『神様へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
神様
ありがとう
生きていることに
君とめぐり逢えたしあわせに
『神様へ』
罪と言うのは、一生消えない。
一度犯した罪は、自分の心にも、そして周りの人の心にも残る。一生消えない傷として。
「ねぇ、小夜先輩。目を開けてくださいよ……」
そう、俺が抱き抱えている人に言葉をかける。
先輩のお腹からは大量の血が出ていた。もう助からない、それはわかっている。
でも、そう信じたく無かった。俺の油断で、こんな事になってしまったと言う事実を。
「先輩、お願いします……俺、もっと気をつけますから……だから……」
先輩からの返答は無い。ただ、まだ目を開けている。生きているはずだ。
「煌驥……君」
俺は声がする方、自分の胸へと視線を向ける。
「先輩! 先輩!」
「ごめんね……煌驥君……私がもっと、強ければ良かったんだけど……」
「それは違う! 俺のせいだ! 先輩は何も悪く無い!」
俺の目から、涙が溢れる。自分の弱さに、情けなさに。
「ごめん……ごめんね……煌驥君……」
「先輩?! 先輩! 目を開けてください!」
何故、俺はこんなにも弱いんだ。何故、罪を消せない。後悔を消せないんだ。
なあ、神様。お願いだ。1度だけ、1度だけで良いから。
おれたち
無力な『人間』に、力を下さい。
「無神論者じゃなかったっけ?」
「宗教信仰してないだけ。八百万の神は信じてるよ」
「出た日本人のおかしいとこ」
「だって一柱の神様が全員分常に観てるとか、
其処まで行かなくても有限数で採点してるって
今地球人口何人だって思っちゃうよ、やっぱり」
「そこはほら神様だからどうとでもね?」
「それ言ったら全部そうじゃん」
「それはそう」
「だったらその辺に在るモノ全部に神様が宿ってて
何処で何やってもナニカしらは見てる、の方が
お天道様が見てなくても悪い事出来ないなぁって
考え諭し易いんだよねえ」
「近年の監視社会じゃんやば」
「確かに」
「で」
「うん」
「君のカミサマは大丈夫そう?」
「うん、カメラもマイクも切れたっぽい」
「おっけ、向こう着いたら着衣水泳からの
全品お着替えね。最終はその後で言うわ」
「ありがと助かった」
「しっかし……ヤンデレって荒御霊だったんだね」
「それはガチ神に目ぇ付けられるからやめよ?」
<神様へ>
『神様へ。
私の家に飼っている猫のタビ助が帰ってきません。
タビ助は外が好きで、よく外出するのですが、いつもその日のうちに帰ってきました。
でも、一昨日出ていったきり、帰ってきません。
タビ助はおじいちゃんなので、どこかで倒れてないか心配です。
親に探しに行こうって言っても、タビ助は大丈夫って言って探してくれません。
お願いします、神様。
タビ助を探してください』
「……何これ?」
少年は手紙を読み終えた後、思わず呟きました。
「あなたへの依頼ですよ、太郎」
その呟きを聞いた青年が、太郎と呼ばれた少年の疑問に答えます。
太郎は、納得できないと言わんばかりに青年を睨みますが、青年はそのことを全く気にしませんでした。
「なんでこれが、俺への依頼なの?」
「書いてあるでしょう、あなたが『神様』だからですよ」
そう、この青年の言う通り太郎は神様――正確には神様の生まれ変わりなのです。
人間の理解を深めると言う理由で(本当は人間界でチヤホヤしてもらうため)生まれ変わったのです。
「待てよ、あんたも神様だろうが! あんたがやれ」
太郎は唾を飛ばしながら反論します。
この青年、名は拓真と言い、やはり生まれ変わった神様です。
太郎は一般の家庭に生まれ変わることもできたのですが、事情を知っている神様が側にいる方が何かと都合がいい、ということで拓真の所で厄介になっているのです。
「確かにあなたの言う通り、私の仕事でもあります。
ですが、他にも仕事が立て込んでいて、手が空かないのです」
