『泣かないで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
妹の顔が歪む。口を大きく開けてツンザクような泣き声をあげる。
「いいじゃん!ちょっとくらい!なんでお姉ちゃんばっかり…」
丸い頬に涙が伝う。制服の袖で拭う。
なんでお前が泣くんだよ。
「どうしたの!」
すぐに母親が部屋に入ってくる。
妹によく似たくるくるの髪を振り乱しながら。
私をちらりと見てからすぐに妹に駆け寄る。
「中学生にもなって泣かないの。何があったの?」
小さい子をあやすように背中をさすりながら優しく声をかける。妹は勢いを増してしゃくりあげながら泣き出す。
「お姉ちゃんのワンピースを借りようと思っただけなの。明日の修学旅行の出し物で衣装として使いたくて。でも全然貸してくれないの。洋服いっぱい持ってるくせに。」
母親は少し気まずそうにこちらを見る。
「ねえ、少しくらい貸してあげることはできないかな?この子もちゃんとも物を大切にするタイプだから。気持ちは分かるけど、やっぱり家族仲良くするためにはそういうことも必要だと思うの…」
何を言ってんだこいつらは。
そもそも私のワンピースじゃない。
「私のママのワンピースだから。」
10年前亡くなったママが私に遺した唯一のもの。
衣装?ふざけんな。家族仲良く?私の家族はママだけだ。
妹の顔が凍りつく。母親は何も聞こえなかったかのように目を逸らし、小さく「行くわよ。」と呟いて妹を連れて部屋を出て行った。
ドアが閉まった瞬間、目の前がぼやける。
【泣かないで】
僕は自惚れていた。
遠い夕暮れを背に、彼女を前にして。
当然だと思ってたんだ。
だって、小さい頃からご飯もお風呂も遊ぶのだって。何をするのも彼女と一緒で。イタズラする時だって、いつも隣にいる彼女は少しだけ困った顔で、僕が怪我した時にすぐに手当できるように着いてきてくれた。君に色んなもの見せる度、自分は彼女を新しい世界に連れて行ける素晴らしい人間だと錯覚できた。
そう、全て錯覚だった。
君が、仕方ないと眉を下げて笑う顔も。
君が、自分の事のように泣きじゃくって手当してくれることも。
君の方が泣いているくせに、「もう泣かないで」って無理やり平気そうな顔するのも。
僕が、彼女にとって特別だからそうしてくれると、勝手にそう思ってた。
きっかけはなんてことの無い、いつもと同じ、イタズラを思いついたなんでもない日。特段いい事がおきそうな予感が身を包んで、ポカポカと体が暖かかった。
「よーし、見とけよ」
目の前の彼女に向かってなんて言ったんだっけか。いつも使ってる最初の言葉しか思い出せない。それぐらい、大事じゃないことは錆びている。
だが振り返ったのは覚えてる。
そして。
次の瞬間、意識の外から飛んできたなにかが彼女の顔面にぶち当たった。
ぱっ、と赤い花が咲く。火花と紅い血で描かれたものが。
脳内フィルムで静止したその瞬間。
あとから聞けば、近くで遊んでいたガキどもが投げた爆竹が当たったらしい。
その後、どうしたのか覚えてないが、きっと親を呼びに行ったんだろう。馬鹿みたいに泣き叫んで。けれど、それはもう既に、この時点で終わっていたんだ。助けを呼ぼうにも間に合っていなかった。
死んじゃいない。
いっそ、そうなればよかった。
「ゆーくん?」
「お、まえ、その目……」
病室についた俺が見たのは固く閉ざされた目と、醜く爛れたまぶた。
彼女の目は火花を最後に光を映すことは無くなった。
「……ぅあ゛あ゛あ゛」
「大丈夫だよ、だから泣かないで」
取りすがったベッドから、最も助けてもらいたいはずの人が手をさし伸ばしてくる。俺が掴めない手を。
そして俺の世界からは色が消えた。彼女の白以外は世界が黒く見えてしまうようになった。
それから、俺は彼女の為に病室へ足繁く通うようになった。時にはひとりで、時にはクラスのやつと。
俺以外にも彼女の友達とか、通ってるやつは居たが俺ほど通っているやつはいなかった。数えてる自分が醜いことなんて分かっていた。
彼女には色んな話をした。外で何をしたか、どこへ行ったか、どんなものを見たか。彼女が好きなはずの話をした。だって、俺だけが彼女の光の代わりができるのだから。その筈なのだから。俺が1番彼女をわかっているんだから。光を失った瞬間も俺しか見てなくて、その辛さも共有できるのだから。
彼女の光を奪ったのが俺であれば彼女の中から消えることは無かったのに、と馬鹿な考えに身を委ねたくなってしまう。
いつしか、彼女は俺の前で笑わなくなっていった。わかんなかったからますます必死になった。
俺より少ないけど、定期的に通っていたヤツにも相談してやった。味方は多い方がいい。彼女はそいつの前では笑っていた。俺が外での話を10語るより、彼が君の考えたことに耳を傾ける方が良く微笑んでいた。指摘すると耳を赤くして、まぁ、とでも言うように手のひらを口に当てていた。それを見て彼が声を上げて笑い、君がそれにつられてクスクス笑い、俺も声を出さずに微笑んだ。
