『神様だけが知っている』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
神様だけが知っている
神様ってなんだろう?
私は神様はいると思うけど、
みんなに平等に手を差し伸べないものだと思ってる。
だから神様に願っても叶えてくれないし、
自分で掴み取るしかない。
そんな関係。
神様だけが知っている
神様!私は正しく生きてるでしょうか。
選択は間違ってないでしょうか。
教えてください神様。
神様だけが知っている
この世界のすべて
神様だけが知っている
はずだったけれど
見守ることは出来ても
手助け出来るかは別だから
会いに行った時に恥ずかしくないような
生き方をしないといけないな
もしも目が合った時に
助けてもらえるように
/7/4『神様だけが知っている』
この道の先が
光っているのか
闇が待っているのか
わからないけれど
この道の先に
素敵な何かを置いていけるのは
僕次第だ
虹の彼方に
行けるように
/7/3『この道の先に』
夏になると弟を思い出す
よくソフトクリームやなんかの形に例えられるが
私はそんな楽観的なもの 思い浮かべられない
その昔 夢に見た
双子の弟
置いてきてしまった弟
彼は赤い池のそばで石を積んでいた
ひとつ ひとつ 積んでは
またひとつ
ある程度の高さまで積み上げると
彼が積んだ石の塔は崩れる
泣きそうな顔の彼を見つめていると
彼が顔を上げ わたしに気づいた
それから話をして
彼が私の双子の弟だということ
彼は生まれてからすぐに死んでしまったこと
彼の命は 二人共が犠牲になってしまうはずだったものの
代わりになったということ
色々なことを教えてくれた
そして親より先に死んでしまったので
ここで石積みをしていることを教えてくれた
彼はここで わたしを待っているのだと言った
双子の片割れ
わたしは 彼と ふたりでひとり
すぐにわたしもここに来ると言ったが
彼は首を横に振った
私がここに来るまで
ずっとこんなつらい目にあわせるのは嫌だったけど
弟を泣かせるのはもっと嫌だったから
私は生きることを決めた
私が行くまで 待っててね
/6/29『入道雲』
執務室の窓を開け放ち、室へ風を通す、下界には人々が行き交う、朝の7時。少し早いが、仕事をしないと、私は、溜息を付き、頭を掻いた、(私に訊いて欲しいことがあるみたいだが、どうしたものか、私にもできないことがある、勝手には、人間の望みは叶えられないんだ。)もう一度、窓の外を見た、雲がたゆたう青く晴れた空は私を安心させる、人間もそうなのだろう、下を見ると子供達が笑い合いながらかけていく。私ができる事は人間達が平穏に暮らす努力をさすことだけだ。それ以上は勅令がないと出来ない。
[お題:神様だけが知っている]
[タイトル:指切りげんまん]
白い菊の花が風に煽られて左右に揺れる。先ほどまで香っていた花の匂いも霧散して、教室は白鳥利樹の心を表したような虚無に包まれた。
「あっ、あのさ、利樹」
「・・・・・・どうした?」
利樹は項垂れていた頭をゆっくりと上げ、話しかけてきた友人を見据える。彼の顔には心配と哀れみがしっかりと見てとれた。いいヤツだな、と思いつつ、それに愛想よく応えられない自分が情けなくなる。
「いや、さ。俺、先に帰るから、その・・・・・・また、な」
「・・・・・・おう」
それだけを返すと、友人はそそくさと教室を後にした。既に放課を終えて、二十分は経っている。普段は何人かの受験生が教室に残っているのだが、この日は利樹と、先ほど帰った友人で最後だ。彼もタイミングを図っていただけだろう。しかしいつまでも利樹が動かないので、痺れを切らして話しかけたのだ。
静かな教室で、利樹は改めて前を向く。
