『絆』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あまり良い意味ではなかったんだよ、
指同士を繋ぐ色糸を辿って彼は言う。
人を結ぶ暖かさじゃなく、
家畜を繋ぐ綱だったのだと、
糸の先の私に言う。
貴方と私、畜生はどっちだったのかしら
分かっていて私は問う。
随分と高評価なんだね、
溜め息を付くように貴方は答える。
赤とは反対色の糸に繋がる、
貴方と私の定めを嗤う。
<絆>
ハイネックのシンプルワンピ
マキシ丈のスカートと幅広ベルト
帽子とネイルはお揃いデザイン
警察も好奇の目線も知ったことか
反物の色もモチーフも全部計算ずくに
現代の着物スタイル、最前線は此処なのだ!
<たまには>
絆なんて物私には見えない。人間なんて絆を大切に、裏切るなとか言う癖に簡単に裏切る。同じ人間なのに戦争、炎上、誹謗中傷、殺人、いじめなんて絶えない。でもそんな人間だけじゃない事がわかった。あの人に出会って。
「君は来てはダメだよ。私は天使だから一緒になれないごめん。」
お題『絆』
血縁は鎖か絆か
鎖は断ち切るのが難しい
絆なら柔らかくほぐして時間と風と共に散らばせることができる
絆がほどけても心には暖かいものが残る
[絆]
人間が嫌いでたまらない気持ちになったら
何と絆を結ぼうか
街を歩けば前も見ずに歩く勝手な者ばかり
前を見て気をつけてぶつからないよう避けて立ち止まって歩いている私には
前も見ずに安全を他人任せにしている傲慢な者達の醜い姿が見えている
おぞましくて反吐が出る
小学生の頃、たまたま受けたドラマのオーディションで隣同士座っていた。挨拶してから何年生かと確認し合ったら、お互い小学2年生で同い年なのがわかった。あとは、他に何か仕事したことあるかとか、どの辺りに住んでるのとか始まる前に少し世間話をした。仲良くなったわけでもなく、喧嘩したわけでもない。ただ隣に居合わせたから、同い年だったから話しただけ。
ただし大人はそう思っていなかったらしい。オーディションに二人で合格した後、俺と泰司は仲の良い生徒役を任されることになった。台本を見れば台詞は少ないものの、二人の掛け合いが毎回あった。
何で俺がアイツと。
泰司は演技が上手かった。声、目線、仕草、表情、歩き方。どれも普段のアイツとは別人に見えた。それぐらい子役の時から周りより秀でていた。役にヒョーイするってこういう人を言うのかもしれない。
悔しかった。俺だってもっとできるのに、本番になるとつい緊張してしまう。
「どれくらい練習した?」
撮影の休憩時間、生徒役の子どもたちから少し離れた場所にいる泰司に声をかけた。一人でボーッとしてパイプ椅子に座っている。膝の上に広げた弁当は、まだ手をつけてない様子だった。
泰司はチラッとこちらを見て「わからない」と答えた。
分からないってなんだよ。普通、台詞覚えるのに時間とか日数とか、大まかに数えるだろ。どこまで覚えたかってページ数とかシーンの番号とか。
俺はすごくイライラした。これが俗にいう天才ってやつなのかと思った。でもここで怒ったり、大きな声を出したら負けだと知っている。子役同士は仲が良い、特にペアの役を演じている子たちは。大人の期待にはちゃんと応えておかないと、次のオーディションにすら呼ばれない可能性がある。子役はたくさんいる。俺の代わりなんて、たくさんいる。
俺は深呼吸してから口を開いた。
「一回読んだだけで全部覚えたってこと?」
「違う」
そんなの出来るわけないだろ、と続けて言った。アイツの回答は意外だった。
「じゃあどうやって」
「台本もらってから、さっきの本番までの間で、全部頭の中に叩き込んでる」
「え?」
「俺、漢字苦手だからふりがな振らなきゃ分からないし。家で漢字全部調べて、ふりがな振って、ずっと音読して、本番までずっと頭の中でお芝居する。でも最近、台詞増えたからこの覚え方厳しいんだよね」