そのうち俺は病室に通うのを辞めた。
心が軋んでいく。ダメになったのだと理解した。
階段を一段一段と数えて、あなたの病室に向かう。
意味の無いことだ。いつもと同じ段数に決まっている。意味の無いことがしたい。病室があまりにも遠いから。願いは虚しく、いつの間にか足はあなたの病室の前にあった。
扉を開けた先で、夕焼けが茜く燃えている。病室で静かに何かを待つ影は珍しく1人で。邪魔を、してはいけない、そんな気が起こる。こちらを向いてない、今ならまだ引き返せる。
だからこそここで、茜色に焼き切らなければならないと改めて強く思い込んだ。
思い、込んだ。
「久しぶり」
掠れた声はあなたに聞かせていなかったからか、あなたに聞かれてしまうからか。だが、みっともなくてもそれは音の役割を果たす。
「久しぶり、ね」
彼女の顔には影がかかっていて、目元が見えない。
だからこそ昔のように事が運ぶような目眩がした。
「大事なことを伝えに来たんだ」
「私も、あなたに大事なことを教えたい」
両者の行動は一緒で。
「俺と付き合え」
「あの人のことが好きなの」
思いだけが決定的に違っていた。
いいや、きっと思いだけじゃない。
「あの人は、目が見えない私に無理に外を見る必要は無いって。想像するだけしか出来ないのに何もかも正確じゃない世界は辛いだろうからって、私に寄り添ってくれたの。あなたのお話も楽しかった、本当に。
でも、私には彼の在り方のそばに居たいと思ってしまったの」
赤い、あかい。
顔は影で見えない。ただ夕日を背に見える色は、あかい。あかくて切なくてあまいかげ。
「だから、あなたとは付き合えない。あの人と、付き合いたい」
思い違いも聞き違いもいっそ清々しいほど叩き割られる。笑うしか、道がなかった。
「あなたのことは友達として、好きだったわ。
これからもあなたの幸せを願ってる。」
「……なんだよ、それ」
「だから、もう泣かないで」
その言葉は、昔のようでもあり。
今が見えない彼女のものでもあった。
「何も、見えない癖に」
決定的に、全てが終わる音がした。俺は心臓をもぎ取りたい想いで、命からがらに病室から飛び出す。直前と同じように、口元は笑み。そして声すら抑えられなくなっていく。夕焼けと雨に見つめられながら、狂ったように俺しかいないように。笑って。笑って。笑い続けて、走り続けて。転んで。それでも離れたくて。血が出ても直す人はいないのに。俺はあなたのために笑い続けた。あなたのためと自分に偽って、壊れないように大事に大事になげやりに。
泣くこともできないんだよ、ばか。
夕焼けの底で、病室の雨が聞こえた。
「泣かないで」
そう言おうと喉まで
出かかった言葉をのみ込んだ。
だって貴方は必死に
笑顔を作っていたから。
あの時駅のホームで
電車の扉が閉まり動きだしても
手を振り最後まで
笑顔でいようとした貴方。
きっと貴方は私の前では
涙を見せたくなかったんだね。
それが貴方の
最後の一時帰宅だったと
知ったのは大人になってからでした。
それから随分時が経った。
今になっても自分の無力さを
呪い続けてる。
#泣かないで
泣かないで…
泣かないように生きて来た
でも泣きたい時
泣かせてくれる場所がなかった
そんなことに気がついた
それは
あなたが
泣きたきゃ泣いてもいい
そう言ってくれたから…
自分の為に泣くことが
できたあの日まで
泣かないで…
魔法の言葉
あなたが言うから
『泣かないで』
ある日大切な人が別れを告げた。
その人の友達も周りのみんなも俺も驚いた。
それは急な出来事だったから。
けれど他人の俺たちが止める権利はない。
だってその人自身の人生なのだから。
俺たちは出来ることをやるしかない。
残りの短い時間を一緒に楽しく過ごすこと。
笑顔でその人を送り出すこと。
もし泣いてしまっても最後の挨拶だけは。
泣かないで。笑顔で感謝と応援を。
氷雅
サーティワン・ポッピングシャワー・コーンのほう 慰めかたがガキかよと笑む
題-泣かないで
泣かないで
月のない夜
海は深いよ
/お題「泣かないで」より
ずっと僕に泣かないでと言ってくれるのは
僕自身だけだと思ってた。
でも君もあっちで言ってくれてたんだね。
また缶のご飯のためなのかい?笑
え、違うって?笑
ごめん、もう泣かないから。
泣かないで
そんなこと言われたって
私だって泣きたい時もある
あなたの見えないところで
今までずっと泣いてきた
あなたは私のことを強い女というから
目の前で泣けなかっただけ
あぁすっきりした
これであなたとはおしまいね
「泣かないで」
あんな奴の為に
泣かないで
ダイヤのような涙が
勿体ない
僕が笑顔にしてあげる
これでどうだ!!(変顔)
もう、泣かないで...
