『美しい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「陛下。『美しい』はね、人それぞれ、時節によっても変わるものなんですよ」
馬車の中、向かいに座る聖女が、俺に向かって得意げに言った。
「だから本当の意味では、優勝なんて決められない──ワタクシが推していた絵画が今回の展覧会では優勝にならなかった、そんなのは想定内なんです」
外世界から召喚されたこの聖女はかつて、俺に刃を向けられながら「侵略以外の趣味を持て」と言い、それによって俺の剣を引かせた。
そしてそのよく回る口で、外世界にあったという様々な文化のことを語り続け、おかげで俺と、俺によって征服された世界は、それらを知ったのだった。
殺し合いではない剣技や格闘技、チェス、団体同士で戦う球技、旅行──聖女は次々に「人々の生きがいとなるような趣味」を我々に披露していった。
そして今回、聖女が我々に教示したのが、絵画などの美術の鑑賞であり。
俺の名で絵画の大会──展覧会がひらかれると、聖女は俺を連れてすべての絵画を見て回り、いまはそれを終え、ようやく帰途に着いたところだ。
「……優勝がない? それでは、このような会を設けた意味など、ないのではないか?」
「絵を描く者にとって目標にも、励みにもなるから意味はあります。パトロンも見つけやすくなるだろうし、それに、」
聖女がニヤリとした笑みを浮かべ、続けた。
「賞金と名誉のために、お抱えの絵師を入賞させようとして審査員に賄賂を渡したりする、おバカ領主ホイホイにもなったでしょう?」
「ああ……言わんとすることはわかるが、ホイホイとはなんだ?」
「あ、えーっとね。粘着力で害虫を捕まえる装置のこと。にしても、おバカ領主は例外なく脱税もしてるんだもんね、もう笑っちゃう!」
外世界のことばを口にしたからなのか、聖女の口調が、初めて出会ったときのような、くだけたものになった。まぁ普段の敬語であっても、俺に敬意を払っているようには聞こえないのだが──。
「あーでも。陛下は『美しい』……ワタクシが見ても、他の誰が見ても、優勝間違いなしです」
唐突に、聖女が言った。口調も一応、戻ったようだ。
「なのに、どうしてモテないのでしょう。闇魔法使いの侵略者、ってイメージが強すぎるのかしら?」
「……『美しい』などと言われたのは、初めてだが。しかし"モテない"とはなんだ?」
「それはですね、陛下を慕う女性が少ない、という意味で……っ、やばっ! これって、不敬罪になっちゃうよね?」
再びくだけた口調になった聖女は、あたふたと落ち着きがなくなり──俺はそんな聖女を持ち上げて横に座らせ、よく回る口を牽制するべく、頬をつまんでつねってやることにした。
「不敬罪など、いまさらだろう。それで──おまえはどうなのだ」
「ひゃい?」
なんとも間の抜けた声が返ってきた。
「要するに、『美しい』は本来"モテない"ではない。ならばおまえは『美しい』俺を慕うと、そういうことであろう?」
「ふへっ! ひょ、ひょれは、またべちゅのひゃなしで、ひょの、」
ふん、これは──絵画など鑑賞するよりも、余程楽しいのだが?
