泣かないで
雨は神様の涙である、という話を聞いた。
神様じゃなくて龍だったか、雲だったか?まぁそこは重要じゃない。とにかく空の上のなにかが泣いたとき、雨が降るという話だ。非常によくある話だと思う。
とある帰り道、例の神様が突然大泣きし始めた。傘は持っていない。さっきまで晴れていたのに不思議なものだ。
虹は出るだろうかと呑気に考え、荷物が濡れたら大変だと深刻に考え、雨宿りしようと現実的に考える。近くのファミレスに入り、窓際の席で適当な軽食を注文した。
雨が涙なのだとしたら。その神様だか龍だかは、ちょっとばかし情緒不安定すぎやしないだろうか。こっちの気も知らずに晴れたり降ったり忙しいやつめ。しかし泣いているには変わりないので、可哀想なやつなのかもしれない。
雨といえば梅雨の時期。あれはなんなのだろう。神様がしょっちゅう泣いてしまう季節。病んでいるのだろうか。きっと就活中か何かに違いない。私だって思い出したくない。
それか赤ちゃんの大泣き。ちょうど梅雨のあたり、1年につき1人の神様が生まれて代替わりする。よく泣く子供時代が丁度梅雨のあたりなのでは?次の梅雨までにどのくらい大きくなるのだろう。
注文した軽食を頬張る。美味い。思わず表情が緩む。自分が神様なら今晴れたな、などと考える。窓の外は小雨になってきていた。食べ終わって幸せになった頃には、ほぼ止んでいた。
こんなにすぐ雨が止むなんて!私は神様だったのか?否。ゲリラ豪雨とは急に降ってすぐに止むものである。
残念なことに虹は見えなかったが、濡れずに帰路につけたので良しとしよう。まったく、もう泣かないでよ、なんて空に呟いてみる。
もちろんあれはただの御伽噺なので、話しかけたって何も起こらないのは至極当然。頭上にはいつも通りの無反応な空が、いつも通り広がっているだけだった。
12/1/2024, 3:51:43 AM