『秋風』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
秋風
揺れる薄の穂、流れる夕雲、飛んでいく烏の群れ…
そんな景色を丘の上から眺めて、肌寒い秋の風に身震いした…少し冬の気配が入り混じるこの風に、人恋しさが沸々と浮かんできた…君の隣で持たれ掛け乍ら、暮れて行くこの空と、やがて輝き出す星を見つめていたい…
秋風
冷たい風の中でも差し込む光が暖かくて、紅葉になりかけた様子に思いを馳せて、冬を思い浮かべては四季を感じる。パリパリと枯れ葉を踏みしめて歩くより、掬っては頭上に広げた葉を眺めた。
子供頃秋になったらよく焚き火と
焼き芋を庭でした記憶。
楽しくて暖かいだけど
どこか肌寒い秋風が吹く
ポカポカ( *´﹃`*)暖かい焚き火
ホクホク(っ´ω`c)美味しい焼き芋を食べながら
たまの帰りが早いお父さんの帰りを待っていた。
買い物の帰り道、
商店街をふらつと通る
トンカツ、まんじゆう、団子、
肉まん、からあげ、餃子、
パン、栗、魚、
「ああ、ここは魅力が多すぎる」
商店街を出る頃には袋の数は増え、
秋風と共に
家への帰り道をたどる。
この間までの酷暑はすっかりなりを潜め、夜にはシンと冷え込んだ空気が張り詰める。
カラリと部屋の障子を開けて縁側へ出てみれば秋の風が吹き込み体に沁みる、薄い夜着では心許ない。
体を縮こまらせて立っていれば、湯汲みからの帰りであろう同級生と出くわした。
「や、今日はやけに冷え込むねぇ」
「そうだね、夜着一枚じゃあ今夜は寝むれなさそうだ、丹前を出してくるよ」
そう言って彼は自室に戻っていく、それを横目で見送り、自分は床に腰掛ける。
今宵の空にはくり抜かれたような月が昇っている。
明日は実習がある、この様子だと雨の心配はなく秋晴れとなるだろう。
「…冬が来るな」
もうすぐ霜の声がし始めるだろう、そろそろ湯たんぽも準備した方がいいかな?とこれから厳しくなる寒さへ思い馳せる。
長い冬が明け、春が訪れれば私たちはこの学園を離れる。
それまでのほんの短い間、何が起こるのだろう、何を為せるだろうと慮る。
これから先、この戦乱の世を生きていく私たちはこの学園での出来事を忘れることはないだろう、それ程濃く鮮やかに彩られた沢山の記憶(思い出)がある。
その一つ一つを胸に抱いて、生きていくのだ。
だいぶ冷えきってしまった指先を擦りながら重い腰を上げて自室へ向かう。
既に敷かれている布団を見やれば別室の彼が用意してくれたであろう丹前があった。
普段何かとこの職業には向いていないなどと言われている彼だが、こうして気配も足音もなく置いて行った(私が思い耽っていたというのもあるが)彼は既にその作法が身に染みついてしまっているらしい。
有難く用意されていたものを羽織り、布団へ潜り込む。
カタカタと風に揺れる障子を子守唄に目を閉じた。
《秋風》と冬の訪れ
秋風が体にぶつかる
まだ衣替えをしていなかった私は
鳥肌を立たせながら早歩きで帰路に着く
家につきクローゼットを開けると
コートが一着 ハンガーにかかっていた
手に取り生地を触る
母親の温もりがコートに残っているような気がした
死の間際に託してくれたこのコート
悲しみの風が秋風と共に殴ってくるような感じがした
埃を取り除き シワを整える
明日着ていこう
そう思い 今日生きる準備をし始めた
お題『秋風』
今日は中秋の名月。
まんまるの月といえば、私にとっては団子である。
「くぅ〜やっぱこれだよね! 風花堂のみたらし団子」
今年は中秋の名月に満月が見れると聞いて、慌てて買いに走った。ラスイチのお月見団子を購入できたのは本当についていると感涙したほどだ。みたらし団子が三本入っているだけなんだけど。
特製のみたらしがほんのりと焦げた団子にこれでもかと覆い被さって絡みついている。この甘さ控えめなみたらしと程よい弾力の団子の組み合わせ、もう最高としか言いようがない。自分の語彙力の無さが嘆かわしいとさえ思うほどに。
あー幸せ……
「なーに一人で食べてるわけ?」
幸せに浸っていると、いきなり右腕が引っ張られた。団子の行方を目で追いながら凝視し続けると誰かの口の中に消えていく。
「先輩……」
「あ、これ風花堂のだよね。うまいな」
視線を口から顔全体へシフトすると、先輩がもごもごと団子を咀嚼しているではないか。
口の端についたみたらしを舌で舐めとると、先輩は獲物をみつけたかのように瞳を爛々と輝かせながら笑っている。
あー、この人。絶対団子しか目に入ってない。
「うまいな」
「えと、よかったらどうぞ」
一本恐る恐る差し出すと、先輩は団子を見つめたまま歓喜の笑みを浮かべた。