美しいのは貴方の目尻
こんなに柔らかあたたかい
300
#美しい
〈美しい〉
「先生、割れちゃった……」
教室の隅で、ユイちゃんが泣きそうな顔をしていた。彼女が作っていた小さな陶器の器が、床に落ちて三つに割れていた。
子どもたちは三週間かけて、手びねりで思いおもいに器を造り上げた。
それが窯焼きから返ってきて、おひろめをしていたところだった。
「大丈夫よ」と私は彼女の隣にしゃがみこんだ。
「直す方法があるから」
この美術教室の講師になって二年。大学で立体造形を専攻して、卒業後は一応デザイン会社に就職できた。
でも、クライアントの要望に応えることばかりで、自分が作りたいものとは違う。そんな違和感を抱えながら働いていた。
結婚を機に退職したけれど、夫は理解してくれているものの、自分の創作活動にはまったく身が入らない。
大学の同期数人と借りたアトリエに行くのも億劫で、道具もずっとそのままにしている。
この小さな美術教室も、生徒は五人だけ。決して順調とは言えない。
でも、絵や工作が好きな子供たちが、無心に手を動かしている姿を見るのは、不思議と心が落ち着く。私が失ってしまったものが、彼らの中にはまだ輝いているような気がする。
「金継ぎって知ってる?」
私はユイちゃんの涙を拭いながら言った。
タブレットを取り出して、金継ぎの画像を検索する。割れた陶器を金で継いで修復する、日本の伝統技法。
「割れたところが、金色になってる……」
ユイちゃんの目が輝いた。他の子供たちも集まってくる。
「そうよ。壊れたものを隠すんじゃなくて、むしろそれを美しく見せるの」
タブレットの画面には、金の線で継がれた茶碗や皿が映っている。ひび割れが、まるで模様のように輝いていた。
「先生、これ、きれい」
「うん、美しいよね」
私は画面をスクロールしながら、子供たちに問いかけた。
「でも、みんな。
『美しい』って、どういうことなんだろう?」
子供たちは顔を見合わせた。
「ピカピカしてること?」
「お花みたいなこと?」
「うーん……」
私は画像を並べて見せた。割れた器。修復作業中の陶器。そして金継ぎで完成した作品。
「この割れた器は美しくない?でも、金で継いだら美しくなる?
じゃあ、直している途中は? この職人さんが一生懸命作業している様子は?」
子供たちは真剣な顔で画面を見つめている。
「僕は、壊れちゃった時も美しいと思う」と、一番年上のケンタくんが言った。
「だって、ユイちゃんが一生懸命作ったんだもん」
「私も!」ユイちゃんが頷く。
「金色になったら、もっと好きになれそう」
「先生は?」とマユちゃんが私を見上げた。
「先生は何が美しいと思うの?」
──私は言葉に詰まった。
美しいもの。私はそれを追い求めて造形を学んだはずだった。
でも、いつの間にか、完璧なもの、評価されるもの、売れるものばかりを考えるようになっていた。
創作することが苦しくなり、筆を持つ手が止まった。
「先生もね、考えてるの」
私は正直に答えた。
「でも、今日、みんなと一緒に考えられて良かった」
その後、私はユイちゃんの器を丁寧に接着し、金色のペンで継ぎ目を飾った。
本物の金継ぎには及ばないけれど、子供たちは目を輝かせて見ていた。
翌週、ユイちゃんは金色の線が入った器を大切そうに持ってきた。その中には、小さな多肉植物が植えられていた。
「先生、見て。お母さんと一緒に植えたの。
これ、前よりもっと好き」
その笑顔を見た瞬間、何かが胸の中で沸き上がった。
完璧である必要なんてない。壊れてもいい。
その傷を受け入れて、それでも作り続けること。子供たちが無心に手を動かす姿、失敗を恐れずに挑戦する姿。
それこそが美しいのだと。
私は久しぶりに、借りているアトリエの扉を開けた。
「仁美? 久しぶりじゃない」
陶芸作家として活躍している貴理子が驚いている。
「……造る気、出てきた?」
「まだまだ。でも」
道具を棚から取り出し、確認する。
「自分で造らずに、子どもたちに偉そうなことは言えないでしょ」
貴理子が嬉しそうに微笑む。
何を作るかはまだ分からない。でも、作りたいという気持ちが、確かに戻ってきていた。
美しいとは何か。その答えは、きっと作り続ける中でしか見つからない。
でも、心の中の想いを形にしよう。
子供たちが教えてくれた、そのシンプルな真実を胸にして。
──────
美的感覚は人それぞれですが、子どもたちには素直な美しさを見て生きてほしいなぁと思うこの頃です。
君が笑う。僕に向かって。
「あはははは。いい気味! その格好がお似合いね!」
校舎の裏庭で殴られ、蹴られ、水をかけられ、ボロボロになった僕に。
笑った君に向かって、僕もへらりと笑う。
「……何笑ってんのよ。気色悪いわね!」
更に蹴られる。
鳩尾に当たり、息が一瞬できなくなる。
「はぁ……はぁ……。すっきりした……。もう帰るわ……」
疲れた表情で君が去っていく。
その後ろ姿すら美しい。
高笑いしている君も、憎悪を向ける君も、見下したような表情を浮かべる君も、蔑むような目で見る君も、僕にたくさんの感情を向けてくれる君は、とても美しい。
また明日も、美しい君と一緒にいたい。
『美しい』
以前、友だちと可愛いとは?
