黒山 治郎

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扉の外にがちりと付けられた錠前が
閉じられているとは知りたくなかったから
こちらから見えないことは幸いだった

狭い牢獄は私次第で城となり
窓の外に関心さえ向かなければ
大抵の事は幸せなのだと思えていた

朝月夜を背景に飛ぶ鳥が朝を告げ
吹き込む風が香りという便りを置いてゆき
夕暮れという友が部屋の中を駆け抜け
灯りを混ぜ過ぎた夜の帳も下りた頃には
星達も空に敷かれた布団に潜り隠れんぼ
手元の薄い毛布でも夢は暖かく鮮やかで

ある物だけを数えれば
食うにも困らず
雨風にも晒されず
袖を通せる衣服がある

なんと贅沢で幸せな事だろう
いつかは覚めると知っているから
私の城は豊かなのだと安心出来るのだ。

願いは一つ、目が覚めない事に違いない。

                  ー 狭い部屋 ー

6/4/2024, 5:24:43 PM