『泣かないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
生きたくない。死にたくもない。ただ何もせずに幸せになりたい。泣きたい。だけどそれは世間が許さない。だから、泣かないで。
泣いてはいけません。なぜなら、人生は短く不幸でいる時間などないからです。
キラキラと透明度の高い煌めきを放つ雫を1つ、また1つとこぼしながら、ニコリと笑みを讃えるあどけない顔。俺は完全にテンパったまま、
「あ、あのさ、……泣かないで。ね?」
と何度目かの同じセリフを繰り出した。それに対する返事もまた同じ。
「はい。泣いてません。大丈夫です!」
……いや、めっちゃ泣いてるけど……。指先で頬を払っても、次から次と一定の間隔で雫が落ちてくる。
ヤバい……。
何がヤバいって、もちろん人目もそうだけど、それ以上に……胸が鷲掴みにされたような感覚がして……これはヤバい。
「伝えられたので、満足です。聞いてくれて、ありがとうございました」
行儀よくペコリとお辞儀をした彼女は、上げた顔で一際強い笑みを作り、えへへ、と字幕がつきそうな声を発した。
自慢じゃないけど、告られることはそんなに珍しいことじゃない。だけど、いろんなパターンを経験してきた中でも、これは、……クる。
「こっちこそありがとう」
そんな俺の定型文的な返しに力強く頷き、彼女は笑顔を崩さないまま回れ右をして走り去っていった。微かに残る、爽やかな香り。柔軟剤かなにかだろうか。特段変わった香りでもないのに、俺は惜しむように胸一杯の深呼吸をした。
彼女がいるんだ。
その一言で突っぱねてしまえば後腐れなく終わる、いつもの流れのはずが、……ヤバいな。コロコロと高く響くような声も可愛かったし、緊張をやり過ごすためにぎこちなく前髪や頬に触れる仕草も可愛かった。それに、なにより、涙に濡れた笑顔が……。隣を向いて、あの笑顔が俺を見上げていたら、どんなに可愛いかなと想像すると、ひたすらに惜しい。
裏切るつもりはないけどさ。デミソースのハンバーグもトマトソースのハンバーグも両方好きなのは悪いことじゃないのに、なんで彼女は1人って決まってんだろうな。
浮気してお母さんに引っ叩かれたお父さんを思い出す。死ぬほど謝ってたお父さんを軽蔑してたけど、……あぁ、お母さんごめん。俺、なんかちょっとわかっちゃったかも。
フワフワする足を校舎に向ける。しばらく歩くと、2階の窓に見慣れた顔を見つけた。まだ俺に気づいてないらしい彼女を見上げながら、さっきの彼女を思い出す。
もし、今の彼女と別れてさっきの彼女と付き合い始めたら……
お互いを知っていって、距離を縮めていって、途中にはいろんな誤解や嫉妬があったりして、そうして1つ1つの感情を積み重ねていくんだろう。甘い胸の痺れとか、苦しい痛みとか、もう知っていることをまた最初から味わい直してさ。それはきっと楽しいことに違いない。
彼女の真下辺りで足を止める。あまりに気づかれないことに苦笑いが込み上げ、やがて俺は、
「おい!」
と声をかけた。窓枠に乗せた両腕に顎を乗せる形で俺を見下ろす彼女。
……
しばらく見つめ合った後、俺は1番近くの入口から校舎に足を踏み入れ、そのまま階段を駆け上った。そして、窓の外を見つめたままの彼女の隣に並んだ。
「……泣かないで」
俺がそっと頭を撫でると、それが合図みたいに彼女は腕に顔を押し当てて肩を震わせた。
「断ったよ。安心して」
俺の言葉に、ふるふると首を振る彼女。
「ちょっと悩んだでしょ」
こわ、と鳥肌を立てながら、即座に否定する。それをまた否定されるという不毛なやりとりを続けながら、俺は彼女と過ごしてきた時間を思い返していた。積み重ねられてきた1つ1つ。そうして少しずつ強固なものになっていった、2人の絆。大事にしたいって思ってる気持ちに嘘はない。簡単にハンバーグなんかと同列に語ることはできないんだ。
お父さん、やっぱりあなたは間違ってました。
「泣かないで」
何度でも言おう。彼女が笑ってくれるなら。こうして2人の絆は少しずつまた強くなっていくはずだから。
《泣かないで》
泣かないで
胸の中にある
苦しみの炎の世界
君が住む場所はそこだけじゃない
痛みがまるで取り立て屋みたいに
時を遡って追いかけてくる
無数の手が体や精神を絡めて離さない
もがいてもがいて逃げても
また影を出したら現れてくる
今日明日明後日も
でも、考えてごらん
ゆっくりと焦らずに
小さい君の忘れもの
最初に座っていた椅子に
置いてきたことはないかい?