昇は何か案ある? と逆に聞かれた。
俺は首を横に振って「頭の中でお芝居する以外、一緒だから」とだけ答えた。
泰司は丸い目をもっと丸くして、こちらを見上げてきた。
「え、お芝居しないの? するでしょ、普通」
「普通の、あの辺りにいる子役たちもそこまでしないと思う」
「だって、本番でりんきおーへんに動くなんて無理だろ」
「だからイメージするんだね」
「イメージじゃなくてお芝居!」
「頭の中だし、どっちも一緒だろ」
「全然違う!」
頭を抱えながら唸る姿は、年相応の子どもだった。役になりきって、澄ました表情を浮かべているアイツよりも、親しみやすさを感じた。何となく、距離が縮まった気がした。
*
子役の寿命は短い。特に男は声変わりを境に現場がガクッと減る。俺も例に漏れず、オファーどころかオーディションの話すら来なくなった。
泰司はコンスタントに役をこなしていた。すごく羨ましいほど、映画やドラマに引っ張りだこだった。更には特撮のヒーロー役に抜擢されて、西川泰司は今やイケメン俳優の筆頭だ。
アイツの活躍ぶりを目の当たりにするたびに、俺は悔しくて情けなくて仕方なかった。スタートはほぼ一緒だったはず。いや、そう考えているのは俺だけか。スタート地点からすでに差が開いてた。アイツの生まれ持った才能と、培ってきた努力で今のポジションがあるのは明白だ。俺が、自分に無い才能を埋めるための努力を、もっと沢山やれば。
泰司とまた共演することになったのは、学園ドラマだった。アイツはクラスのまとめ役というメインどころで、俺は教室の片隅にいる物静かな役。一応俺がメインとなる回が半ばにあるらしいが、それ以上取り上げられることはないだろう。明確な格差に愕然とした。
撮影が順調に進んでいたある日。来週からとうとう俺メインの回の撮影が始まる時期に、スタジオの前室で泰司に声を掛けられた。二人で紙コップのコーヒー片手に、壁際のベンチに腰を下ろした。
「今まで全然話せなかったな」
「まぁ、お前囲まれてたから」
「何でだよ、割って入ってこいよ」
「無茶言うなよ。役柄的に、いや俺の性格上それは無理」
他愛もない話は、あまり長続きしなかった。俺はコーヒーに口をつけるが、泰司は飲む気配がない。昔、苦いものが嫌いって言って、マネージャー代わりのお母さんにこっぴどく怒られてたが、味覚は早々に変わらないのかもしれない。
「俺さ、この間までニチアサ出てたんだぜ」
「知ってる」
「体もしっかり絞って筋肉つけてさ」
「やりすぎたらスタントの人に迷惑かかりそうだけど大丈夫だった?」
「監督に怒られた」
「だろうな」
何が言いたいんだろうか。本当に話したいことは別にあるような気がして、つい裏の意味を探ってしまう。
泰司はこちらに体を向けた。何か覚悟を決めたような目つきだった。
「俺、このドラマ終わったらアイドルやるんだ」
一瞬理解が追いつかなかった。体感にしては何時間も経過しているように感じたが、実際は数秒だっただろう。
「はぁ!?」
人生で一番大きな声が出た。いつの間にか腹から出していた。泰司は壁に寄りかかって、天井を見上げた。
「わかる、そんなリアクションになるよな」
「いや、え、おま、え? アイドル?」
「詳しく言うと、今の所属事務所って子役俳優事務所だから十八歳が節目みたいな、退所しなきゃいけないんだよ。それで、次の事務所のオーディション色々受けて、決まったのがアイドル事務所だから、多分、いや確実にアイドルになるだろうな」
「それは、もったいねぇな」
あまりの衝撃で言葉を失ってしまった。今勢いがあって、これほど演技力に恵まれて、ストイックに努力を欠かさないヤツが。それらを一旦置いといて、一から歌とダンスを作り上げる必要があるのか。
「もったいない? 俺が?」
