『突然の別れ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
―突然の別れ―
突然の別れ
絶望のどん底に突き落とされたような
自分の持つもの全てが手から零れたような
頭が空っぽになって何も考えられなくなる
そんな中、昔もこんなことがあったな
なんてぼんやりと思う
あのときは純粋で、心のどこかで
また会えるなんて思っていたから、
この絶望感は今より薄れたものだった
だが今は違う
あの頃よりずっと成長して
色々なことを知った今では
またいつかなんてことは恐らくない
そう感じる
その分衝撃は大きく
私の日常を灰色に塗り替え
視界に靄をかけていった
忘れることのできない突然の別れ。
人は幾つもの別れを経験して生きていく。
だけど最初の別れが幼い私に。
何事もなかった平凡で平和な日々に突然訪れた。
一生分の涙を流した、枯れ果てるまで流した。
もう涙は残ってないだろう。
幼い私だけどその時自分に誓ったの。
父と妹を一生守っていくって。
「突然の別れ」
私の友達は少し変だ
ある日彼女が虫を潰して笑っている姿を見た
鳥肌が立った
彼女が家で大事に飼っていた
私の手と同じくらいの大きさの虫だ
彼女はぶつぶつと何かをつぶやき笑いながら
両手の間にはさんでこするようにして潰した
鳥肌が立った
私は彼女とはもう関わらないことにした
彼女と話さなくなってから一ヶ月
彼女は突然学校に来なくなった
どうしたんだろ
少し心配したが嬉しい気持ちの方が強かった
もうビビらなくていい
学校が終わり家に帰った
リビングに入るといつもと同じ母の姿があった
「ただいまー」
「お帰りお友達きてるよ」
誰だろ
私はワクワクしながら自分の部屋に入った
入った瞬間私は動けなくなった
部屋の真ん中にぽつんと座り
こちらを向いてニヤけているのは彼女だった
私が動けずに部屋の入口で立っていると
彼女が近づいてきて耳元で囁いた
「突然別れることがあっても忘れないでね」
あれ なんか聞いたことあるな
私は倒れた 同時に思い出した
一度彼女の家に遊びに行った時に何度も言っていた
その時は「誰」に言っているのか分からなかった
だが今分かった
「人」ではなく「虫」に言っていたのだ
ぼやけた視界に映つりこんだ彼女の顔は
とても笑っていた
突然の別れ
この先もこの関係が続くと思っていた
昔からずっと変わらない君は
少しずつ僕の知らない所で変わっていて
変わっていく君を僕は気づけなかった
自分の鈍感さに驚いている
あんなに近くに居て
君の些細な合図に気づけなくて
愚かにも君を傷つけていた
君は次第に嘘をつくようになった
人の為に自分を偽って心を殺した
そんな君に僕はいつも通りに接して
君も相も変わらずいつも通りに接してくれた
多分君の心はもう限界だったんだ
次第に君は周りの人達を避け
連絡も段々取れなくなり
いつの間にか君は消えていた
最後の電話は君なりのけじめだったのかもしれない
あれからもう何十年と経つ
前に君が誰かと居たと言うのを風の噂で耳にした
それも何年も前の話だ
今君が何処に居て
誰と居て
どんな時を過ごしているか分からないけど
幸せでいて欲しい
そしてもし叶うならまた君に逢いたいです
あなたは通り雨のようにやってきて
そして 去っていった
何度聴いたかわからない
"Yesterday" の歌詞が
今はじめて鼓膜を突き破り
心に流れた
あんなに苛立ってばかりだったのに
どうして思い出すのは
あの日の散歩道
笑いあったこと、夢のはなし、
大きくあたたかい手
もう涙も自分でどうにかするしかないんだね
別れってものは、急にくる。
いつもそう。
逆に分かってたらすごくない?笑
まぁでも。人は別れから学ぶ生き物だから。
人生は別れからスタートだよ
よく産んだねえらかったね
2人も育ててえらいね
ベッドに寝転びほめてくれる
上から見下ろすのが
