『窓から見える景色』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
お題:窓から見える景色
窓は人生の縮図と言えるだろう。
なぜその景色を選んだのか、そこに家主の全てが現れる。
しかし…
ここに漆黒の窓があった。
一面の黒。
黒く塗っているわけでもなく、塞がれているわけでもない。夜でもないし、隣家が眼前に迫っているわけでもない。ただただ黒いのだ。しかしそこにはちゃんと窓枠があり、窓として存在しているのである。
彼の窓は何故黒いのか。その理由を見てみよう。
(以下、ホラー展開または感動系の納得できる理由)
窓から見える景色
「あら」
母がカーテンを開けると、灰色の四角が見えた。
「あ、すみません。そこはいつも閉めてまして…」
「景色を観に来たんじゃないんだから、いいんですよ」
母は何か言いたげだったが、私は話を打ち切った。どのみちそんなことをしている暇はない。それは、母もよく分かっている。
「せっかくだから開けといて」
「圧迫感ない? 向こうの壁に手が届きそう」
「それがいいんだよ。ヤモリとか来たら見えるでしょ」
何とも言えない顔をされた。母はヤモリが苦手だ。生家の雨戸を開けると時々ボタッと落ちて来る、という恐怖が染みついているらしい。だが、実は私は爬虫類が好きである。
「あ、窓は開けられないようになっているので、入ってはこないですよ」
ここで働いている人が言うなら本当だろう。
「向かいに窓があるわけじゃないし、開けといて」あったらお互い丸見えである。
母がてきぱきと荷解きをしてくれると、やることがなくなった。持って来た本をサイドテーブルに積んでもらい、その横にノートとペンを置いてもらう。
「大丈夫? 他にほしいものない?」
「大丈夫。死ぬまでに『百年の孤独』の矛盾を全部洗い出すのが夢だったし、これで当分過ごせる」
母は、何とも言えない顔をした。
それきり、本はまったく読んでいない。
ある晩、窓に目をやった。
外にはマグリットの絵のように真っ青な空が広がり、白い雲が浮かんでいた。
これが「明晰夢」とかいう奴かと思い、そのまま寝た。
またある晩、窓に目をやった。
外は柔らかな青に包まれ、無数のクラゲらしきものが漂っていた。
どうせなら鯉か金魚にしてほしい。そう思って、そのまま寝た。
やはり、本はまったく読んでいない。
というより、ベッドから起き上がることすらできない。
母には「無理に毎日来なくていいから、私が帰った時用に断捨離でもしててよ」と頼んだ。何とも言えない顔をされたが、来るのを一日おきにしてもらった。母の時間は、私と同じく有限なのだ。
そしてその晩、窓の向こうには窓があった。暖かそうな光と、どこかで見たような内装。子供の頃の居間と同じ家具が並んでいる。こちらに背を向けてソファに座っていたのは、父だった。
やるべきことは三つ。
何とかしてこちら側の窓を開ける。
向こうに気づいてもらう。
向こうの窓を開けてもらう。
これが見えているうちに終わらせなければ。
私が窓を気にしているのは看護師さんたちにばれている。私が予想より持ちこたえているので、おそらく飛び降りを心配しているのだ。本来この部屋に入る人は、そこまで体力がない。
なるべく静かに窓を破壊する方法を考えていると、微かに軋むような音がした。
向かいの窓が内側に開かれ、父がこちらを見ている。真似をして引っ張ると何とも簡単に開き、危うく尻もちをつくところだった。
「そっちに行ってもいい?」
父はもうずっと前、生きていた頃と同じようにうなずいてくれた。
この窓から見える景色が、彼女のお気に入りだった。
窓枠に手をつき、外を見る。
外は生憎の雨。重苦しい曇天が、音を立てて振る雨が視界を狭め、憂鬱な気分を連れてくるようだ。
ゆるりと頭を軽く振って、窓から離れる。彼女ではない自分には、この景色のどこに惹かれたのかは分からない。
――この窓を通して見る世界はね。淡い色彩を纏っているのよ。
くすくすと笑いながら、あの日彼女は窓を見た。つられて見た窓から見える景色は、やはり外に出て見る景色と何の変わりもないように見えていた。
――晴れの日にはね、風が楡のまわりで楽しそうに踊っているの。曇りの日には、雲が歌を歌っていてね。そして雨の日には、雨の絵の具が世界の色を少しだけ濃くしていくのよ。素敵でしょう?
