『窓から見える景色』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
窓から見える景色
新幹線の窓側。
眩しいと分かっていつつもパーテーションを開ける。
見えるのは地元とは全く違う街。
洗練されたビル群に、暖かみのある観光地。のどかな田園風景に、誰もが知るお菓子の工場。
一瞬で流れていってしまうこの景色が、移動中の一番の思い出。
翌日。
休日なのをいいことに、いつもの仲間数人で集まって昨日聞いた話を検証することにした。そう「同じ所をグルグル周っていたら」についてだ。
公園でジャングルジムに登り、試しに上から2段目をみんなでグルグル周ってみたが、何も起こらなかった。ま、行き当たりばったりじゃ無理よな、となり、その後はジャングルジムに腰を下ろし、あーでもないこーでもないと意見を言い合った。そうしているうちに「同じ所をグルグル」というのが「①ジャングルジムの同じ箇所だけを周っていた」のか、「②後ろの子が前の子を真似て、様々なルートをついて周った」のか、どちらの意味で言っていたのか確認が必要だということになった。
昼のチャイムが聴こえた。誰かのお腹が空腹を告げたのを合図に、この日は解散することにした。「同じ所をグルグル」については週明けに学校で本人たちに確認しようということで決着した。
全員でゾロゾロと坂道を下っていると、下から昨日話を聞いた1年男子が走ってきた。目が合うと「家の窓から見えたから、話を聞こうと思って」と言った。昨日の話とさっき出た意見を伝えると、「俺は別にグルグル周ってないけどな」と不思議そうに言った。そして唐突に「歯医者に行くから帰るわ!また学校で!」と言い、坂を走り下りて行った。
あっという間の出来事にみんなで呆気に取られていると、ふいに閃いた。そうだ、歯医者だ。昨日話を聞いた子たちの中で、銀歯が見えている子がいた。
後ろを振り返り山を見上げると、電波塔が見えた。突然、全てが繋がった。「同じ所をグルグル」に囚われていた自分に笑った。何だそんなことだったのか。あとは確認していくだけだ。
―――宇宙(そら)からの便り [破]
#73【形のないもの】【窓からの景色】
黒い忍者が横切ってすぐに空気にとけた。
こちらを見てるよ。口元隠しても目がギロリ。
どこまでも付いてくる気だな。
知らないふりしてやるから、付いてくるといい。
歩いて歩いて振りかえると、ちょっと笑ってちょっと鳴いて飛び立った。
『窓から見える景色』
窓を開けるとそこは現実世界。まだ布団の中にいたいという気持ちを押し殺して学校に向かう。朝は私にとって苦痛でしかない。学校に行ったり部活に行ったり、いつも自分の体を叩き起す。でも今日はいつもと少し様子が違う。
窓を開けた途端真っ白な世界が広がる。どこか不気味でなぜだか引き込まれる。私は訳が分からず立ち尽くす。私にはその景色がパレットのように何にでも染まれるように感じた。自分だけの景色を作ろう。そう言われている気がした。朝が嫌いにならないように。自分のお気に入りの景色を描こう。
登校中の学生や大人が数人歩いていて、空は雲ひとつ無い青空。鳥のさえずりが聞こえてきたり、雨がやんで大きな虹がかかっている。そんな私だけの景色が窓という名の額縁から広がっている。
私の身長は、152センチ。
私の頭の先から大体50センチ上にある横長の格子窓から見える外の景色が、私の全て。
物心ついた時から私はこの部屋で監禁されていた。
とは言っても、私が望むものはなんでも貰えたから本などで色んな教養を得た。
毎日ご飯を持ってくる人が、何でも教えてくれた。
格子窓から見える外は、青かった。
青々と茂った雑草と、雲ひとつ無い青空。
ここは半地下のようで、格子窓の底辺が地上の地面になっている。
……ここで、机にあるパソコンのメモ機能の文章は途切れていた。
きっと、遅かった。あの格子窓から、この子は新しい世界を見つけた。
何も出来ないだろうとあの男をほっておいたのが間違いだったんだろうか。
椅子に座り、窓を眺めてみる。
あぁ、青くて綺麗だ。
きっと、俺はあの子を、娘を縛り過ぎた。
いくら娘が悪だからって、外に出るのは許してやればよかった。
あの子の母親……つまり俺の妻は、あの子に殺された。
物心がつく前から、蟻などの虫をよく潰しているのを見ていた。
おかしいと感じのは、うちで飼っている犬を痛め付けているのを見つけてしまった時。
それから俺はこの家にあの子を監禁したけれど、外に出さないのは良くないと思って、妻が屋上で娘を遊ばせていた時だった。
妻を突き落とした。
それから、決してあの子を出すことはなくなった。
この世界に、あの子は合わないのだ。
済まなかった、もっと違うやり方があったのだろうか。
今悔やんでも、意味が無い。
窓から見える景色は、雨が降っていた。
#窓から見える景色
─窓から見える景色─
君と昔、幸せに住んでいたこの家。
今でも残る、君の香水と思い出の品。
捨てようとしても、捨てられない。
君との時間が、無駄に感じてしまうから。
それに、捨てることが物理的に無理な物もあるから。
例えは、海の方面にある窓。
あの窓から見える景色は、綺麗な青色の海だった。
夜に海へドライブに行き、貝殻を集めて写真を撮った。
でも僕も君も、写真は壊滅的に下手で。一緒に笑ったんだっけ。