「だからって俺がやることもないだろう?」
「いいえ、あなたはしなければいけません」
「なんでだ」
こんな事意味があるのかと、太郎はイライラし始めました。
「あなたも人間の歳で十歳です。人間の世界に降り立った神として、そろそろ人を助ける仕事をせねばなりません」
「くつ」
太郎は反論できませんでした。
彼は生まれ変わる前に、そのことを何回も聞かされていたのです。
『人間に生まれ変わったときは、人のためになることをしなさい。それは義務です』と。
「だけどさ、猫探しなんて無理だよ。やったことないもん。他に楽そうなやつないの?」
太郎は居候の身分にもかかわらず、偉そうな態度で文句を言い始めました。
拓真は呆れながらも、他の仕事の事を話し始めました。
「他のものですか…… ですが、他のと言っても、一番簡単なものはそれですよ。
たとえば世界平和とか、たとえば病気を治してほしいとか、例えば恵まれない子供に幸せをとか、たとえば自分を裏切ったアイツに天罰を……
とかですが、本当に別のものがいいですか?」
とてもじゃないけれど、神として経験の浅い太郎には出来ないことばかりでした。
とくに最後は怖いなあと思いつつも、答えは一つしかありませんでした
「猫探しでお願いします」
「ああ、よかった。こちらも無理強いはしたくありませんでしたからね」
太郎は何かを言いたそうな顔でしたが、なにも言うことはありませんでした。
「はあ、憂鬱だ」
これからゲームするはずだったのにな、と太郎はがっかりしました。
「おや気が乗りませんか?ではこれを差し上げましょう」
そう言って拓真は一万円札を太郎に差し出します。
「え、お小遣いくれんの?」
「いいえ、これは猫探しの依頼金です」
「それがあるなら早く言え!」
太郎は即座にお金をひったくるのでした。
◆
さて、一万円札を受け取り、ほくほく顔で家を出た太郎。
意気揚々と猫を探しますが、どこを探しても猫一匹見かけません。
太郎は早まってしまったかもしれないと後悔しながら、公園のベンチで途方に暮れていました。
「こんにちは」
突然声を掛けられます。
声の主は、同じクラスの伊藤 万里加《まりか》でした。
万里加は、太郎の同じクラスであり、活発で人見知りをしない女の子でクラスの人気者でした。
ひねくれものの太郎にも笑顔で接してくれる、とてもいい子です。
そしてこれは重要な事なのですが、太郎は彼女の事を少し意識しているのです。
なので彼女との突然の出会いに、太郎は驚いて固まってしまいました。
「鈴木君はここで何してるの?」
太郎の挨拶を待つこともなく、万里加は会話を続けました。
なお鈴木と言うのは、太郎の上の名前です。
太郎は質問に対しどう答えようか悩みましたが、結局正直に言うことにしました。
「猫探し」
太郎はぶっきらぼうに答えます。
そう、太郎は人づきあいが苦手なのです。
神付き合いが嫌で、逃げるように生まれ変わった彼ですが、人間になったところで改善するはずがありませんでした。
ですが、万里加は太郎の不愛想さを気にすることもなく、話を続けます。
「そうなんだ、奇遇だね。私も猫探しているの……」
「ふーん」
太郎は何やら引っ掛かるものを感じました。?
太郎は手紙の依頼を受けて猫を探し、万里加もまた猫を探している……
こんな偶然あるのでしょうか?
「でも見つからなくて……
神様ポストに出したんだ」
神様ポスト!
太郎はその言葉を頭の中で反芻します。
神様ポストとは、小学生の間でまことしやかに囁かれる噂。
『このポストに手紙を出すと願いを叶えてくれる』というもの。
その真実は、拓真が某妖怪アニメを見て『そうだ、こうやって募集すれば願い事を効率よく集められるな』と思いついて、作ったものだったのです。
そこに出された手紙は回収され、太郎と拓真のいる鈴木家に運ばれる、というシステムなのです。
つまり、太郎が読んだ手紙は、万里加が書いたもの!
