月が凪ぐ夜

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あなたから死を賜る瞬間が今も私の脳裏に焼き付く。

鋭い切っ先、煌めく刃。私を貫く剣(つるぎ)の柄には力がこもり、その瞳にはなんの光も灯さない。
愛してる、と私にそう囁くあなたの声が遠く消える。
あなたと過ごしたあの日々が硝子のように砕け散る。

出会わなければよかった?
愛さなければよかった?
私を憎み、その手を汚させた罪は私のせい?

すでにこと切れた私の身体に、あなたが二度目の刺突を構える。そこにかつての愛などありはしなかった。


私はもう二度とあなたを愛したりはしない。
愛する人に殺される残酷な結末はもういらない。
最期に見たあなたの涙の意味も…わからなくていい。

だからどうかこの悪夢を悪夢で終わらせて。次に目が醒めるのならば、あなたのいない世界をお願い。

もしもあなたを再び愛した瞬間、私はあなたを憎まずにはいられない。
そして私の心は本当に、壊れて、砕けて、跡形もなく、世界の塵のひとつにしかならないでしょう…。


【脳裏】

11/9/2023, 2:05:58 PM