『狭い部屋』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
2LDK南向き、
風呂トイレ別のカウンターキッチン。
朝起きた時、トントントン。と包丁とまな板の音がする。
カーテンを開けると、暖かな優しい陽が差し込み、小鳥の囀りさえ聞こえてくる。
「ねぇ、私たち 別れよっか。」
あまりに急な台詞に僕は言葉を詰まらせる。
典型的な幸せの情景に不釣り合いな会話をした後、彼女は効率よく荷物をまとめて部屋を出ていった。
一緒に買って組み立てた家具。
「未来への投資だよ」って買った高い家電。
この部屋で過ごした君との思い出が嫌に蘇り、僕はスマホを投げた。
1年後、駅徒歩6分の1Kに引っ越した。
部屋は狭くなったはずなのに、玄関が遠い。
扉の外にがちりと付けられた錠前が
閉じられているとは知りたくなかったから
こちらから見えないことは幸いだった
狭い牢獄は私次第で城となり
窓の外に関心さえ向かなければ
大抵の事は幸せなのだと思えていた
朝月夜を背景に飛ぶ鳥が朝を告げ
吹き込む風が香りという便りを置いてゆき
夕暮れという友が部屋の中を駆け抜け
灯りを混ぜ過ぎた夜の帳も下りた頃には
星達も空に敷かれた布団に潜り隠れんぼ
手元の薄い毛布でも夢は暖かく鮮やかで
ある物だけを数えれば
食うにも困らず
雨風にも晒されず
袖を通せる衣服がある
なんと贅沢で幸せな事だろう
いつかは覚めると知っているから
私の城は豊かなのだと安心出来るのだ。
願いは一つ、目が覚めない事に違いない。
ー 狭い部屋 ー
本当は部屋じゃない空間を『狭い部屋』だって言い張るのって悪くない提案だと思うの。クローゼットの中とか押入れの中とか階段の下とか。だって子どもの頃に憧れた部屋は小さくって狭くってどこか秘密に満ちてる場所にあったから。狭いところにいると落ち着くような気がするし、外界から遮断された密室の中に機能的に配置された私物がぎゅっと詰まってるのは、それだけで集中と選択を感じさせて格好良さに溢れてると思うんだよ。
…とはいえ、私はもうそういう空間には長く留まれないとは思うけどね。たぶん息が、難しくなる。
狭い部屋にこもり
猫みたいにひたすら眠る…
これがたまらん(笑)
子供の頃に過ごした部屋は、
大人の僕には狭くて、
全部あの日のままで、懐かしいもので溢れていた。
それは、
優しくも出来ないくせに、
優しさを受け入れられず、それでいて欲張りな、
過去ばかり見詰める今の心みたいだった。
限られた中で楽しむ口実を探していた僕は、
もう、何処にも居なくて、
代わりに、与えられた自由を恐れる余りに、
楽しめない理由を探す僕が居る。
#狭い部屋
狭いという認識は出来る
世界は広い
そりゃそうだ
だからって
外に出る勇気は
多分、この狭い部屋の何処かで無くした
探せば有るのだろうけど
探して
もし見つけたらと思うと怖い
だって
ありったけの勇気は多分、
水のほんの一滴程しか無いのだから
見つからない、と言い続けてる
狭い部屋、落ち着く。
さすがに一畳とかだと狭すぎるけれど、ほどほどに狭いとよい。
手を伸ばせば全てが届く。
コンパクトとは美だ。
鍵を開けて座る椅子の背にくすんで耳の欠けた猫
『狭い部屋』
窓を眺めていた。
いつもの景色がそこにはあって。
電柱と、空。それだけが見えるここの景色が好きだった。
一人では広すぎるベットに、寝転んでいるのは寂しくなって飛び出して、
ぼーっと空を眺めていて、一人では広すぎるこの部屋はいっそう肌寒くて、寂しくて、冷えた体を抱くように椅子の上で丸くなって、あなたの帰りを待っていたの。
早く帰ってこないかな、独りじゃ広すぎるこの部屋に。
早く帰ってきてよ。
二人には少し、狭い部屋に。
5
広かった部屋が君が来てから狭い部屋になった。 僕は幸せ者だ。
狭い部屋
小さく
じっと
縮こまって
蹲って
そんな私には
これで十分なのである
「相変わらず足の踏み場も無いなぁ」
「崩すなよ」
「分かってるって。こっちは本格推理、こっちはファンタジー、この山はノンフィクション。ちゃんと決まってるんだよな」
「分かってるならいい」
「で、誕生日なのに祝ってくれる友達が僕しかいない君の為に持ってきたピザとチューハイはどこ置きゃいい?」
「ん」
「あははっ、テーブルあったんだ」
「まぁ、一応」
「充分だよ、さ、ハッピーバースデー!」
◆◆◆
「·····孤独死、というのかな、これは」
「でもあまり悲壮な感じはしませんね」
「この狭い中にこれだけ本があるんだからなぁ」
「お、ピザの空き箱。一人で食ってたのかな? にしては量が多いな」
「レシートがありますね。孤独死と言っても不審なところは無いのかな。交友関係も意外と分かりやすいかもしれないですね」
「·····こないだのホトケの方がよっぽど孤独に見えたな」
「ああ。タワマンで死んでた男ですね。何にも無い部屋で寒々としてたなぁ」
「本や映像は全部PCに入ってたからな。この部屋とは真逆だ」