と言うことは、一緒に猫探しをすれば自ずと目的が達せられ、万里加とも仲良くなり、そして仲を深めた二人は付き合うことになり、親のいない家に呼ばれて……
と、そんな下種な妄想をしていると、あることに気づきました。
万里加の足元に黒い猫がいるのです。
それも親し気に頭をこすりつけていますが、万里加はその猫に気づく様子がありません。
太郎はそれを見て、ピンときました。
「ねえ、探している猫ってどんな猫?」
「え? うーんと黒猫。真っ黒なの」
もう一度太郎は、万里加の足元を見ます。
万里加の言う通り、真っ黒な猫でした。
と言うことは、この猫を捕まえればミッションコンプリート……
な訳がありません。
なぜならこの猫は幽霊で、捕まえることはできませんし、死んでいるので万里加の望みをかなえることはできません。
ですが死んだことをどう伝えればよいのか……
なぜ万里加には見えないタビ助の幽霊が見えるのかと言えば、それは太郎が神様だからです。
普通の人間には見えません。
もし、そのまま『タビ助は死んでいる』と言えば、万里加に嫌われて二度と口をきいてもらえないでしょう。
それだけは避たいが、死んでいることを黙っている訳にもいきません。
別に伝えなかったところで、太郎には何の不都合も無いのですが、好きなこの前で混乱している太郎は、そのことには思い至りませんでした。
どうしたものかとタビ助を見ながら悩んでいると、太郎は黒猫のタビ助と目があいました。
するとタビ助は突然万里加の足元を離れていきました。
太郎は何事かと驚きますが、タビ助はある程度離れたところで振り返りました。
まるで『ついてこい』と言っているようでした。
太郎は少し迷いましたが、決心しました。
「あっ」
「どうしたの?鈴木君」
「あそこでタビ助っぽいのがいた」
「本当?」
うん、と太郎は答えます。
タビ助はどこかに連れて行きたがっている
そう確信した太郎は、万里加を連れてタビ助を追いかけたのでした。
◆
三日後の夕方、太郎は学校から帰ってきました
「ただいま」
「お帰りなさい。手紙が来てますよ」
太郎はショックを受けました。
仕事はもう嫌だからです。
すぐに逃げようとする太郎でしたが、拓真に引き留められます。
「安心してください。 お礼の手紙です」
「お礼の手紙?」
太郎はホッとしながら、拓真から手紙を受け取ります。
太郎は可愛い絵柄の封筒から、便箋を取り出し、読み初めました。
そこには可愛らしい文字で、感謝の言葉が綴られていました。
『神様へ。
タビ助にまた会わせてくれてありがとうございます。
でも私が行ったときにはもう死んでいて、悲しくて私は泣いてしまいました。
でも気づかなかったら、一生タビ助は独りぼっちだったので、会えてよかったと思います。
でもいい事もありました。
友達ができました。
タビ助を一緒に探してくれて、泣いている私を励ましてくれて、タビ助のお墓も作ってくれました。
今まであまり話したことは無かったけど、意外といい人で、面白い人でした。
多分タビ助が、私が寂しくないように会わせてくれたんだと思います。
タビ助に『ありがとう』と伝えてください。
『天国で元気でいてね』とも。
ありがとうございました』
まぁ、普段から信心深くもなく、お賽銭は奮発してもワンコイン、後悔は微塵もしていないけど離婚も宗教的にはアウト?
こんな私の願いを聞いてくれる神様はいないですよね。そりゃそうです。我ながらなんて図々しいんだと思ってます。
神様に頼る事無く生きていこうと思っていますが、たまには、たまにしか願わないので、無茶は言いませんから、どうか、どうか聞いてくださいね。
神様へ
普段は神頼みなんてしないけど、今回ばかりは頼らせてください。
違う道を選んだ君が僕抜きで、幸せになれますように
《快晴》《神様へ》
村の繁栄や豊穣を祈って、神様に若い女を生贄として捧げる。
それは、この村の伝統的祭事の一部であり、世間から見れば古い風習であった。
連なる山々の最奥に位置し、村人が百人もいない村だ、世間から外れてしまうのも時間の問題だったと言えよう。
そんな村で生まれ育った村長の娘、犠花は明後日で十一になる。
「きいちゃん、明後日は楽しみねぇ」
「私は『きか』だよ、おばあちゃん! きい姉はあっちでしょー」
「あら、ごめんなさいね、きかちゃん。また間違えちゃったわねぇ」