「え? いいのか? いやー悪いなあ後輩。そこまで言うなら仕方ない、ありがたく頂戴しよう」
そんな涎を溢しそうな顔で言われても。どう見ても食べる気満々じゃないか。普段は澄ました顔だけに、他に誰もいなくて安心した。
いつの間にか初めからそこにいましたと言わんばかりに隣に陣取ると、先輩は団子を一口で食べた。ひとくちで。
「うまいな〜もごもご」
食べるの早くない? やだこの人、こんなに食い意地張ってる人だっけ? なんか最近、第一印象がどんどん崩れてる気がする。
「そういえば、今日は中秋の名月だったな」
先輩は満足げにこちそうさま、と言うなり空を見上げる。
つられて見上げれば、満月。
そして、隣には先輩。
「綺麗ですね」
「ん? そうだな」
ひやっとした涼やかな秋風が通り抜ける。
暫くお互い無言で眺めていると。
「あ、違うか」
「はい?」
「お前の方が、綺麗だぞ?」
いきなり何を言うのかと思いながら顔を向けると、先輩は悪戯が成功したかのように嬉しそうに笑っていた。
月明かりに照らされたその笑顔の方が、どれほど綺麗かと。
そう、思った。
秋の風はぬるかった。
秋の空はぼんやり赤くて、日差しは冷たかった。陽の光を浴びていると指先が冷たくなってきたので、あわてて木陰に潜り込んだ。木の葉どうしのこすれる音がやけに静かでうるさかった。足元に落ちる影は、黄色と緑色でできたマーブル模様になっていた。
「にぎやかな夢だね」
ヤツはいつもそう言って笑っていた。自分でさえ変だと呆れていたこの“夢”を、一度も馬鹿にすることはなかった。
「……変だよ、おまえ」
不格好にカットされた梨をかじりながら呟いた。今日の梨は少し固くて、あまり甘くなかった。なかなか味わえないこの食感が新鮮でおもしろい。いつも、ふやけはじめた梨ばかり食べていたから。
ひどいな、なんて眉を下げて笑う顔になぜだか腹が立って、梨をひと欠片、その口に放り込んだ。なにするんだよと文句が飛んできたが、知らん顔で外の景色に視線を移した。
やわらかく吹き込んでくるのは、秋の風。
秋の風は、少しだけ冷たかった。
空は天まで高く青々としていて、差し込む日差しはあたたかい。木陰は爽やかな黒色で、木の葉の音はまるで子守唄のようなやさしさがあった。
その情景から目を逸らし、またひとつ、梨をかじった。
"秋風"
最近、数日前より冷たく乾いた風が吹くようになってきた。
もう十一月中旬、そろそろ冬めいてくる頃。もうそろそろ本格的に冬物を出す頃だ。
たしかに最近、外に出るのにカーディガンやストールを羽織っても少し肌寒くなってきた。ダウンジャケットとか引っ張り出してクリーニングに出そう。手袋、どこに仕舞ったっけ。
服だけじゃない。居室や院内のストーブもつけなきゃ。起きるのに少し辛くなってきたし。けど、つける前に近々軽く点検して、つけても大丈夫か見なきゃ。
そういえば、ポットの取っ手が最近ちょっと危ない気がするんだよなぁ。お湯沸かして持ち上げる時ちょっと冷や冷やするっていうか。見た目は大丈夫だし今の所問題ないけど、念の為新しいの買っておくか。
あぁ、あと加湿器。寒いと乾燥してくるし、空気の乾燥が原因でインフルエンザとかになる可能性が出てくる。あと単純に喉がカサついてくる。一度点検して、使うのは洗ってからだな。
乾燥といえば、リップクリームとか、ハンドクリームも買っておかなきゃ。ハンドクリームは香りを嗅いでリラックスしてるから冬じゃなくても使うけど、やっぱり冬の方が品揃え豊富だし、新しいのも出る。リップクリームは、唇が切れるのが痛くて嫌なだけ。シンプルな無色のやつ。
そういえばこの前、リップバームっての見かけたけど、あれどう使うんだろ?用途はリップクリームと同じっぽかったけど。今度行った時試そうかな。
おれを呼ぶ 見えない人影 通る声
"秋風"
誰かに呼ばれた気がした/日が暮れてから呼ばれた
どっちだ
【秋風】
『今日は夕方から雨が降る予報が出ています。傘を持って行きましょう。』
今日、ニュースで雨の予報が出ていたから学校に折りたたみ傘を持って行った。
冷たくは無いが温くもない秋風が私の横を吹き抜けた。
『今日は学校の傘借りるつもり〜。』
クラスで明るい男子が傘を借りると宣言していた。
私の好きな人だ。
話したいな。
今日は一日中曇りの日だった。
夕方になっても雨は降っていなかったから、みんな急足で帰って行った。
そんな中私は部活の後片付けを一人でしていた。
ほとんどが傘を忘れたから直ぐに帰った。
残りは体調不良で休み。
『まだ残ってたのか?』
『う、うん…これ片付けたら帰るつもりだよ。』
今の返事変だったよなぁ…冷たかったかな?
