〘※未消化お題 4/17分〙
桜散る 水面に浮かぶ花筏
夜闇に行燈 小さな明かり
はらはら落ちる 花しぐれ
君はとなりで 静かに眠り
肩ほのかに 温もりひとつ
その寝息を欹て目を閉じる
これを幸せと 呼ばぬなら
なにを幸せと 呼べばいい
【桜散る】
〘※未消化お題 4/21分〙
ひとしずく、ひとしずく…
滴る水が地面に落ちていく
長い年月をかけて地面を削り
小さなくぼみをつくっていく
堅固な心に穴をあけるように
あなたはわたしに降りそそぐ
やがてくぼみに水が溜まり
そしてその水が消えるとき
心にあいた深い穴に気づく
心を満たすあなたに気づく
【雫】
子供の頃はただ一緒にいて、遊んで、笑い合う。
僕の隣に君がいる…ただそれだけでよかった。
けれどいつしか二人は分かたれ、道を違えた。
大人になるとはそういうことだと、誰かが言った。
子供のままではいられないと、君が言った。
―――…僕は、それが嫌だと言った。
…本当はわかってる。大人になるという意味を。
子供のままではいられない、その理由も知っている。
それでも僕は、君との時間だけはあの頃のままでいたかった。
純真無垢に君を想い、ひたすら君を愛しく想う。
何ものにも囚われず、何ものにも阻まれず、
周囲の視線も、世間の偏見も、何もなかった。
子供のままでいたかった。
そうでなければ、
この恋は許されるものではなかったから…。
【子供の頃は】
〘※未消化お題 4/27分〙
誰もがみな生きる意味というものを探し求めて、そしてそれを死の間際に得るのだろう。
私は、私の死の間際にそれを得られるのだろうか。
冷たい離宮の中で、孤独という寒さの中で、ただ一人誰にも看取られず潰えていくこの瞬間にでさえ、けれどその兆候は見られない。
私はなんのために生まれたの?
私はなんのために死にいくの?
その問いに答える人も、神もなく。
枯れ果てた涙が流れることはなく、声にならない言葉が届くこともなく、凍てついた花は氷漬けのまま粉々に砕け散っていく。
氷花―――それは凍りついた花。
温かい日差しをいっさい知らず、
その美しさにも目に留められない。
彼女の真実は、その死後に知られることとなる。
【生きる意味/氷花】
彼が捨てた日常に、彼が願ったものはなかった。
家族も富も権力も、なにもかもに恵まれて不満を持つことさえも妬まれるものだっただろうに、そんなものを一切感じさせずに、彼はすべてを捨てた。
何がそんなに彼を悩ましていたのか、
ずっとそばにいたはずなのに気が付かなかった。
けれど気づいた頃にはすべてが遅く、
彼は一度も振り返ることなく去ってしまった。
「叶えたいことがある」
と、その一言だけを残して…。
【日常/花冠】
〘※未消化お題 4/26分〙
あなたがきっと正しいのかもしれない。
そして私がきっと間違っているのだろう。
けれど私は私の行いを間違いだとは思わない。
私にとってそれは正しいことだから。
善悪というのは人それぞれに違うもの。
あなたにとっての悪が私にとっての善で、
私にとっての善があなたにとっての悪ならば、
―――…ああ、私たちは初めから
理解りあうことなどなかったのですね。
【善悪】
好きな色は?と言われたら、
私は「黒」と答えます。
すべての色を飲み込んで、混ぜ込んで、
吸い込んで、積み重ね、重なり合う。
年が移ろうごとに、出会いを重ねるごとに、
いつしかその色は深く、深くなっていく。
あの人は赤。あなたは青。君は紫。
彼は緑。彼女は桃色。
そしてまだ見ぬ数々の色たち…。
「黒」はとても素敵な色なんですよ。
【好きな色】