可愛いは、美しいとは違うんうだよね~
可愛いは、可愛い!美しいとは違うんう。でもこの先美しくにもなれるかも?って期待はある気がする。
逆に美しいから可愛いは、何かを崩したら可愛くなる気がする。って話をした気がするなぁ~
その後、自分は美しくなるんだー!って決心したけど、、、、、
美しいものは、心を豊かにしてくれる。
日々ある美しい物を見逃さないように、楽しむ美しい世界!
「美しい」
自分に足りないものに惹かれると言うけれど、
人間が美しいものに惹かれるのは人間が根本的に醜い生き物だからだったりするのだろうか。
がんばっている先輩の
横顔とポニーテール
毎週土日は図書館にいて
いつもの席で
1人で
黙々と勉強している
その美しさ
その静けさに
いつも
憧れていた
そのがんばりは
今日のため
がんばってください
私も2年後
がんばります。
5月になると
毎年バラを見に行く
女性が多く
年配の男の人は
カメラを構えている
手入れの行き届いた
美しいバラ
色かたちもそれぞれで
あたりに
香りも漂よう
人への賛辞も
気を使うこのごろ
おばちゃん達は
(私も含めて)
心おきなく
あれが良いこれが良いと
大絶賛
美しい彼女に皆の目は釘付けだ
無論、俺もその中のひとりでしかない
だと言うのに彼女が俺に微笑んだ気がした
見て見ぬふりをしていても、頭に彼女の姿がちらつく
皆が彼女を賞賛する。その隅で俺は
きっと気のせいだと、今日も知らぬフリをしている
空も海も言葉が詰まるほど美しいから、自分が汚く見えちゃって、また少し悲しくなった
美しい思い出
嘘の記憶
醜い現実
何を信じても
刃の先が 自分に向いてるんじゃないかって
怖くもなるけど
あなたが気まぐれに書いて寄越した
小さな手紙は とってある
机の引き出しごと
タイムトラベルという魔法をかけて
いつか その鍵をなくしても
すっと立ち上がれるように
小さな手紙は とってある
-美しい
【美しい】
この世界は
色とりどりの木々や花があって
たくさんの人や動物が生きている
この宇宙の中で
こんな惑星はココだけだと思うと
美しい星だと自分は思う
【美しい】
「皆さんがうつくしいと思うものは何ですか。」
中学3年生の春、国語教師が私達に尋ねてきたのは、「自分が何を美しいと思うか」という美的感覚だった。
当時の私にとって、その時美しいと思えていたものは、有名ピアニストによる演奏や、フランスのパリにあるルーブル美術館など、芸術的なものが多かった。
「発表してみてください」
そうして、クラスの皆んなの回答を聞いた。「努力」だとか、「友達との絆」だとか、そのようなことを挙げている人が多かった。
私はその時こう思った。「努力がうつくしいと思うなんて、綺麗事だ。報われない努力もあるのに、そう思えるのは貴方が偶然“運が良くて報われてきたと思えているだけだ。”と。」
そんな不確かで曖昧な概念を「美しい」と言うよりも、多くの人に賞賛されていて、
尚且つ私達の感性を揺さぶってくる芸術的なもののほうが、私達が「美しい」と感じると考えてきたからだ。
ふと考えてみた。どうしてこんなにひん曲がった考えを持ってしまったのだろう。
中学3年生、私は自分が虚しくなった。
私だって、努力や友達との絆を素直に美しいと思えるような人生を送りたかった。
受験生。私の当時の模試の偏差値は、37で、どれだけ頑張っても努力が空回りしていたし、内気な性格だった為、他のクラスに友達は2人居たが、それ以外の友達、つまり自分のクラスに友達と呼べる人は1人も居なかった。
要領が良ければ「上手く生きられた」のかな。才能や努力を手に入れたのかな。そんなくだらない妄想を繰り返してしまう事を辞められなかった。