「あっちは広い部屋でしたもんね」
「·····どっちがいい、とかじゃないんだろうけどな」
老刑事のその呟きには、微かな哀愁が漂っていた。
END
「狭い部屋」
狭い部屋は怖いから嫌いだ
本当の意味で1人になってしまったような
異様な空気がとても苦手だ
まるで水だけで描いた風景画のように
違和感があるようで実はどうってことのないような
そんな空気がたまらなく怖い
ぼくは孤独はどうってことない
だがひとりだと感じるのは嫌いだ。
『とあるワンルームの妄想』
なんとも手狭いこの部屋は 電車が通る度に揺れるのだ ひらひらと舞う 邪な感情が乗客にばれないように 私は幾らか気遣いする 初夏だというのに 毛布が健在 朝方それに包まって 思考が早朝ランニング
卵が割れた 目玉焼き 世界で一番美味しくなぁれ
#狭い部屋
高校生までは家族と
広い一軒家に住んでいて。
高校を卒業した頃、一人で
アパートに引っ越してきた。
最初の頃はまだ慣れず
この部屋が狭く感じたり、
初めての一人暮らしということもあって
不安が募っていた。
けれど隣人の君と仲良くなり
恋人になれた頃には、
君に会いたくなったら
すぐ会える。
そう考えると自然と
口角は上がっていた。
立ち上がって大股で三歩くと壁に触れられる。普通の歩幅だと六歩くらい。触れた壁に背を預けてずるずると身体をずり落とし、床にぺたりと座り込んだ。真正面の窓からは夜の空と街灯のあかり。月は見えない。
電気を消した部屋の中は薄暗いけれど、何がどこにあるか、全てを知っているから別にそれでも良かった。だってほんの数歩で全てに触れられるのだから。なぜなら、ここは私の、私だけのお城で、私だけの宝箱なのだ。
「狭い部屋」
権力者用に用意されてる部屋ってのがある。
めちゃくちゃ狭い。
ベッドがあって、机と椅子があって。それで終わり。
お腹も減らない、のども乾かない。寝る時間だって必要はない。必要ないんだけど寝たいから寝てる。そういうのだっていっぱいいる。
とにかく権力者用の部屋というのはとにかく狭い。家具が少ないんじゃなくてとにかく置けない。
本棚とか置きたかったけど全然置くとこがなかった。そのレベル。
そんなわけで部屋で出来ることが全然ない。寝るか報告書を書くかの二択。
でも、ボクは結構な頻度で机に座って真正面にある窓に目を向ける。めちゃくちゃ明るい陽の光がさんさんと差し込んでくるけどボクは演奏者くんのことを考えて微妙に憂鬱になってる時しかそんなことをしない。
彼のことが好きという気持ちがある。それは一目惚れから始まって、彼のことをどんどん知ってくうちに更に好きになった。
でも同時にボクは彼のことを全く読めてない。何を考えてるのかも、なんでここにいるのかも、ボクといる時にどんな気分なのかも。だからそれが少し怖い。
ボクと話して彼はどう感じたのかを表情とかから予想して、ボクへの好意がないことを再確認する。それによってボクの恋心を無理やり消そうとする。
それが、いつものルーティンだった。
「狭い部屋」
家の出費を減らす為、私は住み慣れた公団を引っ越した。 世間的には高物件。
だけど母子2人では重荷になった。
母は施設、私は狭い部屋に引っ越した。
今まで住んでいた部屋は親のもの。
私は単なる居候、扶養者。
今までやりたい事はやれなかった。
基本的に親は何も言ってこない。それでも、変わったことをしたら、何か言われるのがとても嫌だった。 それが例え、好奇心で聞かれてもだ。
広い部屋はなくなった、昔のものはなくなった。 必要なものしかなくなった。
でも私は自由になった気がする。
何十年も一緒にいた母はいない。
少し寂しい。けど、この開放感は忘れない。
狭くて広い私だけの家。
「狭い部屋」
お金はあまり無い。
家族もいない、友達、心から愛する存在もいない。
孤独死確定。
ならば、せめてこの狭い部屋の中で、好きな物に囲まれて楽しい思い出を、思い出しながら死んで逝きたい。
現実現在で、叶えられそうで少し無理がある、
わたしの小さな野望。
テーマ・狭い部屋
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狭い部屋と言われると、とても身近な物が一つあった。
それは今まさにこうして住んでる私の部屋だ。
たったの1Kしかない中に家具や日用品、生活用品等が、びっしりと置かれているのですごく狭いのである。
色々レイアウトを変えてみたりはしている物の、それでも歩いてる時によくぶつかったり、物を増やしたりした時に新しい置き場所が決まらずに困ったりしているので、いずれはもっと広くて余裕のある部屋に引越したいけれど、生憎現在の私は現状で手一杯でそんなお金も余裕もないので、急に石油王の友達でも出来ない限りは叶わぬ夢である。
『狭い部屋』
独り...
真っ暗で、カーテンも締め切り
灯りは一切入らない
勿論僕の呼ぶ声も聞こえない
いや、僕が喋ってないだけ
狭い部屋も案外悪くは無いと思っている
#40