この海の見える窓は、君との思い出が詰まっている。
自分でも分かっているつもりだ。
捨てられないんじゃなくて、捨てたくないんだって。
いつか君が、ただいまって帰って来ないかな、って淡い期待を抱いて。
今まで通りに、何もなかったみたいに。
そんなこと、あるわけないと頭で分かっていながら。
今日も僕は、海の見える窓辺で眠る。
その窓の奥にうつるのは🪟
綺麗な青空、広がる大草原、きらきらした都会の街
誰もが願う平和な世界とは裏腹
なにひとつ色のない世界。
表情はあっても色のついていない生き物たち。
美味しいはずの果物やお菓子。
楽しいはずの遊園地。
落ち着くはずの植物園。
そんな世界に飛び込もうとしていた。
色があるという褒美と
色がないという悪戯。
当たり前は当たり前じゃない。
当たり前を当たり前にしよう。
そんな言葉が飛び交って
いつしか人間は
当たり前ではないことさえ
当たり前としてとらえるようになった
ありがとうを思えなくなった
あなたには色がありますか。
隣にいる人は何色ですか。
輝いていますか。
笑っていますか。
当たり前に存在する赤色は
本当に赤色でしょうか。
色のない世界では
色がないことが最も綺麗で
色がないことが当たり前でした。
今を生きているということ。
当たり前じゃないかもしれない。
当たり前に感謝を示せる
そんな世界が広がりますように。
窓から見える景色
この窓から見える景色をあと何回見れるのだろうか。
いつかこの景色も思い出になって忘れてゆくのかな。
窓から見える景色
この病院の窓から見える景色は海である。
ホスピスに入院して二ヶ月。余命半年を宣告されてから、四ヶ月が経った。
28年間しか生きられなかった。大好きな彼と結婚もしたかったし、子供も欲しかった。両親に心配ばかりかけて、親孝行できなかった。
私がこのホスピスを選んだのは、サーファーの彼のサーフィンを、ここから見ることができるからだ。両親が通うのには少し遠いけれど、彼が波の上で舞っている姿を見たかった。
彼が今日も舞っている。なんて素敵な景色なんだろう。白い波を蹴って高く舞い上がる。私が愛した人。
ありがとう。
そして、さよなら。
窓には美しく咲く桜がある。桜、淡いピンクで美しく咲き誇る桜。そのピンクは君の血が染み込んでいて木には君の骨と肉が入っている。愛おしい。
桜の樹の下には屍体が埋まっている
『窓から見える景色』
窓枠で切り取られた、見慣れたグランドと青い空。
夏休み前の試験期間のせいで、いつもは騒がしいはずの敷地内はまるで眠っているような穏やかさだ。
「あれっ!林ー、まだ帰んないの?」
暑さでぼんやりとしていた耳に、よく響く声が聞こえる。
隣のクラスの町田である。
1年の時に仲良くなった友人の1人だ。
帰らないのではなく帰れないのだ。
ここは田舎にある高校で、自宅から自転車と電車を駆使して通学している僕にとっては、少なくともあと1時間後にしか来ない電車を待つしかない。
「帰れない。」
「あ、おまえ電車通か。」
町田は自転車で通っている。本当は電車で通ってもいい距離なのだが、運動部に所属している彼は体力をつけるためにそうしているらしい。
「じゃあ俺も待とうかな!」
僕の隣の席に町田がやってくる。
すっかり日焼けした腕が、白い半袖のワイシャツからのびていて軽快にスマートフォンを操作する指は骨ばっている。
勉強する気は無いんだなとそれとなく察した。
ふと外に目をやる。
何度ここから眺めただろう。
癖になってしまった。
放課後のグランド、飛ぶように駆ける君をいつも探している。
四方を真っ白な壁に囲まれ、様々な電子機器が並ぶ部屋。
その部屋には唯一、大きな窓があった。
一つだけある窓から見えたのは海だった。
ベッドの上から動けない僕は、いつしか窓の方を向くことが多くなっていた。
晴れの日、雨の日、春夏秋冬。
毎日、少しずつ変わる景色を僕に見せてくれる窓は日々の退屈を、外の世界への好奇心を刺激した。
『窓から見える景色』2023,09,26
「窓から見える景色」
私の世界は狭い。
物心ついた時から、病院から出たことがないからだ。
外の世界の写真は見せて貰えても、外を見ることが出来るのは、ベット横の窓だけだった。
私の世界は、この窓から見える景色が全て。
いつも変わらない景色。
少し動く写真みたいなもの。
こんな小さな世界のまま死んでいくのかな。
嫌だな、そんなの。
ぽた、ぽた。
布団を強く握りしめる。
でも寂しくてもいつも独りだから。
ぬいぐるみを抱きしめて布団に潜る。
周りに迷惑がかからないよう、静かに静かに泣きながら。
胸に空いた空洞は埋まらないまま。
今日もきっと誰も来ない。
「ねえ、どうしたの?」
「おーい!おーいって!もおー!」
窓をドンドンと叩く音がする。
布団から顔を出して覗くと、同い年くらいの男の子が窓の外に立っていた。
「あ、良かった、反応した!」
そう言ってはにかんで笑った顔はとても綺麗で。
いつもと同じ色褪せた世界が、いつもより少しだけ色づいて見えた気がした。
窓から見える景色───
こっちの窓は誰かが歩いている
あっちの窓は誰が通話している
そっちの窓は誰かが怒っている
この窓は誰かがアニメをみている
あの窓は誰かが泣き叫んでいる
その窓は誰かが銃を人に向けている
貴方の窓からは何が見えますか?
