『脳裏』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あなたから死を賜る瞬間が今も私の脳裏に焼き付く。
鋭い切っ先、煌めく刃。私を貫く剣(つるぎ)の柄には力がこもり、その瞳にはなんの光も灯さない。
愛してる、と私にそう囁くあなたの声が遠く消える。
あなたと過ごしたあの日々が硝子のように砕け散る。
出会わなければよかった?
愛さなければよかった?
私を憎み、その手を汚させた罪は私のせい?
すでにこと切れた私の身体に、あなたが二度目の刺突を構える。そこにかつての愛などありはしなかった。
私はもう二度とあなたを愛したりはしない。
愛する人に殺される残酷な結末はもういらない。
最期に見たあなたの涙の意味も…わからなくていい。
だからどうかこの悪夢を悪夢で終わらせて。次に目が醒めるのならば、あなたのいない世界をお願い。
もしもあなたを再び愛した瞬間、私はあなたを憎まずにはいられない。
そして私の心は本当に、壊れて、砕けて、跡形もなく、世界の塵のひとつにしかならないでしょう…。
【脳裏】
可愛い子には旅をさせよ
そんな言葉にならって娘を送り出した
ちょっとした小旅行
おじいちゃんおばあちゃんちへおつかい
多分今頃駅に居て、ドキドキしながら電車を待ってる
電車に乗ったら外の景色を見てきっと感動してる
おばあちゃんにはお迎えをお願いしたから
きっと向こうに着いたら再会に大喜びしてるんだろう
おばあちゃんはきっと甘やかすから
お菓子を貰っていっぱい遊んで、夜はぐっすり眠るんだろう
おじいちゃんは料理上手だから美味しいご飯を作ってくれる
娘はきっと食べすぎちゃうだろうなぁ
明日になったら3人でショッピングに行って
玩具を買って、フードコートでアイスも食べてたりして
でも娘は寂しがり屋だから
帰る頃には二人と離れるのは寂しくて泣いちゃうかも
家に帰ってきて「ただいま!」って
思い出話をいっぱい持って帰ってくる
娘が成長して帰ってくるのがとても楽しみ
娘の旅の光景が脳裏にどんどん浮かび上がってくる
「ふふっ、私も寂しがり屋なんだなぁ」
まだ娘が家を出て、1時間も経っていないのに
もう帰ってくるのが待ち遠しくなってる私
ブーブー
そんな時電話がなった
知らない番号だ
「あなたの娘が車に轢かれた」
電話の内容を聞いて、驚く私
病院に急いで向かう
きっと大丈夫
娘はケロッとしてるはず
「おばあちゃんちに行くの!」
なんて言ってお医者さんを困らせてるかもしれない
娘は無事だと、娘の元気な姿を思い続ける
病院に辿り着き、娘と再開する
そこに居たのは傷だらけの娘
目は開かず、一言も話さない
これは夢だ
きっと今ごろ娘は電車に乗っているのだと
脳裏にいる娘こそ真実なのだと
しかし現実は裏返ることはなく
ただただそこには旅から帰らぬ娘がいた
そして私は理解した
可愛い子には旅をさせても、その終着地は誰にも分からないのだと
脳裏-(11/9)
今年一年、自分は頑張ったと信じて、おひとり様デビューしたかった場所へ行く事にした
色々と情報収集したり、予約したりしている時に、ふと思い出す
当時遠距離だった彼とは、会いに来てくれる度によく行ってたな、と
細かな記憶は薄くなってしまったが、そういえば懐かしいなと脳裏をよぎる
初めてのおひとり様
ワクワク楽しみが大きい
おひとり様もここまで来るとベテランの域だな
#脳裏
頭の裏には
起きて欲しくない未来が映る
これは脳の裏だから?