「もったいないだろ、普通に考えて。まぁ、お前ならアイドルデビューしてもやっていけるだろうけど。それより」
俳優仲間が減っちゃうのは寂しいよ。
声には出せなかった。一方的に俺が泰司をライバル視して競争して、ある意味戦友みたいな意識があったけれど。アイツにとって俺は子役時代からの知り合いにすぎない。
何と言おうとしたか気になるのか、飛んでくる質問をのらりくらりと躱していたら、撮影再開のために泰司が呼ばれた。泰司は後ろ髪引かれるのか、何回かこちらをチラチラ見ながらスタジオへ入っていった。
俺は数シーン後の教室撮影まで空きだから、先に融通してもらった来週の台本に目を通すことにした。でも台詞は一切入ってこない。これまで、西川泰司の活躍ぶりを見て対抗心を燃やしてここまで来たようなものだ。アイツに負けたくないという意地とプライドだけで。そんなヤツがいつまでか分からないが俳優界隈から一足先に降りることになる。完全に勝ち逃げだ。
でも俺は、アイツの影を追ってまでこの仕事を続ける意味はあるのだろうか。
*
結局、細々ではあるが俳優業は続けていた。ドラマや映画の仕事は限りがあるから、舞台やミュージカルにも出演した。歌って踊りながら演技するマルチタスクは得意ではないが、自分の身になっていることは確信していた。
泰司は宣言通り、あの学園ドラマ後事務所移籍の発表をした。その後一、二年ほど鳴りを潜めていたが、事務所の新ユニットのアイドルグループとしてメジャーデビューを果たしていた。センターでもリーダーでもないが、持ち前のポテンシャルの高さが目立っていて、あっという間に人気メンバーの仲間入りを果たしていた。
初共演から二十年、学園ドラマからは九年。がむしゃらに芝居をし続けた俺にオファーが来た。探偵ドラマの準主役で、探偵である主人公の相棒役だった。突然のビッグチャンスに驚きと、疑問が残った。特に注目を浴びた覚えもない。業界の偉い人と仲良いわけでもない。オーディションも受けていない。それなのになぜ、俺が抜擢されたんだろう。背中に冷や汗が流れる。撮影どころか台本すらもらってないのに、今から緊張していた。
俺の疑問と緊張は、初顔合わせで解消された。主人公の探偵役が泰司だったからだ。デビューしてアイドル活動を続けつつ、最近は俳優業も再開したと聞いていた。再開後すぐに主役を張れるなんて、もう凄い以上の言葉が見つからなかった。
準主役だからか、俺は泰司の隣に座った。目の前の読み合わせ用の台本をチェックしようとすると、肩をトントンと叩かれた。嫌な予感がしつつ振り向くと、頬に指が刺さった。
「久しぶり」
ニヤニヤしながら肘をついて軽口を叩くヤツに、視界の端にいる泰司のマネージャーが焦っているのがわかった。そうか、事務所移籍してから初共演だから、俺らが昔からの知り合いと知っている人はいないのか。俺も最近、マネージャーは新しい人に代わったし。
「古いな」
「リアクション薄っ」
これぞお前って感じするけど、と笑いながら手を離した。意外と深く食い込んで痛かったから助かった。
頬をさすりながら泰司の顔を見た。昔から整った顔立ちをしていたが、アイドルになってから磨きが掛かったみたいだ。ノーメイクで私服なのにオーラがキラキラしていて目が痛い。
ポツポツと他愛もない話をし始めた。そしたらお互いの出演作品やコンサート等を観に行っていたことが発覚した。関係者席でなく、一般のお客さんとして。
「最初から言えよ、チケット用意したのに」
「俺お前のライン知らないんだけど」
「SNSのDMがあるだろ」
「あっその手があったか!」
公式でフォローしよう! ていうかライン交換しよう、と泰司がスマホを取り出したので、ラインのQRコードを表示させた。無事読み取れたのか、早速メッセージにスタンプが送られてきた。俺もスタンプで返信して、西川泰司のSNSを公式の方でフォローした。フォロワー数の差が歴然すぎてもはや乾いた笑いしか出なかった。
