Rara

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8/28/2024, 2:34:53 PM

突然の君の訪問。



いや、本当に突然すぎてびびった。何急に。今何時だと思ってんの?夜中だよ?外とか超暗いよ?何はともあれ、久しぶり。

…へぇ、家出ねぇ。君の家は厳しいっていつも言ってたもんね。夜中ぐらいしかチャンスはないか。そしてウチ以外に行くあてが無かったと。

普通さ、こんな時間にどこ行ったって追い返されるよ。まったく…まぁ、とりあえず上がりなよ。うちも親寝てるから静かにね。しーっ。

…あっ、そうだちょっと部屋片付け…まぁいいか。とりあえずここだけ寄せて…よし、ここ座っていいよ。ごめんね汚くて。なにしろ普段誰も遊びに来ないからさ…

まぁゆっくりしていけばいいよ。…親に秘密のこの感じ、ちょっと楽しいかも。

…なんでこの時間に起きてたのかって?うーん。君って口が堅いほう?そっか。家出の理由教えてくれたら教える。

ふんふん…思ったより重いね…なるほど。自分は…実は死のうと思って準備中だったんだよ。ほら、あそこにロープを結んであるし、遺書は書き途中。そこに運良く?運悪く?君が訪ねてきたわけだ。

自分はここから逃げたい。君はあそこから逃げたい。目的が一致している。そして自分は、君と遊ぶのが楽しい。

ねぇ、一緒にどっかに逃げて心中しない?

…賛成ありがとう。準備するからちょっと待ってて!

8/23/2024, 10:37:40 PM

海へ



海に来てみた。
季節外れすぎるからか、全然人がいない。

水平線が無限に広がっている。
厳密には無限じゃないんだろうけど。というか真っ直ぐすぎない?地球は丸いんだし水平線はカーブするべきでは?

水面が波立ち、白波が向かってくる。
穏やかだが、時折岩場の辺りが穏やかじゃない。あの岩に座ってなくてよかった…波ってどこから来るんだろう。

小さいカニが歩いている。
こっちに向かってくる。警戒心なさすぎる。食べちゃうぞ?食べないけどさ。かわいいなカニ…

海に来てみた。
明日も頑張ろう。

8/23/2024, 8:03:43 AM

裏返し



パンケーキを裏返す。
フライパンのフチに生地が残ってしまう。失敗。
美味しかった。

パンケーキを裏返す。
形が崩れてしまう。失敗。
美味しかった。

愛情をついつい裏返す。
伝わらなくて大失敗。
今更、笑顔の練習。

パンケーキを裏返す。
今日は運がいい。大成功。
でもちょっと焦げた。

短所を裏返す。
集中力がない→切り替えが早い。
そう言われても。

パンケーキを裏返す。
大成功、しかも美味しい。
天才的な出来栄えだ!

今までの失敗を裏返す。
成功、成功、成功。
幸せってなんだっけ。

8/21/2024, 1:57:16 PM

鳥のように



鳥みたいになれたらなぁ、と彼女が言う。
あんなふうに飛べたら楽しそうじゃない?

鳥になりたいの?と聞く。

なってみたいかも。…あっ、でも、虫食べるのは嫌かな。
どうせ飛ぶなら羽生えた人間がいいかも。

天使みたいだね、きっと綺麗だろうな…

もー、またまたぁー!と彼女は照れる。
…今思ったけど、果物食べる鳥ならいいんじゃない!?

ヒヨドリとかかな。

もし私がヒヨドリになったら、君の家のミカン食べに行くね。半分に切って置いといて。

そんな勝手に…

でもなぁ…鳥になるのは憧れだけど、やっぱり人間として君と一緒にいたいな。

ーーー

そんな会話を交わした彼女はもういないが、ヒヨドリを見る度にうっすらと思い出される。なんとなく、庭で採れるミカンを半分に切り、餌台に置いておく。

今は天使か、ヒヨドリか…きっと楽しく飛び回っているのだろう。

6/30/2024, 12:29:40 PM

赤い糸



運命の赤い糸、などと云う言葉があります。曰く、幸せに結ばれる男女の小指は、赤い糸で繋がれて居るのだと。それはよく出来た比喩表現で、そのような小説に使われるのを頻繁に見掛けます。

現実、赤い糸というものはそこに在りません。どのように思いつかれた比喩であるのか分かりません。しかし、とても美しい表現である事は間違いないのです。

もし赤い糸が実在するのであれば、私のそれは確実に彼女と結ばれていたでしょう。事実、私たちは運命の如く惹かれ合い、糸の如く結ばれ、共に在るのです。

しかし、御伽噺の様な幸せというものは、此処には在りません。互いに惹かれたのは、互い以外があまりに醜く、共に在ることが息苦しかったためです。その様な世界は生きるだけでも苦労します。私たちは互いに大きな希死念慮を抱き、且つ大きな生存本能を抱いていました。死にたいと思い、死ぬのが怖かったのです。

私たちが心中を決意した時、真っ先に用意したのは真赤な糸でした。手の届かぬ御伽噺を真似る様に、小指を赤い糸で繋いで心中しました。

彼女は死に、私は死に損ねました。
赤い糸はぷつりと途切れて仕舞ったのです。

運命とは非情で、此処に私は生きています。

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