いいえ
これは過去の裏の裏
「脳裏」
ただ、なんとなく
もう会えないような気がしてる
これまでも会えない時間が長い時もあった
でも、なんとなく
「終わり」という言葉が脳裏に浮かぶ
私はベルセルクが好きだ
ベルセルクの曲を聴いていたら平沢進の虜になった
今日はお昼寝の時にparadeをつけた
1日中何回も何回も聴いていると脳裏に焼き付いて聴いてなくても聴こえてくるようになった
明日は何をリピートしようかなとても幸せだ
『脳裏』2023.11.09
脳裏に浮かんだのは、この黒ずくめの男がただものではないというヴィジョンだ
己の力で勝てる見込みはないし、逃げ遂せることも出来ないだろう。
なので、慇懃に「こんにちは」と話しかけてきた男に、同じように挨拶を返すことしかできない。
厄介なヤツに好かれてしまった。
オレがこうして「ここ」にいることが面白いらしく、男は小難しい言葉を並べながらニコニコと笑う。
よくよく話を聞くと、オレの古巣にいたリーダー格とこの男は遠い親戚のようなものらしい。
そんな気はしていた。文字を多く並べたような言い回しも、紳士然とした態度も。そして、辞書に載っているような「笑顔」も。
胡散臭いと形容するにふさわしい男は、オレが気に入ったようで、食事にでもいかないかと誘ってきた。きっと断ることを是としないだろう男は、上手く表情筋を動かして、ニッコリと笑った。
女の子なら卒倒しそうなぐらいの完璧な笑顔。端正な顔立ちからそんなものを繰り出されては、否とは言えないだろう。
男の魅力はともかく、今のオレに否と応えるだけの猶予は無い。
脳裏に浮かんだヴィジョンには、男が良からぬことをするイメージもいたからだ。
だから、オレは甚だ不本意ではあるが是と応えることしか出来なかった。
「脳裏」
海しかないじゃない
思い出すのは……
あの海は何処に行ったのだろう
今の海は何処に消えたのだろう
私には
分からない事ばかり
でもね
いろあって
悩んで
怒る事ばかりだったけど
誰に言ってるのかも
そんな事分からない
誰が聞いてるのかも
分からない状態
散らついた記憶と
元に戻せない時間
全て幻の海が引き起こした事の始まりだったから
頭から離れない
"脳裏"
空を見上げていると『あの雲の形、兎みたいだなぁ』って思ったり、『なんかこの葉っぱ、この前スーパーで見かけた洋梨みたい』って思ったり、たまに全く別の『何かに似ている』とちょっと面白がったり遊んだりしてる。
いい大人が何やってるんだ、ってその度に自分を叱ったりする。やめようやめようって思っているし気を付けてもいる。けどまたやってしまう。
こんなガキみたいな事、もういい加減やめたいのに…。どうやったらやめられるんだ…?
それぞれ違う目的地に向かってたくさんの人が行き交い交差する。夜だというのにこの辺り一体を明るくしてしまう電光掲示板。
人々の騒々しい声、重く鈍い音、うるさいブレーキの音が遠く聞こえる。
待ち合わせていた友人の最後の笑顔が脳裏に焼き付いていた。
『ほんとに女の子だ』
そう言って君が笑った。
何ヶ月も続いた文字だけのやりとりを
『遊びに行っていい?』そう言って終わらせた君は
想像していたよりもずっと華奢で
だけど想像していた通り 無邪気な女の子だった。
同じ年齢で 同じような傷を抱えて
バーチャル世界に逃げ込んだ私たちは
離れた場所にいたはずなのに、確かに出会って
異性だったら恋に堕ちるようなスピードで仲良くなった。
出会った頃は未成年だった私たちが
お酒を飲める歳になって
それぞれにパートナーを得て
家族を増やして
『おばあちゃんになったら さ…』なんて
未来の話をしたよね。
それなのに
君はおばあちゃんにならないことを選んだ。
ねぇ?
目を閉じて浮かぶのは
初めて会ったあの日に一緒に見たイルミネーションで。
何をどうしたら、一緒におばあちゃんになれたのか?