僕がずっと笑顔で居させてあげる
君の事が大好きだから
うん。僕はもうすぐ行くよ。
もうすぐ命が尽きるみたいだ。
頑張ったんだけど、もうダメみたいだ。
最近、食べても全部戻しちゃって、床を汚して迷惑かけたね。
悪気はなかったんだよ。
でも、自分では片付けることも出来なくて。
ごめんね。
あの日、君達家族に迎えられて、あの子がまだ赤ちゃんの頃から僕はいたんだよ。
いつの間にか、あの子が大きくなって、僕を抱っこしてくれるようになって、気付いたら僕はおじいちゃんだった。
こんなに小さいままなのに。
これ以上大きくならないのに。
僕と君達は、違う生き物だから。
一緒の布団で寝たり、玩具でじゃらしてもらったり、ずっと一緒に過ごしてきた。
楽しかったな。ごはん、美味しかったな。
ずっとずっとずっと、幸せだったな。
この家に貰われて、この家族の一員になれて、ホントに幸せだったな。
だから、泣かないで。笑顔で僕を見送って。
…そんなもん、無理に決まってるだろ。
慈愛に満ちた理不尽さ
言われる筋合いなんてない
怒りを込めた謝罪の言葉
真摯な態度で暴走中
残酷なほどに喜劇な道
寝ても醒めても高笑い
高鳴る胸を耳に見えさせ
やまびこ聞こえた山頂で
――サメの言うことにゃ、
泣かないで
(泣かないで。)🦜
あのね
皆しゃん、はね。
[雀の涙]・・・。と
良く聞くと思うけど。🦜
《本当に泣くと思うかな。》
「僕の眼には、瞬膜。と云う
第三の瞼が
有って其れが
眼の乾きを、防ぐ時に
潤す程度
涙を出すんだね。」
✢だから、半分は正解
なんだけど
泣かないで。と
言われてても困るんだよ。🦜
✢雀の涙。と云うけど、
・燕の涙。
・文鳥の涙。
・白鳥の涙。
其れでも良かったんだね。🦜
【ちなみに、僕が鳴く時は
大日如来。様の神使として
幸せを運んで来たのだから
喜んで受け取って下さいね。】
❞幸せに成ってね。❝
🦜🦜🦜
「泣かないで」
今日の夕方、思い切り泣いた。
なぜか泣いたかわからない。色んなことを思い出したけど、どれが原因かと言われると分からない。積み重なりだろうか。追い詰められたせいだろうか。今はかなり落ち着いたが、寝る前にまた大号泣しそうで不安だ。
泣きたくないと頭では分かっていても、体が言う事を聞いてくれない。それでも泣かないって自分に言い続けなければならない。大丈夫、何も起こらない。大丈夫。
泣かないで
いつも明るくて涙とは縁のなさそうなあの子。そんな彼女が、ふと過去の大変だった出来事を話してくれたときがあった。
その話を聞くうちに、私は精神的に追い詰められて泣く彼女の姿を想像してしまった。悲しいのは相手のはずなのに、これは想像のはずなのに、心が壊れるほど悲しくなって、泣かないでほしい、とひたすらに怖くなっていた。
百万の花をかきわけ、逃げ込んだ先で少女はべそをかいていた。
誰にも見られないように。誰にも見つからないように。
だからハンカチを差し出す人もいない。
少女のやわさを誰も知らない。
それを自ら選ぶというなら、いつか涙で溺れ死ぬことのないように、もう泣くのはおやめなさい。
あなたの目尻をそっと舐める犬。
「泣かないで」 白米おこめ
『泣かないで』
「泣かないで」って言われたことはある。「お前は泣けば済むと思っているんだろ?」と言われたこともある。
あんなに泣くのは得意だったのに、何もしなくても涙が溢れることもあったのに、今では一滴も涙が出ない。
あまりに辛く悲しいことがありすぎたんだ。
泣いても何も変わらないと知ってしまったから。
「お前、泣きもしないんだな」