どんなに時が流れようと、年月が彼女を大人にしようと、彼女の少女のような純粋さは変わらないままだった。頬を染めて楽しそうに、幸せそうに微笑む彼女の姿が瞼の裏に灼き付いて、今でも鮮やかに浮かび上がる。
けれどこうして同じように窓の外を見ても、彼女と同じものは一度も見えはしなかった。楡も、風の姿も、雲の声も、雨の色も。自分には何一つ見える事がない。
彼女の眼が特別なのか。この窓が特別なのか。あるいは両方か。
特別な彼女と、特別な窓。二つが重なり合う事で、その特別が見える形になったのか。
だから特別では無い自分は、彼女と同じものが見えないのだろうか。
窓の側に置かれたテーブルの縁をなぞり、椅子に座る。彼女が好んで過ごした場所に、同じように腰掛ける。
窓の外を見る。やはり雨に濡れてくすんだ景色が見えるだけだった。
「父さん」
いつの間にか、部屋の入り口に立っていた息子に呼ばれ、振り返る。時間になっても戻らぬ自分を呼びに来たのだろう。
時計を見れば、この部屋に訪れてからすでに三十分以上も時間が経っていた。
「すまない。もうこんな時間か」
「気にしないでいいさ。父さんこそ大丈夫か。なんせ、急な事だったし」
言葉を濁し曖昧に笑う息子になんと言葉を返したらいいか思いつかず、ただ首を振る。立ち上がり息子の側に寄れば、彼女によく似た琥珀色の瞳が僅かに赤く腫れているのが見て取れた。
人知れず泣いていたのだろう。目尻に残る滴を拭えば驚いたように目を瞬いて、恥ずかしげに目を細める息子の頭を軽く撫で引き寄せると、暫くして声を殺して泣き始めた。
こんな時でさえ自分に気を遣う息子に、申し訳ないと思う。まだ親の庇護が必要な子だというのに、頼りにするべき親がこんなでは素直に泣く事も出来ない。
頭を撫で背をさする。不器用なそれが少しでも慰めになれば良いと思いながら、彼女ならばこんな時にどうしたかを考える自分の弱さを嫌悪した。
「大、丈夫だって。お、れは大丈夫、だから」
腕を伸ばし無理矢理離れ、息子は涙の残る目で笑みを形作ってみせる。先ほどよりも赤みが増した目が痛々しい。
「無理はするな」
「だって、母さん。ほんと、に、寝てる、みたい、だった、から」
大丈夫だと。苦しんだわけではないのだろうからと、息子は笑う。
彼女の最期を目にして、それでも自分のために笑おうとする息子が只管に苦しかった。
息子から目を逸らして振り返る。窓の外を見、テーブルと椅子を見た。
そこで彼女は亡くなった。
眠っているようだったと息子は言う。午後の日差しに微睡んで、そのまま眠るように逝ったのだろうと、医者は言った。
そうか、と納得し。残ったのは虚ろな心と寂しさだった。
穏やかに時を止めた彼女。夢見る少女のような可憐な彼女は、もうどこにもいない。
「ごめっ、ちょっと、出てくる。父さん、は、まだ、ここに、いて」
気を遣い、出て行こうとする息子の手を取り引き止める。
「一緒に行こう。話がしたい」
驚く息子に、できる限り優しく笑ってみせる。
滅多に表情を変える事のない自分の笑みは相当可笑しなもののようだった。呆けたように口を開けて自分を見つめる息子にいたたまれなくなり、掴んだままの手を軽く引く。はっとしたように口を閉じ、気まずげに目を逸らした息子に、知らず笑みが深くなる。
「話、って。なに?」
「何でも良い。友達の事とか、学校の事とか。趣味でも何でもいいから、話をしよう」
「父さんは?何、話して、くれるの」
息子の問いに、考える。自分が話せるものなどあっただろうか。
思えば息子と二人きりで話す事など、数えるくらいしかない。普段は彼女が間に入り、自分は常に聞き役に回っていた。
考えて、部屋を見回す。この部屋で思い出せるのは彼女の事ばかりだ。
「昔の母さんの話、とか。後は、そうだな」
つまり惚気か、と呆れ笑う息子から視線を逸らすように窓を見る。
どこにでもある、窓。変わらない、外の景色。
彼女によく似た息子には、どんな風に映っているのだろうか。
「この窓の外の景色が、母さんには特別に見えて、俺には普通に見えるくらいだな」
「景色?」
つられて息子も窓の外を見る。
その横顔には、彼女と違い笑みはなく。凪いだ琥珀が、揺らいでいた。
「俺にも、普通の庭、に見える。大きな、楡の木のある。ただの、庭」
「…そうか」
呟いて、息子を促し部屋を出る。
閉まる扉の向こう側。あの窓の外で、彼女が微笑っている気がした。
20240926 『窓から見える景色』
教室の窓から見える空ならば青もねずみもオレンジも好き
窓から見える景色
窓から子どもが外を見ていた、外は真っ赤な太陽が、たくさんの人が寝ている、みんな遠くで話している。あれ、こっちへ人が…うっ!