見えていた世界は灰色しか見えなかった。
家の色合いや街の風景、それら全てが…
辛くても押し殺していた。
(こんな灰色しか無い世界は消えればいい…。)
(私は、誰の色にも見えない…。)
そう思っていた、だけどある日。
イラストや空の色には綺麗なことだと気付いた。
眩しい光を放つ太陽。
寂しく見えるのに、美しい夕日。
夜には静かに差し込む月明かり。
月と一緒に居てくれる星々たち。
こんな、美しい世界にあったなんて…知らなかった。
深く心に刻み、とても感動した。
(…綺麗…。)
涙を零しながら、静かに窓を開けた。
💫窓から見える景色/灰色の視点🫧
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窓から見える星よく親友と夜更かししながら見たな.....
一昨日大喧嘩して避けてばっかで喋ってないな.....
明日は、明日は絶対に仲直りしたいな
また大好きな親友に会いたい。
窓から見える景色
「このビルからなら花火が見えるよ!」
近くで花火大会があった。開始時間を待ち兼ねていた残業中の何人かが、窓ガラスに集まる。高層ビルの大きな窓越しに花火が上がり、歓声も上がる。とてもよく見える。
綺麗だった。でも思ってたのと違う。
音が遠い。風を感じない。火薬の匂いもしない。
開けられない窓から見える花火は、私には本当の花火とは思えなかった。
ちょっぴり残念だった夏の思い出。
#38
何も知らない土地に引っ越した。
初めての場所。
初めての風景。
とても緊張していたけれど。
いつしか窓から見える景色に。
心安らぐようになって。
一日の終わりに、ああ、疲れたなぁと。
溜息が自然に出て肩を下ろせるようになると。
僕はここが自分の帰る場所になったのかなと。
そんな自覚をし始めて。
ああ、良かったなぁと、ほっとする。
【窓から見える景色】
窓から見える景色はいつだって輝いて見えた。
目を瞑り手を伸ばせば届きそうなのにいつも見ているだけで気が済んだら窓を閉めてしまう。
色んな想いや感情が波紋のように広がって大きな波に変わっていく。
背後から迫る波に気づかずにまた窓を開ける。輝く景色を求めて、
窓から見える景色が、好きだった。
窓を額縁に、自然が描き出すものを楽しむ事ができた。
隣の公園の桜が、二階にある私の部屋とちょうど同じくらいの高さだったので、春には満開の桜が額から溢れんばかりに見えていた。
のほほんとして、全てを否応なしに穏やかにしてしまうような春は少し嫌いだった。でも、空気に溶けそうな淡いピンク色で、しあわせをそのまま絵に描いたような桜がふわふわと揺れているのを見ると、春も悪くないと思えた。
夏が近づくと山の竹林がさわさわと音を立て、夜には蛍が飛んだ。より夏が深まれば、濃いみどり色の空気を蝉時雨が震わせた。
紅葉の色が変わっていくのを眺め、金木犀のかおりで秋の訪れを知った。遠くには、彼岸花が畦道を赤く染めているのが見えた。
たまに夜中まで眠れずにいると、絹を裂くような音が聞こえた。うつくしい、鹿の鳴き声だった。
冬になると辺りを真っ白にするほど雪が積もる。
もう何ヶ月もすればかわいい花を咲かせる桜も、この時は水墨画のような幹に雪を乗せ、重たそうにして耐えていた。
日が昇る時の曖昧な空の色も、日没の強い色彩も、全てを描き出す窓だった。
わたしと共に育った窓。
これからもわたしの心に、生きていく窓。