『病室』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あの木が桜色になったら私、死ぬんだって。
そんなんわかんないじゃん。そんなの、なってみないと。
私だってあなたが長くないって知っていたつもりだったけど。まさかそんなに―
月日は流れ日に日に衰弱していく私を見て、あの子はどんどん顔が曇っていった。一分一秒がおしいといった目で見つめて、私の心には罪悪感が芽生えた。
どうしても会いたくなくなって、布団を頭までかぶって子供みたいにやり過ごした。悲しそうな背中が病室を出ていくのを見て、このまま死んでしまえばと思った。
病室の外の丸裸の枝を見て、担当医のもうすぐ春だという声に耳を傾けた。
いよいよさいごの日になって、異常な眠気と戦いながら私は窓のそとを見た。満開の木があるだけで何もなくて。さいごの景色にはなんだか物足りない。
動かない足と共に、私ははやすぎる生涯を終えた。
さいごに聞いたのは、あなたの泣き声の混じった笑い声だった。
ねえやっぱりさ、こういうのって葉っぱが落ちたらにするべきだったかな。
病室からはちょうど見えない花火
音だけが聞こえてくる花火
街の花火大会に行けなかった夏
もう慣れた左腕の点滴
子供向けのキャラクターがテープに描かれている
そのキャラクターが特別好きではないけど
見守られている感覚に癒されていた
絵を描いたり天井の模様を見たり
ただ寝転がって過ごした
決まった時間に運ばれてくる食事
おやつのたまごボーロが少し苦手だった
トイレに行くのが億劫だった
歩くのも辛かった
同じクラスの喘息持ちの子と廊下ですれ違って手を振った
退院の日の帰りのエレベーター
閉まる扉の向こうで
看護師さんたちが笑顔で手を振ってくれた
これは、小学二年の夏休みの思い出
入院したことがない。
そう書くと、
いかにも健康優良児のようだが、
この歳になると、ここが痛いあそこが痛いと
ボロボロ(のつもり)。
しかし漢方内科のおじいちゃん先生は、
たいていニコニコと
「今日も元気ですね、よく食べる人は基本
元気なんですよ」
と言ってくれ、ほっとする。
よく食べる人…うん、間違ってないしな。
病室は生と死が混ざり合って独特の匂いを放っている。
他人行儀で自分のものにできない真白いベッドは居心地が良くないけど、ここに居てもいいってはっきりしているのは少し安心だ。
清潔な病室は、私のかさぶたが目立つ。
独特の匂い。名前をつけてあげる。あなたは
『病室』
僕は交通事故で怪我をしてこの病室に一人だ。
でも、彼女のゆりが毎日のようにお見舞いに来てくれる。
コンコンと誰かが部屋のドアをノックした
「お邪魔しまーす」
彼女のゆりだ。今日もまたお見舞いに来てくれた
彼女の要望で今日はカーテン越しに彼女と話した。
「心配で早く来ちゃった」
「ありがとう。あれ、ゆり、声おかしくない?」
「私もしかして風邪かも…?」
他愛のない話がしばらく続き面会の時間は終わった
「そろそろ帰るね」
「うん。今日もありがとね」
そうして彼女が部屋から出てから30分が経った頃
「遅くなってごめんね~」
と声がした
恐る恐る見てみると彼女のゆりが居た。
じゃあさっき来たのは一体…?
