『欲望』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
閉じた目蓋越しにすら感じる、穏やかな光。
髪を揺らす軽やかな風にのって、鼻腔をくすぐる春の匂いすらも通り抜けていく。
深呼吸して、ゆっくりと目を慣らしていけば、眼前に広がるのは見たことの無い景色だ。
そろり、と足を踏み出せば、これが地面を踏み締める感触なのだと教えてくれる。
慣れない感覚に始めは恐る恐る、段々と早く、速く、疾く、駆けていく。
何時までも、何処までも、行けるのだ。
「転ばない!痛くない!」
思わずそう叫んで、ハッとした。
もう、自由なんだ、と。
自分を縛る管も針も大人も先生も家族も友達も、何も無いのだと。
『遠くの街へ』
ねぇ、見て。
聞いて。
感じて。
僕のことを、わたしだけのことを。
彼と、あの子と、あいつと、あの人と、そして他人と比べて、俺を選んで。
誰よりも、私がいいのだと。
音で、言葉で、空気で、顔で、仕草で、行動で、結果で、伝えて。
慎ましやかに、大人しく、控えめに、なんて、意味が無いのだから。
誰よりも、何よりも、君自身よりも。あなたの言葉で。
---のことを愛してくれ。
『欲望』
20xx年人類は欲望によって文明を進めてきた。
衣食住を得る為の本能的な欲望を満たす中、文化が生まれ、人々は更なる欲望を手に入れた。それはやがて争いを生み、いくつもの文化を破壊しては人々の欲望を半ば強制的に本能的なものに近づけた。そうしてまた、本能的な欲求が満たされれば、それ以上の欲が湧くというサイクルを繰り返すうち人類は進歩し、和平を望むようになった我々の欲望は安定しつつあるのかもしれない。そして、いまやそれ以上に、世界は我々の欲望をコントロールしているように思える。いや、今に始まった事ではないのかもしれないが。
我々の欲望は何かしら管理されたものなのかもしれないというのは昔からよく聞く陰謀論ではある。それが世界的な権力者か、我々人類の支配者たる宇宙の何某か、はたまた創造主たる神なのかは考えるだけ無駄な事だろう。しかし、近代化の進んだ現代で話をするなら、さらには直接的なものに限定するのならば、皮肉な事にそれは既に人の手から離れつつある人工知能と安定化を図る薬物だ。
2000年代初期、人々の欲望は安定に向かいつつも、それ故に既存の欲望のサイクルを外れ淀み始めていた。
大きな争いが減り発展していた国では人々の欲望が本能的なものに回帰する事なく、そこから枝葉のように別れた様々な欲望がひしめきあい混沌としていたらしい。
本能に起因する欲求が薄くなったが故に、人々の多くは自らの欲望に絶望させられることになったのだった。
進化を重ね、地球を支配する種となった人類は、自らの欲望に対しての進化を求められるようになったのである。
そしてそれは非常にネガティブな形で達成されたと言えるだろう。ひたすら効率を重視する機械のように感情が欠落した思考で形成された文明によって、人類は欲望の沈静化と統一化を計ったのである。
古い世代の人間から見ればこれがまさにディストピアと呼べる情景なのかもしれない。
世界からは次々と無駄が省かれ、物事はより効率的になった。人々は争いを行わなくなり、飛躍した科学技術は世界のさらなる安定化をもたらした。
現在の人類は、一定の数を保ちつつ様々な個性をもった独立したAIと共生し、その保守管理を役割に応じ効率的に全うしている。この社会は我々の欲望をAIが引き受けているからこそ成り立つだろう。
欲望研究AI d2875ac 補助脳員検体 d2875ac-a3
識別固有名称 大竹 和男
検体状況 人格データ及び脳の保存
生体劣化 保存より146000日経過