そんな風に言われるようになった。だからドラマとかでわーっと泣ける人は所詮演技なんだって思ってた。
なのに今私の目の前には、号泣する女がいる。
「泣かないで」
私がそのセリフを言うことになるなんて思わなかった。
この目の前の女は過去の私であり、今の私がなれない私。
「羨ましい」
そんな言葉が思わず口をついて出た。
目の前の女は怪訝な顔をして私を見た。
なんだ、涙止まったんじゃない。演技だったってことか。
「あんたみたいな女が一番嫌い!」
目の前の女は私にそう言った。うん、私もそう思う。私は泣けもしない女になってしまったんだ。だから感情をむき出しにして、そんな風に泣いたり怒ったりできるあなたが羨ましい。
「私は嫌いじゃないけどね」
そう言うと女は私のことを怯えた目で見た。そんなに怯えることはないと思う。だって私はただ泣けないだけの女なんだから。
「怖がることはないわよ。何もしないし。ねえ、どうやって泣いてるの? 私、泣けなくなっちゃったのよ」
「はあ?」
女は怪訝な顔をして、私は関わったらヤバい奴だと思ったのか、鞄を抱えてその場を逃げるように立ち去った。
私は本当に羨ましかっただけなのに。上手くいかないものだ。彼女の背中を見つめながら、私は立ち尽くしていた。
なんの感情も湧かない。そんなときは心の整理をする。心の整理とは言っても、部屋にあるものをひたすら捨てるんだ。思い出も、言葉にできないモヤモヤした感情も合わせて捨ててしまう。
スッキリした。
大きなゴミ袋が三つ。今回のモヤモヤはこの程度で済んでよかった。
泣くことはストレス発散にもなるらしい。泣けない私はそれができないんだから、こうしてものを八つ当たりのように捨てるしかない。
祖母からの手紙、もう祖母は十年以上昔に亡くなっている。いつも捨てようとして捨てられないんだ。この手紙だけは。
久々に開いてみる。
『まあちゃん、泣かないで。ばあちゃんはいつでも味方でいてあげるからね。だから頑張るんだよ。健康に気をつけて』
短い手紙だ。そうか、この手紙からかもしれない。泣けなくなったのは。だから捨てられなかったんだ。
いつの間にか私の頬を涙が伝っていた。なんだ、私泣けるんだ。
でも、泣かないんだ。私は祖母と約束した。祖母はもういないけど、約束は有効だから。
私は頬の涙を手で拭うと、その手紙をゴミ袋に入れた。もう二度と泣かないために。
(完)
もう長いこと、耳元で鼻をすする音としゃくりあげる声が聞こえる。
いつか振りの再会。
自分に非があるから仕方ないのだが、会ったとたんに一発殴られた。そのあとぼろぼろ涙をこぼすその男に息ができないほど強く抱き締められ、そこからずっとこのままだ。
どうにかして泣き止ませようとひたすら背中を撫でているが、なかなか落ち着かない。
「そんなに会いたかったのか?」と茶化し気味に聞いたら、「会いたかった」と蚊の鳴くような声で至極真剣に返された。
それから、「次離れたら、絶対許さない」とも。
その一言で悟った。離れていた間、いや、それ以前からこの男が抱えていた想いの丈を。
それは一人で溜め込み続けるには大きすぎたことも。
決めた。
もう離れない。
もう俺のせいで苦しい思いをさせたりしない。
それを伝えると、さらに嗚咽が激しくなってしまった。
俺はこいつを泣き止ませるためにも、自分の決意をちゃんとこいつに証明するためにも、また背中を撫で続けるしかなかった。
【泣かないで】
______
一緒にいるのが当たり前だからこそ、気づかない気持ちもある。
泣かないで
愛しい人よ
君の悲しみも
一緒に抱えるから