目に入ったのは、白い菊の花。それはクラスメイトであり、恋人だった犬塚華奈子の机の上に置かれている。
悲しみが底をつき、次に出てきたのは怒りだった。人目を失って、いよいよ感情が溢れてくる。
「なんでだよ・・・・・・なんでなんだよ!!」
叫びは虚しく響いて──それだけだった。ここ数日、放課後は常にこうだ。虚無感で心を満たさないと、すぐに爆発してしまう。そしてすぐに考え込んでしまう。どうして、華奈子は自殺してしまったのだろうか。
彼女と最後に会った時のことを思い出す。
「大学生になったら結婚しようよ。すぐに、一年生のうちにさ。ね?」
可愛く首を傾ぐ華奈子に、利樹はよく考えもせずに「いいよ」と言った。すぐに、でもそれって結構難しいよな、と思いつつ、これはよくあるバカップルの会話だと、仔細を考えるのをやめた。
「よかった。嬉しい。絶対、だからね?」
二つ結びのおさげを揺らしながら、彼女はそう言って小指を立てる。それは二人の恋人としての約束の証だ。
指切りげんまん──よくある約束の証だが、二人の間では、口約束よりも強い拘束力を持っていることを意味する。要するに、指切りげんまんを伴った約束事を破れば、そのまま二人の仲が破れるのだ。二度と修復出来ないほどビリビリに。
だから利樹は躊躇った。仕方がないだろう。結婚なんて、高校生の自分にはまだよく分からない。大学生になったら結婚するという華奈子の願いが、どれほど切実なモノなのか、その多寡を図るには、まだまだ言葉が足りなかった。
なかなか小指を立てない利樹に、華奈子が不安げに口を開く。
「・・・・・・ダメ?」
「ダメじゃないよ。ダメじゃないんだけどさ」
煮え切らない態度のまま、利樹はのろのろと小指を立てた。それを俊敏に華奈子が掴む。
気づけば指切りげんまんの形に絡み合っていた。
「はい、指切りげんまん。嘘ついたら、拳で、殴る」
「拳で?」
「そう、拳で。げんまんって、拳に万って書くらしいよ? 握り拳で、一万回殴るんだって」
「そりゃ、怖いな。絶対、結婚しないとだな」
それを聞いた華奈子はくふくふと笑う。そんな彼女の幸せそうな笑みに、利樹は惚れたのだと、改めて思い直す。もう、将来はどうでもよくなった。小指に力を込める。
「指切りげんまん。絶対だ、絶対」
「うん、絶対」
こんな出来事があった次の日の朝、連絡網によって、犬塚華奈子の訃報が届いた。
利樹が帰路に着いたのは、さらに三十分が経ってからだった。様子を見にきた担任に、家に帰るよう言われたのだ。
ふらふらとよろめきながら、無気力に歩を進める。足取りは日に日に重くなるばかりだ。
どうして犬塚華奈子は自殺をしたのか。その言葉だけが頭の中をぐるぐると回る。
実のところ、恋人であったはずの利樹は、自殺をしたという事以上の情報を知らなかった。それもそのはずで、二人の恋仲は親の公認では無かったのだ。華奈子の両親にすれば、ただのクラスメイトの一人にすぎない。どうやって死んだのかも、遺書に何が書かれていたのかも、そもそも遺書があったのかも分からない。葬儀も親族間で執り行うらしく、利樹は死体にすら会えない事が、今日、確定した。
当てもなく歩く──なんて事ができていれば、もう少し気が楽だったのかもしれない。利樹は学校から一番近い踏切を目指した。
例えば、この世に神様がいるのだとして。
神様は全知全能なのだとして。
神様ならこの問いに答えられるのか。
「どうして死んだんだよ、華奈子」
呟いて、踏み切りに突入する。隣の道路では、シルバーのセダンが止まっていて──すぐに発進した。
そのまま利樹も踏み切りを横断した。
渡り切ってから、立ち止まって嗚咽を漏らす。胃液が喉元まで競り上がり、不快感が口の中を満たす。
「おえっ」
吐瀉物は出なかった。
そのうち、カンカンカンと踏み切りが鳴り、後ろで遮断機が降りた。
