『絆』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「絆」
これほどまでに、苦しいと感じたのはいつぶりだろうか?
“絆”というものは非常に厄介で、癒えたと思った古傷の痛みを、ふとした時に思い起こさせてしまうのだ。
あの子が居なくなって、もう何年も経つというのに……
あの子と見た景色、あの子と食べたお店の料理、あの子と交わした言葉、あの子の香り……一度だって忘れたことはない。
そんな暖かいはずの記憶を思い出すたびに、別れの時の苦しみが込み上げてきて、心の底から痛いのだ。
絆に助けられたと感じる瞬間は多い。
何せトラブルの絶えない身だ。用心しようと何かしらあった。
その度に乗り越える助けに恵まれている。
助けられたからには恩を返したい。
これから語るは、受けた恩を返すべく訪れた地で起こった事件の話である。
絆は裏切れない。
絆によって助かることもある。
連帯責任ってことよね。
『絆』
学生時代の体育祭に掲げるスローガンに、「絆をバトンにつなごう」なんてのがあったことを思い出す。
特別仲が良いわけではもないクラスメイトとも、その日はなんだか肩組み合ったり‥
クラスの勝利という同じベクトルの中で、絆を感じたワンシーン。
『絆』
疎かにすれば、絆は薄れる。
もし貴方に、絆で繋がる友人が居るのなら。
新品では無く、今ある絆を大切に。
絆は、いつ消えてもおかしく無いのだから
水面下の神話
日曜日の夜、神が僕の枕元に降りてきて言った
「貴方は自分自身を赦すべき」と。
僕はただ黙ってうなずいた
何も考えなかった
心当たりは山ほどあるのにもかかわらず
僕は自由になるんだ
あの山頂を越えた先に何かがあるように
不確かで計算誤りの人生だけど
高速道路を疾走するトラックのように
自由を求めて駆けていく
月曜日の朝、庭のプールに奇跡が起きた
水面下に異国の風景が映り込んでいたから
ひどく驚いたけど
学校に行く時間だから歩みを進める
世界はこんなにも丸いのを踏みしめながら
僕は自由になるんだ
あの原子力発電所の向こう側に何かが隠れてる
ぼんやりとした濃霧の中の人生だけど
線路の上を疾走する特急快速のように
自由を求めて溶け込んでいく
あの水面下の風景はきっと神々の王国
連なる山々も原子力発電所も
神の国、あるいは自由へのきざはしだったんだ
そして、僕は自由になるんだ
【絆】
万病一元論完治に取り組み続けれた絆、チャネリング成功?
〝絆〟
今日は卒業式。
みんなでわいわい写真を撮って、いっぱい泣いて、
確証のない約束と、またねを繰り返す。
入学した時は泣くなんて思っていなかったのに、
いつの間に、
こんなにかけがえのない人になっていたんだろう。
絆が絶えないことを、ずっと願っている。
始発に乗って、2人
こういうのも、多分もう終わりだねって
何度目かの嘘を口にして
(絆)
「へぇ。絆って、元ネタ、綱……」
ぶっちゃけ「絆ってなにそれ。仕入れ値いくら」って思うことは多々ある。
某所在住物書きはお題1字を見てポツリ、呟いた。
ネット検索によれば、もともと「きずな」とは、犬や馬等々を、通りがかりの立木に繋いでおくための綱であるという。
「……しがらみとか呪縛とかの意味で使われたのか」
何かエモい物語に使えそうだと閃くが、ネタの引き出しが少ないせいで発展していかない。
もちょっと本とか読まなきゃダメかねぇ。
物書きはひとつ、ため息を吐いた。
――――――
昔々のおはなしです。まだ年号が平成だった頃、だいたい10年くらい前のおはなしです。
都内某所、某図書館に、附子山という雪国出身の上京者が、非常勤として流れ着いてきました。
『人間は、敵か、「まだ」敵じゃないか』。
田舎と都会の違い、スリや置き引きの悪意なんかに揉まれて擦れて、寂しがり屋と人間嫌いと、それから少しの不信も、一緒にこじらせておったのでした。
なお現在は図書館と違う職場で、諸事情で名字も「藤森」に変えて、のんびり生活しています。
良い後輩と善い親友に恵まれて、お茶など飲んで、まったりしておるのです。
で、図書館に非常勤として流れ着いた、寂しがり屋と人間嫌いを併発している附子山ですが、
こいつにキラリ目をつけた、変わり者がおりまして、
いわゆる「3類」、社会科学の担当の正職員。
名前を付烏月、ツウキといいました。
『人間は、敵も味方も「頭」で説明できる』。
変わり者付烏月、淡々とぼっちで仕事をさばく附子山を見て、ニヨリ。イタズラに笑いました。
『人が嫌いっていうより、優し過ぎて、信じ過ぎて、何度も傷つけられてきたタイプなんだろうなぁ』
付烏月は附子山を観察して推測しました。
『この怖がりさんに「頭の見方」を教えるのは、きっと良いヒマつぶしになるに違いない!』
なんということでしょう。
変わり者付烏月、社会科学の担当のくせに、自然科学の担当以上に自然科学の「ある1点」、脳科学に、悪い意味で詳しい変わり者だったのです!