「俺さ、超楽しみだったんだよね」
「あぁ、お前芝居好きだもんな」
「それだけじゃなくてさ。前一緒だった学園ドラマの時、俺と昇の掛け合いが中々良かったと思ってたから」
それは俺も良かったと思った。入念に打ち合わせをしたわけでもないのに、一発でオーケーテイクが出た。自然体のまま演技ができて、すごくしっくりきていたのを覚えている。
突然スマホを掲げてSNSのストーリーモードの画面を見せてくる。「イェーイ相棒に会ったよー」って真顔の棒読み台詞に思わず吹き出してしまった。そのまま投稿したらしい。俺のスマホにストーリー更新の通知が届いた。
「ちゃんと楽しそうにしろよ」
「楽しみだったんだよ」
「さっき聞いた」
「相棒役の候補色んな人がいたらしいんだけど。俺は何となく東谷昇になる気がしてたよ」
「は」
スマホから目を離して隣を見た。泰司はSNSのコメント欄をチェックしているのか、スマホに目を向けたまま話し始めた。
「子役の時に『泰昇コンビ』ってニコイチ扱い受けてたけど、そこまで仲良いわけじゃなかったじゃん。でも俺はお前の存在があったからここまで続けてこられたっていうか。お前の活躍見てたら嬉しい気持ちより悔しい気持ちの方が強いんだよな。置いてかれる前に頑張らなきゃって。学園ドラマ以来全然会わなかったけどさ、意識せずにはいられなかった」
まさか同じ考えでいてくれたとは知らなかった。こちらの一方的なライバル視だと思っていたから。
「ずっと一緒にいたわけじゃないけど、切っても切れない縁が昇との間にはありそう」
泰司がチラッとこちらを流し見た。いいこと言ったよね、俺。そう伝わってくるような、勝ち誇ったようなドヤ顔だった。
俺は顔を歪めて苦し紛れに言った。
「俺が大好きなのは女の子だ」
「突然なんだよ、俺もだけど」
『絆』
絆というものは結ぶよりあるものだと信じたい
僕とママの
6歳の時
一方的に解かれた現実的な絆なんて
信じたくない
元々、親しかった関係から壁を作ると、希薄な関係に成っていく。相手が優しければ優しい程、顕著に思える。距離を置きたい訳ではないと断言は出来ないが、話し合いたいとは思う。何をどこからどこまで話すべきか、私には分からない。きっと冗長的で、私の気持ちだけが宙に舞っているだけなんだ。いつもそうだ。相手の好意に気付けない。いつも怯えている。君と絆を深めるだなんて、今はしたくないし、出来ない。
もうすぐ春が来るというのに編み物にハマってしまった君。
それはもう見事なハマり具合で、ここ数日、帰宅するなりリビングのソファに陣取ってカギ針をチクチクチクチク忙しなく動かしている。
何時もは私の定位置である君の隣、今は大きな毛糸玉共が我が物顔で転がっていて。
思わず、毛糸玉に嫉妬した。
テーマ「絆」
絆
そういえば今日、
3年生の卒業式だったな。
私の好きな人も3年生。
今日、告白する。
じゃないともう会えない。
思いを伝えようと彼に声をかけた。
「早く言っとけばよかった。
俺、彼女いる。」
、、、。
衝撃の事実を知ったわたしは、
告白もしないで家へ帰った。
彼との絆なんてものは元からなかったんだよ。
そう自分に言い聞かせた。
なんてことはない、いつも通りだ。
そんなふうに自分に言い聞かせて灰色の日々を過ごしてきた。ときどき眩しく輝く人やものに出会うと少しの間私の世界は色鮮やかになる。
たったそれだけのことを楽しみに生きて、生きて、生きた。隣に同じような生き方をしてる仲間がいたからそれも励みになった、こともあった。
いつか別れがやってくる。どれだけ似かよった部分があっても違う人間なのだからしかたのないことだ。
でもこんなにも、天と地ほどの差が生まれるほど。私とあの子とでは何が違ったのだろうか。