例えば、この世に神様がいるのだとして。
死ねば神様に会えるのか。会えるのならば、質問はできるか。その答えに嘘はないか。指切りげんまんをしてくれ。とにかく教えて欲しい。どうして、華奈子は死んだんだ。
学校の裏掲示板に書かれていた、人間の悪辣さを思い出す。自称、犬塚華奈子の親友と、自称、犬塚華奈子の恋人が語る──騙る、自殺の理由を。便所の落書きとも言うべきそれらを、思い出す。
踏み切りが五月蝿い。
気づけば走り出していた。踏み切りへと足が動く。風を切る轟音が、すぐそこに迫っている。
次の瞬間、耐え難い衝撃が利樹の身体を襲った。
そのまま力に逆らわず、ゴロゴロと地面に転がった。アスファルトに肘を擦りむいて痛みを覚える。
痛みがある事に、利樹は驚いた。
呆然としている隙に、電車が目の前を通り過ぎた。
「なにやってんだよ!」
事態を飲み込むよりも先に、声が聞こえた。声の主は、利樹の胴から顔を上げ、仰向けの利樹に馬乗りになった。
友人だ。今日の放課後に、利樹に声をかけたあのクラスメイトが、電車に轢かれるすんでのところでタックルをしたのだ。
「・・・・・・・・・なんで、ここに・・・・・・?」
「俺が、まだ死んでないんだから、まだ死ぬんじゃねぇよ!」
友人は質問には答えずに、そんな事を言ってくる。けれど彼には、それだけの事を言う権利があった。
「・・・・・・尾けてたのかよ。悪趣味だな、お前らは。先に帰ってろよ。嘘吐き姉弟」
二卵性双生児。ゆえに似てはいないが、彼──犬塚圭吾と犬塚華奈子は、確かに弟と姉の関係だ。
「その嘘で、お前は助かったんだから、嘘ついてもいいだろ。感謝しろ」
「いーや、ダメだ。一万回は殴られてくれ」
と言いながら、圭吾とは指切りげんまんをしていなかったことを思い出した。
きっと、華奈子は指切りげんまんの話を弟にもしていたのだろう。一万回殴るという言葉に反応してか、圭吾は何も言わなくなった。
「・・・・・・どいてくれよ。人が見てる」
「っ、あ、あぁ」
反対側の道路で、主婦らしき人影がチラチラとこちらの様子を伺っていた。一度冷静になったのか、妙に全体を俯瞰してしまう。
二人して立ち上がり、適当に砂埃を払う。気まずい空気を裂いたのは圭吾だった。
「とりあえず、歩いて話そう」
「・・・・・・あぁ」
今度こそ当てもなく歩き出す。お互いの歩調を合わせ、住宅街を練り歩いた。
「なんで、死のうとしたんだよ」
「なんとなくだよ。なんとなく、身体が動いたんだ」
嘘はついていない。華奈子の意思を知るために、死んで神様に会おうとした、なんて、なんとなく以外の言葉で表現のしようがない。
「最悪だな」
圭吾はバッサリと切り捨てた。
「最悪だ。あー、ほんと最悪だ。姉さんが、利樹が死ぬのを望むと思うのか」
「華奈子の意思なんて分かんないだろ。俺は華奈子が死ぬのを望んでなかったけど、死んだ。事故でも、病気でもなくて、自殺で。もう分かんねーよ、神様にしか」
神様だけだ。神様だけが、どうしてこうなったのかを知っている。
そう考えていたから、初めのうち、圭吾の言葉が上手く飲み込めなかった。
「それが分かったら、死ぬのをやめるか?」
圭吾は真っ直ぐに利樹の目を見据えて言った。
「・・・・・・・・・・・・そりゃ、まぁ、理由は無くなるな」
「じゃあ、教えてやる。姉さんは遺書を残してたんだ。そして、俺はスマホでそれを撮影した」
「────えっ、いや、は?」
圭吾は戸惑いの声を無視して、彼自身のスマホを取り出した。その中に、華奈子の遺書が入っている。
浮き足立つ利樹に、圭吾はピシャリと制して言った。
「ただ、これを見せる前に約束してくれ、この遺書を見る代わりに、自殺はしない。絶対にしないって」
利樹はそう言って、小指を一本立てた。
「・・・・・・もし、破ったら?」
