中学生

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わしの名前は勝原順平。妻の清美ともう50年の付き合いになる。
最近、妻は少しボケできてしまって、
趣味である編み物が出来なくなり、
家事ができなくなり、
やがて立てなくなり、
コミニケーションを取ることができなくなり、
どんどん弱って行く清美が怖く、切なくてずっと静かな顔を眺める生活を送っている。
息子は10年前になるか。嫁さんと離婚し、孫はいないし息子は介護など当たってくれない。だが、まだ良いのだ。息子には息子の人生を歩んで欲しいと思っているし、まだ俺がいる。
清美だって同じ考えな筈だ。

わし達の庭は管理できなくなっていき、虫や木の葉が生い茂り、もう立ち会いできぬ状態になっていた。きっとわしが死ぬまでああなのだ。
だが、一つだけまだ大事に育てている花が一鉢あった。その鉢に毎日朝起きて水をやって1日が始まるのだ。
湯を沸かし、茶を入れて朝飯に卵を焼く。
妻の口にも茶漬けを覚まして入れて、水で流しこんでやる。妻の口を拭いて、
溜まった洗濯をコインランドリーに持って行く。帰りにパンを二つ買って家に帰る。
そして帰って時計をみた時にはもう大体十二時なって居るから、さっき買ったパンを食べる。
妻にもパンをあげる。妻は絶対にピーナッツバターじゃないと駄目なんだ。昔はよく2人で買い物に行ってパン屋に行ってピーナッツバターを買って食べていた。もうそのパン屋は潰れたが。それでもピーナッツバターじゃないと怒られる。
そして洗い物をして、風呂を洗って沸かす。
ついでにトイレも磨いて綺麗にする。
そしてスーパーに行って今晩の夕飯の材料を買う。
妻みたいに上手に作れないが、できるだけ栄養を沢山摂った方が良い。
そして帰りにコインランドリーに服を取りに行って大荷物で家に帰宅。
すぐ料理に取り掛かる。
料理が出来たら、まず味見して次に清美に食べさせる。口を拭ってやって、濡れた温かいタオルで清美の体を拭いてやって、枕のシーツを変える。
あとは、自分も風呂に入ってテレビを見て、残りの家事をやって寝るだけの最近の日々だったのだが、今日は違った。押し鈴が静かに鳴った。
こんな時間に何の様だ?わしは返事をしてテクテクと玄関に向かった。
扉を開けると若い警備員が2人。
もう1人の方は何か喋っているが、聞き取ることができなかった。
わしが聞き返すと警備員は大きく口を開けて、
「※※※*市警のーーーと言う者です。」
と手帳を取り出してこちらに向けた。
はて?警備員と思っていた輩が警察官だったとは。そんな事より早く要件を教えて欲しい。
心で思った事そのまま警官に伝えると警官は
「あー?聞いーーせーーた?もー一度言ーーすね。此処いらで通報があったんです。酷い臭いが貴方の家からすると。」
酷い臭い?なんて事を言うんだ。それに通報なんかしよって。意味が分からない。大体なんなんだ。バカしているのか?
警官は続けて
「なーー、少し勝ーーーにお話ーー伺いーーて来たーでーけど。調査ーー協ーおーーできーーーか?」
「「あぁ?」」
聞き返したつもりだったのだが何故か警官は強引に中に入っていった。
わしは流石の警察にも家に入られては困るし、迷惑過ぎるので怒鳴った。
するともう1人の警官は肩についている無線機に手を出し、何かいって、わしを止めに入った。
こんなの駄目じゃないか。警官は住民が安全に暮らせるよう尽くすべきなのに、こんな勝手な事されて、考えられない。
警官は弱ったわしの体では到底敵わなかった。
できるだけ大きな声を出して訴えた。
だがそれも警官が歩を止まる条件に適して居なかった。
本物の警官がこんなことする筈ない。
新手の老人に狙いを向けた詐欺や盗人に違いない。早く止めないと。
あの警官が、もう、すぐに清美の居る部屋に到着してしまう。清美が。清美に何をするんだ。
警官が清美の部屋に入った時、全てがスローモーションに見えた。
清美が。わしは犯罪者の行動を想像して一瞬眩暈がした。
力が抜け、人生最大の絶望を感じる瞬間な筈なのに一気に脱力感を感じ、そのまま膝を折ってしまった。
だが、その犯罪者は妻を見た瞬間、走ってこっちまで戻ってきた。
そこからは速かった。さっき呼んだ警官の仲間が来てわしをコンクリートの部屋に閉じ込めた。でもそんな時でも清美の事が心配でならなかった。コンクリートの部屋の壁の外ではサイレンの音がずっと響いている。
ものすごく長く感じたがおそらく実際は数分で警官の格好をした奴らが入ってきた。
あいつらの言うことはつくづく分からなかった。コイツらは頭がおかしいキチガイなんだ。
早く本物の警官に助けを求めないと清美の無事も怪しい。あんなに弱っているのだから、若しかしたら、もう。遅いかもしれない。が。



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勘のいい方ならもうとっくに察した方も居られると思うが、主人公の妻である清美はもう既にずっと前から亡くなって居た。
認知症が酷かったのは主人公の方だったのだ。
主人公の語る偽物の警官、犯罪者とは勿論本物の警察だ。
そして息子はずっと介護をしていた。
主人公は離婚し別の場所に住んでを居ると語っていたが実際は息子は、「1人の若い警官。」だった。(警官ではないが、そう見えたらしい)
主人公は全部忘れてしまっているが、清美の部屋に息子(主人公は全くの別人だと思っている)を入れる事をめちゃくちゃに拒絶して、
清美の看護はあまり息子も見れなかった。
だがある日異臭に気付き、主人公が家を外している内に部屋を覗いてみると、死んでいる。
そこから、死体と向き合って、自分の事すら忘れてしまっている父(主人公)がどうしようもなく怖く、お義母さんの事も、自分が殺人の犯人にされたらどうする?今まで放って来た理由を問い掛けられて、この事実を話しても通用するのか?と不安が押し寄せ、今日の今日まで通報することができなかったのだった。

3/7/2024, 7:57:24 AM