『病室』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
無機質な空気を吸い込んだ瞬間に
切れる寸前まで張り詰めた糸のように
私の心は限界だったのだと知った。
ポロリポロリと
大粒の雫を零し続ける私に
おおげさだなぁと
少しうれしそうにあなたは笑った。
【病室】8月2日
【病室】
今、この病室は静かで何も無い
先週まではうるさくて、荷物が散らかっていたのに
先週までは毎日のように来ていたのに
今ではここに来ると辛くて涙が溢れてしまう
空を見上げると君が居る気がする
いつまでも見守っていてね
ぐにゃりとした脳内の印象が、少しずつ正常に戻っていく。その中で見上げると、ゆらゆらと小さな光が揺れ動いた。
ここはどこだろう。
水の中に見えるけれど息ができるのは、なんで?
温かい何かが手に触れたような気がする。
俺はそれが何か確認しようとしたけれど、身体が動かなかった。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ……。
とても遠くに聞こえる無機質な電子音が、突然脳裏に響く。
視界に広がる光景と、無機質な音というアンバランスな世界に首を傾げつつ、底を蹴った。
光は少しずつ近づいて眩い光に包まれる。
それと同時に、無機質な電子音が明確に耳に入ってきた。
ゆっくりとまぶたを開く。
見慣れたようで、見慣れていない天井が、そこにあった。
ああ、俺、さっきまで意識がなかったんだ。
てか、どうしたんだっけ……?
「目が覚めたね!」
俺を覗き込むのは、職場の先輩だった。
「おれ……」
「無理に喋らなくていいぞ。こっちが説明するな」
ぼんやりとした中で、上手く首を動かすことができない俺は、瞬きをひとつする。
「連絡が入って、救助に向かった時に、事故に巻き込まれたんだよ」
そう言えば、そんなことがあったような気がする。
ぼんやりしつつも、記憶を巡らせるが、靄がかかったように上手く働かない。
「無理しない方がいい。まずはゆっくり休むんだ」
先輩の言葉を聞いて安心した俺は、もう一度意識を手放した。
それから数日かけて、状況の把握と記憶を掘り起こす。
先輩の言ったように、俺は救助に向かい、救助者をヘリに乗せた直後、事故に巻き込まれた。
幸い、救助した人は救助ヘリに乗せた後だったので、その事故に巻き込まれたのは俺だけだった。
中々派手に巻き込まれたため、意識不明の重体までいったらしい。
意識が戻ってから、少しずつ元気になった俺は、恋人が心配しているのではないかと焦りを覚える。
先輩に聞いてみると、それはそれは心配しているようだと言われてしまった。
それからしばらくして、面会謝絶が取れると、やっと面会出来るようになった。
その事を、先輩は俺より先に恋人に告げていてくれたらしい。
その日の面会可能時間になった瞬間、彼女が俺の病室に飛び込んでくる。
速攻抱き締められるかと思ったのに、彼女はそれを躊躇い、一歩後ろに引く。
そして、大きな瞳からぽろぽろと涙を零した。
「良かった……無事で……」
「心配させて、ごめん」
彼女は涙を拭いながら、首を横に振る。
彼女に手を伸ばす。
上手く動かせない俺の手をしっかり取って、俺の手に彼女が口を寄せた。
「無事で良かったです。本当に……」
溢れる涙を拭わないで俺の手に顔を寄せるから、彼女の涙も手に零れる。
とても温かい彼女の涙が、とめどなく溢れ落ちた。
「ごめん、こっち向いて」
俺がそう告げると、そのままじっと俺を見つめてくれる。
心配したんだよと、その瞳は確かに訴える。
それでも、その奥に見える俺が無事なことに安心する色。
早く治して、この病室から出なきゃ。
おわり
お題:病室
テーマ「病室」
【 蝉の声 この病室 響いてる 】
今日は俳句にしてみました。
この場所から見た景色はちっぽけなものでした。ひとつの四角い穴から見える景色だけが暇つぶしの道具であり身動きが取れない。それは本当に生きていて幸せなのか。まだ天国に逝った方が幸せなのではないかとも考える。白い壁。見慣れてしまった天井。心拍音。心配そうな人の声。聞くのが嫌になったので私は眠ろうと思う。もしこれが最後だとしても悔いは沢山あるが抵抗する方が疲れてしまったのだ。
微妙に寝心地のいいベットも、真っ白な天井も
健康しか意識されてない食事も、静か過ぎる空間も
もう、うんざりだった
硬い床に敷いた布団でいい、少し汚れた天井でいい
食べ物なんて、食べられれば何でもいいから
早く、好きな時にあいつに会える所に戻してくれ
静かすぎるこの空間は、俺には少し辛いから
---二作目---
窓際のベットに座る、貴方
何処か遠くを見つめる、貴方
何時もの覇気が抜け落ちて、消えてしまいそうな貴方
そんな貴方に、僕は優しくチョップを入れた
漸く僕の存在に気がついたのか、多分チョップされた事に起こったのか
「何だ急に!」って、わちゃわちゃと騒ぎ始めた
そう、貴方はそれでいいんです
煩いくらいに、騒いでいればいいんです
あんな、消え逝ってしまいそうな顔
お願いだから、しないで下さい
#病室
376作目
もし死ぬような
そんな事があって
目が覚めたら
水槽の中の脳で
今までの世界が
仮想世界ならどう思う?