好きな人から話しかけられると、いつも話したくても話せない…
『今雨降ってるけど、傘持ってる?』
『今日は折りたたみ傘持って来たんだ。』
あなたは今日学校の傘を借りるんでしょ?
『雨が酷くなる前にもう帰ったら?』
あぁ……やっぱり冷たく言っちゃったなぁ…
『そうするわー』
好きな人が急足で行ってしまった。
もう少し話せば良かったのにな…
昇降口で靴を履き替えていたら、雨宿りしている人が居た。
傘忘れたのかな…学校の傘借りれば良いのに…
『よっ、片付け終わったのか?』
さっきまで聞いていた声が聞こえて来て驚いた。
『あれ?…帰ったんじゃないの?』
好きな人は恥ずかしそうな表情をして、
『…折りたたみ傘持ってくるの忘れてさ。』
恥ずかしい時の癖なのか、目は右下を見ていた
『学校のは?……あ、もう無いんだ。』
大量の傘が入っていた大きなバケツは空になって端に寄せられていた。
『雨が弱まるまで待つつもり』
あなたがそう言った途端、秋風が二人の間を吹き抜けた。
朝より冷たく、何かを急かすような秋風だった。
『傘、入る?』
冷たい風に驚いた反射で変な事を言ってしまった。
『俺は別に良いけど、お前は良いのか?服とか濡れるぞ。』
まさかの返答に驚き、硬直してしまった。
これは普通に友達としての言葉として捉えて良いのか、悩みどころだった。
『確か家の方向同じでしょ?途中まで入ってて良いよ。』
『サンキュー。』
折角なら晴れてる日に一緒に帰りたかったな…
そう思いそうになったが、もし晴れていた時を考えたら好きな人と一緒に帰る事が無かったと思った。
夕方に雨、秋風が冷たい、傘持ってない人が多い
この状況があったから今一緒に帰れているんだ。
好きな人は昼間みたいな明るいお喋りさんではなかった。
どこか落ち着いててギャップがあった。
意外な一面を知ってまた胸が熱くなった。
胸が熱くなってる二人の間にまた秋風が通り抜けて行った。
運ばれた どこか懐かしい匂い
この小さな花が
こんな強い香りを放つなんて
信じられないよね
そういった君の声となびく髪を
風が吹くたび 鮮明に思い出して
そのたびに僕は 君に恋をする
あの花と同じ 甘く香る君に
【秋風】
秋風
色に捨てられた落ち葉が舞う。ついこの間まではあんなに綺麗な赤だったのに。彼らの意思には反して無情に吹き流されていく。梢と繋がれない葉なんてのは、踏まれて風に飛ばされるためにあるんだ。なのに、なのに。
肌寒い夜に暖められた右手の感触は、いくら色を失っても皺が引っかかって飛ばせない。
冷たい風がしみて痛いのは、唇の乾燥のせいだろうか。それとも。
いろんなことを聞くようになると
どれが正しいのかとか
こんなことが起こるのかとか
外側に意識が行ってしまう
内側に内側に
深い呼吸をして
今ここにいる君が
全て創り出していることに
意識を向ける
この先どういう事が起ころうとも
君が手放し作業を続けて
心地よい状態でいられるのなら
映し出す現実は
そういうものになる
ただそれだけなんだ
「ふぅ……」
珈琲をひと口飲みテーブルに置いた。やっぱりここの珈琲は美味い。
最近開拓した喫茶店『秋風』。
ここは僕が通っている専門学校裏門前の通りを一本入った、見つけにくい場所にある。僕はまさしく秋の風に誘われるようにこの喫茶店を見つけた。少し風の強い日、手にしていたプリントを飛ばされた僕は、拾い集めているうちに『秋風』に辿り着いたのだ。
口髭を蓄えたマスターが一人で切り盛りするこの店は、時間がゆっくり流れているように感じる。昭和の喫茶店を思わせるレトロな内装。賑やかな談笑をするような団体客もいない。大抵はおひとり様で、他の人など気にせずそれぞれに本を読んだりパソコンを叩いたりしている。