作 天城
からっぽになった病室
また明日って言ったのに
#病室
白い壁 白い天井 白い床
そこには清楚さや温かさはなく
何故か清潔さと冷たさが
脳の芯までズキズキと響く
病室
メトロポリスで見つけて
君はメトロポリスの住人
ミステリアスなこの都市で生まれ育った
きらびやかな摩天楼
巨大な沿岸工場地帯
芸術科学の臨界点
誰もが思い描く理想郷
それがメトロポリス
君は愛のテレパシーを僕に送る
空飛ぶクルマで会いに行くよ
むき出しの鉄骨の山を越え
ビルの谷間をすり抜け
酸性雨の嵐の下を飛ぶ
メトロポリスへ
愛の理想郷へ
君を狙う悪を光線銃を撃つ
おちおちしていられない
都市の中心に聳え立つタワー
そのてっぺんに君が囚われている
僕は必死に螺旋階段を昇る
武装した兵隊たちが行く手を阻む
構うもんか、僕はただ君に会いたいだけなんだ
頂上の小さな部屋に君はいた
そして僕を見て微笑んだ君を
強く強く抱きしめた
メトロポリスで君を見つけた
私の好きな色はバラ色。どんな色かっていうと、赤とか黄色とかピンクとかオレンジとか。バラの花にありそうな色はほとんど好き。
でもこの部屋にはバラ色のものが1つもない。それどころか、白ばっかり。部屋の壁も天井もカーテンも。テーブルもベッドも手すりも、ずっとピッピッと鳴ってる機械も、全部。部屋中の白に埋もれて、私の腕さえも白く見えてくる。せめて髪の毛は黒、と言いたいところだけど、先月で全部なくなってしまった。
「今日はね、あなたにプレゼントがあるの」
いつもの時間にお母さんがやってきて、私にラッピングされた袋を見せた。
「なあに、これ」
「開けてみて」
リボンを解いて中身を取り出す。ニット帽だった。その色は、バラ色。赤も黄色もピンクもオレンジも入ってる。カラフルでとっても可愛い。私が今のように病気になるずっと前に、バラ色が好きって言ったのをお母さんは覚えていてくれた。そわそわしながら頭に被ってみる。鏡に自分を映す。でもなんだか、思ったよりも。
「どうしたの?」
「……ううん」
一瞬、鏡に映った自分が誰なのか分からなかった。髪の毛も眉毛も失くなって。死にかけた瞳の女の子が派手なニット帽を被っている。まるで帽子だけが生きているよう。もう我慢できなくて静かに帽子を脱いだ。私にバラ色は似合わない。赤も黄色も、私が身につけると死んだ色になってしまう。
「気に入らなかった?」
「……気に入りたかったけど、似合わなかった」
「そんなことないわよ」
お母さんがそっと私の手を取る。私なんかよりずっと生き生きした肌色の手をしていた。
「私に可愛い色は似合わない。白しか、似合わない」
「なら、こっち被ってみる?」
そう言ってお母さんが別の紙袋をバッグから取り出した。
「先にこっちを買ったんだけど、これじゃあまりにも地味かと思って買い直したのよ」
中身は真っ白いニット帽。お母さんがそっと私の頭に被せてくれた。恐る恐る鏡をのぞき込む。白い帽子を被った白い顔の私。でもさっきより肌の色に鮮やかさが出たように見える。帽子のほうが真っ白いからそう見えるのかもしれない。おまけにその帽子には、
「……耳がついてる!」
「そう。可愛いでしょ。白猫ちゃんね」
小さな2つの三角が、ぴょこんと私の頭に立っていた。
「ねぇ、似合う?」
「もちろん。とっても可愛い」
その後しばらくずっと、鏡の中の自分を眺めていた。お母さんが帰ってからも、ずっと。
私にバラ色は似合わない。けれど、私に白はとっても似合う。
そう言えば。白色もバラにある。
じゃあ白もバラ色だ。
私にも似合うバラ色、見つけた。
病室の片隅にあるベッドの上。
そこから外の風景を窓辺から眺める君の顔を遠くから見つめる僕は。
その大きな瞳にさざ波のように揺蕩う感情をはかり知れずに。
またこの胸の鼓動が逸る意味も知らぬままに。
この白い空間に囚われ続けている。
【病室】
病室
同じ医療を扱う場所でも。
入院病棟がある病院の空気は、
少し違う気がする。
お見舞いで訪れたそこは。
静かなようで、騒がしい。
いろんな音や声で溢れてる。
消毒液のような、独特の臭いと、
すれ違う人の空気。
見つけた先のそのドアに、
どこか緊張を感じながら。
笑って話ができるだろうか。
できれば声が聴きたいです。
病室
私は生まれつき体が弱く、特に夏になると毎年のように入院するため夏祭りも体調さえ良ければ行けるくらい
祖母の最期看取ったことがある。
病室に行ったときにはほぼ意識がなく、母の呼びかけにも曖昧な返事を返していただけだ。
「あぁ、もうすぐ亡くなってしまうのか」
漠然と死を受け入れていた記憶がある。
長生きをしていたから。
大病を患うことなく、寿命を全うしていたはずだから。
*
私の母がちょっとした手術で1泊2日の入院をしたことがある。
手術が終わったあとに、病室に行くと
酷く憔悴した母が居た。
何となく動揺しそうになった。
元は日帰りで帰れるかもしれない、と言われていたからそこまで深刻に考えていなかったのかもしれない。
結局母は翌日問題なく帰宅してきたのだが、
そのとき初めて死が過ぎった。
母が死んだら私はどう生きていくの?
どう受けいれられるの?
あと何年一緒に過ごせるの?
