『病室』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
藍色の空にぽっかりと穴が空いたように浮かぶ、白く光る儚げな月をぼんやりと窓越しに眺めていた。
白で設えられたここに慣れてどのくらい経つのだろうか。
こころがこんなにも痛むのは、知らぬ間に浮かんだあの月のようなこころの穴のせいだ。
─病室─ #21
【病室】
最初の記憶は父方の祖父
そのつぎは母方の祖母
そのつぎは夫の祖母
そのつぎは母
そのつぎは父方の祖母
そのつぎは叔父
…けっこう見送ってるな
姉の子どもたちを迎えた日
息子と初めて会った日もそう、
しあわせとかなしみが隣り合わせの
不思議なあの空気
百万ドルの夜景を見下ろす丘の上の病院、
真っ白な壁を這っていた虫、
まだ幼かった無邪気な息子の笑顔、
明け方の廊下のあかり
くるしくなって目をぎゅっと閉じる
思い出、たいせつな
窓から見えるヒカリがキライだった。
でもそんなキライを消してくれたのは
病室に入ってきた一人の天使だった。
病室
海が好き。
小さな頃から。
学生時代は彼にねだって、よく海に連れて行ってもらった。
逢えなくて淋しい時も、海を眺めた。
海が見える式場で愛を誓った。
海好きな私に彼がマリンウェディングを提案してくれたのが、嬉しかった。
その後、仕事や家庭でバタバタした生活を送りながらも、休みの日には家族で海に行った。
息子と娘も海が好きになった。
夫が頑張って別荘をプレゼントしてくれた。
学生の頃に『将来は海の近くに住みたい』と言ったことを覚えていてくれた。
いい人生だったと思う。
病室の窓からは海が見える。
青く広がる空と海。ネモフィラが咲き乱れ、幻想的な光景だ。
どうせなら海が見えるところでと、夫がその病院を探してくれた。
今日はうだるような暑さになるだろう。
初めて恋をしたあの暑い日のことを思い出しながら。
あなたと一緒に歩いた海辺の思い出も。
病室は最期の場所かもしれない
時に悲しく、寂しく
そんな場所かもしれない
でもネガティブな場所で終わらせたくない
きっと治る場所でもあるし
笑顔になれる場所でもある
今、病室にいる人に少しでも元気を
【病室】
ここに来ればあの頃を思い出す。花奏と一緒に遊んだ最後の思い出。僕らはまだ高校生だった。勉強も部活もして、青春真っ只中だった。でも、花奏が病気になって…。あの頃に戻りたい。また会いたいよ〜。そう思わずにはいられなかった。
早く気付けばよかった。早く病院に連れて行くべきだった。僕が近くにいたのに。わかっていたのに。そんな罪悪感が積もるばかり。いっそ、僕も花奏を追うように、この世から逃げようかとも思った。友人として、幼馴染として、ほんとに家族のように接していた。何かあれば僕は花奏に全部話していた。僕は花奏を慕っていたんだな。
暑い夜だ。会社帰りに中華街を回る。いい居酒屋を見つけた。今日は愚痴るとするか。
海星「失礼します。」
蓮「はい、いらっしゃい。」
聞き覚えのある声だ。
お題:病室
いつしか病室で君を待つようになった
独りでいるより、安心できる君と楽しくお喋りできることが1日の楽しみだ
2024/08/02/(金)/晴れ
①病室
思い出は窓
母は見えなくなるまで手を振ってくれたが、泣きながら見送った切ない思い出。
4歳の時、肺炎で1ヶ月入院をした。
咳は出ていたが、気持ちは元気で、点滴をされる以外は普通に過ごせる自分には、入院は退屈で寂しいものだった。
母は毎日、面会時間ギリギリまで一緒にいてくれたが、それが尚更寂しさを増した。
絵本を読んでくれたり、りんごやヤクルトをこっそり差し入れしてくれた。
母が帰る時は毎日泣いた
『もう帰るの?』
『いつお家に帰れるの?』
切ない記憶は優しい母の記憶に上書きされ、幼い頃から将来は医師か看護師になろうと決めていた。
今、私は病室の窓に子供を連れて行き、面会時間に訪れる入院中の子供の両親を看護師として迎えている
お父さん、お母さん、ありがとう
待ってたよ
病室…。
多くの人にとって、始まりの場であり、終わりの場でもある。
「病室」と一括りにいっても、その中にいる人は様々だ。生まれくる命に喜びの涙を流す人がいれば、今まさに命の炎が消えようとしている人もいる。