犠花と犠忌は、双子であった。
背格好もよく似ているからだろう、こうして間違えられることが多かった。
強いてその差をあげるならば、犠忌の方がほんの数分早く産まれたということくらいだろう。それほどに、彼女らは似ていた。
「また間違えたの? おばあちゃん」
「きい姉!」
「こんなにかわいい子と間違えないでよ! ねぇ、きかちゃん」
「そんなことないよ、きい姉の方がかわいいもん!」
「かわいいこと言うなぁ、こいつめ」
そうしていつものように双子は笑い合う。
これがこの村の日常だった。
夜が深けて、また明けてを繰り返し ——その日はやってきた。
蛇月祭の日である。
村中がお祝いの雰囲気を纏った、特別な日だ。
そこここに蒼い提灯が飾られており、見慣れた村の景色も幻想的な世界となる。
その最後に行われる祭事が、神送り、と呼ばれるものだ。
村に唯一ある神社のその奥、山をもう少し登った所にある本来の社には数人しか立ち入ることは許されていない。
即ち、神の御本へと向かう生贄らだ。
「我らが神の為に」
「村の為に」
村の大人達はそう口々に言って、双子を送り出す。
今年は卜占の結果、犠花と犠忌が選ばれたのだ。
占の結果が出てからは、その身は神の為に在るようになる。その際、俗世の空気をできるだけ吸わない為にも口を利くことは禁じられ布で覆われるのだ。
「……我らに、幸と豊穣を与えんことを!」
そう締めくくられた言葉の余韻を残して、双子は神社の石段を上がっている。
骨の髄まで身に付いた信仰心は揺るぎないし、後ろには村の人々が並んでいるのだ、尚更足は止められない。
石段の切れるところで、一行は足を止める。
「今生の務めを果たせ」
彼女らの父である村長は、短くそう言うと双子を更に上へと向かわせた。
双子は黙ってそれに従う。
「……ねぇ、きい姉。このまま逃げちゃおうか」
大人の姿の見えなくなって暫くして、犠花はそう口にした。
「……きかちゃんはどうしたい? 私は、最初から決まっていたことだけど」
犠忌はそう言うと足を止めた。
そろそろ神域だ、逃げるのならここで決めねばならない。
「……私、は」
「ここは、もう、二人きりだよ。犠花」
静寂が支配する。
「…………俺は、こんなところで死にたくないよ」
そう言った犠花は。
固く閉じられていた花が綻ぶ瞬間を見た——犠忌が、心の底から嬉しそうに笑ったのだ。
それを返事とした互いは、手を取り合って山の中を走り続ける。
空は、神様が祝福してくれたかのような蒼天だ。
それはそうだろう。
伝統が続いたとて、偽物の姉妹は口に合わないだろう。
犠花が女として扱われたのは、彼らの妹が生まれながらにして死したからである。
村長はそれを、秘匿した。
それ故に、天災が起ころうとしていたのではないか。
間違った生贄を捧げようとしたからか、神に隠し事をしようとした所為か、はたまた必然か。
村はその翌年、双子以外の記憶から、姿を消したという。
後の土地にはただ、龍神のみが真実を持って眠りについたという。
『神様』なんて
信じたことはなかった。
だって、そんな存在があるとしたら今の私の置かれている現状はいったいなんの冗談? それとも神様とやらにも私は嫌われているとでも言うの。とんだトラジェディ。
どちらにしても私を幸せにしてくれもしない幻想なのなら有も無も同じことだった。路肩の石よりもなお無関係な例えばそう未確認生物みたいな。
でも確かに信じたことも、いいえ、信じようとしたこともあったのだけど。どうしようもなく何かに縋り付きたくなって神頼みだなんてらしくないこともした。
なぁに? ええ、そうね。他力本願じゃ救われない。あなたの言葉は非のつけ所もない正論よ。正しくって痛くて妬ましいわ。
そうでしょ? そんなふうに何かを信じれる時点で恵まれているのだもの。悪いなんて言うつもりも責めるつもりもないけれど。でもそうね。残酷だとは思ってしまう。
だって、
カミサマ
「あなたは私を救ってくれないもの」
かみさまへ
ぼくは川むらゆうたといいます。4さいですぼくはマリオげーむがほしいですなぜかというとママがかてくれないから。でもむりたたらいいです。
それよりもかみさまはいつもみんなの、おねがいきいてくれる。だからかみさまはちょっっとやすんで、かみさまのじぶんのおねがいきいてあげてください。でもげーむもほしいです。
ゆうた