そんなことなど知らぬ犠牲者附子山、非常勤としてせっせとお仕事。新しい本にブックコートフィルムを貼ったり、貸し出しのためのバーコードを付けたり。
教わった仕事はなんでも覚えて、ぼっちで、誰とも話さず、淡々と作業します。
「ブシヤマさん、脳科学、キョーミなぁい?」
附子山にニヨロルンと近づく付烏月。すごく悪い笑顔です。すごく、すごーく、悪い笑顔です。
「この表情はその感情、その感情は脳のココ、脳のココは人の心のアレソレ。覚えとくとベンリダヨー」
対する附子山は相変わらず、淡々。唇はチカラが入って一直線、時折首筋など触っています。
怖いのです。不安なのです。また自分は他人に傷つけられるのだと、附子山、付烏月を恐れておるのです。
テキパキ、テキパキ。淡々と仕事だけする附子山。
その附子山に、 ずいっ!
付烏月、一気に顔を寄せて、視線を合わせました!
「なっ、……いきなり、なにを」
附子山、カッチカチに固まって目の下が少し震えています。緊張して、不安で、やっぱり怖いのです。
教科書レベルの、典型的なストレスの表出。
「敵」から視線を離せない附子山に、付烏月、ニヨリ楽しそうに笑いました。
「オキシトシン、ってゆーの」
「おきしとしん?」
「一般的に愛情ホルモンって言われてるけど、どっちかっていうと、絆のホルモン」
「きずな?」
「こーやって目と目を合わせたりすると、脳の深いところから出てくるの。『この人間は敵』、『この人間は味方』っていう線引きに関わってるんだよ。
目と目が合って、相手を心地よく思うのもオキシトシン、相手を排除したくなるのもオキシトシン。
絆を、心を、他人を説明できるのが、脳科学」
「心を、説明……」
「俺の印象、最悪でしょ?それも『絆』の線引き」
4類の書架、490番台だよ。たのしーよ。
脳科学に少し興味を持ち始めた附子山に、付烏月、役に立つ本棚の場所を教えてバイバイ。
手を振り、立ち去ります。
ポツン、ひとり残された附子山、付烏月の「絆」の講義が頭にずっと、ずっと残り続けておりました。
「人の心」を学んだ附子山は、それをきっかけに遠回りしつつ、少しずつ他人との距離のとり方を覚えて、
今では人間不信も怖がりも、十分寛解しましたとさ。
絆。うっとおしいものだ。生きているとどうしても他人と関わらなければならない。
だけど他人ならまだいい。一番うっとおしいものは家族だ。親ほど憎いものはない。
殺してやりたいほど憎くても家族である以上関係を断つのは難しい。いっそなにもかもを捨ててすべての人間関係を断ってしまいたいけどそこまでの覚悟は持てない。
嫌なものだ家族というのは親というものは。最も一番嫌なのはそんな自分か。
僕の知っている人間で、仕事は出来るのだけど人間味の無い人間がいる。
誰に対しても媚びる事無く、変わらず。
特に性格も悪くは無くて、まあ普通。
こういう人間は多分、絆と言う言葉には無縁なんだろうなと感じる。
そんな彼が柿の種というお菓子をくれた。
「あっ…ありがとう。」
別に絆は感じなかったけどちょっとだけ嬉しくなった。
あいつは友達ではない
ただお互いの傷を笑い合えるというだけ
辛い、苦しい、痛い、逃げたい、辞めたい
でも、全てを終わらせたいと思わないのは
きっと、苦しさだけで繋いでいる絆にまだ縋っていたいからなんだろうな
あいつはそう思うのかな
2024年3月7日
朝6時41分起床
7時22分家を出た
友情の絆は、永遠に途切れない。
卒業間近に誓った友情は、なんやかんやで今もつながっている。
あの時みたいに強い絆というわけではないけども、ゆるゆると、たまに会う程度に。
今では逆に、それくらいゆるい関係のほうが助かっているな。
息ができないくらいに絡めとって
逃げられないように
そうして僕がここにいるって伝えて
厭になるくらいに
日課のおはようも
続いていくさ この先ずっと
いつからだろう
君をこんなにも傍に感じるのは
息ができないくらいに絡めとってあげる
逃げられないように
そうして君がここにいるって伝えてあげる
厭になるくらいに
きっと僕達は
続いていくさ この先ずっと
君がどう思ったって
続けていくさ この先ずっと
絆(お題)
(意味
きずな:断とうにも断ち切れない人の結びつき
ほだし:自由を束縛するもの。手枷足枷。さし障り)
【絆】
見えない、感じない
でも手足につながっている
がんじがらめで動けない
あの子がそっとこの部屋から出ていったのに気づいたのは僕だけだった。みんなは盛大に騒いで、笑って、とにかくやかましいくらいに部屋中に声が飛び交っていた。だからあの子が席を外す瞬間を見たのは僕だけ。目に涙をためて、堪えきれずに逃げるように出て行ったのを見たのはこの僕だけだ。