悔しいとか、妬ましいとか。周りはみんな私があの子に嫉妬しているといって指をさして笑う。真っ黒なペンキで顔を塗りつぶされた有象無象の笑い声が鬱陶しい。
私の世界がどんどん暗くなって、気がついたら薬まみれになっていた。
でもね、あの子は違った。
昔から変わらない優しさを持ったまま、さらに輝きを増して素敵なパートナーまでみつけてる。眩しく輝く人になったあの子は私の世界を鮮やかにしてくれる。
今日も花束をもって会いにきてくれたあの子のおかげで花の色がみえるの。
この繋がりだけはなくしたくない、なくしたくないの。
【題:絆】
君がいなくなって残ったのは、汚れた皿と溜まった洗濯。今なら、愛してるなんて言われなくてもわかれるきがするよ。
君と買ったお揃いのストラップ
絆が深まるお守りなんだって
ふたつでひとつだった
気づけばひとつでひとつになった
絆
あなたはガサツで、不器用で、口下手だけど、
私の隣にいてくれる。
私の手を離さないでいてくれる。
あなたと居れば、今嫌なことなんて、心底どうでも良くなるのだ。
わしの名前は勝原順平。妻の清美ともう50年の付き合いになる。
最近、妻は少しボケできてしまって、
趣味である編み物が出来なくなり、
家事ができなくなり、
やがて立てなくなり、
コミニケーションを取ることができなくなり、
どんどん弱って行く清美が怖く、切なくてずっと静かな顔を眺める生活を送っている。
息子は10年前になるか。嫁さんと離婚し、孫はいないし息子は介護など当たってくれない。だが、まだ良いのだ。息子には息子の人生を歩んで欲しいと思っているし、まだ俺がいる。
清美だって同じ考えな筈だ。
わし達の庭は管理できなくなっていき、虫や木の葉が生い茂り、もう立ち会いできぬ状態になっていた。きっとわしが死ぬまでああなのだ。
だが、一つだけまだ大事に育てている花が一鉢あった。その鉢に毎日朝起きて水をやって1日が始まるのだ。
湯を沸かし、茶を入れて朝飯に卵を焼く。
妻の口にも茶漬けを覚まして入れて、水で流しこんでやる。妻の口を拭いて、
溜まった洗濯をコインランドリーに持って行く。帰りにパンを二つ買って家に帰る。
そして帰って時計をみた時にはもう大体十二時なって居るから、さっき買ったパンを食べる。
妻にもパンをあげる。妻は絶対にピーナッツバターじゃないと駄目なんだ。昔はよく2人で買い物に行ってパン屋に行ってピーナッツバターを買って食べていた。もうそのパン屋は潰れたが。それでもピーナッツバターじゃないと怒られる。
そして洗い物をして、風呂を洗って沸かす。
ついでにトイレも磨いて綺麗にする。
そしてスーパーに行って今晩の夕飯の材料を買う。
妻みたいに上手に作れないが、できるだけ栄養を沢山摂った方が良い。
そして帰りにコインランドリーに服を取りに行って大荷物で家に帰宅。
すぐ料理に取り掛かる。
料理が出来たら、まず味見して次に清美に食べさせる。口を拭ってやって、濡れた温かいタオルで清美の体を拭いてやって、枕のシーツを変える。
あとは、自分も風呂に入ってテレビを見て、残りの家事をやって寝るだけの最近の日々だったのだが、今日は違った。押し鈴が静かに鳴った。
こんな時間に何の様だ?わしは返事をしてテクテクと玄関に向かった。
扉を開けると若い警備員が2人。
もう1人の方は何か喋っているが、聞き取ることができなかった。
わしが聞き返すと警備員は大きく口を開けて、
「※※※*市警のーーーと言う者です。」
と手帳を取り出してこちらに向けた。
はて?警備員と思っていた輩が警察官だったとは。そんな事より早く要件を教えて欲しい。
心で思った事そのまま警官に伝えると警官は
「あー?聞いーーせーーた?もー一度言ーーすね。此処いらで通報があったんです。酷い臭いが貴方の家からすると。」
酷い臭い?なんて事を言うんだ。それに通報なんかしよって。意味が分からない。大体なんなんだ。バカしているのか?