神様へ
お元気ですか。今からぼくは、世に存在します。あなたとの記憶も捨てなければなりません。
しかし、楽しいのでしょう。これから先、困難が多く立ちはだかろうとも。
だからぼくは、精一杯生きます。これからのぼくのために。
また来世、このひとのもとで生きてきて良かったと、思えるように。
いま、世の光がさしてきました。忘れたくない。いつだって、これから先が素晴らしいものだとわかっていようと、変わりたくはないものです。
あなたには、とても感謝していました。
はじまり
『神様へ』
ありがとうございます。
あなたを信じさせてくれて。
いつものように投稿サイトにログインし、お気に入りから目当てのアカウントを探す。
「…あれ?アカウントがない。間違えてお気に入りから消しちゃったかな…?」
次は、ブックマークから作品を探す。目当てのアカウントの作品が軒並み『削除された作品です』と表示されている。慌ててアカウントのページに飛ぶと、『見つかりませんでした』の文字。
「…嘘、アカウント消しちゃったの…?」
呆然と『見つかりませんでした』の文字列を見つめる。私にとっての神様が消えてしまったのだ。
どうして…いや、心当たりはある。
まず神様…仮にAさんとしよう。そもそも私がAさんを知ったのは、あるオリジナルの作品だった。この投稿サイトではマンガやアニメ、それにゲームの二次創作が主流なのだが、Aさんはオリジナル…一次創作を書いていた。一次創作は見られることが少なく、埋もれてしまうことが多い。だが私はあえてそういう埋もれた小説を探し読むのが趣味なため、良く検索していた。ある日、おすすめにAさんの作品が出てきた。一次創作だからか閲覧数は伸びていなかったが、閲覧数なんて飾りだとその作品を読むことにした。
人は面白い作品を見ると、生命活動を疎かにしてしまうらしい。寝食を忘れ、すべて読み終わると、私はため息をついた。外を見れば、もう夜は明け始めている。
「…こんな、こんな面白い作品が埋もれていたなんて。これは皆に教えなくちゃ」
眠気はあったが、読み終えた興奮で頭は冴えていた。冴えた頭でSNSを開く。いや、待て。まずは感想を書かなくては。作者にこの興奮を伝えなくては。
私は、コメント欄を開いた。まだ何も書かれていない。私が読者として一番最初の感想を伝えるのだ。
「えー…と、どこから書けばいいんだろう」
興奮が冷めないまま書いたら、支離滅裂になってしまう。だが、『良かったです!』の一言だけでは物足りない。少し考えたあと、アカウントのフォローと作品のブックマークをして寝ることにした。頭を冷やした方がもっと良い感想を書けるはずだ。
昼頃に目が覚め、朝食兼昼食のカップ麺を食べながら感想を考える。
「書き出し、どうしようかなー…」
どうせなら、最初から書きたい。だが、あまりにも長すぎると作者がひいてしまうかもしれない。
「やっぱり特に良かった部分を書こうかな」
コメント欄を開き、ポチポチと感想を打ち始める。
「…これ、上から目線になってないかな…。書き方変えようかな」
ある程度書いた文章を消し、また新しく文章を打ち込む。
「解釈違いとか気にする人だったらどうしよ…」
また文章を消す。今度はどうとでも読み取れる文章を打ち込む。
「…こんなん書くぐらいなら、ストレートに『良かったです!』の方がマシだな」
もう一度消し、『良かったです!』の文字を打ち込む。
「ええい、私は何を弱気になっているんだ!これじゃ意味ない。ストレートに私の気持ちを伝えなきゃ!」
『良かったです!』の文字を一気に消し、書き直す。
「…誤字脱字なし、そこまで悪意のある書き方じゃないはず。よし!」
勢いをつけて、コメント欄に感想を送信する。
「ふう…やっと書けた。次はここのURLをSNSで拡散…」
URLをコピーし、SNSを開く。
「ええっと、『サイトで良い掘り出し物(小説)見つけた!』…っと。URLをつけて…送信!」
これでよし。他の人が見てくれるのを待とう。
ピコピコと投稿サイトから通知が来る。
「何かきた…もしかして!」
サイトを開くと、私の感想に誰かが反応したらしい。
「あ、返信来てる!ええっと、これは作者さんだ!なになに…『初めての感想ありがとうございます。今まで作品を投稿してきたけど、反応初めてもらったのですごく嬉しいです。あなたの感想、作品をよく読まないと書けないので驚きました!これからも更新するので、良ければまた読んでみてくださいね!』…やった!すごく喜んでもらえた!」