あれから2年の月日が経った。
私は、高校生になった。
今の私は、通信制高校に通いながら、汗水垂らして働いている。そうして今この文章を書いている。
「美しさ」が分からなくて、もがき苦しみ続けたけれど、今のこの生活も悪くはないよ、って当時の私に声を大にして伝えたい。
突然の豪雨に見舞われた真昼の駅前は人々の動きが忙しなくて目まぐるしい。俯き早歩きをする人、慌てたように駅へ駆け込んでいく人、傘を買うつもりなのか近くのコンビニへ走っていく人。喧騒は雨音に掻き消され、コンクリートを弾くピチ、ピチャ、という音がやけに耳についた。
屋根のある所へ移動しようかと辺りを見回した時、その人物が目に留まった。ストンと伸びた黒く長い髪。紺色のセーラー服に身を包んだ彼女は大粒の雨に打たれたのだろう、全身をじっとりと重く濡らし、駅の横に隣接している簡易的な駐輪場の屋根の下からぼんやりと虚空を見つめていた。
──うつくしい、と思った。しかしその反面、自分の内から溢れた感想が何故それだったのかと不思議な気分にもなった。
別に、彼女が美しくないわけではない。むしろ、少し遠目から見ているだけでも十分顔立ちが整っていることがわかる。だがそれならば、「綺麗」だとか「美人」だとか、そのような感想を先に抱くほうが自然な気がした。他人への第一印象が「美しい」であったことなど、今までの人生で一度もなかった。
それでもやはり、彼女はうつくしいのだ。雰囲気が、佇まいが、雨降らす空を見上げるその瞳が。どうしようもなく、うつくしくて。
一秒たりとも彼女から目を離したくなくて、雨水を全身に浴びながら呆けたように彼女を見つめていた。僅かでも目を逸らしたならばそのまま彼女は消えてしまうのではないかと。人々が織り成す喧騒のように、雨に掻き消されてしまうのではないかと。そんな不安が身を蝕むのだ。あまりにも、儚くて。
彼女はそのまま暫く天を見つめ······ゆっくりと、頭をうつむかせた。そうして傘などないまま、降りしきる雨の世界へ足を踏み出し。頼りない足取りで、己の進む方へと真っ直ぐに歩いていった。
「······」
額に頬に張り付く髪が煩わしいながらも、その背が見えなくなるまで目で追った。服も鞄もびしょ濡れだが、やはりどうしても動くことが出来なかった。
──はたして彼女の目には、この空がどう見えていたのか。
──世界に降り注ぐ数多の雫に、何を思っていたのか。
疑問は浮かべど、その答えは彼女以外知りえない。彼女の内に秘められるべきものなのだろう。
美しい彼女。
鬱くしい彼女。
顔も名前も知らない一人の人間の心を夢中にさせた彼女が、どうかこの先もうつくしく在りますように。
美しい
「明日はいよいよ決戦だ!打倒魔王軍!、今宵は思う存分飲み食いして、明日に備えよ!」
その掛け声で始まったみなでの晩餐は静かなものだった
食器の音だけが響き渡る大食堂内
それもそのはずである
明日は遂に張り詰めていた魔王軍との対決が控えている
あちら側にもこちら側にも死者は多く出るのは確実
これが最後の晩餐
みなが死に怯えている
隊の士気がこれほど下がればよくないことは誰もがわかる
部隊長である私自身もよくないことがわかる
私はまだ半分ほど残っているワインボトルを持っている
私は立ち上がる
“パリンッ”
それを机に叩きつけた
静かな飲みの場においては目立つ音である
大食堂内の食器の音が一瞬で止んだ
みなが私に注目を集めた
そして私は半分に歪で鋭利な形となったワインボトルを掲げる
そこからは赤い液体が垂れ落ちて、私の手にも伝ってくる
「見よ!ここに命がある!命は常々迫ってきているものなのだ!それが明日であれ今日であれ、何もかわらないこと!