マスターの淹れる珈琲の味が気に入ったのはもちろんだが、マスターの振る舞いも良い。本や勉強に集中したいようなときはそっと珈琲を置き、誰かと話したいような気分のときにはさり気なく話しかけてくれるのだ。
地方から上京し友人も少ない僕にとって、『秋風』で過ごす時間はいつの間にか癒しにもなっていた。
だが、そんな癒しの空間は唐突に終わりを迎えた。夏が足踏みしているような、汗ばむくらいの秋が急に鳴りを潜めた日のことだ。
つい数日前までアイス珈琲を頼むこともあったが、今日は風が冷たい。秋風を通り越し、一気に冬風が吹いてきたみたいだ。ホットを頼もうかと思案していると、珍しくマスターのほうから提案があった。
「私のお勧めがあるんですが、飲んでみませんか? お代は結構ですので」
運ばれてきたホット珈琲は普段と違わず、いい香りだ。マスターは僕が口にするのを待つように、立ち去らずにテーブルの横に立っていた。
「あ……美味しいです。苦味と甘味とが混ざったような後味が独特ですね……ってろくな感想言えなくてすみません。新商品か何かですか?」
「いえ、今はメニューにありませんが、他界した親父がこの店を始めたときに試行錯誤して生み出した、『秋風』オリジナルブレンドなんですよ」
「へえ?」
「……実は今月末で閉店することになりまして、来ていただいたお客様に振舞っているんです」
「ええっ! 閉店ですか……残念です。すごく好きな空間だったので」
「ありがとうございます。最後にあなたのようなお若いお客様にも通っていただけて嬉しかったですよ」
「これからマスターは?」
「いちから珈琲のことを勉強し直すつもりです。またいつか自分の店を持てたらいいな、なんて欲もありますしね」
「頑張ってください」
「ありがとうございます。あなたも」
マスターはテーブルに置かれた調理師免許のテキストを見た。
この日の会話はマスターと交わした中で一番長かったかもしれない。それくらいの関わり。ほんのひと時の人生の交わり。きっとすぐにマスターの顔も口髭くらいしか思い出せなくなるのだろう。でもこの珈琲の味は忘れずにいたい。いつかもう一度味わってみたい。そう思うくらいには心が温かな秋の日だった。
数日後『秋風』を訪れた。扉にはCLOSEDの札とカーテンが下がり、座席が見える窓にもブラインドが降ろされていた。僅かの間とはいえ、通っていた店が無くなったことに物悲しさを感じながら、店を通り過ぎる。
僕が通っていた頃から工事中だった隣の店がオープンしていた。何となく眺めていると扉が開き、中から女性が出てきた。
「いらっしゃいませ! カフェ『冬のはじまり』にようこそ!」
僕より少し年上に見える、とびきり綺麗な女性はとびきり可愛い笑顔で言った。そんな誘いを断ることなどできるはずもなく、ぼくは『冬のはじまり』の扉をくぐった。
白を基調とした少し寒々しい内装。だからこそ飾られた北欧風のインテリアが映える。男一人では入りにくい雰囲気ではあるが、店内に漂う珈琲の香りにはそそられるものがある。
僕は取り敢えずオススメの珈琲を注文して、カウンター席の端に座った。従業員は先程の女性ともう一人だけらしい。今は満席ではないが、軽食も提供するようだし二人だけでは大変そうだな、なんて思いながら珈琲に口をつけた。
「……美味しい」
苦味と甘味とが混ざったような独特な後味。どこか懐かしささえ感じる……って……。
顔を上げると、カウンターの中で珈琲を淹れていた男性がパッと顔を逸らした。
「マスター……」
髭を剃っていたので気づかなかったが、マスターがそこにいた。今まで思っていたよりずっと若そうだ。
女性が僕とマスターを交互に見て言う。