申し訳なくて座った
同じ高さでしわくちゃに笑う
祖母がいた
いつも味方でいてくれて
いつも大丈夫と言ってくれて
ありがとうございます
別れは突然だったけど
ツライときは思い出すのです
世の中の事は大体なんとかなるのよ
語ったあなたを
'別れは突然に,
友達が引っ越してしまう。
一週間後だそうだ。
友達と言っても友達だったという方がしっくりくる。
クラスが変わりお互い遊ばなくなった。
ただ、お別れだけは言いたかった。
でも、あの時も上手く言えなかった。
何て言えばいいのか分からないのがそのまま言葉になった。
友達だった人は困った顔をしていた。
今もきっと変わらない。
だから、お別れを言わずに別れるようになった。
【突然の別れ】
いつも同じ挨拶の匿名メッセージが来ていた。いわゆるシャワー投稿というもので、自分がフォローしている人に、あなた達の作品を余さず見ています、でもこのような季節ですから、○○を楽しみながら、体調にお気をつけて、という文言だ。
私や相互フォローの友人達は、それを楽しみにしていた。ただ呼びかけても出てくることはなかったので、きっとシャイな人なんだろうと思っていた。毎月初週に必ず来るので、ひっそりと月刊さん、と呼んでいた。
それが二年ほど続いたあとの夏、ぱたっと、そのメッセージが来なくなった。私達は見えるところで「月刊さんが来ないね」「お元気かな」「体調崩されてるならどうかあなたこそ気を付けてね」と、示し合わせたでもなく呟いていた。
一月しても、二月しても、そのメッセージはもう来なかった。
春先頃、相互フォローの友人と会う機会があった。私はなんともなしに、「月刊さん、お元気かな」と問うてみた。
「えっ誰?」
という彼女の返事に、ああごめんね、あなたの相互さんじゃなかったかも、と誤魔化した。きっともう忘れてしまったのだ。
私は少し悲しいな、と思いながら、月刊さんのメッセージを見返した。個人に向けたものではないが、皆が楽しく活動することを祈ったものだ。
フォロワー数を見る。その中に彼女はまだ居るのだろうか。数が多く、探しきれる気がしない。
SNS上での別れは、こうして起きるのだな、と、初夏に差し掛かるカレンダーを眺めた。
【突然の別れ】
恩人が亡くなった、と突然連絡がきた。本当に突然死だったらしい。ご夫婦2人暮らしで夜遅くなったのにテレビの音を高くしていたので、ご主人が奥さんに注意したら反応がなく救急車で運ばれたけれどダメだったと、体調があまり良くない、と言うので翌日は息子さんと病院に行く予定だったと息子さんから聞いた。あまりにも潔い最期を知り彼女らしいな、本当にそういうことがあるのだと思いながらも、もう一度会ってお礼を言いたかった、私の心を救ってくださってありがとうときちんと言いたかった。
姑との関係、言われたことが頭のなかでリフレインし忘れられず苦しくて胸の内を吐き出した私に、心療内科を紹介してくれて…
「でもあなたはこうやって誰かに話すだけでも大丈夫かもね」といつも私の話しに黙って頷きながら聞いてくれた。
子どもが幼い頃、姑のストレスを子どもに暴言を吐き、ぶつけてしまった自分のふがいなさに涙したとき「その時はそうしなければあなたが壊れてしまってただろうから仕方なかったのよ、それでもよい子に育ったんだから大丈夫!」と言ってくれた。
いつも気にかけてくれて季節の惣菜や食べ物も届けてくれて言葉やメールや手紙で私を支えてくれた。
こんな突然の別れは伝えたい言葉も思いもどうすれば良いのかわからない。さまよう言葉と思いを、これからもずっと抱えながら生きていくしかないのだろう。それが彼女を忘れずにいることの証しになるのかもしれない。
#8
なんか、ぱたっと話さなくなった。
もちろんその人が何をしてるか気になる。
何か不安なことがないか、苦しくないか、辛くないか心配だ。
辛いなら助けてあげたいとずっと思ってた。