そして私たちは何がために闘うか!?
そうだ!大切な命を守るために闘うのだ!
私には野望がある。私はこの美しい街を愛おしく思う。なので!その美しい街を守り、その街で永遠に生きることがこの私、アンガス•バーミントの野望である。
大切な命がある者はそれを守るために、そしてそれがないものは、私の野望のために闘ってくれ!」
「「「おぉーー!!」」」
カステラの裏についてるザラメと共にあるペリペリ。。あれを美しく剥がす自信がいつまで経っても湧いてくる気がしない。ザラメと共に剥がしてしまいそうで怖いんだ。怖い。自信がない。カステラを目の前にするといつもこうだ。カステラを上手く避けてきた人生だった。。苦手だから丸々1個差し出すと喜ばれる食べ物であったことからカステラをあげると喜ばれたのだ。幸か不幸か嫌いなものから逃げるために行なった行為が結果的に自身の株を上げてしまい旨みを知ってしまったのだ。いつかは向き合わないと、そう思う内に大人になった私は今や教鞭を取る立場。生徒の模範となるべくカステラの一つや二つ、美しく裏のペリペリを剥がしてこそ、とは言えども私も人だ。無理して裏のペリペリと葛藤してまでカステラなんて食べれなくて良い。いずれ溢れんばかりの自信が芽吹いた時にカステラは食べればいい。教師としての自分を捩じ伏せてしまうほどに幼少期から育み膿み逃げ続けたカステラへの畏怖。だが人生には避けては通れない試練がつきもの。カステラは私の前に現れた。地域住民からの行事参加によるお礼としてカステラを頂いた上に職員一同ではなく行事に参加したクラスの生徒に食べさせようという校長の粋な計らいにより私のクラスにやってきた。職員一同なら教頭あたりにあげて仕舞えば良かったものの40人いる生徒の中から1人に差し出すことは贔屓と捉えかねられない。じゃんけんも考えたが時間の余裕はない。アレルギーや宗教上の理由も過去の行いから推測するに道理が通らない。何か理由を探そうと教室を見渡すとペリペリを剥がす生徒の姿があちらこちらで見かけられた。目を覆いたくなるほどの光景だが生徒の勇姿として見届けることを心に決めた。クラスのムードメーカー的存在の斉藤はペリペリにほとんどザラメが付いていた。心臓がヒュンと縮む感覚を覚えたのも束の間、斉藤は一口で食べ口いっぱいのカステラをこれでもかと幸せそうな表情で頬張った。学級委員長の三谷はペリペリについたザラメを上手くこそいで食べた。時田も加藤も吉岡も山口もペリペリを各々の剥がし方で奮闘していた。言い訳ばかり探した自分が情けなく思えた。カステラのペリペリを後回しに後回しにとしている私は生徒に後回しにするなと偉そうに言っている。いつも模範であろうと勤めた私の生徒たち。彼らのカステラを食べる姿は私の言葉を私自身に投げ返すようだった。目を下にやると教卓に似つかわしく無いカステラがポツリ。試されているようだ。教鞭を取る立場として向き合わなければならない。カステラのペリペリを剥がす。そのことから逃げてきた人生。いつものように手は震えるが幾度も上がってきた教壇の上、心は落ち着いている。
「ペリペリ」
何かが剥がれた音がした。
美しいというのは「世界の〜100選」のような場所だろうか。あれはプロのカメラマンの理論値であって、実際に見たら、あまりにちっぽけな風景に拍子抜けするかもしれない。ボクにとっては最高級のビュッフェよりも齧りかけの菓子パンの方がよい。ほとんどの人は食べれない苦痛を理解せずに人生を謳歌している。そんな世界をボクは美しいとは思わない。素直に周りに合わせて「綺麗だね」と言えなければ醜い人間なのだろうか。蝶と蛾の違いは見た目の美しさだけなのに
題『美しい』
地元の何気ない毎日変わり映えの無い景色
「沢山の田んぼに囲われた道」
「両数の少ない電車」
「沢山の大自然」
「店舗の少ない町」
「少ない人口」
こんな何もない田舎の風景でも改めて見ると
