夜空を駆ける
眠れない。睡眠不足なのに、眠いのに、眠れない。そんな生活がかれこれ2週間。
理由はおおかた見当がつく。明日が来ないでほしいと願っているからだ。この考えに至った経緯を説明するのもいいが、俺なんかが何を語ったところで陳腐でしかない。きっと誰もが簡単に思いつく理由のうちのどれか、あるいは複数だ。
夜中、寝付けずに布団の中で考える。ふと頭をよぎる。
小さい頃、近所の公園で乗ったブランコの記憶。
いつもなら着替えが面倒になって放置するだけの思考。しかし、なぜか今日の俺には行動力があった。のろのろと怪しくなさそうな服に着替え、なんとなく音を立てないように玄関を出る。
自由だ。外で1人、そう思った。夜風が寒い。
公園への道順は何種類かあるが、大体の位置は分かる。徒歩約10分ほど。鞄も携帯も財布も持たず、身一つで公園に向かう。最後に2分ほど迷って、誰もいない真夜中の公園に着く。あの頃から何も変わっていない公園。何かが変わってしまったような寂しさ。
久々のブランコは少し低めだった。地面に擦らないよう工夫しつつ漕いでいく。間もなく、浮遊感。夜空は暗く、やっぱり空気は冷たい。夜空に浮かぶ。夜空を駆ける。そんな大層なもんじゃない。
現実的で懐かしい浮遊感に、少し口角が上がっているのを感じる。やっぱり明日は来てほしくない。この夜が明けてほしくない。きっとまた眠れない。
嗚呼、今この瞬間だけは、許してくれないだろうか。
誰に向けたとも分からない言葉とともに、もうしばらく揺られている。
2/21/2025, 3:25:43 PM