今日僕らは卒業した。日中に卒業式があり、夜になってまた集まれるやつは集まろうという話になった。いわゆる2次会みたいな感じのパーティ。学校のそばのカラオケ店に集合して、1番広い“パーティルーム”を貸切にして僕ら卒業生は好き勝手騒いでいた。昼間はみんなあんなに泣きまくっていたのに、今となっては誰もそんな素振りは見せない。アルコールが入ってるわけでもないのに(確証は無い)、馬鹿騒ぎは何時間も続いた。
でも、誰かが入れた“3月9日”のイントロが流れた時、あの子がそっと部屋から出ていくのを見つけた。目にはきらりと光るものがあった。すぐに追い掛けるのはなんだか気まずいから、仕方なく誰かのヘタクソなレミオロメンを聞いてから隣りに座っていた友達には「トイレ」と言って部屋を出た。廊下を曲がってドリンクバーコーナーを過ぎて突き当りの広間みたいなところに彼女はいた。こっちに背を向けて座っているから今どんな顔しているのか分からない。けど間違いなく泣いている。
「歌わないの?」
僕の声にびっくりした彼女は勢いよく振り向いた。やっぱり真っ赤な目をしていた。
「卒業が、かなしいの?」
「……うん」
泣き顔を隠すように彼女は横を向いた。嫌がるだろうとは思ったけど僕は構わず隣に座る。微妙な空気が流れた。そっぽを向く彼女の背中から尖ったオーラがびしびし伝わってくる。もう放っといてよ。そう言いたいんだろう。分かるけど、僕はその通りにはしないんだ。ずっと気になってた子が泣いてるのに放置してカラオケするほど僕は無神経じゃない。とは言っても、どうやって慰めたら良いんだろうか。彼女にとって気の利いた言葉がどれなのかは分からなかった。だからありきたりなことしか口から出てこなかった。
「またすぐ会えるよ」
「どうだろ」
「どういう意味?」
「私だけ、進路がちょっと違うから。来週には日本を発つの」
「え」
絶句した。数秒前の、僕のまたすぐ会えるよ発言はいともたやすく消されてしまった。そうか。だから彼女は誰よりも卒業することを嘆いていたんだな。そんなことも今さらになって知る。僕は馬鹿だな。好きならばもっと、彼女のことを知るべきだった。本当に馬鹿だな。
「でも、」
と彼女が口を開いて、そして僕のほうを見た。頬に涙の跡が残っているけど、顔は笑っていた。
「そうやって言ってもらえて元気出たよ。ありがとう」
無理して笑ってる。それでも、彼女が僕が追い掛けてきたことを受け入れてくれたのが分かって嬉しかった。“また会える”だなんて、本当は容易く言われたくなかったのかもしれないけど。彼女は嫌味を言わずに僕にありがとうと言ってくれた。そのことが、僕の心を突き動かした。
「決めた」
「え?」
「夏に海外旅行する。その為にこれからバイト頑張る」
「え?あ、そうなんだ」
「行き先は君が行く国にする」
真ん丸に見開かれた両目に、やたら真剣顔の僕が映っている。僕だって出来ることはやるさ。すぐ会えるだなんて言ったからには実行させてやる。だから待ってて。そして、次に会う時には僕の気持ちを聞いてほしい。今はまだ言えないけど。卒業しても、何万キロ離れてても、見えないものが繋がっているから。
彼女が頷きふわりと笑った。瞳の中の僕も同じように笑っていた。
『絆』
うちの犬は世界一の名犬だった。
仔犬の頃にうちにやってきて家族の上下関係を短い期間に見抜いた結果、母には絶対服従し、父にはおやつをよくせびりにいっていた。私は散歩に連れて行く係だったしボール遊びもよくやったしできょうだいのように思われていた気がする。
元気いっぱいだった犬はやがて足腰が弱って歩くことすらままならなくなり、ある日に眠るようにして亡くなった。犬の生きる時間と人の生きる時間の大きな違いを知り、ひとりっ子だったけれどきょうだいを失うことはこんなにもつらいことなのかと思った。
何ヶ月かが過ぎても火の消えたようになった我が家で母が声を上げる。
「また犬をお迎えしたいんだけど、どうする?」
悲しい気持ちはあったけれど父も私もお迎えしようと頷いた。保護犬の譲渡会をネットで探したり実際に出向いて見て回っていたが、ある時家族で訪れた先で3人ともの足が一匹の犬の前で止まった。
「なんか、めっちゃ似てるね?」
「なにがとか、どこがとかは言えないけど、確かに」
「なんだろ。なんとなくすごい似てる」
ケージの中の仔犬は不思議そうにこちらを見つめている。帰り道は3人と一匹になった。
うちには世界一の名犬がいた。あの子と築いた絆が縁となり、また新しい関係が紡がれようとしている。
絆ってね、わざわざ結ぶものじゃない。気づいたらそこにあるもの。
気綱なのかもね。
欲しいから手に入るものでもない。自然に生まれてるものなんだね。