『海へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あの夏の日、私はとても傷ついて家を飛び出した。
どこへ行けばいいかもわからなくて、ふと海を見に行こうと思いつき、西に向かう電車に乗った。
2時間ほどかけてたどり着いた白い砂浜は幸せそうな家族連れで溢れていた。
明るい日差し、輝く海、爽やかな空気。
そんな中ひとり歩く私は孤独だった。
なぜ私を傷つけるの?
こんなに大切に思っているのに。
こんなにつらいと思い知らせたい。
私がいないことで困らせたい。
でも帰る場所は家しかない。
ここに居場所はない。
夕方まで歩き回り、私はまた電車に乗って家に向かった。
あたりが暗くなった頃、ドアを開けると叱られた少年のようなあの人がいた。
結局私は許してしまうんだ。
傷口が疼くのに気づかないふりをして。
今でも、砂浜の光景を見ると心の奥がチクリと痛む。
きっとおばあさんになるまで、癒えることはないでしょう。
あなたはそれを忘れているだろうけれど。
(海へ)
「海へ」
子どもの頃に一度だけ
覚えているのは
鈍色空と濁った波
払っても顔に張り付く髪
弾んでいた太陽は
みぞおちから胃の底へ
真っ逆さまに落ちてった
あのとき抱いた感情は
あの景色のせいにして
あのとき飲み込んだ太陽は
今もここで燻っている
潮水に
佇む姿が
目に映る
笑う君の眼
輝いていて
「海へ」
海へ連なる川を辿って、用もないのに海へ行く。
きれいな川ってわけでもないけど、魚が跳ねて、水母も浮かんで、油断してると大きな鷺が羽を休めていたりする。
てくてく歩いて行って、やがて海が現れると、ああ海だぁ……ってやっぱり思う。
川幅というものがすこーんと無くなって、突如、空虚になるくらいの広がりに不覚にも圧倒され…
ごみごみした街の果てに、淀んだ川から来た人を、裏切るようにひろがる青に、圧倒され…
別に何の用もなくやって来て、ぼーっとして、
そして川へ戻る道を折り返して帰る。
港町名物の、お弁当とお菓子を買って、
いかにもその為に来たんですよ。という顔をして帰って、海へのお散歩、終わり。
ヒトという生き物はとても弱いから、“いま”から逃避行動をとってしまうことがままある。所謂、現実逃避と呼称されるそれである。空想、過去、まだ見ぬ未来――脳みそは妙なところで器用さを発揮するから、逃げ場の行く先は枚挙に遑がない。
たとえば、彼女は過去への逃避が多かった。つらい時、いっそ死んでしまいたくなった時。そんな時、しあわせな思い出が、大切な思い入れがある場所へと行きたがるのが常だった。
「波の音が好きなの。すべてが洗い流されそうで」
さざなみに呑み込まれそうなささやかな声で。
「潮の香りが好きなの。このままひとつになれそうで」
そよ風に攫われそうな、頼り無い足取りで。
「海を見るのが好きなの。どこまでも、行けそうで」
見つめていないと、今にも消えてしまいそうな儚げなひとみで。
「ねえ。――聞こえているんでしょ」
責めるような、泣いているような、――まるで、縋るような。そんな響きをもった言葉が、彼女の唇から零れ落ちた。思わず聞こえているよ、と返そうとして、嗚呼、返すための口は存在していなかったな、と思い出す。目も、鼻も、口も、手も足も、何もかも。――ぼくには存在しなかった。
ある思い出がある。あなたと、海に行った。彼は、夏生まれだから海が好きなんだと言って、頑是ないこどものようにはしゃいでいた。
追いかけては逃げる波に頬を紅潮させ、嗅ぎなれない香りに鼻をひくつかせ、その目に大海を映してひとみを煌めかせていた。
いつの日かの思い出。とても、本当にとても大切な、かけがえない記憶。色褪せてしまうことが、消えてしまうことが怖くて、気付けば足は海へ行く。そこに行けば、あのときのあなたに逢えると知っているから。
(ねえ。もう、忘れていいよ)
あいも変わらず彼女は海の一部のように、ただ、音を聞き、風に揺られ、ジッと波間を見つめている。
(ねえ。見えてないんでしょ)
存在を確信している様子で、でも、こちらは見ないきみを、ぼくはただ見ている。
(ねえ。――聞こえていないくせに)
もう交わらないとわかっているのに。もう存在しないからだなのに。全身で現実を受け止めさせられて、じわり、寂しさが心を襲う。
どうか、いまを、生きていてほしい。ささやかな願いを、届かない声で懸命に叫んだ。きっと今日も、届かない。変わらずぼくは、今日も此処で揺蕩い、そして、彼女は。