恐る恐る聞くと、圭吾は当然だと言わんばかりに胸を張って、答えた。
「拳で殴る。一万回」
それを聞いて、利樹は決心がついた。彼の小指を、小指で絡めとる。
「分かった。死なないよ、絶対」
圭吾はそれに安堵して、浅く息を吐いた。
「・・・・・・よし、それじゃあ、見せてやる」
指がスマホに触れる。流麗に操作する、その指先に迷いは見えない。きっと、何度も見返したのだろう。家族が死ぬと云うのは、どんな気持ちなのだろうか。現在の、利樹の痛みとはまた違うのだろうか。
そんな事を考えながら利樹は待った。もう喚かない。静かに待つ。そう約束したのだから。
やがて、圭吾の指が止まった。そっと画面をこちらに向ける。
「ほら」
パソコンの画面を写した写真だった。画面の中のワープロソフトには、びっしりと文章が書かれている。
『まずは、ごめんなさい。そして、さようなら。
なんでこういう決断をしたのか、それはこれを読んでいるあなたたちのせいではありません。なんて、まぁ、私は死んじゃうから、誰が読むかなんてわかんないんだけど。でも、違うでしょう、きっと。約束を守ってくれるあなたたちなら、これを彼らには見せないと信じています。
最近、クラスメイトに約束を破られる事が多かったです。そんな事で、と思うかもしれないけれど、チリも積もればと云うやつです。まぁ、要するに人を信じるのが辛くなってきました。指切りだけで信じていたはずなのに、気づけば目とか仕草を見て判断していました。そして、そんな自分が嫌になりました。だから、誰のせいというなら、きっと私はのせいです。まぁ、自分で殺すと書いて自殺なので当然ですね。
最後に、利樹くん。約束を破ってしまってごめんなさい。言い訳がましく聞こえるかもしれないけれど、私にはあなたが結婚してくれるようには見えませんでした。
あっ、これは愚痴みたいなものだから、利樹くんには見せないでね。後追いとか、最悪だから。もし伝えるなら、絶対に止めてね、約束だよ圭吾』
そこまで読んで、利樹は目を逸らした。空を扇いで、涙を堪える。全身の体温が上がっている気がする。
「分かったか? だから、お前は死んじゃダメなんだよ。俺は、そう姉さん約束したんだから」
よく見ると圭吾の目も腫れている。彼の訴えに、曖昧に返事しかできない。
「っ、あぁ、ああっ!」
この遺書はこう云っている。
利樹が本心から結婚を願えなかったから、華奈子が死んだ。最後の一歩を歩ませたのは利樹だ。あの日の嘘を、華奈子は敏感に感じ取っていた。
罪悪感を噛み締める。砕いて、飲み込む。すると、血の味がした。
利樹は爪が食い込むほど、強く拳を握り締めた。そして思いっきり、自分の顔面を殴りつける。
「お、おい──」
圭吾はそう言いつつも、止めはしない。その行動の意図を理解している。
どう考えても、華奈子の背を押したのは利樹だ。その罪を償う方法を、死ぬこと以外で思いつかない。命は命でしか贖えない。けれど、死ぬことは許されない。そういう約束だ。華奈子とも、圭吾とも約束をした。だから死なない。その代わり──
利樹はもう一度、自分を殴る。もう一度、何度も、何度も。一万回に達するまで、何度でも。
通りがかりの人々が息を呑んで、すぐに立ち去る。平穏な住宅街の中で、自分を殴って血を流す男がいる、なんて、恐怖以外のなにものでもない。
もしかしたら通報されるかもしれない。内申に響けば、推薦も使えなくなるかもしれない。大学に行けないかもしれない。自分を殴りつけながら、冷静に頭を回す。そして、殴り続ける。
一万回はまだ先だ。
【神様だけが知っている】
いまの選択が正しいのか
明日、なにをしてるのか
1年後、なにを手にしてるのか
5年後、あなたと一緒にいられるのか
10年後、生きているのか
神様だけが知っている。
神様だけ?