とても美しい
君に似たとても美しいものを見た
君に伝えたいと思った
毎日から君と話す口実を
見つけている僕すらも
この景色は美しくしてくれるだろうか
※長編です。誤字脱字があればすみません。
「おはようございます女王陛下。」
「ええ、おはよう。」
朝は挨拶から始まる。
純白に包まれた大きい城で目を覚ます。
煌びやかな内装に沢山の花や絵画。
豪華で華やかでなんともまあ美しすぎる城。
私は、この国の女王として生まれてきた。
皆が私を慕い、私を敬う、そんな生活だった。
「アメリア王女、本日の予定は───」
身支度を終え、部屋の外に出る。
身支度だけで一時間は当たり前にかかる。
美しく、なるために。
「おはようございます皆さん。」
「おはようございます女王陛下!本日もお美しい。あちらに朝食のご準備が出来ております。さあ、お召し上がりください。」
「ありがとう」
食事を済ましたら、謁見をして国の状況や政治に関わる詳しい話を聞く。
午後になると、他国の王や王女に書簡を書く。裁判状況の確認や直接裁判を見守る事もよくある。
夕方は庭園をしたり散歩をしたり、読書、音楽、ダンス、絵画、詩等教養とされるものを行う。
夜は晩餐会として外交をして仲を深め、政治について詳しい情報を知る。その後は舞踏会などを開いて一日をやっと終える。
寝る前に侍女や執事に挨拶をして、一日の日記をつけて就寝する。
城の外には護衛も居て私は完全に守られた生活をしている。美しさと華やかな生活を大切にするために。
また次の日も、同じような日々が始まる。
そう、思っていた───
「女王陛下大変です!」
「〜…なによこんな時間に、まだ朝じゃないでしょう」
「不法侵入者を発見致しました。現在は近衛兵により玉座の間に取り押さえられております。どうか、女王陛下の方から判断を。」
「……分かった。ありがとう。」
コツコツ──
「!女王陛下!お休みのところ、大変申し訳ございません。早急にこの不法侵入者への判断をお願い致します」
「だからっ私は不法侵入なんかじゃっ……」
「黙れ!!女王陛下が目の前にいらっしゃるんだぞ!!余計な言葉は慎め!」
「……貴方、名前は?」
「私?わたしは、、メアリー。」
「…メアリー、貴方はこの城の中へ親の手も借りずに不法侵入をしたのかしら」
「だから!私は不法侵入なんかじゃなくって」
「なら、帰してあげなさい。」
「!?女王陛下!なにを仰っておられるのですか」
「当然の事よ。貴方、見たところまだ12といったところかしら。まだまだ子供じゃない。こんなの、判断を下すまでもないわね」
「ですがっ…不法侵入者に変わりはありません。年齢だけで決めてしまえば、今までの犯罪者だって…話だけでも聞く必要はあります!」
「はあ、、メアリー、不法侵入したわけじゃないなら貴方はどうしてここに居るのかしら」
「それは…迷ったからよ、この城に!たまたまね!」
「たまたま、、メアリーが持ってる物をさっき見せてもらったけれど貴方、地図を持ってたわよね」
「うっ…それはっ」
「それと、まだバレていないと思ってるのかもしれないけれど貴方のポケットに入ってるそれは、電子機器でしょう?この会話を録音して、何に使う気かしら」
「……」
「お前っ…!!隠し持っていたのか!!さっさと出せ!」
「………わたしは、羨ましかっただけだもん」
「羨ましかった?何が、かしら…?」
「こんな贅沢な暮らしをして、自分が幸せだと気づいてないんでしょおばさん!!!!」
「…!!!」
「おいっ!!!お前っ相手が誰かわかってるのか!!この国の王女様だぞ!!陛下、もうこの者は処刑した方がよろしいのでは…」
「待って。」
「ですが!!」
「待てと言ったら待ちなさい。これは命令よ。
メアリー貴方、本当に子供なのね」
「おばさんには庶民の子供の気持ちなんてわからないでしょう!!」
