「相変わらず足の踏み場も無いなぁ」
「崩すなよ」
「分かってるって。こっちは本格推理、こっちはファンタジー、この山はノンフィクション。ちゃんと決まってるんだよな」
「分かってるならいい」
「で、誕生日なのに祝ってくれる友達が僕しかいない君の為に持ってきたピザとチューハイはどこ置きゃいい?」
「ん」
「あははっ、テーブルあったんだ」
「まぁ、一応」
「充分だよ、さ、ハッピーバースデー!」
◆◆◆
「·····孤独死、というのかな、これは」
「でもあまり悲壮な感じはしませんね」
「この狭い中にこれだけ本があるんだからなぁ」
「お、ピザの空き箱。一人で食ってたのかな? にしては量が多いな」
「レシートがありますね。孤独死と言っても不審なところは無いのかな。交友関係も意外と分かりやすいかもしれないですね」
「·····こないだのホトケの方がよっぽど孤独に見えたな」
「ああ。タワマンで死んでた男ですね。何にも無い部屋で寒々としてたなぁ」
「本や映像は全部PCに入ってたからな。この部屋とは真逆だ」
「あっちは広い部屋でしたもんね」
「·····どっちがいい、とかじゃないんだろうけどな」
老刑事のその呟きには、微かな哀愁が漂っていた。
END
「狭い部屋」
6/4/2024, 4:25:40 PM