忘れたことを恥ずかしがること
何ひとつないよ
火から守る為に作った壁は
どうやら閉じ込めるだけで
苦しみを与えるだけだったんだ
見てごらん壁の隙間
燃え上がる火の中から
見上げた空を
視点をずらせば
角度を変えて見てみよう
君はひとりじやないよ
僕がついているし
その伸ばす手を掴んで
引き上げる準備は
もう用意してある
泣かないで何ひとつ
君は何も悪くはない
なんも悪くはないんだよ
泣かないで
苦しみから逃れられるし
君ならできるさ
泣かないで
そこばかりが君の人生の
全てじゃないよ
世界はそこだけじゃない
無限にあるんだよ
だから泣かないで
泣かなくていいんだよ
君は何も悪くない
笑ったっていいんだよ
怒ったっていいんだよ
壁なんか壊してもいいんだよ
君に取り纏う手なんか
相手にしなくてもいいんだよ
だから泣かないで
僕は君のこと神様にお願いするから
君の心に幸あれ
人生に福あれと
君はひとりじやないよ
僕はいつでも君の味方だよ
だから泣かないで
泣かなくていいんだよ
だから安心して
安心していいんだよ
目を潤ませ髪を涙で濡らす主様。
辛かったんですよね。孤独だったんですよね。
何もかもくすんで見えたんですよね。
そんなに辛くても、なんで自分が辛いかわからなかったんですよね。
私の言葉は通じない。
だから、寄り添うことしかできない。誰にも気付かれず、独りで苦しむ主様に。
「泣いてはいけないよ。たくみ。余計辛くなる。」
主様は自分自身に泣いてはいけないと言い聞かせている。けど、主様が辛いという事実は変わりやしない。私は寄り添うことしか出来ないけれど、泣いてもいいんですよ。主様。
夕方、とある空き地にひとりと一匹の影が映る。
【泣かないで】
取扱説明書
本商品をご購入いただき、ありがとうございます。
使用するにあたって、必ずこちらを読んでください。
よく泣きます。その際、十分に注意して接してあげてください。
背中をさすってあげてください。
顔は見ないであげてください。恥ずかしがります。
「大丈夫」と何度か言ってあげてください。
「一人がいい」と言われた場合、話しかけないでその場から離れてください。それから、
決して、「泣かないで」とは言わないでください。
泣きたくなくても涙が勝手に出てくるんです。
感情を殺したくないだけ。いつも笑顔でいられたら、どんなに良いかくらい分かってます。
先述した通り、一人でいたい場合がございますが、
心の内ではあなたのそばにいたいんです。
以上になります。
あとは、楽しく私と暮らしていただければ幸いです。
それってちょっと身勝手かもしれない。
「泣かないで」って思うのは、あくまでその人に
悲しんで欲しくないっていう私のワガママで。
だって泣きたい時ってあるし、
理不尽だとか捻れるような心の痛みってしんどいし。
きみがその全部を抱えて無理に耐えてるほうがさ、
私はイヤかもしれないな。
偉いです、泣くのを我慢するのって。
周りに迷惑や心配をかけないように。あと何より自分が
崩れちゃわないように。そういう心の現れ。
でもさ、
たとえ泣いてしまったからといって、それは決して
責められるようなことじゃない気がするね。
苦しいとか痛いとか辛いとかしんどいって感じるのは、
まだ自分のこと大事にできてるからだ。
溢れてしまうのは弱さですか。
それも肯定したいと思うのは甘えですか。
少なくとも、こうやって色々考えて対応を模索する
私は、誰より何より潔癖症。・・・いや違う。臆病ですね
だってこれ全部、
私が泣くための言い訳。
#38 泣かないで
No.190『泣かないで』
泣かないで、なんてあなたを泣かせている原因の私が言えることじゃない。
私だって泣きたい。
っ私はあなたを傷つけるために一緒にいたわけじゃないのに……!!
あなたと幸せになりたかったからあなたの手を取ったのに……。
どうしてこうなっちゃったんだろう。
ごめんね、ごめんなさい、こんな言葉だってもう届かない。
あなたといたい。
でもあなたがこっちに来ることは望まない。
ねえ、だから数十年後の未来でまた会いましょう──?