自己嫌悪が止まらない。
自分の言動に常に後悔してる。
ずっと、心の中で謝り続けてる。
気持ちがぐちゃぐちゃになってよく分からない。
泣きたい。疲れた。苦しい。
心が壊れてく感覚がある。
もう限界だって、心のどこかで分かってるのに。
「まだ大丈夫。」
「私より辛い人なんてたくさんいる。」
「この辛さの原因は自分にあるから。」
って、自分に何度も言い聞かせる。
涙が出るのを我慢する。
泣けなくなる。
でも、最近は涙が出てきて、止まらない。
すぐイライラする。
もう、何もかもが嫌だ。
もう、疲れたよ。
君がいた病室は、荷物も全部片付けられて
無機質な暗い病室になってしまった。
君がいた時は暖かな明るい部屋だったのに。
お題「病室」
紙に連ねた、したいこと全部君は叶えてくれるという
1つ1つを噛み締めるように綴った思い出のフィルム
夜中抜け出して学校へ行った
何気ないこの時間が大切で、涙を堪えてた
紙に連ねた、したいこと全部 君が付き合ってくれたから
悲しい知らせも受け止められた
君に託すよ、思い出のフィルム
命かけて人助けして ずぶ濡れになって笑った
やり遂げた瞬間を自慢して、夢を語ったね
短い蛍の命
消えるまでその光を楽しんでよ
美しい蛍の命
消えるまで精一杯 夏を照らしてよ
ありがとう
病室
懐かしい響き…
白い綺麗なシーツに
ボーっと横たわる
窓から見る景色
を眺めながら…
狭い病室で…色んな病気の
患者さんと共に暮らす
馴染めない日々
看護師さんの優しさに
救われながら…
病室から覗く窓から見える君へ。
私は気づいた時には遅くて…。
余命はもう1日もありません。
あなたみたいに元気に走ってみたかった。
あなたと一緒に走りたかった。
私の恋だけがずっと走ってた。
そう思ったのは…昨日。
もう生きられないのかな。
辛いよ。苦しいよ。
君の存在が救いだった。
今も何故か目から何かが流れてくるの。
嬉し涙かなぁ…。
君に会えた幸運。
きっと忘れない。
病室はまだ寂しい思い出しかないや
いつか、おめでたいような
嬉しいと思えるような
そんな思い出ができるのかな。
今日のお題は『病室』でした。
あったらいいな
あったらいいな
病室に
マヨネーズ。
あったらいいな
俳句を始めたいと思い、季語を色々調べています。
病室は季語かな?と歳時記を見ると、病葉(わくらば)が夏の季語でした。
わくらばで思い出したのが、オーヘンリーの最後の一葉という小説です。
ツタの葉と自分の命をかさねる、、、再読したくなりました。
わくら葉に 命の重さ ゆだねたり
子ども部屋と呼ばれたこの場所も、いつか病室になるのだろうか。
【病室】
病室に風を入れれば見えた見えた
小さな手手の手旗信号
♯病室
病室からの外の景色の新鮮さに
瞳を輝かせていた時期があった。
今はもう見慣れたものだけれどね。
心地良い空調が効いている病室、今日も窓から外の世界を除く。
青く晴れた空に行き交いする様々な車、下校中の子供、急いで走り去るサラリーマン、グッズに身を包んだ大人、楽しそうに会話している学生達……。
生きている唯一の楽しみがこの時間だった。世界は広く、そして眩しい。この狭苦しい部屋から飛び出して、この足であの道を歩いてみたい。
「𓏸𓏸さん、入りますよー」
数回ノックの音がして、扉の開く音がした。音のした方を見て、ぺこりと会釈する。
「今日もありがとうねぇ」
「いえいえ、体調はどう?」
「良くも悪くも、何も変わらないさ」
「変わらないか……𓏸𓏸さん、一緒に頑張ろうね」
「あぁ」
「今日もちょっと歩こうか、手握るよ」
「よろしく頼む」
手に温もりを感じつつ、ゆっくり立ち上がる。足の感覚だけで地面を把握するのももう慣れてしまった。
「明後日は手術だね」
「もうそんな日数が経っていたか」
「先生に任せておけば大丈夫だからね」
「うむ。信頼している」
また、私に昔見えていた世界を見せてくれ。
『病室』
「導くん?」
病室にいる彼は、以前の彼とまるで別人だった。
外見こそ髪が伸びただけであまり変わっていないけれど、性格だったり、言葉遣いだったり、そう言うところがまるで違う人のようだった。
「…えと、こんにちは?すみません、何も覚えていなくて。記憶喪失、みたいです」
彼の口から出た言葉は、かなり衝撃的なものだったのを覚えている。
記憶喪失、四つの文字が頭を素早く横切る。
事故に遭ってあるところの損傷によってなるとは見たことがあるが、まさかこんなに簡単に記憶がなくなるとは思いもしなかった。
「こんにちは。突然すみませんね。…白燐、と言います。あなた、導くんの親的な存在と言うところでしょうか…」
言葉を噛み砕くのに時間がかかったようで、しばらくしてから「おや、親ですか……」と呟いたのが聞こえた。
「そう、親。…退院したら私たちの暮らす家に行きましょうか」
それまではここで安静に、ですよ。と付け足すと、緩い返事が返ってきた。
「んじゃ、よろしくお願いしますね。白燐さん」
「ええ、よろしく。導くん」