知ってるって?
私の正体かな?
あの人の本音かな?
たぶんですが
未来の出来事は
神様にも分からないだろう
でも地球の未来は
知っているのかも知れせん
わたしの中に
延々と刻まれて
消えない悲しみ、苦しみ
あなたに分かるわけがない
誰にも分かるわけがない
ほんとうは何も知らないのに
全てを知り尽くしたような顔をしているあの人
救いを求めるより
生きる力を身につけなければいけないと
そう思わせてくれるたいせつな存在
わたしは群れから離れて
流れに逆らって
ひとり水の中を漂う
くらげになりたい
【神様だけが知っている】
からだ中が痺れて痛い。
きっと無意識のうちに緊張しているんだろう。
ああ、お腹が痛いなぁ。頭も痛くなってきた。
休むわけにはいかない。立ち止まったら、どんどん遅れていく。みんなはどんどん先の方へ行っていまう。
置いてかれる。
……仕方ない。すべて忘れよう。何も考えないようにしよう。(……って、毎回同じことを考えている気がする)
寝て、忘れようか。
……寝たくもないなぁ。……。
はあ……。
……おやすみなさい。(もう二度と目覚めなくていいのに)
【神様だけが知っている】
神様だけが知っている、私が彼女を殺したことを。あの人だけが知らない、私の口が悪いこと。
「夢にまで見たこの瞬間。」
「性格の悪さが顔に滲み出てらァ。」
こんなの小説でしか聞かなかったセリフ。言ってみたかったの。知らないよ。
「悪い?」
あえて、つっけんどんにして返してみる。
「悪くない、知ってるからね。」
どこまで知ってるなんて野暮なこと。神様だけが知っている。でもこいつは私の神様なんかじゃない。きっと、神様なんていなかったって思うには早すぎるから信じている。でも、いつまで続けていられる? せめて、この家から出るまで。彼女の心を殺してしまったと知られるまで。あの人が私の心を奪ってくるまで。プログラムには記されていない感情が私の邪魔をする。だからだ。人の真似は上手かった。彼女を殺すのだって容易かったはず。
「もう帰ってこないの?」
「分かんない。」
神様はなんのために私を産んだんだろう。あの人は何のために私の知らない間に感情をつけてしまったんだろう。好きになったら負けになる。彼女はきっとあの人が好きだった。だからだ。負けるのは嫌だった。馬鹿だなぁ。あの人を見て悲しくなるのは立派に恋と呼んでもいいものなのに。
「神様だけが知っている」
あの選択の時、結末がわかっていれば
今日という日の最善の選択がわかっていれば
いずれも幸せだっただろう。
でも分かんないから人生は楽しい。
時には殻に閉じこもりたくなるけど、
全てが私の財産になる。後に繋ぐ意志になる。
時には泣いて、時には沢山食べて
大きくなった私を皆に見て欲しい。
《神様だけが知っている》
自分が何者なのか、
なぜ生きているのか、
分からなくなる。
自分をこういうものだという断定がない。
生きている理由も見つけられない。
とても生きづらいんだ。
どうしようもなく頭を抱えて、
何も考えられなくなり、布団に潜る。
「自分の運命だとかは全部神様だけが知っている」
なんだよそれ。ずるいじゃないか。
こうやって悩むことも、明日を生きることも
全部運命で決まってるんなら
感情ってなんのためにあるの?