当たり前が当たり前でないことを今更のように実感した。
*
祖母の死と母の死は比較できるものではないけれど
自分の親だからこんなにも重みを感じるのだろうか。
私がすんなりと受け入れた祖母の死に対し、
母は重みを感じていたのだろうか。
それが分からぬように、大人びた振舞いをしていたのだろうか。
祖母の病室にいた母と、母の病室にいた私が、少しだけ重なっているように見えた。
病室。
白い殺風景。
窓から見える空や森。
仲良くなった病室の人達。
看護師。
味のしないご飯。
退院の時の嬉しさ。
もう、死ぬ時以外きたくないと思える場所。
病室。
病室
点滴が落ちる音さえ聞こえそうな病室で、ただぼうっと天井を眺める。今日も変わらず真っ白だ。
なんとなくテレビをつけると、好きだったお笑い番組が流れていた。いつの間に、夜になったんだ。
あれ、私、三回もご飯食べたっけ。覚えてない…。
まぁ、どっちでもいっか。私はどうせ、長くない。
お医者さんは申し訳なさそうにお母さんに謝ってたけど、別に、私に治るつもりがないから治ってないだけで。医療のせいじゃ、ないんだよなぁ。
だって、私に誰も会いに来ないんだもん。
誰も来ないなら…。私はいらないんでしょ?
# 病室
仕事中の骨折で入院して2週間が経った。
今日の朝方、隣の患者の男にベットの交換を申し込まれたれた、面倒で初めは断ったが
しつこく頼まれ私は渋々承諾した。
夜になると誰かがこっちに歩いてくるのがわかる。
その足音は確実に交換した、私の病室のベットに近づいていた。
病室
金銭面で大部屋にしようか迷ったけど、
結局、個室にした。
実際に入院したら、
私は個室にして良かったと思った。
病状が重くても、長期の入院でも、
大部屋しか選択肢がない人はいる。
選べる自分は、幸せ者だと感じた。
気がついたら病院の個室の中、点滴に繋がれていた。
無機質な天井と硬めのベッドの中、繋がれた注射の針と腕の痣がひどく痛々しい。
どうやら僕は事故にあったようだ。
だが、直前の記憶がない。どこかへ渡ろうとしていた事は覚えているから、おそらくは車に轢かれたのだろうか。
隣で恋人が涙を流して僕の手を握っている。
ああ、生きていてよかった、と。
僕は大丈夫だよと声をパクパクさせながら、再び眠りについた。
病院の病室にいる君。
彼が仕事のストレスによる過労で病院に入院したという連絡が来たので私は急いで病院に向かった。
彼とは仕事先で出会い、付き合うきっかけにもなったのだ。
一緒にアパートで暮らしてるほどだ。
そんな彼から入院の連絡が来て荷物をまとめて病院の病室に向かった。
私「大丈夫?荷物持って来たんだけど…💦」
彼、「ああ、ありがとう…、ごめんな。心配かけて…」
私「もう、バカ!、お仕事頑張りすぎなんだよ!、少しは相談してくれてもよかったじゃん!一緒に住んでるのに!」
彼「ごめんって…💦、お前に心配かけたくなくて…、それに…いろいろ準備してて…言えなかったんだ…」
私「なによ!準備って!」
彼「ここでいうのもあれなんだけどさ…俺たち付き合ってから1年くらい立つだろ?そろそろ…、その…、結婚の話とか出来たらって思ってて…💦本当にすまん!」
私「え?け、結婚の話…、ウソでしょ?」
彼「ウソじゃないよ。そろそろ結婚を考えてて…両親にお前のこと紹介しないとなって考えてたんだ。ダメだった?」
私「ううん、うれしい…、君と付き合うことが出来てこんなに幸せなことないと思ってたし、君のこと知れてすごくうれしく思ってたんだ。」
彼「よかった…、改めてプロポーズは治ってからにしてもいい?」
私「うん、治ってからだね!待ってるよ。君のことずっとずっと大好きだから!、元気になってね!」
彼「ああ、ありがとう❤️、お前と付き合えてよかった!治ったらプロポーズするから待ってろよ!俺も大好きだ!」
終わり
声劇、シチュボ台本。
また、病室がひとつ空いた。
空になった病室の窓から外を見下ろすと、楽しそうに笑っている男の子とその家族が抱き合っていた。
ふと、少しだけ口角があがる。
こちらに気付いたのか、男の子が私に手を振った。
「ありがとう!」
そう言ってくれた。
手を振り返して、後ろを振り返ると、同僚がニヤニヤとしてこちらを見ていた。
顔が赤くなる。見られた。最悪だ。
「まさか君にもそんな一面があったんだな?ふーん?」
「減給にしてやる」