当資料に関して、AI倫理管理の観点から資料の削除と共に検体の速やかな投棄が求められている。
手の中にないからこそ欲しくなる
手に入れた瞬間の幸福感、
瞬きをするくらいの時間しか
味わえなくて
すぐにまた、ないものが欲しくなる
手に入れてもまだまだ足りなくて
ないものを求めて
満たされることのないそれを
騙し騙し埋めていく
__欲望
《欲望》
あれが欲しい。これが欲しい。
望むだけの生き物だ。
望むしかできない生き物だ。
与える側にはならない。なれない。
無償で与えることのどれほど寛大で情のあることか。
欲望に駆られて、全て壊して、全て手に入れて。
思いのままの世界にしたら、
この昂りは無くなるのだろうか。
いや、そんなことはない。
現状に満足できない生き物だということを我々は知っている。
ずっと追い求めていくのだろう。
貪欲に、際限なく。
【欲望】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/1 AM 7:50
「宵ちゃん、真夜(よる)くん、おはよー」
「おはよう。誕生日おめでとう」
「おめでとう、暁」
「わ~い、ありがとう、2人とも。嬉しい」
「プレゼントは帰りに渡すわ」
「学校に持っていくには嵩張るから」
「そうなんだ~。じゃあ楽しみにして
今日1日を乗り切るよ!」
3/1 AM 8:05
「あ、天明(てんめい)くんだ。
おはよー、天明くーん」
「よー、古結(こゆい)。おはよう。
真夜と宵も。おはよう」
「「おはよう」」
「それから――誕生日おめでとう、古結」
「わ! ありがとう~。天明くんにも
お祝いして貰えるなんて嬉しい」
「これ、プレゼントな」
「……えっ、誕プレまで!?」
「ああ、でも、中身が何なのかは、
帰ってから見た方がいいかもしれない」
「そうなの? ううう……なんだか
みんなに焦らしプレイされてる気分」
3/1 PM 3:30
「――で、これから部活に行く訳だけど、
結局、暁に渡すプレゼントは
用意したの? 十詩希(としき)」
「……一応は」
「これって、リップクリームよね。
……欲望ダダ漏れ過ぎじゃない?」
「は?」
「聞いたことない? 口紅とかリップを
プレゼントするのは『貴女にキスしたい』
って意味だって」
「――っ!? そ、んなつもりじゃ…っ、
いや100%下心ないって言ったら
嘘になるかもしんねーけど……っ!」
「まぁ、暁もそこまで深読みしないとは
思うけど。だからこそ、十詩希はこの位、
思い切ったことしていく方がいいのかもね」
「……何やったとしても婚姻届の
インパクトは越えらんねーだろ……」
「……それもそーね……」
あなたは私のものじゃない
私を知らない
私しか知らない
けど
あなたのすべてが欲しい
中の中の骨の髄まで
目も口も鼻も心臓も
肝臓も内蔵も全て、あなたのすべて
欲望って、こわい
愛のかたちが様々なら
ふたつを悩む必要はない
どっちも好きでいいじゃないか
自分に素直になった結果が
どちらをも失い、傷つけるとしても
それが運命だったと涙を拭き
前を向いて遠くまで歩けばいい
欲望のコントロールができない時
それは手放す前兆なのかも
その時に、迷いのない愛だった
そう思えるように
今はあなただけを見ている
#欲望
私には叶わなかった
伴奏に選ばれることも
推薦で選ばれることも
いい高校に入ることも
いい大学に入ることも
イケメン彼氏を持つことも
誰かに評価されるのも
この先もっと叶わないことが増えていくかもしれない
でも私は言える。
あの人よりも、その人よりも
幸せだって言える。
幸せだって言える。
悪いね、気分よく飲んで呑まれて、さぁ堂々の幕引きのなるであろう時に話す事じゃないんだが
聞いてくれるかい?