「泣かないで」
と言わせてしまった自分が
悲しい
困ったように
一瞬目を逸らしたあなたを
見逃さなかった
終わらせようと
静かに思った
『泣かないで』
「アンタ、背中が煤けてるぜ」
そんな台詞を昔なにかの漫画で読んだ。
背中で語れとか、背中を見て育つとか、背中を丸めるだとか。
顔も見えない後ろ姿に、我々は勝手に相手の感情を読もうとする。
こんなことをつらつら考えるのは、今まさに目の前で、背中で泣いている人がいるからだ。
本当に泣いている。
それはもうぐっしょりと、スーツの色が変わるまでたっぷり水分が出ている。
これは……汗か?
いやでも涙は心の汗って言うし、と混乱していたら嗚咽が聞こえたので、涙で間違いないだろう。
え、でも涙なら涙でどこから出ているの?背中全体?涙腺の量ものすごくない?逆に汗が目から出るとか?塩気で目痛くならない?
OK、一旦落ち着こう。
何があったか知らないが、ここで会ったも何かの縁。
とりあえず、声をかけてみるか。
放って置くにはちょっとアレだし。
このままでは全身びしょ濡れになる。
−−−−
『冬のはじまり』
オオシダをくぐり抜けて、樫の切り株にエッチラホッチラよじ登る。
すぐにホオジロが遊びに来たので、鞄の中から取り出したクコの実をひとつ分けてやった。
私が両手で抱える真っ赤な実も、ホオジロにとっては一口で食べ終えてしまう。
大食いだなぁと笑えば、心外だとでも言うようにピッピチュピーチューと鳴き声を上げた。
今年は夏が長かった。
年々、暑さが厳しくなっている。
昔は冬の寒さが厳しいとよく言ったものだけど、こんなにも暑さに喘ぐようになるとは思わなかった。
それでも季節はめぐるのだなぁと、葉が色づいた木々を眺める。
もうすぐこれらの葉も落ちて、私の背よりも高い霜柱が立つのだろう。夜の冷え込みもつらくなってきたところだ。
今年もまた、仲良しのリスのねぐらで冬を越す。
手土産の木の実を少し多めに拾い集めるか、と立ち上がった。
−−−−
『終わらせないで』
『ポケットに石を詰めて重りにする方法』
『流し台でバルビツール鎮静剤を作るには』
『死体安置所(モルグ)と死体搬送車(ミートワゴン)』
毎回無言で差し出される本のタイトルが、次第に不穏になってきた。
少し前までは、ミステリーの本ばかりだったのに。
だが、そんなことはおくびにも出さずに貸し出しの手続きをする。
利用者がどんな本を借りようが、詮索してはいけない。
そもそもレファレンスにかけられるもの以外で、利用者の読書履歴に注目することはプライバシーの侵害である。
所蔵されている本は、国民の知的財産であり、行政サービスとしてその知識を得ることを阻害されるようなことがあってはならない。
――の、だが。
『すべてを終わりにする方法』
いつも複数冊借りていくのに、今日はこの一冊だけ。
勘違いの類ならいい。
口を挟むことで、プライバシーの侵害だと怒られるかもしれない。
緊張と不安で渇いた喉を鳴らし、初めてその人に声をかけるべく、口を開いた。
泣かないで
雨は神様の涙である、という話を聞いた。
神様じゃなくて龍だったか、雲だったか?まぁそこは重要じゃない。とにかく空の上のなにかが泣いたとき、雨が降るという話だ。非常によくある話だと思う。
とある帰り道、例の神様が突然大泣きし始めた。傘は持っていない。さっきまで晴れていたのに不思議なものだ。
虹は出るだろうかと呑気に考え、荷物が濡れたら大変だと深刻に考え、雨宿りしようと現実的に考える。近くのファミレスに入り、窓際の席で適当な軽食を注文した。
雨が涙なのだとしたら。その神様だか龍だかは、ちょっとばかし情緒不安定すぎやしないだろうか。こっちの気も知らずに晴れたり降ったり忙しいやつめ。しかし泣いているには変わりないので、可哀想なやつなのかもしれない。
雨といえば梅雨の時期。あれはなんなのだろう。神様がしょっちゅう泣いてしまう季節。病んでいるのだろうか。きっと就活中か何かに違いない。私だって思い出したくない。
それか赤ちゃんの大泣き。ちょうど梅雨のあたり、1年につき1人の神様が生まれて代替わりする。よく泣く子供時代が丁度梅雨のあたりなのでは?次の梅雨までにどのくらい大きくなるのだろう。
注文した軽食を頬張る。美味い。思わず表情が緩む。自分が神様なら今晴れたな、などと考える。窓の外は小雨になってきていた。食べ終わって幸せになった頃には、ほぼ止んでいた。
こんなにすぐ雨が止むなんて!私は神様だったのか?否。ゲリラ豪雨とは急に降ってすぐに止むものである。
残念なことに虹は見えなかったが、濡れずに帰路につけたので良しとしよう。まったく、もう泣かないでよ、なんて空に呟いてみる。