警官は続けて
「なーー、少し勝ーーーにお話ーー伺いーーて来たーでーけど。調査ーー協ーおーーできーーーか?」
「「あぁ?」」
聞き返したつもりだったのだが何故か警官は強引に中に入っていった。
わしは流石の警察にも家に入られては困るし、迷惑過ぎるので怒鳴った。
するともう1人の警官は肩についている無線機に手を出し、何かいって、わしを止めに入った。
こんなの駄目じゃないか。警官は住民が安全に暮らせるよう尽くすべきなのに、こんな勝手な事されて、考えられない。
警官は弱ったわしの体では到底敵わなかった。
できるだけ大きな声を出して訴えた。
だがそれも警官が歩を止まる条件に適して居なかった。
本物の警官がこんなことする筈ない。
新手の老人に狙いを向けた詐欺や盗人に違いない。早く止めないと。
あの警官が、もう、すぐに清美の居る部屋に到着してしまう。清美が。清美に何をするんだ。
警官が清美の部屋に入った時、全てがスローモーションに見えた。
清美が。わしは犯罪者の行動を想像して一瞬眩暈がした。
力が抜け、人生最大の絶望を感じる瞬間な筈なのに一気に脱力感を感じ、そのまま膝を折ってしまった。
だが、その犯罪者は妻を見た瞬間、走ってこっちまで戻ってきた。
そこからは速かった。さっき呼んだ警官の仲間が来てわしをコンクリートの部屋に閉じ込めた。でもそんな時でも清美の事が心配でならなかった。コンクリートの部屋の壁の外ではサイレンの音がずっと響いている。
ものすごく長く感じたがおそらく実際は数分で警官の格好をした奴らが入ってきた。
あいつらの言うことはつくづく分からなかった。コイツらは頭がおかしいキチガイなんだ。
早く本物の警官に助けを求めないと清美の無事も怪しい。あんなに弱っているのだから、若しかしたら、もう。遅いかもしれない。が。
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勘のいい方ならもうとっくに察した方も居られると思うが、主人公の妻である清美はもう既にずっと前から亡くなって居た。
認知症が酷かったのは主人公の方だったのだ。
主人公の語る偽物の警官、犯罪者とは勿論本物の警察だ。
そして息子はずっと介護をしていた。
主人公は離婚し別の場所に住んでを居ると語っていたが実際は息子は、「1人の若い警官。」だった。(警官ではないが、そう見えたらしい)
主人公は全部忘れてしまっているが、清美の部屋に息子(主人公は全くの別人だと思っている)を入れる事をめちゃくちゃに拒絶して、
清美の看護はあまり息子も見れなかった。
だがある日異臭に気付き、主人公が家を外している内に部屋を覗いてみると、死んでいる。
そこから、死体と向き合って、自分の事すら忘れてしまっている父(主人公)がどうしようもなく怖く、お義母さんの事も、自分が殺人の犯人にされたらどうする?今まで放って来た理由を問い掛けられて、この事実を話しても通用するのか?と不安が押し寄せ、今日の今日まで通報することができなかったのだった。
絆を胸に秘め 僕も歩き出す
こんな歌を歌いながら卒業式練習が終わっていく
「最後の方の歌詞の意味、ようわからんわ」
「いつか分かる時が来るよ」
「そうかな」
卒業式までにわかる日は来るのかな?
