が開いたためしばらくの間更新停滞します。今までありがとうございました。】
数少ないフォロワーへ向けて発信した短い文章と二枚の写真を添付した投稿は、瞬く間に拡散されて多くの人の目に留まったらしい。通知が鳴り止まない現象をリアルタイムで体験することなく、僕は黙々とキャンバスをビニール紐で束ねていた。
『花咲いて』
《花咲いて》
僕達が訪れているのは、温暖湿潤な地域。
今回は、観光の目玉としたいと紹介された植物園に来ていた。特に今の時期は、ちょうど蓮の花が見頃との事。
蓮は夜明けとほぼ同時に開花が始まり、午後には花が萎んでしまうそうなので、前の日は早めに休んで次の日の早朝に備えた。
夜が明けてすぐ宿を出て、植物園内の池のほとりに辿り着く。
池はかなり大きく、地表に顔を出したばかりの太陽に照らされて水面はキラキラと輝いていた。
そして、そこには事前の説明通り、池一面を覆うように鮮やかな緑の丸い葉と、更に少し上にたくさんの薄紅の蕾が広がっていた。
その広大さに見惚れていると、あちこちからほんの微かにカサ、ポン、と音がする。
見れば、ちょうど目の前に外側だけ開いた蓮の蕾があった。
中心部はまだ開いておらず、お互いが重なり合って雄しべと雌しべを守るかのように花弁が閉じられていた。
彼女がそれを指差しながら、反対側の人差し指を立てて、そっと自分の唇に当ててみせた。
僕が頷けば、彼女も頷きかえし、視線を蕾に向ける。
そうして蕾を見つめて何分か経った頃だろうか。
この蕾、もしかして見始めた時よりも丸く膨らんでいる?
そこに気が付いた直後だった。
ポン!
目の前の蕾が、音を立てて花開いた。
丸い薄紅が一瞬で開き、間から薄黄色の雄しべと雌しべが色を添える。
その様は、艶やかでコミカルでもあるのに、敬虔にも思える清廉さで。
初めて見た瞬間に感動して思わず彼女に顔を向ければ、目が合ったと同時ににっこり咲って、胸の高さで拳をグッと握りしめてみせた。
その唐突な行動に不意を突かれ、ポン、カサ、ポン、という音の中、蓮の開花を妨げぬよう声を押し殺して咲ってしまった。
それに気を悪くしたのか、口を真一文字に結び目元を赤らめながらじっと僕の顔を見る彼女に片手を上げて謝罪の意を伝え、また二人で池の蓮に目を向ける。
こんなやり取りの間にも太陽は徐々に水面から離れていき、次々と蓮はその薄紅の花を開いていった。
ここまで日々を咲って暮らせるなど、一年前には想像もしていなかった。
また来年、こうして同じように二人で蓮の花を見に来よう。