自分の意志より運命が大事なら
もう僕じゃなくていいじゃん
「神様だけが知っている」
私がもう随分昔から
この世の仕組みに気づいていることを
過去の出来事が今を経由して
どの選択肢を選んでも
未来へと繋がっていることを
神様だけが知っている
なぜ何も仰らないか
それはまだ今が完結でも
人生の終点でもないから
だから神様の声を聞くまで 大丈夫。
だからあなたは知らなくても 大丈夫。
「神様だけが知っている」
「神様だけが知っている」
「そろそろ、教えてくれても良くね?」
「まだ、そのときじゃないからのぉ」
「アタシ、アンタが人間じゃないこと知ってるんだけど」
「バレておったか」
「アンタが神様の使いの狐ってことも知ってるから」
「最近、力が弱っておるのぉ」
「アンタなんのために私のそばにいるの?」
「なんでじゃったかのぉ」
「アタシ、知ってるから」
「それも知っておるのか」
「約束してね。アタシのために死なないって」
「耳も悪くなってきたかものぉ」
「アンタ、設定では高校生じゃないの?」
「どうだったかのぉ」
「約束、守ってよね」
「神様が許してくれるかのぉ」
「そのときは一緒に逃げようよ」
「連れっててもらおうかのぉ」
「約束だから」
「約束だからのぉ」
お題「神様だけが知っている」
心の中で思う
口には出さない
神様、あなただけが知っている
それだけでいい
私の願い
神様だけが知っている
神様だけが知っている。
天国と地獄の作り方。
天国と地獄の人口の比率。
でもたぶんきっと、天国は暇なんだろうね。
今日もわたしは生きてるよね?
痛いよね?たしかに感じるよね?
ふと空(から)に問いたくなるように
日々ありがたく平穏に生せてもらってる
私は何をやるべきか
どうすればいいのか
色んな意味での大人の怪我
恐れず、何かをやれるのかな
ほんと
神様だけが知ってる
俺の神様へ
メール急に届いてびっくりしたでしょ?
予約送信出来るって知って送っちゃった。
これが届く頃には全部終わってるから安心してね。
君に言いたいことがあったんだけど
直接は無理だった。ごめんね。
君が苦しんでるのに気付けなくて、助けれなくて
ごめん。本当にごめん。遅くなってごめんね。
もし、もし次があるなら俺頑張るから
今度はちゃんと守れるように強くなるから。
許さなくていい、俺が全部悪いから一生恨んでいいから。
君は俺の神様だって俺を救ってくれたあの日から
今も変わらず、ずっと思ってる。
君の為ならなんでもする。
地獄にも行くし、どんな理不尽にも耐えるし
何度だって自分が代わりになるから。
だから来世でも君の傍に居させてください。
遠くから見守るだけでもいいから
俺の我儘を許してください。
さようなら。
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20230704 神様だけが知っている
神様だけが知っている
神と呼ばれるその人は今日も、いってらっしゃい、とおかえり、を繰り返す。
帰ってきた魂に、体験してきた人生を聞いて。時に喜んだり、時に悲しげに泣いたりしていた。
魂の声は神様にしかわからないから、私たち天使はただ魂を導き、連れていくだけ。
だから、その魂がどんな人生を歩んできて、次はどうなりたいのか、神様だけが知っていた。
かなり昔に、魂になって帰ってきた私は、神様にこう言った。
「……もう、新しく何かになりたくないです」
幸せとは程遠いような人生だったけれど、覚えておくにふさわしいと感じられた一生だったから。せめて、もう少しだけ、このことを覚えていたい。
新しく変わってしまえば、その生が終わるまで思い出せはしないだろうから。
そう思って、そのことを伝えれば、神様は優しく微笑んで、ここにいることを提案してくれた。
純粋な天使のように、魂は真っ白ではないし、所々欠けてしまっているけれど、今日もこうして魂たちを導き、その声が聞こえないかと耳を傾けた。
私が好きなこと
私が苦手なこと
私のいいとこ
私の悪いとこ
私の趣味
私の思考
私の未来
私の好み
私の全て……
きっと寿命も知ってるんだよね?
──恐ろしくも思えるけど
私の色んな部分、知った上で
見守ってくれている
時に見たくもないもの見せられる
そんな時に道連れ
全部含めて
間違いなく
優しい存在
これからも
私の全てを知った上で
お付き合い下さい、神様──
(2023.07.04/神様だけが知っている)