1週間、1ヶ月とずっと気になる。ずっと心配してた。
あの人と話さなくなってから少したった。
ずっと意識して心配してたはず。
『そういえば、誰だけあれ』
意識の中で別れなんてすぐ訪れ
さっと簡単に消える。
家に帰ると彼はいなかった。彼だけではない。彼の痕跡全てが綺麗にまっさらに消えていた。洗面所から歯ブラシは消えキッチンから箸が消え、靴箱には私の靴しか入っておらず、彼の部屋に至ってはまるで引っ越してきたばかりかのように何一つ残っていなかった。家具すら、無かったのだ。
それらを確かめ、すっかり混乱してリビングにへたりこんだ私は、とりあえず連絡しようとして硬直する。彼の連絡先がひとつも残っていない。私は絶対に消していないのに、いくら目を凝らしても名前は見つからず困り果ててしまった。
意味がわからず目を泳がせると、写真立てが目に入る。中の写真はツーショットだったはずなのに、人影がひとつしかない。慌てて膝で歩いて近づくが、やはり私の姿しかないのだ。おかしい。絶対におかしい。
彼の何もかもが、無い。まるで彼自体が夢だったかのように、全て煙のように消えてしまった。存在さえも消えてしまったというのだろうか。もはや彼の存在を主張するのは私の記憶と、テーブルにただ一枚残された紙。彼の筆跡で書かれたただ四文字、『愛してる』という文字だけだった。
『突然の別れ』
別れは、時により突然だ。
恋人に突然別れを告げられる
慕っていた人が自殺で突然死ぬ
家族が事故で死ぬ
突然知らない人に刺され死ぬ
きっと他にもあるのだろうけど僕が思いつくのはここまでだ。
誰しも突然の別れを事前に回避することはできない。
結局は別れてすぐに気づくものなのだ。
自分がしてしまったこと
自分が殺ってしまったこと
突然の別れでやっと気づく
そして後悔をする。
だから、僕は思う。
突然がいつ来てもいいように現実をすぐに受け入れるように、準備をしておいたほうがいいと。
それが僕の思う突然の別れ。
だって人がいつ死ぬかなんて誰もわからないからね
# 7
お題 「突然の別れ」
ある家に一つの鳩時計がありました。
長いこと働いていた鳩時計は数十年後に壊れてしまいました。
それを可愛そうに思った誰かが鳩時計の白い鳩を本物に変えてしまいました。
何も知らぬまま鳩は早速仲間達に会いに行きました。
鳩の仲間達はその鳩を、もともとは物だった鳩を、素直に受け入れてくれました。
鳩は家族にも恵まれ、幸せな家庭を築きました。
しかし、悲劇はすぐに起きました。
巣の中の卵はヘビに食べられ、妻は猫に狩られてしまいました。
しかし、鳩は物に命を吹き込まれたモノ。
だから、悲しいという感情は無かったのでした。
その後も周りの鳩が死のうが、卵を食べられようが、涙すら流しませんでした。
そんな鳩は狩りをしていたニンゲンに、鉄砲で撃ち抜かれてしまいました。
その鳩は何も理解出来ぬまま、紅の鳩ととなり、天に昇って行ったのです。
《突然の別れ》
いつも通り見慣れた道を真っ直ぐに進む
隣にいてくれていた君はもう居ない。
ついさっき一通のメールが届いた。
視界がどんどん悪くなる
ぼやけていってそのうちカラダが震えてくる。
それでも進まなきゃ
力が段々と抜けていく足に力を込めて地を踏みしめる。
貴方が居なくても貴方が見えなくても胸の中にはいつもの景色。
別れはいつだって突然。
心の準備に時間をかけられたとしても、
時間までは約束されない。
その時はやっぱり突然やってくる。
巻き戻したくても巻き戻せない。
別れを経験した直後、人は時間を大切にしようと思う。
それなのに、人はいつしか突然別れがやってくることを人は忘れてしまう。
あれは確か、わたしが小学五年の頃だった。
もうすっかり暑くなっていて、わたしは額の辺りに垂れてきた汗の粒を拭い拭い下校していた。
