「泣いてる?」
返事はない。
「どうしたの?」
「別に」
消えそうなほど小さい声でそういう。
「静かだね」
辺りを見渡す。
今日は朝から雨が降っていた。
僕は友達の隣に少し間を開けて座った。
隣からは、本当に小さな、耳を澄まさないと聞こえないほど小さなすすり泣く声が聞こえてきた。
「大丈夫?」
僕の問いかけに小さく頷く。
雨の音がやけに大きく聞こえた。
何と無く友達の頭を撫でてみた。
「やめろ」
はっきり聞こえた友達の声。
「そんなに嫌?」
少し笑って聞いてみる。
返事はない。
ポケットの中を探った。
今日は持っていたはず…。
「あった」
思わず声に出してしまう。
ズボンの中とは違う布の感触。
それを勢いよく引っ張り出した。
「はい、ハンカチ」
「いらない」
「え?」
友達は自分の服で涙を拭っていた。
「もういいの?大丈夫?」
「大丈夫っていっただろ」
「なんで泣いてたの?」
「泣いてない」
そう言って笑う。
綺麗だった。
「心配してくれてありがとう」
走っていく後ろ姿を見ながら、僕の心臓が雨の音よりも大きく聞こえた。
やっぱり、あの笑顔は特別だ。
ー泣かないでー
12/1/2024, 3:34:20 AM