嬉しさもあるが、悪印象にならなかったことに安堵した。それから私は作品が更新される度に読み、Aさんに感想を送り、SNSでAさんの作品を宣伝した。宣伝が功を奏したのか、閲覧数が増えてきた。
「あ、私以外の感想もある。SNSでも少しずつ知られてきたみたい」
良かった、と思えたのも束の間だった。
「…伸びなくなっちゃったな。見てる人もいつもの面子だし。もっと、読まれても良い作品なのに」
Aさんにメッセージを送るが、返ってこない。
落ち込んで思い詰めなきゃ良いけど。だが、私の嫌な予感は当たってしまった。Aさんからのメッセージの返信なし、作品の更新なしから一週間が経った頃、更新通知が入った。
「あ、Aさんだ!あれ、あのオリジナル作品の更新じゃない…え!?二次創作!?」
Aさんのアカウントに最新で表示されている作品は今話題のマンガの二次創作だった。
「な、何で…?流行りのマンガには疎いって言ってたのに」
とにかく読んでみることにした。もしかすると、Aさんのアカウントが誰かに乗っ取られてるかもしれない。もしそうなら、通報しなくては。しかし、その義憤は五分も経たずにしゅるしゅるとしぼんだ。
「…やっぱり、Aさんが書いたものだ」
人の作風は、たとえジャンルが変わってもなかなか変えられないものらしい。この文章の書き方は絶対にAさんのものだ。この二次創作の原作は読んだことはないが、Aさんがとても読み込んでいることだけは分かる。一度も読んだことなくても、何となく世界観の把握ができるのだ。
「面白いんだけど…何か複雑…」
コメント欄を覗く。いろんな人からの感想で賑わっている。次も書いて欲しいや他のキャラたちの絡みもみたいとリクエストがたくさんあり、好評らしい。
「もしかして一週間更新と返信がなかったのって、これを…いやAさんがそんなこと」
するわけない?だったらどうして二次創作を。
「Aさんに聞こう。返信してくれるか分からないけど」
Aさんのアカウントページを開き、メッセージを書き込む。
『Aさん、久しぶりの更新嬉しいです。今度は二次創作書き始めたんですね。読みました、とても面白かったです。でも、どうして書こうと思ったんですか?暇なときでいいので返信よろしくお願いします』
メッセージを送る。詮索するようなことを書いてあるから、鬱陶しがられるかもしれない。それだったら返信してこないだろう。杞憂だったのか、メッセージの返信が通知欄に表示された。
「来た…!」
メッセージ欄を開く。
『お久しぶりです。返信できなくてごめんなさい。初めての二次創作、あなたに気に入ってもらえてとても光栄です。二次創作を始めた理由は息抜きですよ、たまには別の話を書くのも気分転換になりますし。そのうち一次創作も更新するので、楽しみにしててくださいね!』
『はい、更新楽しみにしてますね!』
返信し、サイトを閉じる。
「息抜き…そうなんだ、あー良かった。嫌われてなくて良かった…」
ホッとし、そのまま床に寝転がる。
「息抜きが終わったら、また一次創作に力入れてくれるよね」
数日後。Aさんの更新通知が届いた。
「…また二次創作?」
更新されたものは例のマンガの二次創作だった。
「あ、他の人のリクエストがあったから。ああ、それか」
じゃあリクエストのものを全部書き終わったら書いてくれるかもしれない。
「…厄介なファンだと思われたくないし、大人しく待っておこう」
私はひたすら待った。作品を最初から読み直し最新の作品にたどり着くと、すぐにページを閉じていたが、今日は少し違うことをしようと思い立った。
「そうだ、リクエストが多くてこっちの作品忘れてるのかも。何か書いとこ」
コメント欄を開くと、最新のコメントからもう三ヶ月経っている。何だか寂しくなってコメントを書き込む。
『更新されるの、いつまでも待ってます』
それが昨日のことだ。
「我慢できずにコメントしたから、きっと嫌になっちゃったんだ。だから、アカウントを…」
待てない自分に嫌気が差す。私はAさんを面白い作品を作り出す神様のように思っていたが、Aさんだって人間だ。急かされたら、好きなものでも嫌になるに決まってる。長いため息をつく。
「そんなつもりじゃなかったのに…」
今日は眠れそうになかった。