「あら? お客様もしかして『秋風』の常連さんでした? マスター引き抜いちゃったんです。引き続き美味しい珈琲の飲める『冬のはじまり』もぜひご贔屓に!」
冬を終えて春の花の綻ぶような笑顔で言われたら、そりゃもうね。
「はい、また来ます」
僕は咄嗟に言っていた。引き抜かれたマスターの気持ちも分からなくはない。僕とマスターは一瞬目を合わせたあと、決まり悪げに顔を伏せた。
「あ、お客様! いらっしゃいませ!」
扉が開くと来店客と共に、だいぶ冷たくなった秋風が、僕とマスターの間を吹き抜けた。
#13 2023/11/14 『秋風』
【秋風】
暑かった夏が終わり、気づくと
新緑の葉が彩り始め、冷たい風が
初秋を感じさせる
心もちょっぴりセンチメンタルに‥
1年前の秋‥また一つの恋が終わった。
思えば‥恋人が出来ても、いつもこの時期になると、上手くいかなくなる
だから‥この季節は苦手だ
「秋風」が吹き始めると同時に‥私の心も秋模様。
菜の花
#秋風
辺りが 辺りが真っ黄色
イチョウがひらひら舞っている
芝生の緑も黄色く染まり
私の心も真っ赤に染まる
「秋風が吹く頃にまた会おう」
あなたはそう言ったけれど、今年の夏は長くて
ようやく暑さがやわらいだと思ったら、秋を通り越して、はや立冬も過ぎ
あなたからの便りはまだない
秋風に吹かれはらりはらりと紅葉が落ちる まるで踊っているようだった
「in the wind」
「どう、シルバ。見える?」
「んー、まだ見えないな。いつもならもう海が見えてもおかしくないんだけど、今年は暑かったからな。出発が遅くなっちまった。」
「ほんと、私たちのウバが"太陽の祝福"を受けるまで、どれだけ待ったかしら。まあこれでも早い方だったけど。」
「文句はそこまでにしとけ、アンズ。それよりもウバの操縦は順調か?」
「当たり前でしょ。今年は急に寒くなったから風も強くて扇が安定して張ってるわ。」
「そうか、頼りになるな。また海が見えたら報告するよ。きっと海が見えるくらいまで進めば、風の動きも難しくなるだろうしな。」
「頼むわよ、シルバ。」
「任せとけ!」
今年はイチョウもイロハモミジも、紅葉するのが遅かったな。すでに11月も中旬というのに、イチョウの半分は青いままだし、イロハモミジも赤い部分の方が少なく見える。
けれど、いつものごとく山道を進めば、足元は枯れ葉で埋まっているし、凍える北風も吹いている。桜の散る姿には劣るけれど、紅葉した葉が落ちる姿は美しい。
ザーッ
また強い北風が吹いた。頭上でたくさんのイチョウが散る。空を舞う扇の中に、一際早く飛ぶ一枚が見える。
あの葉、随分と綺麗に風に乗っているな。まるで紙飛行機のように山を下って進んでいる。
「......!」「...!」
ん?誰かの話し声が聞こえた気がしたけれど、木枯らしに揺れる葉音か、あるいはリスでも泣いているか。こんな早朝に人間がいるわけない。
はあ、やっとついた。銀杏の実特有の臭いが、季節を感じさせる山頂で静かに佇むのは、太陽の神をまつる銀杏神社だ。毎朝、畑仕事の前にここへ参拝しにくるのが私の日課だ。
「今日も良い1日になりますように。」
「...ん?シルバ、どうかした?」
「いや、神社へ向かう人間がこちらを見ていた気がしたんだけど、気のせいか。」
「気のせいよ。こちらを見ていたとしても、羽葉の扇に隠れているから、私たちの姿は見えないわ。」
「それもそうだな。そんなことより、アンズ、海が見えてきたぞ!我らの主が現れ、そして沈む場所。おれたちの帰る場所だ。」
「さらに風が強くなるわよ!捕まって、シルバ!」
左手に朝焼けを臨む黄金色の翼は、輝く藍色の海へ向かって、空高く駆けていく。