冬野さざんか

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 立ち上がって大股で三歩くと壁に触れられる。普通の歩幅だと六歩くらい。触れた壁に背を預けてずるずると身体をずり落とし、床にぺたりと座り込んだ。真正面の窓からは夜の空と街灯のあかり。月は見えない。
 電気を消した部屋の中は薄暗いけれど、何がどこにあるか、全てを知っているから別にそれでも良かった。だってほんの数歩で全てに触れられるのだから。なぜなら、ここは私の、私だけのお城で、私だけの宝箱なのだ。

「狭い部屋」

6/4/2024, 4:18:06 PM