ある日、SNSにメッセージが来た。見れば作りたてのアカウントのようだ。
「何だろう…スパムとかじゃないと良いけど」
メッセージを開く。
『はじめまして。私は投稿サイトでAという名前で執筆活動をしていたものです』
「Aさん!?あ、まだ続きがある…」
『突然アカウントが消えて驚いたかもしれません。これは単に私に二次創作が合わないことが分かって嫌気が差しただけです。終わらないリクエスト、解釈違いだとお叱りのコメント…他にも色々ありますが、疲弊してしまったのです』
「そうだったんだ…」
『そして、あなたからのコメントで目が覚めました。更新を心待ちにしている人がいるのに蔑ろにしてどうするんだと。宣伝や感想をいの一番にしてくれるファンであるあなたを大事にするべきなのに』
「Aさん…」
『心機一転新しいアカウントを作り、これまでの一次創作の作品をまた更新していくつもりです。勝手だとは思いますが、よろしければこれからも作品の感想などいただけると幸甚です』
メッセージの終わりには、URLが載っていた。ページに飛ぶと、一次創作が主流な投稿サイトのアカウントが出てきた。
「やっぱりAさんだ」
更新履歴を見ると、新しい作品を投稿したらしい。私が三ヶ月心待ちにしていた作品の続きだ。ワクワクしながら、私は作品のページをタップした。
行ってきます。と
ただいま。と
おはよう、と
お休みなさい、と。
一人暮らしの部屋の中、今日も独りで呟いてみる。
八百万もいるんだから、
うちにもいるかもしれないから。
1人はちょっと、さみしいから。
「神様へ」
もし、この世界に本当に神様が存在するのなら、本当に私たちの願いを叶えてくれるのなら、私は何を願おう。まずは、家族が末長く幸福に暮らせるように。後は、友達に不幸が降りかかることがないように。それと、世界平和でも願っておこうか。こういう願いは、誰かのために使うべきであって私利私欲のために使うべきではない。だけど、一つ、たった一つだけ願っても許してくれるのなら。どうか、神様、私はあの人に会いたい。
神様。どうかいい方向にいきますようにお願いします。
トイレのドア裏にかけた日めくりカレンダー。愛らしい猫の写真に偉人の格言が添えてある。
マザー・テレサ、ロバート・デ・ニーロ、武者小路実篤。有名人といってもジャンルはさまざま。
本日15日はイギリスの思想家トマス・モア。
「天が癒すことのできない悲しみは、地上にはありえない」
そして白くてちっちゃくてまんまるなそれこそ雪見だいふくそっくりの猫ちゃんが、つぶらな瞳でこっちを見上げている。
「ぼくにできることはあるかニャ」の台詞つき。
それを見るたび「ぼくにできることしかないニャ」とデレデレしてしまうのでした。
(神様へ)
〝神様へ〟
神様へ伝えたいことがあります。
あなたは存在しているのですか?
それとも、していないのですか?
貴方がフワフワとしているせいで、人は争うのです。
勝手に崇める人もどうかとは思いますが、
貴方にも責任はあると思いますよ。
ねえ神様、返事くらいはしてくださいね。
神様へ
十五年前、生死をさまよった時に
お会いしましたよね?
メチャメチャ怒って
「それで、生きるの死ぬのどっちなの?」
「私は言いました」
「もう少し生きたい、」
じゃあ生きるのねと
ノートにかいてた
あのときに生きる選択を作ってくれて
亡くなったお父さんに会わせてくれて
ありがとうございます
今は元気ピンピンですよ
私は忘れない。
神様が
「来るんじゃね~」と
おっしゃったから
神様へ
神社へ参拝する時は、どこそこの何々と申します、どうぞよろしくお願いしますと、
挨拶してからお願いごとをするそうだ。
誰かわからないと神様も困るし、挨拶なしは失礼になるらしい。
なるほど。
それを知ってから参拝時は必ず挨拶をしているけれど、いろいろと欲もあり、お願いごとがいくつかあると、手を合わせている時間がさらに長くなり、一緒に来ている皆を待たせてしまうのがちょっとした悩みだった。
あれから時は過ぎて、
挨拶は続けているけど、願いごとはだいぶシンプルになりました。
神様へ
私の大切な人たちが、いつまでも元気で幸せでありますように。
#200
神様へ。もし1つだけ願いが叶うなら彼を返してください、、、、、思わずそうつぶやいた。
話は後で書きますwまた見に来てね。