窓から見える景色、それは戦争中の景色である。真っ赤な太陽は「火」、人は「死体」、話している人は「撃ち合っている」、見ている子どもは撃たれ殺させてしまったのだ。
光の線が
迷いなくこちらを覗いても、
なにも感じなかった。
どうか、わたしを照らさないで。
余命宣告を受けていた君と二人同じ病室だったよね
窓からは桜の木が見えて
君はよく言っていたね
『あの桜の木に花が咲いても見れないんだろうなぁ』
って
それを聞いた時
言うんだったら、あの桜が散ったら、なんじゃないの
って思ったよ
まぁ単純にあの桜は散ったばっかりだったからそう言ったんだろうけど
どうせなら、この景色も一緒に見たかったな
君に会えるまであと半年ちょっと、か
それまでに色々と土産話を用意しとくよ
【窓から見える景色】
【窓から見える景色】
大規模改修中のマンション
かけられたネットで、ベランダは朝から夜までずっと雨の日のいろ
外れたら雪がふってるかも
それもいいかも
窓から見える景色はとても美しかった。
でも、その見えた場所へ行くと美しくはなかった。
遠くから見る。近くから見る。
違うのは、当たり前か笑
君だってそうだろ?
もしも、時計とカレンダーを捨てて生活が出来たなら、私の病は治るのだろうか?
現代社会の息苦しさが原因と思しき心の病は、現代的でない生活を取り入れたらもしかしたら治るのでは? と、つい期待をしてしまう。
そこで思い描いたのが前述の時計やカレンダーに縛られない暮らしだ。
日の出とともに起床し、日没とともに就寝する。実に健康的な生活だと思うのだが、それは私の気のせいだろうか?
窓から見える景色から季節や時間を知る必要があるから、時にはこうしてぼんやりと窓の外を眺めていたっていい。
だが、今日まで続いてきた日常をぶち壊せるような勇気も気力も、今の私にはない。
故に、窓の外に夢を見るのだ。
「その程度の自由くらい、あってもいいだろう?」と、誰でもない誰かに許しを乞いながら……。
今、車に乗ってます。窓から見える景色は帰宅していく高校生と一面に広がった畑。今日はちょっと腹立つことがあった。まぁ、8割私が悪いんだけど。でも、今日はやるべきことがあったからそっちを優先しただけ。忘れてたわけじゃないのにいないところでぐちぐち言われた。そこに入って、前のことは謝ったけど今日のことはキレちゃった笑
これってやっぱり8割じゃなくて10割悪いかな?笑
新緑の季節。遊びに行くのであろう子供達の声が聞こえてくる。鳥のさえずりが聞こえ…なんてよくある物語のようなことはなく、車の走行音や、たまに聞こえる自転車のブレーキ音。音響式信号機が青を知らせる音……。都会で聞こえてくるのはだいたいそんなもん。
窓から見える景色は毎日大差ない。けれど、下のちょっとした広場で散歩をしている人がいたり、子供達が走っていたり、春は桜、夏はあじさい、秋は銀杏、冬は椿……一年中楽しめるよういろいろな種類の花々が植えられていたり。意外と飽きないもので。
気分の良い日はスケッチブックに描いている。同じ場所、同じ様な風景の絵。でも、よく見れば違いがある。
今日は数日ぶりに筆記用具とステッチブックを手に窓辺に椅子をおいて座る。は特に賑やかだ。そこそこ大規模な夏祭りをやっていて、夜には花火が上がる。
花火はここから少し離れた公園で打ち上げられるのだが、去年も一昨年も、その前も、俺はこの部屋の窓から眺めている。多少小さくとも、十分綺麗で楽しめる。
屋上に出ればもう少し見やすいのだろうけど、小さな子や家族連れで見ている人が結構居るから……昔から人混みは苦手で。
「青木さーん、診察のお時間です。」
「嗚呼、はい。ありがごうございます。」
ノックの音がして、見慣れた看護師さんとお医者さんが入ってくる。手元の道具を座っていた椅子に置き、ベッドへ戻る。