生と死が隣り合う場所なればこその光景だ──
無機質な部屋の中で繰り広げられるドキュメンタリーは、常人では受け止めきれないほどの感情で溢れている。
その中で「病室」は、延々と人の命の重みと儚さを受け止め続けるのだろう。
泣くことも、笑うこともせず。
弱音も吐かず。
拒みもせず。
ただ、どんな人も受け入れる部屋として。
生きることに最低限必要なものだけ揃えられた簡素な部屋。白く狭く無機質なこの部屋。物音ひとつない冷たい空気に身体が霧散していくようで、わたしは独りありもしない空想に身をすくめながらさらりとしたベットの上で身体の型を保つように丸め、浅い呼吸の中眠りについた。
#病室
206、206、、、
これが、これから会う人の住む部屋番号だったらな
いやまあ今はそこが部屋番号に違いないんだけどさ
新しく建て替えられた大きな病院の中を
心の中でそんなことを呟きながら
スリッパで進んでいく
あ、あった、、
目の前に現れた目的の部屋番号に
誤魔化していたはずの鼓動の速さが襲い掛かる
一度だけ大きく深呼吸をして
大きな扉にコン、コン、とノックをする
返事無くても入ってきていいから、と
LINEで言われていたことを何度も脳内で再生し
失礼しまーす、、、と誰にも聞こえない小さな声で呟き
静かに扉を開けてそろりと部屋の中に入る
四人部屋だが、つい最近もう一人が居なくなって
この大きな部屋を独り占めしているらしい
一番奥のベッドに居る会いたい人へ近づく
すると上半身が起こされたベッドに身体を預けて
窓の外を見ているようだった
「...こんにちは......」
少し掠れてしまった声で呼び掛けると
ゆっくりと顔をこちらへ向けながら
「......会いたかったよ、」と言った
だれとまちがえてる?なんてどうでもよかった
ここで私が正直にならないでどうする
「わたしも、会いたかったです……」
泣きそうになるのを堪えながらそう呟くと
彼は私を手招きして呼び寄せる
それに倣うと頭を撫でられた
「間違ってないからね、俺」
「ちゃんと、会いたかったんだよ」
病室
1人部屋が好みかな
快適なら寝て過ごせれる
持ち込み可能なら
ゲームとスマホさえあれば
普段の環境と大差はない
何回か入院してるけど
基本的にかなり暇
いいところは邪魔が少ない
悪いところは制限が多い
風呂が特に落ち着かないかな
科にもよるんだろうけど
決まりが古いと思った
管理しきれないからって
拘束するのは良くないと思います
休みを強制されて
患者を扱い易いようにしてて
それでもあまり上手く機能してない
ある種、洗脳的だと感じた
病室は問題ないけど
個人を蔑ろにしてるよね
私は休みきれずにいた
手を借りるのが面倒
あまり関わりたくない
そのことを再確認が出来た
ほぼ他の患者と関係ないとこが
責めてもの救い
昔と比べるとかなり不自由になってた
過剰な管理は本当に不快
決まりが時代錯誤だと思うけど
一応は理由があるんだろうね
しかし見直しが必要だと思う
私にはあまりに向いてない
空調だけがかなり良かったくらい
今まで、何度か入院した…
怪我もあり病気もあり…
「病室」に横になっている時
看護師さんたちはほんとに良くしてくれた
私が寝ている間も一生懸命に働いて
私たちを守ってくれた…
病院勤務の方たちの頑張りには
感謝と同時に頭が下がる思いだ
さて、身体を壊すと言う事は
すごく辛いししんどい経験なんだけれど
元気だった時には絶対に感じ取れない
自分の感情や周りの有難さを実感する
本当に人の善し悪しが敏感にわかる…
皆、がむしゃらに働いていると
立ち止まる事を忘れてしまうけれど
身体を壊す事で止まるしかない状態に
なる事で逆に時間が出来て
自分をかえりみるいい機会になったりする
辛い時間を乗り越える事で
先の人生を良い方向に変える事が出来たりする…
だから大切なターニングポイントだと言えるだろう
病室にいる
祖父母の姿を思い出し
生きることの喜びを
噛みしめる
病室の窓からみえる白木蓮は今年も、高潔な顔で立ち続けている。
No.5【病室】
【病室】
幸いな事に
あまり縁が無かったが
数年前にとうとうお世話になる事となった
立て続けに・・・
症状が治まると
普段の生活とは違う空間に
発見も多い
歳も症状も価値観も違う同居人達