――海へ。
テーマ「海へ」
その日、私は無性に海に行きたかった。失恋したからとか、やなことかあったとか、親と喧嘩したとか。そんな理由はないけど、でも海に行きたかった。大きな道からだんだん細くなる路地を進む。だんだんと波の音が聞こえ始める。やたら生臭い匂いが濃くなっていく。近くなるたびに、足早になる。もうすぐ、もうすぐだ。今日も来てしまったと思いながらも、その景色はたしかに素晴らしかった。今日も私は、海へ。
お元気ですか。
この海をずっと行けばあなたに会えますか。
(あなたの住む街には海があるって聞きました)
題・海へ
"海へ"
彼の運転で海を目指す。
窓を全開にし、風を浴びて自然を感じる。
そして、海に入り、彼とはしゃぐ。
ほら、思い出がまたひとつ増えた。
何もかも捨ててきた。
言葉通りなにもかも。
自分の買った物も、お金も、友達も、信頼も、何もかも。もう今の自分には何も無い。
言葉通りなにもかも。
こんなにもシリアスな雰囲気でこの場所へ来たらする事はただ1つ。これは決して逃げじゃない。これは新しく生まれ変わる為の手段と言ってくれ。
さようなら。自分の全て。
『海へ』
#海へ
海のない街に来て
どれくらい経っただろう
ガラスとコンクリートに囲まれた
無機質でエキセントリックな世界を
泳いで泳いで…
ひとの波に飲まれて流されて
何処へ辿り着くと言うのだろう
ただ見つめるだけで
ただ潮騒に耳を傾けてるだけで
心が満たされてたあの頃
鄙びた街が息苦しくて逃げ出したのに
海へ 海へ帰ろう
病んだ心が叫んでる
いつも私の中にある
懐かしい海へ
悲しみも憎しみも涙に変えて
あの波に流してしまおう
君の目から溢れ出る宝石は、集めても集めても君の心をもとに戻すには足りなかった。
「私ね、明日この世から消えてなくなっちゃうの」
いつもと変わらないトーンでそう告げる君が本当に明日いなくなってしまうのか、それを一番わかってるのは僕なのか君なのか。
きっと、君なんだろうな
「ねぇ、明日海に行こう」
わけがわからない、「なんで君は嫌いな海で消え…」そう聞こうとするも束の間
「だって遥斗、明日誕生日でしょ?」
やっぱり、君が明日いなくなるのを一番わかってるのは僕かも知れない。
まぁいい、とりあえず明日、僕は君と海へ。
君が最期に選んでくれた、海へ。
僕の大好きな、海へ。
#海へ
【海へ】
我々はどこから来たのか
我々は何者か
我々はどこへ行くのか
原始の海で発生した単細胞生物が進化して生き物になっていった。
そして海水と羊水はとても似ているという。
冒頭に書いたゴーギャンの問いかけに思いを馳せる。
我々は海から来た。
我々は地球のこども。
そしてきっと、いつか宇宙に還る。
海は母親
地球上のすべてのいきものの厳しくも優しい豊かな母。
懐かしいのは、いつか還る海の約束。
「……服をを裏返しに着て、何してんの?」
「返事がない、ただのシカバネのようだ」
「はあ!?」
「……着物を裏返しに着るのは死人だ、っていう迷信知らない? 今は死にたい気分なんだけど、自殺するわけにも行かないから、気分だけでも死体になろうと思いまして。ジェネリック死体」
「ジェネリックよりは、インスタントじゃない? どうせ着物を用意するのも面倒だから、着の身着の儘のその服を裏返しにしたんでしょ?」
「んじゃあ、それで。これから私はインスタント死体です。
死体だから、私は死んでます。死んだ気持ちを十分堪能します」
「あいよー。
……でもさあ、本当の死体になんないだけ、自殺しないだけで、偉いよ」
「……」
「…………」
「……………………」
「…………………………………………ありがと」
海へ。
海へ
2人で行きたいなぁ。
近くにあるのに
しばらく行ってない。
沖縄もハワイも
また行きたい。
何十年も使ってた時計が壊れた。
星空と三日月を映した
夜の海の絵が描いてあるオシャレな時計。
最初は5分ズレただけだったけど、
20分、50分、と、
だんだん時計の意味が無くなってきた。
それでもこの時計を使い続けるのは、
この絵が好きだから。
ほぼ絵画みたいなもんだな。
でも、
そこらの絵とは何か違うんだ。
絵を見てると、
真夜中、突然海に行きたくなる。
海は家から近いけど、
田舎だから街灯が少なく
夜道は暗くて怖い。
でも海に行きたくてしょうがないんだ。
さっさと寝たらいいんじゃない?って思うでしょ?