今も そればかり考えてる。
【脳裏】
蘇る。
ただ、
飛行機が見えた。
それだけ
なのに。
大丈夫だよ。
わたし。
もう
あの時の
わたしとは
違うの。
絶望
悲しみ
後悔
全部
あの時のもの。
わたしは
もう
今を生きる
ことに決めたから。
思い出してもいいから
落ち込まないで、
わたし。
#脳裏
脳裏には、いつも趣味で書いている小説のことがある
今はちょうど、登場人物の一人が新天地に旅立つところで、テレビを見ながら、頭の中には駅のホームの別れの場面があったりするんだ
もちろん、ちゃんとテレビも見てるよ
いつもそんな感じ
いつも僕の脳裏によぎるのはあの顔だ。
だけど今日は今日だけはいつもより美しく瞳に映った。
ただそれだけで僕の心は、はち切れそうだ。
脳裏
その金色の髪は晩夏の空の下で光を弾き、チカチカと跳ねるような輝きを脳裏に焼きつけた。
「もう金髪にはせんのですか、上官」
会議室からの帰り、西陽が差し込む休憩所で缶コーヒーを受け取りながら尋ねれば、相手は一瞬不思議そうな表情を浮かべたあと、いつものように苦笑した。
「さすがにねぇ。怒られちゃうから」
誰に、とは言わないが一人しか思い当たらない。いや、嫌味を言うであろう人物を含めれば二、三人は増えそうだ。
けれどもそれが金髪にしない理由ではないだろう。怒られようが嫌味を言われようが、彼は一度こうと決めたらそのままとりあえず突っ走る男だ。あとのことは走ってから考える。今も昔も、その点は変わらない。
だから亜麻色に染められている彼の髪が金髪にも元の黒髪にも戻らないのは、その必要がないからだ。
「金髪の方が良かった?」
「いや、驚くほど似合ってなかったなと思い出しまして」
「ええー……」
情けない声を上げながら反論はしない。それなりに自覚はあったのだろう。
「じゃあさ、黒髪のオレと、金髪のオレと、今のオレと。どれが一番好き?」
「黒髪時代は生意気だと思いましたし金髪時代は馬鹿やってんなと思いましたし今は面倒クセェなこいつって思ってますよ。なんですかその面倒くさい彼女みたいな質問」
「ひどい!」
「まあ、一番長く見てて見慣れてるのは今の状態ですかね」
その髪も、制服も。もはや好きとか嫌いとかの話ではない。
その言葉を聞いて指を折り、年数をちまちまと計算していた相手が「本当だ!」と今更驚いたように顔を上げた。
「いや、数えるまでもないでしょ」
「そうなんだけど、なんか改めて年数として認識したらびっくりしちゃって」
「そういうところですよ」
思いついたらそのまま、勢いで走り始めてしまう。まっすぐに前だけを見て走り続けているから、こうして昔話をしないとうっかり意識の外に放ってしまう。
もちろん、忘れることは決してないのだけれど。
少しも似合っていなかった金髪が脳裏に焼きついているのは、足を止めかけていた彼が再び走り出す決意を込めた、晴れやかな顔を覚えているからだ。
その瞬間を自分だけはきっと、いつまでも鮮明に覚えているのだろう。
脳裏に焼き付いている、あの人の顔を
ふと思い出すときがある
脳裏にちらつくこの記憶
身に覚えが無いこの記憶
周りに聞いても覚えが無いこの記憶
しかし確実に見えるこの記憶
探してみせようこの記憶
脳裏の記憶が分かるまで
この記憶と共にこの旅は続く
お題『脳裏』
したり顔横切る脳裏黒猫が
幸福を呼ぶ鍵となって
(脳裏)
脳裏 理科室 月夜 呼び出し 親友 嘘
相談事 戸惑い 苛立ち 闖入者 社畜 苦労話
芝居っ気 計算ずく 苦し紛れ 冷蔵庫
巧妙 ウサ耳 身じろぎ 凝視 心拍数
裏口 血眼 高架下 煙草 コート
扉 乱射 遮断機 急行列車 シャウト 逃亡
海の家 沿岸警備 病室 ついたて 手錠
薄れゆく意識 君の顔
「脳裏」
#244
「私はあなたを許さない」
そう言ってから離れて行く彼女が脳裏に浮かんだ。
起きていつものように写真を眺める。
愛おしい彼女はもう二度と戻らない。