もちろんあれはただの御伽噺なので、話しかけたって何も起こらないのは至極当然。頭上にはいつも通りの無反応な空が、いつも通り広がっているだけだった。
涙を流す姿さえ
私の心を掴んで離さないから
これ以上、あなたの虜にさせないで
“泣かないで”
恩師が亡くなった。亡くなる少し前に、ハガキを貰った。私のことを心配してくれていた。実は、それまでそれほど親しくなかったので、先生は忙しい人だから、私のことなど考えていないだろうと思っていた。わたしは、そのハガキを見て、先生が言う通りにしっかりしないとと思い、返事を書いた。しばらくして、訃報が届いた。本当に悲しかった。先生のハガキにかかれていたことは見なくても覚えている。ありがとうございました。
「泣いてる?」
返事はない。
「どうしたの?」
「別に」
消えそうなほど小さい声でそういう。
「静かだね」
辺りを見渡す。
今日は朝から雨が降っていた。
僕は友達の隣に少し間を開けて座った。
隣からは、本当に小さな、耳を澄まさないと聞こえないほど小さなすすり泣く声が聞こえてきた。
「大丈夫?」
僕の問いかけに小さく頷く。
雨の音がやけに大きく聞こえた。
何と無く友達の頭を撫でてみた。
「やめろ」
はっきり聞こえた友達の声。
「そんなに嫌?」
少し笑って聞いてみる。
返事はない。
ポケットの中を探った。
今日は持っていたはず…。
「あった」
思わず声に出してしまう。
ズボンの中とは違う布の感触。
それを勢いよく引っ張り出した。
「はい、ハンカチ」
「いらない」
「え?」
友達は自分の服で涙を拭っていた。
「もういいの?大丈夫?」
「大丈夫っていっただろ」
「なんで泣いてたの?」
「泣いてない」
そう言って笑う。
綺麗だった。
「心配してくれてありがとう」
走っていく後ろ姿を見ながら、僕の心臓が雨の音よりも大きく聞こえた。
やっぱり、あの笑顔は特別だ。
ー泣かないでー
「泣かないでください、ここで泣かないでどうするの、泣かない-でも哀しい。
ある程度の変化球は書けそうだけど、ぶっちゃけそこまで、キレイな感情を美しく書けねぇのよ」
だって、俺のオハコ、食い物ネタだぜ。食い物でどう涙を書けって? 某所在住物書きはカップうどんをすすりながら、味変したくて七味を少々。
喉の痛いところに引っ付いた。落涙。
「玉ねぎで『泣かないで』は、書けそう」
いつかそれで投稿するか。物書きは呟く。
予定は未定。しかしメモしておけば、忘れない。
――――――
前々回から続く一連のフィクションファンタジー。
「ここ」ではないどこか、世界を繋いだり保護したり、あるいは監視したり、警察のような博物館のような業務もおこなう、不思議な組織のおはなし。
そこは「世界線管理局」といい、ワールドワイドどころか幾百・幾千の異世界と渡り合う巨大組織。
滅びた世界の財宝、滅ぼされた世界の最終兵器、滅びに向かっている世界から回収した情報資源等々も、多数収容・保全管理されている。
盗み取ろうと忍び込むネズミは多い。
今回のお題回収役は特に、管理局が持つ情報と資金を狙って、数十人の精鋭を集めて潜り込んだ。
管理局内の各課に散らばって架空の伝票をはじき、
少額ずつ、しかしチリツモ方式ですみやかに、管理局から巨額の経費を吸い取る。
お題回収役の「彼」は、経理部担当である。
ところで最近泥棒仲間が「管理局員からハウスみかんを貰った/それを食った」という連絡を最後にパッタリ姿を消す事例が急増している。
「彼」も――ギ・S・シャサンも、経理部の「先輩」からハウスみかんを受け取った。
美味そうだ。 皮をむく。果肉をかじる。
甘酸っぱい幸福なジュースがくちのなかにひろがり
それは とても かぐわしく
――…「よぅ。お目覚めかい。いよかん」
パン! シャサンの目の前で、ねこだましの拍手。
一瞬で意識が戻ってきたシャサンは、自分が経理部ブースのコタツに座っている事実を認識した。
「ハウスみかん、美味かっただろう。アレはイチバンの一級品さ。数年に1個の逸品だ」
目の前でニャーニャー鳴いているのは「万年コタツムリ」の若い女性。ビジネスネームをスフィンクスといった――無毛の寒がり猫が由来だろう。
「取り敢えず、聞きてぇことが山程あるんだ。この俺様と、なぞなぞ大会でもしてくれよ」
にゃーにゃー。スフィンクスは言った。
「なぁ。いよかん」
相変わらずシャサンを、いよかんと呼んでいる。
「要するにオチが『そういうこと』」である。
シャサンもすぐ、「その可能性」に勘付いた。
いやまさか。そんな非科学的な。非人道的な。
世界線管理局は世界の円滑な運行と平和と、治安の維持をつかさどる正義のヒーローだろう?