私よふかし大好きで、
海に行きたくなる前まで、
ずっと朝方まで起きてたから
そんな簡単に寝れないの。
今日ついに
抑えきれなくなっちゃって、
でも怖くて、
時計を持って海へ行った。
思わず声が出ちゃうくらい
綺麗だった。
時計の絵と同じ、
星空と三日月を映した海が、
時計でしか見れないと思っていた景色が、
目の前に広がってた。
現実とはかけ離れた、
非現実。
今この瞬間の気持ちを
ずっと忘れないでいたいと思った。
こんな真夜中には
この言葉が1番だと思って、
私が大好きな漫画の一言を
口にしてみた。
"Good Midnight!"
少し恥ずかしくなって、
塩の混じった空気を
肺いっぱいに吸った。
海へ
寄せる波にヒトリゴト
サンダルの爪先が
濡れないように
ひとり砂浜を歩く
オモイデなら
涙ごと引き潮に乗せて
遠くへさらっていって
夕焼けと海へ
深く沈んでいって
『俺、好きな人がいるんだ』
『へえ、意外。私の知ってる人? 』
深夜。私はリビングでゴロゴロしながら、隣に座る男の友人と話していた。
私も彼も視線はテレビにあるが、少なくとも私は眠気と中途半端な怠さがあって内容が頭に入らず、隣から聞こえる彼の声がするりと入ってきた。
『ああ、知ってる』
『マジか』
『おう、マジ』
身体を起こして、彼を見る。
そして片っ端から名前を言うけれど、どれも表情を変えずに『違う』と否定された。
『……他にいたかな、あんたが好きになりそうな人』
頭が働いていない。もしこれを聞くのが昼だったのなら、もう少し名前が出てきていたのだろうか。
『告白してみようかなって思ってんだ』
『……マジか』
『おう、マジ』
余計に気になってきた。一体、誰のことなんだろう。
『んー……わかんない、ヒントは──』
それでもやっぱり分からなくて、そう言った時に彼は耳元で囁いた。
『お前にだよ、海』
「海へ」
もう一度、海へ行きたい。
学生の頃の思い出が懐かしい。
暑い日だったのに、海の水はひんやりと冷たくて、
潜れば、美しい世界が広がっていた。
限られた時間の中でしか味わえないものを
楽しむことができたのが、あの頃の好きなところだった。
就職してからは毎日が忙しく、休日は寝て過ごすことが多かったけれど、
今年の夏は少し時間ができそうだから、また海に行こうかな。
※海へ
点滴に繋がれた今、行けないんだがな
多分3日位外出系は無理なのだがー
根性出せば海へだって夢で行けるはずー?(多分)
海。よく思い出せ。
…マイパパのエピソードが強すぎて思いつかんのじゃ!
離岸流に乗って何処までも遠出したら
一晩帰って来れなかったな〜って、本人的笑い話
大学生の時、通学路に海があった
見える時間はほんの数分であったが
爽やかな、けれども深い青をしたその物質に
私は強烈に目を惹かれ、その時だけは黒い板から目を離す
子どもも、老人も、はたまた仕事中のサラリーマンも
その一時だけはみな各々の時間を置いて
意識を向ける
空を映し出す鏡へ
ひとつの海へ