「……よし、一通り問題はなし。今日は調子が良さそうですね。」
「えぇ。久し振りに絵も描けそうで」
「それは良かった。出来上がったらまた見せてくださいね。」
「もちろんです。毎回同じ風景ですけどね。」
暫く話して、二人は病室をあとにする。
俺はいわゆる難病というものに罹ってしまったらしく、ここ数年は病院の外に出れていない。だから、この窓から見える景色が俺の唯一の外とのつながり。
高校は休学扱いだが、そろそろやめようか悩んでいる。多分、もう長くはないから。
窓から見る景色。スケッチブックに描き溜められた同じ場所の景色たち。俺の世界は随分と狭くなってしまったけれど、この小さな世界も案外嫌いじゃない。
#15『窓からの見える景色』
窓から見える景色
100万ドルの夜景
夢だね
となりの家の壁
現実だね
よっしゃ やっちゃろー
きょうはまっくろ
きのうはまっしろ
いつも窓の外を見る
たまに何も見えないけれど
いつもはさわさわ草木が揺れる
きょうもまっくろ
きのうはまっかか
明日は何が見えるかな
「窓から見える景色」
早朝。草木と小鳥が目を覚まして小さな囁き声をあげる。
そしてそのあと、藍色に染まった街が赤と白のライトをちかちかさせて動き出す。
朝。ようやっとひとびとが目覚める。
楽しそうに散歩する犬。のんびりうとうとする猫。
食べ物を得ようとゴミ袋を啄くカラスと、それを追い払うひと。
昼。みんな活発に過ごす時間のはずなのに、静けさが漂う。
黙って微笑んだままのパンジー。風に揺られる百日紅。
日の光からひとびとを守る日傘の花。
夕方。あれだけ元気だった太陽は街を赤く染めて、世界で一番大きな影を連れてくる。夕焼け雲を見つめているうちに公園で遊ぶ子どもたちの声が少しずつ遠くなって、夜が来た。
夜。どこからともなくカレーの香りがする風。
少しずつ消えていく窓から透ける明かり。
どこかで聞こえる猫の喧嘩と渡り鳥の鳴き声。
深夜。みんな眠った後の、自分だけの時間。
自分だけの時間と言いながら窓の外を見て、仲間探しをする。
たとえひとりだったとしても、孤独ではないとわかって安心する。
窓から見えるのは、たったそれだけの景色。
だけれど、そこにひとびとの、街の全てが詰まっている。
世界はテセウスの船だから、この景色もきっといつか見られなくなってしまう。街と一緒に、私の心も入れ替わっていく。
窓の外に見えるのは、今しか見られない風景画。
静かな光が差し込む
朝の窓辺に佇んで
今日の始まりを身に浴びる
窓枠に切り取られた街並みと
輝く雲を遠くに眺め
どこかで雀が鳴いている
動き始める外の世界に
伸びをひとつして
朝の支度に取り掛かる
〜窓から見える景色〜#10
北校舎4階、2年1組
窓際、前から3番目
頬杖をついた彼は
なにを見つめていたんだろう
#窓から見える景色
窓には蔦が這いずり回っている
割れたコンクリート
埃の積もった書庫
誰もに忘れ去られた亜空の場所
病に伏せてからどれだけ経っただろう。
唯一の楽しみと言えば
窓の外を眺めること。
遠くの山々は季節の移ろいを見せる。
青く広い空は一日の時間の流れを見せる。
人の営みも同じように。
朝、昼、晩で変わる。
時が止まっているような
部屋から見える景色は
いっそう、輝いて見えるのだ。
【窓から見える景色たち】
何かを求めて やってきた街
結局 何も見つけられなかったけど
あの人と過ごした日々は温かかった
あの人が遊びに来てくれてたときは
何も気にしなかったけど
僕がまたひとりで過ごすようになってからは
僕の部屋の窓から見える景色は
殺風景で温かみが無くなっていた
やがて 僕もあの部屋から去ったが
僕の次に入居した人たちは
あの部屋の窓から
どんな景色を見ているのだろうか
恋愛詩人よしのぶ
#恋愛散文詩
#人生散文詩
#散文詩
#窓から見える景色
#恋愛詩人