「確かにそうね。私は、生まれたときからこの城で美しい王女として育たれてきたし若くして結婚相手を見つけ、この国を守ってきた。」
「守る?この国を?笑馬鹿げたこと言わないでよ!私たち庶民はあんたらの贅沢な暮らしのせいでどれだけ苦しい生活をしてるか!!わかんないんでしょう!!!」
「分からないわ。ごめんなさい。考えたことは何度もあるけれど、体験をしてみない限りは分からないのよ。」
「…おばさんはみんなから慕われてると勘違いしてるから気づいてないだけ。本当は庶民のみんなはこの国の王女は変えるべきだとか王女や王のせいでこうなってるって言ってる!!」
「ええ、知ってるわ。普段から他国との外交を重ねているし今のこの国の現状がどれだけ貧しく、経済的な格差が酷いかも分かってる。」
「ならどうして変えてくれないの!!!こんな変な城、捨てちゃえばいいのに!!」
「ごめんなさい。それは出来ないの。どれだけコストを削減したり労力を減らしても貴方達が住む貧しい街には行き届かないの。だからと言って、貴方達の生活を放っておこうなんて誰も思ってない。私たちも必死に考えているのよ」
「嘘!!嘘つき!!もうこんな国出て行ってやる!!」
「おいっ!!!暴れるな!!!陛下、どう致しますか」
「…メアリー、貴方は羨ましくてここに来たのよね」
「………だったら何」
「なら、少しだけ、私達と一緒に暮らしましょう。」
翌朝───
「女王陛下、と…えっと」
「メアリーよ」
「メアリー、様、おはようございます。」
「おはよう。ほら、メアリーも」
「…」
「ゴホンッそれでは本日の予定は───」
「ちょっとおばさん、今日の予定なにあれ!!多すぎるわよ!」
メアリーが着替えながら言う。
「ふふ、そうね。まあでも、すぐにこなせるようになるわ。」
「あ!その服!」
「?どうかしたの?」
「おばあちゃんが言ってた服だ」
「なんて言ってたのかしら」
「この国の王女が生まれたときに初めて作られた記念のドレスだって」
「あら、よく知ってるのね。そうよ。とっても美しくて豪華でしょう、この服。」
「当たり前でしょ。私のおばあちゃん、すごく物知りだったんだから」
「…貴方、ご両親は居るのかしら」
「いる。でも、お父さんは昔お母さんと喧嘩してから家にはいないしお母さんも最近は帰ってこなくなっちゃった。おばあちゃんも少し前に亡くなっちゃったの。だから、私がこんな生活を変えればお母さんもきっと帰ってくるって思って、この城に…あっ、」
「やっぱり迷い込んではなかったのね。笑まあ、私は正直なんでもいいんだけど」
「陛下、そろそろお時間です」
「今行くわ!さあ、メアリー行きましょう」
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「ええそうですね、やはりここの地域での産業の発達により地域格差が生まれています。」
「ならやはりこの地域での取り組みを中止して……」
「ですが、それだと国全体の利益が…」
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「ルミナリア王国の王は、鉱物と食料の調達不足に悩んでいるそうですね」
「なら書簡の内容はそれに沿った物がいいわね。ペンと紙を用意して頂戴。なるべく早く」
「かしこまりました女王陛下」
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「メアリー、次はダンスのレッスンへ行くわよ」
「メアリー早く。次は絵画よ」
「メアリー!散歩が終わったら読書の時間よ!」
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「いやあ本当にアメリア王女には日々助かっています」
「そんな。有り難きお言葉ですわ。セレナード王国との貿易のおかげですから」
「さあさあ、遠慮なく王女も沢山食べて踊りましょう」