玄関の前に立つと――家は社宅らしかったのだが、町外れの狭小な一軒家だった――いや、或いは遥か昔から、それはわたしの胸の奥の方に、誰にも気づかれない染みのようなものとしてあったのかもしれない――気持ちの悪い違和感がわたしの背の辺りにじんわりと広がってくるのだった。
わたしは、咄嗟に振り返った。が、そこには何もいない。四囲は閑寂として、ただ遠方に蝉の声がひとつ聴こえていた。
首を傾げながらもわたしが玄関を開け、ランドセルを下ろした時、違和感は、はっきりとした輪郭をもって現れた――が、そこにはあるべき中身がなかったのだ。
何かが居ない、という確かな不在の感覚だけがそこに佇んでいる。わたしは、何とも言い難い気の重さに苛まれながら三和土を上がると、台所の方へ回って麦茶でも飲もうと思った。何より、台所からは夕食の準備をする音がしていたから。
台所に行くと、いつも通り、そこには母が立っていた。わたしは母に泣き言を言うのも厭な気がして――そういう年頃というのもあった――「今日、何か変だね」とだけ言った。
麦茶を注ぐわたしに向かって、母は些か口ごもりながらも――やっぱり、そんな気がする?と言う。その時、わたしは空恐ろしくなって、手に持ったグラスを一気にもちろん飲み干すと、家の中を見て回ることにした。自室でじっとしているのも、何か落ち着かない気がしたからだ。
風呂場も、手洗いも、居間も、客間も、納戸も、両親の寝室も、そしてわたしの部屋も、すべて見たが、何かあるというのでもなく、ただこの家には何かが居ないような、狂わしい不在が、得も言われぬ別離のような錯覚だけが、わたしに付きまとって已まない。
わたしは、きっと暑気中りというやつだと独り合点して、ベッドに我が身を横たえた。結局、夕飯時に父が帰って来ると、あの違和感は消え失せていて、わたしも母もそんな話は一口とて話題にはしなかった。
だが、あの不安は直ぐに甦った。食事を済ませた父が誰に言うでもなく呟いたのだ――今日、何か変な感じがするな。わたしは驚き母の方を見た。母もわたしの方を見ていた。それでも、わたしたちは何も言わなかった。
わたしたち一家は父の転勤という事情もあり、数年して、あの家を引っ越した。
もう何年も前のことだ。だが、ようやくにして、わたしはあの不在の正体を掴むに至った。
父も母ももう亡い。今、わたしは未だ借家として残っていたあの家の前に立っている。
そして、あの小さな二階家を懐かしむような目でじっと見据える。薄い硝子窓には夕焼けが映って赤々と燃えている。
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突然の別れ
別れとは、人と人とを繋ぐ記憶たちが消えてしまうことである。
#突然の別れ
「ごめんね。最初はふわっとした話が提案されたから、それについてある程度決まったらちゃんと相談しようと思ってた矢先に決まっちゃったんだ」
「もっときっちりと意思確認してからじゃないんですかね……こういうのって」
「僕もそう思うよ。だから抗議はしたんだ。でも、決まったことだから、って」
肩を落として呟くように言葉を吐く。その様子を見れば、本人の納得は得られていないのだろう。だが確かにこの話自体は悪いものではない。むしろ大半の人が両手を挙げて歓迎するのではないか。結果的にそれを選んだとしても、オレは多分納得できると思う。
「だからごめん。しばらくニューヨークに滞在することになるんだ」
「……で。……荷物、纏める必要はあったんですか?」
オレは遊木さんの足元に置いてある箱へと視線を落とす。その話を請けて、オレが帰って来るまでに纏めたのであろうその箱。改めて部屋を見渡せば、不自然に思える空間がいくつも。
「そんな長期間の話じゃないですよね? ……なんで置いていかないんです? ……なんで……っ、全部、持っていくんですか?!」
徐々に自分の感情が抑えられなくなって来る。いや、そうじゃない。言われたこと、これからのこと。ようやく頭が理解していっているのだ。
