無名

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あの夏の日、私はとても傷ついて家を飛び出した。
どこへ行けばいいかもわからなくて、ふと海を見に行こうと思いつき、西に向かう電車に乗った。

2時間ほどかけてたどり着いた白い砂浜は幸せそうな家族連れで溢れていた。
明るい日差し、輝く海、爽やかな空気。
そんな中ひとり歩く私は孤独だった。

なぜ私を傷つけるの?
こんなに大切に思っているのに。
こんなにつらいと思い知らせたい。
私がいないことで困らせたい。

でも帰る場所は家しかない。
ここに居場所はない。

夕方まで歩き回り、私はまた電車に乗って家に向かった。
あたりが暗くなった頃、ドアを開けると叱られた少年のようなあの人がいた。

結局私は許してしまうんだ。
傷口が疼くのに気づかないふりをして。

今でも、砂浜の光景を見ると心の奥がチクリと痛む。
きっとおばあさんになるまで、癒えることはないでしょう。
あなたはそれを忘れているだろうけれど。

(海へ)

8/23/2024, 10:58:23 AM