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「はあ………つかれた、、」
「ふふ、メアリーだいぶ疲れているみたいね」
「当たり前でしょ毎回堅い話題ばっかでさ」
「でも絵画の時間はすごく楽しそうだったわね」
「べつに。少し休めたってだけ」
「そうかしら。絵がすごく上手だったけれど」
「き、気のせいだよ!もう寝よう」
「笑、そうね」
それから私とメアリーは、毎日のように一緒に過ごした。初めはメアリーとの会話は寝る前と朝だけで特に目立った話をしてなかったけれど時間が経つにつれお互いに一日の出来事を語り合ったりした。
最初は執事や侍女も慣れない様子だったし私とメアリーが一緒にいる事に心配をしていた。
けど段々と、メアリーの純粋さと無垢さに惹かれ皆不法侵入のことなんて無かったことにしていた。
「メアリー今日もお疲れ様」
「うん、アメリアもね」
「今日も日記をつけたら寝ましょうか」
「うん!ねえねえ、今日の朝のおじさんのやつ見た?」
「ああ、マーシャル国王のこと?」
「そうそう笑あのおじさん、転けそうになってたよね」
「ふふ、もうメアリーったら笑でも確かに、あの時は私も笑いそうになっちゃったわ」
「わたしもだよ!笑ほんと面白かった」
「…ねえアメリア」
「ん?どうかしたの?」
「なんでさ、私と一緒に暮らすなんて言い出したの」
「それは…」
「だってさ私はここに不法侵入してたし護衛の人も私を処刑しようとしてたのに、、」
「私は、メアリーが悪くないの初めから知っていたの」
「え?」
私は、メアリーと会ったことがある。
遠い昔の話だ。メアリーは覚えてるわけない。
私がまだ9歳だった頃、私よりも小さな子供が城の庭で泣いていた。
私は、不法侵入者だと騒ぎ立てる護衛を止め、その少女に話を聞いた。
家族が喧嘩をしていること、おばあちゃんしか味方が居ないこと、この豪華で、美しくて、綺麗な世界に憧れがあること。
彼女はメアリーといって、6歳というまだ小さな体で一人でこの憧れの城に足を運んだ。
9歳でありながら私は、彼女をそのまま家に帰した。
護衛も執事も皆、私が無事かどうかを第一に考え、この件は国全体には知らせず城だけの秘密となった。私はこの出来事を一瞬も忘た時はなかった。
何故か、それは自分にも分からない。ただひたすらに、彼女の口から話された壮絶な暮らしを、生活を私は忘れるべきではないと思っていた。
あの夜、執事に不法侵入者が居ると起こされた夜、私の記憶は点と点を繋ぐように鮮明になった。
私は気づいた。玉の間に出向く前から誰が来ているかはわかっていた。
案の定、その正体はメアリーだった。
6年後のメアリーの姿は、身長や髪型は変わっていてもあの素直さや純粋さは変わっていなかった。
私と3つしか変わらないと、そう思うかもしれない。
だけれど私は、彼女の壮絶な過去を知っている限り、守るべき人間だとわかっていた。
彼女はあの頃の記憶はもうないみたいだけど、私は覚えている。ハッキリと。
「メアリー、貴方は」
「アメリア…」
「私に守るべき美しき宝を教えてくれたのは、メアリーなの。」
「…」
「メアリーに会ったとき、私がこの国の王女としていつか貴方達の生活を豊かにしてみせる。そう、あの日から誓った。」
「アメリア、わたしも、思い出したよ」
「メアリー、、」
「アメリア、あのとき私の話を真剣に聞いてくれたのはアメリアだったんだね」
「ええ、会えてよかった」
「うん、アメリア…」
その日から私とメアリーは、共に暮らす日々をやめた。
メアリーは自分の街に帰り、いつも通りの生活をしている。私は、アメリア王女としていつものように豪華でキラキラとした城に囲まれて生きている。
けれど、これより大事な本当の美しさを、私は知っている。そして、辛い現実も。
この信念は、きっとこの先も一度も揺らぐことはない。