漏れ聞こえてくる話も
普段聞く話とは違って新鮮だ
ワガママな人もいる
出来の悪い生徒達の面倒を見る
先生(看護師さん)達
軽口叩いたり
ダメって言われた事やったり
無理な注文言ったり
こうしてくれるのが当然
なんて事まで言ったりする
夜中に何度もナースコールを押し
背中痒いと言ったり
喉乾いたと言ったり
セクハラ紛いな事言ったり
いやありゃ完全なセクハラか
看護師さん達はサービス業ではない
相手はお客さんではなく
患者さんだ
仮にサービス業だったとしても
如何とは思うが
それでもナースコールの度にやって来て
セクハラは軽くあしらい
優しく声を掛け
可能な限り対応し
寄り添い(身体的な事ではなくて)
有事の際にはすぐに駆け付け
大丈夫?と声を掛けながら懸命に処置をしてくれる
実際彼等の本業はそこのはずだ
ましてや
当時はコロナで大変な時期でもあった
ベッドの上から見れるのは
膨大な仕事のほんの一部だろう
それでも凄い人達だと思った
実際
自分の仕事を考えても
管轄外の事は基本やらない
当たり前のように求められれば尚更だ
自分の仕事ぶりを少し恥じた
絶食治療はつらかったけど
凄くいい経験をさせてもらった
治療してもらったのは
身体だけでは無かったかも知れない
「...あれ?」
起きてみれば白い病室
日が差す窓
複数とは言えないけど人とベッド
多分、
また失敗したんだな
私は死にたがり屋
やっと自殺出来ると思って屋上に行った
「飛び降りても死ぬとは限らない」
そのことは知ってる
でも耐えるの限界だもの
さっさと楽になりたい
ほら、心も悲鳴をあげてるの
その悲鳴は
きっと「早く死にたい、早く楽になりたい」のはず
きっと「まだ生きてたい、生きたい」なんて思ってないはず
そう思って飛んでみた
飛んでみたら、
白い病室
白いベッド
「はぁ...」
いい加減、死なせてよ
辛いんだって
ストレスで、比べられたり
努力しても報われなかった
気分が急低下する自分
その時、病室のドアが空いた
「?!」
あーあ、また呆れるんでしょ
お母さん
そう思っていると、勢いよく抱きしめてきたお母さん
「...ごめんね、分かってあげれなくて、」
「𓏸𓏸が書いてたノート、見たよ、...」
「は、?見ないでって言ったじゃん!!」
「..ごめん、でも、」
「ッるっさい!」
「....ノートを見て分かったの、」
「どうせ、私の気持ちも分からないくせに、ノート見る必要ないよ、」
「ごめん、辛かったんだよね、ごめん」
ごめんごめんと言いながら泣いてるお母さん
やめてよ、こっちも泣きそうになるじゃん
病室
病室
やけに甘ったるいにおいがする。
甘味や花ではない、体液なのか体臭なのか、そんなにおい。
においの元である点滴を着けている彼は、時折ベッドから起き上がっては嘔吐している。食べ物を口から入れていないから、体液ばかりだ。
随分と痩せた。この病室に繋がれてから2ヶ月ほど経つ。そもそも痩せていたのにもはや幽鬼のようである。
もうすぐ退院だ。余命宣告が正しいならあとわずかの時間、どれほど彼と在れるのか。
病室を出る日がせめて彼の好きな晴れならいいと願った。
大好きな祖母
私のことはわかる
小学生の頃のわたし
どんな時も褒めてくれて
認めてくれた祖母
もう会えない
もう褒めてもらえない
だけど、大丈夫
ずっと、わたしの心にいるから
「病室」
出たくない。
ここに居たらみんな私を見てくれる。
みんな私を気にかけてくれる。
優しくしてくれて、何でもしてくれる。
これが本当に私の人生?と、疑う程には。
これが幸せなのに何故自ら手放さないといけない?
鉄の匂いや消毒の匂いが充満するこの"病室"で、
退院なんてしなくていい。
なら、ここに居れる理由を作ればいい。
はぁーっ!どうしちゃおっかな!
リスカ?OD?他の患者の子に暴力でもしようか!
これから楽しくなるぞ~!!
_________________________
あの子、また酷くなってる。
一体どんな幻覚を見てるのか...
そもそも、ここが何処か理解をしていないのか。
普通の病院?ここは"精神病院"だっての。
あの子は元々、病気を患ってる。
そんなんにも気づかず、本当哀れ。
"ミュンヒハウゼン症候群"ってね。
あの子の病名。本当、可哀想な子。