「残して行ってくださいよ! ここに、オレのところに戻って来るんだって、約束してくださいよ! ねぇ!」
「……だって」
抑えられないままに声を張り上げるオレとは対照的に、呟くような、囁くような声が落ちる。
「置いていったら……僕が戻れると思ってた場所にもしも他の人がいたら……。僕がいない間に僕の残したものが漣くんの邪魔になっちゃうかもしれないから。……だから僕の荷物はない方がいいでしょ」
「勝手にそんな想像しないでくださいよ! 何でなんです? オレの気持ちはそんなに信用して貰えないんすかねぇ……?」
幾ら伝えても、きっと遊木さんの心には届いていない。埋めることの出来ない穴があって、そこからすり抜けてこぼれ落ちていくのだろう。
伝えて伝えて、ようやく埋まったのだと思っていた。でも多分そんなことは一生やってこないのかもしれない。
「漣くんを信用してないわけじゃないんだよ」
「じゃあなんで……」
返事はなかった。ただ、寂しそうな笑みを浮かべてオレの手を握る。握り返すと、変わらぬ笑顔でそっと手が離れていった。
「待ってて、なんて僕には言えないよ」
じゃあオレが追いかけるだけですよね。オレが黙って待ってる性格じゃねぇのはあんたも知ってるでしょ? 別れなんて受け入れてやんねぇ。それが少しの間だろうと関係ない。腕の中に取り戻す、それまであんたはニューヨークで待っていれば良いんだよ。
内心で呟いてその背中を見送った。
長い間ご愛好いただき誠にありがとうございました
近所の洋菓子屋さんが閉店した。
おじいちゃんおばあちゃんの2人でやっているお店だった。
初めて行ったのは幼稚園の頃。祖父に手を引かれて、ベビーシューを買いに行った。ベビーシューは小さな私にはぴったりな大きさだった。
次に思い出すのは小学生の頃。そのお店は同級生のおうちで、お店のおじいちゃんおばあちゃんは、同級生のおじいちゃんとおばあちゃんだったのだ。近所だから一緒に遊ぶことが多くて、そのお店から同級生が出てきたときはとてもびっくりした。
歯が抜けて永久歯が生えてくるようになると、私は歯医者を嫌がった。今考えれば虫歯じゃなくて定期検診なんだから、全然痛くないんだけど、音が嫌だった。行きたくないと駄々をこねる私に、お母さんはその洋菓子屋さんに連れて行ってくれた。ご褒美には歯が変な感じでも食べられるプリン。昔ながらの、ほろ苦いカラメルと固いプリンは、とても大好きだった。プリンのためなら歯医者もちょっと頑張れた。
中学生になると、部活が忙しくなってあまり行かなくなった。それでもたまに家族が買ってきてくれたベビーシューが冷蔵庫に入っていることがあった。部活で疲れた私には1口サイズがちょうど良すぎて、たくさん食べすぎてよく怒られた。
社会人。
一旦地元を出たものの、祖父母の介護のために地元に帰ってきた。思い出すのはあのベビーシューとプリン。食が細くなってしまった祖父母に、私はベビーシューならいいのではと思い、数年ぶりに洋菓子屋さんへ足を運ぶ。私には固いプリン。どこもかしこもなめらかで口溶けの良いプリンだけど、私は卵たまごした固いプリンが食べたかった。
変わらないお店の場所。ショーケースに並んだ商品も同じ。店員さんもおじいちゃんとおばあちゃんだけ。何も変わらないんだけど。
「プリン1つと、ベビーシュー1つでいくらだ?」
あぁ、同級生のおじいちゃんとおばあちゃんだから、私の祖父母とそんなに変わらない年齢なんだ。客である私に値段の計算を求める姿を見て、当たり前の事実に気がつく。
それからの私は足しげく通った。値札と違う金額を言う2人とそれを訂正する私、お店の隅に置かれるようになったシルバーカー、どれも自分の祖父母を見ているようで辛かった。でもベビーシューもプリンも味は変わらなかった。とても美味しかった。
そして今日。
閉店の貼り紙を見て、呆然と立ちつくす私。
最後にプリン、もう1回食べたかったな。
#突然の別れ