「あ?正義のヒーロー?イイなソレ」
スポン、スポン。 スフィンクスがコタツに手を入れ、何かのボタンを押すたび、コタツの上の網カゴにみかんが増える、増える。スポン。
「次の『ソシャゲ版』で、ヒーロー・ヒロインコスガチャの実装でも、広報課に掛け合ってみるか」
スフィンクスが、ひとつ、みかんをつまむ。
「アイデアのお礼に、教えてやるよ。
アンタに食わせたハウスみかん、とぉーっても、美しい魂だったぜ。管理局から資金チューチューしようとしてたネズミのわりにな。
最後まで崇高だったよ。『あいつには手を出すな』、『この命にかけても、あいつの潜伏場所は絶対に吐かない』。涙ぐましいね!俺様感動しちゃった。
つまり、あいつ、俺様の『なぞなぞ大会』には全問不正解っつーか、無回答だったってワケ。
美 味 か っ た だ ろ う ?
『セイ』ってミドルネームだった」
途端、シャサンはすべてを理解した。
シャサンが――ギ・セイ・シャサンが冒頭で食った「ハウスみかん」は、己の弟であったのだ。
そうだ。美味かった。甘酸っぱい幸福なジュースで、とても、かぐわしくて。
あっという間に食い尽くした。皮と筋は捨てた。
「ぁ、あ……」
あれが、つまり、ああ。コタツの上のみかんは。
「泣くなよ。なぁ。『泣かないで。ギ兄ちゃん』」
によろるん。スフィンクスが嗜虐に笑った。
「アンタもきっと、イイいよかんになるよ」
彼女の手には、ケーブルで繋がったコントローラー。みかんのイラストのボタンに指が置かれている。
「味は弟のハウスみかんの劣化版だろうけどな。
それとも、俺と『なぞなぞ大会』する?俺にアンタの情報、全部流してからにする?」
第1問。アンタらの親玉、だーれだ。
スフィンクスが笑う。指に力を入れる。ああ、押される、答えなければ、「押されてしまう」――
「そこまで!」
遠くから響く男声が、スフィンクスの指を止めた。
「それ以上の敵性組織の『消費』は許可しません。
スフィンクス査問官、その男を我々法務部に、即刻引き渡してください」
「法務部」。シャサンの緊張は一気に解けて、安堵と安心に涙が溢れ出した。
良かった。助かった。命だけは救われtn
スポン。
僕以外の人間の前で泣かないで。
僕以外に君の気持ちを動かす存在がいるなんて許さない。
泣かないで
そんな事誰が言った?
思いっきり
泣いていいんだよ
✴️227✴️泣かないで
「泣かないで。辛いよね。」
泣いている人に対してそうやって気持ちわかったフリをして。
何があったのか涙を流している人にしか結構は分からないはずなのに。
私はそうやって声をかけるよりそっと見守る方が泣いている人にとって嬉しいと思う。だから無理せず、思う存分泣きな。
泣かないで
「そんなに泣かないで…どうすればいいか分からないよ。」
…そんなこと言っている君だって泣いてるじゃないか。
「泣かないで」
アマゾンプライムにて、遅ればせながら葬送のフリーレンを見て、次は何を視聴しようかと関連作品を見たら魔法使いの嫁を見つけた
そういえば2期を見ていなかったなと思い出し、明日から見ることにした
今日がその日なのだが、月が変わったからなのか見れなくなっていた。遅ればせすぎてしまった、哀しい