親子、家族、親戚…
よく考えたら不思議なものだ。
最初から私とこの人達との関係が決まってる。
とても重要な間柄なのにさ
自分で作ったわけでも選んだわけでもない。
この世にたくさんいる中で、なんでこの人達なんだろう。
なんでこの人なんだろう。
母が今日は寒い寒いとコタツにすっぽり入り
頭だけ出している。
コタツで寝ると風邪引くよと言うと
寝ないわよと笑う。
そのコタツに邪魔にならないように
そっと足を少し入れる、温かい。
そのうち寝息が聞こえてきて笑ってしまった。
なんてこともない、そんなことが嬉しい。
見えない血のつながり。
(絆)
「私、来月で引っ越すんだ」
急にあなたから言われた言葉。それを聞いた直後、私は驚きですぐに返せなかった。
私とその子は親友だった。小さい時から今までずっと一緒だった。だからこそこれからもずっと一緒だと思っていた。その後その子は続けてこういった「離れても親友でいてくれる?」そう聞いてきた。だから私はすぐに答えた「あたりまえじゃん。私たちは親友なんだから。私たちの絆はそう簡単には切れないでしょ。」そう言った。そしたら君は嬉しそうに「ありがとう」と言ってきた。
そんな別れからもうずいぶんたった。今日は久しぶりにあの子と会う。とても緊張してしまう。連絡は取り合っていたのに、やはり緊張してしまうのは久しぶりだからだろうか。カフェにつくと貴方はもう席に座っていた。そして一言、「久しぶり!」そう言って私に笑いかけてきた。
絆というのは脆く儚いもので。
目には見えないし、触れられもしない。切ろうと思ってもそう簡単に切れるものではないけれど、必死につなぎ合わそうとしてもどこかでほつれが生じていることもある。
例えば、あの子の悪口を言ったら。
例えば、ずっと隠している傷のことを聞いたら。
例えば、「好きだ」と言ったら。
絆というのは脆く儚いもので。
——絆
(※二次創作)(絆)
牧場を畳むことにした。
クレアが荒れ果てた牧場に暮らしていたのは、1年と半年の間に及んだ。
始めは、乗っていた船が難破し、この街の海岸に流れ着いたことだった。当然、牧場仕事なんてしたことがないし、するつもりもなかったのに、漂着のショックで過去のことを忘れていたクレアは行く宛てもなく、誰も住んでいなかった牧場の家を借り受けた。
(最初はカブから育てたんだっけ)
今は何もない畑跡地を見て、クレアは当時の日々を思い出す。右も左も判らないなりに、カブの種を蒔いて、収穫し、少しだけ増えた資金でジャガイモの種を買った。
(鶏を飼って、孵化させ過ぎて大変なことになったっけ)
養鶏場のリックに、育てきれない数を飼うんじゃないと当たり前のことを注意されたのもいい思い出だ。その教訓を胸に、牛と羊は一頭ずつしか飼わなかった。
夏も半ばを過ぎると少しだけ生活に余裕が出来てきたから、街に顔を出す日も多くなった。皆、どこの馬の骨とも判らないクレアに優しくしてくれた。中でもクレアは、海岸に行くのが好きだった。過去の自分との繋がりを感じさせてくれる場所だったからだ。
そうして季節は廻り、ここに来て2度目の夏――クレアは、カイのプロポーズを受け入れた。
海岸でよく会い、クレアのことを気に掛けてくれた。彼が都会に帰った秋から春の間も、こまめに電話は手紙をくれた。彼の自分への好意は疑いようがなく、クレアは彼についていくことにしたのだ。
たくさんの絆を築いた牧場を、畳むのはそのためだ。
(なんだか、ちょっと恥ずかしいな……)
これから先、彼と結婚して、どんな人と出会うか判らないけれど、クレアはこの街で存分に親切にしてもらった。その温かい絆が、これからの新生活の力になってくれるだろう。それに、とクレアは微笑む。来年の夏になれば、またこの街に帰ってくるのだ。今度はカイの奥さんとして。
「ありがとう。……大好きだよ、ミネラルタウン」
絆
ある日、絆が人と人とを繋ぐリボンとして見えるようになった。黄色く細いリボンは今日も私と彼を繋いでいる。
彼とは家が近く、小さい時からずっと仲がよい。
だが私はこのリボンが目障りで仕方がない。
「ごめん。俺お前のこと親友としか思えない。」
ずっと片思いしていた彼に思いを伝えたのにあっさりと振られた。その時もリボンは光にあたりキラキラと輝いていた。
「こんなリボン、、、!」
私は思いっきりリボンを握り、ハサミを手に取る。
ハサミでリボンを挟む。
(もうこのリボンしか私と彼を繋ぐものは無い。)
頭の中にそんな言葉が浮かび、ハサミを置く。
「親友にならなければよかった。」
うめき声をあげて涙を流しながらそう呟いた。