君とは違う人

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可愛い子には旅をさせよ
そんな言葉にならって娘を送り出した

ちょっとした小旅行
おじいちゃんおばあちゃんちへおつかい

多分今頃駅に居て、ドキドキしながら電車を待ってる
電車に乗ったら外の景色を見てきっと感動してる

おばあちゃんにはお迎えをお願いしたから
きっと向こうに着いたら再会に大喜びしてるんだろう

おばあちゃんはきっと甘やかすから
お菓子を貰っていっぱい遊んで、夜はぐっすり眠るんだろう

おじいちゃんは料理上手だから美味しいご飯を作ってくれる
娘はきっと食べすぎちゃうだろうなぁ

明日になったら3人でショッピングに行って
玩具を買って、フードコートでアイスも食べてたりして

でも娘は寂しがり屋だから
帰る頃には二人と離れるのは寂しくて泣いちゃうかも

家に帰ってきて「ただいま!」って
思い出話をいっぱい持って帰ってくる

娘が成長して帰ってくるのがとても楽しみ
娘の旅の光景が脳裏にどんどん浮かび上がってくる

「ふふっ、私も寂しがり屋なんだなぁ」

まだ娘が家を出て、1時間も経っていないのに
もう帰ってくるのが待ち遠しくなってる私

ブーブー

そんな時電話がなった
知らない番号だ

「あなたの娘が車に轢かれた」

電話の内容を聞いて、驚く私
病院に急いで向かう

きっと大丈夫
娘はケロッとしてるはず

「おばあちゃんちに行くの!」

なんて言ってお医者さんを困らせてるかもしれない
娘は無事だと、娘の元気な姿を思い続ける

病院に辿り着き、娘と再開する

そこに居たのは傷だらけの娘
目は開かず、一言も話さない

これは夢だ
きっと今ごろ娘は電車に乗っているのだと
脳裏にいる娘こそ真実なのだと

しかし現実は裏返ることはなく
ただただそこには旅から帰らぬ娘がいた

そして私は理解した
可愛い子には旅をさせても、その終着地は誰にも分からないのだと

11/9/2023, 2:04:24 PM