ありがとう、最後まで付き合ってくれて。
こうやって飲んでいた時の話さ。
僕はね、時々、その日の友人を忘れられないんだ。
あぁいや、別段その友人に不幸があって、会えないとかではないんだけども、記憶には残ってる。
常にそいつの事を考えてる訳でもないんだが、
春先の夢よりかはスッと胸の中に居るんだな。
彼はね、特別な事を言ったわけじゃない。
ただ、夢を語ること。
それも睡眠時に起こる夢じゃなくて、自分の胸に秘めて燃えて、燃えて、
冷めなくて、覚めない、醒させてくれないもの。
彼の趣味は、んー。その時はなんだったかな。
星座を見ていた気もするし、何か哲学書にハマっていた気がしなくもない。
あぁ、話が端的すぎるって?いやはや申し訳ない。
語る口には慣れてないが話す言葉は多いもので。
でだ。彼はあの日に僕らに宣言したんだよ。
何だったかな、とても小さく矮小で、でもそれは
豆の木よりずーっと、大きいものだった。
恥ずかしながらあの時の僕は非常に感銘を受けたし、
よしやってやろう!って気分になったんだよね。
手元の甘いりんごジュースみたいにさ、外見は真っ赤に燃えていたが、うちはまだ途中だった。色的にね。
そうして僕らは素面で夢を語ったのさ。
寄って酔われてそうして作り上げたんだけどね。
まぁいつの日か失っちゃったんだ。
原因なんて覚えてないよ。最後の音はギシギシだったか、ギコギコだったか、ガコガコだったかくらいの差だしね。実際は無音だったし感傷もなかったけれど。
出来ることも少なかったし。
やれるって思うことも少なかった。
だから簡単に欲望に負けられた。
まぁ今になっては欲望に満ちて溢れた。ただの人で。
あれしたいーこれしたいーが
ほんとに少し手を足を伸ばせば実現可能なせいで
満ち足りてしまっているんだけれども。
じゃあ何が言いたいかって。
僕はね、だから酔いの力を借りたかったんだ。
雰囲気でも、酒でも、睡眠不足でも。
言ったもん勝ちって事を
今、語って思い出したからね。
明日は早起きしてベランダでコーヒー飲みたいね
きっとそうさ。
ただこれだけでいいや。僕は。それだけでも
欲望に負けられる。そんな人になってる。
君らもそうだろう?そうであって欲しい。
ぼくのふるき友人たちへ。明日は何を変える?
素面で語るのはなかなか恥ずかしかったけど、
楽しかったよ。ありがとう。
変わった事があったら、ついでにさ。
僕をほろ苦い珈琲屋さんに誘ってよ。
それだけで僕には伝わるから。
欲望
あなたに見てもらいたい。
私をちゃんと、一人の女として。
私はとっくの昔からあなたを男として見ているのに。
どうして近いのに遠く感じるんだろう。
好きになってもらいたい。
そんな勝手な欲望が私の中に溢れる。
そんな毎日だ。
抜けてく言葉が 心地好くて
つらつらと吐き連ねる
あたしと骨のない人のようになって
肉のひとかけら血の一滴にも染み渡る
蛮者の言伝
救ってやろうか
それとも
君に触れたい
貴方に触れたい
『誰にも触れさせたくない』
君を離したくない
貴方の側にいたい
『誰にも渡したくない』
君の笑顔がみたい
貴方の笑顔がみたい
『他の人になんて見せなくていい』
君にそんな醜い自分を知られたくない
貴方にそんな醜い自分を知られたくない
『────────だから』
そんな醜い気持ちに蓋をした。
欲望
欲望って
いらないものだろうか
欲望があるから目標があり
欲望があるから発明がある
でも
欲望があるから事件が起こる
欲望って
なんなんだろうか
〜欲望〜
欲望のままに食べていた
あの頃に戻りたい
(どうして美味しいものばかり
食べてると
脂肪肝になってしまうんだろう?)
教えて神様
「運動しろ」
はい。
✳️欲望✳️
地球を壊しても
天を欺いても
欲しいものがある
果てしなく続く欲望
やがて全てを飲みこんで
終わりを迎えても
尽きることはなく…
正義の顔をした欲望は
この星を焼き尽くす
✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️✳️
(欲望)
栓をしていない浴槽の様に
私は決して満たされない
欲する物を手の内に収めたって
後悔と云う矛盾がのそりと這い出る
何をしたってこの思想は消え失せない
諦めて無に成ってしまいたいと云う欲望が又産まれる
今にも浮き出た血管が破裂しそうなほど、興奮した中年の男が唾を飛ばしながら俺の目の前で怒鳴り散らしていた。
こいつは週に一回、俺の働いているレンタルDVD店に顔を出し、自分より立場の低いと思っているスタッフに日々の生活の鬱憤をぶつけにくる。
何で、そんなことで?と言うような事でも、鬼の形相で怒鳴り散らす様を、男の頭に被さっているバレバレな毛の塊が落ちそうだなぁと思いながら見ていた。
「おいっ、おめぇちゃんと聞いてんのかぁっ?」
「あっ、はい。誠に申し訳ないです。」
微塵も悪いと思ってないが、この場を乗り切るにはこうするしかない。この男の気が晴れるまで我慢だ。そう言い聞かせ、男が満足して帰った頃には定時を過ぎていた。周りのスタッフに励まされながら、帰り支度をして自転車に乗り家路につく。
ペダルを漕ぎながら、あの男みたいに自分の欲望に忠実に生きていけたら、どんなに楽なことかと考えていた。
一度でいいから欲望に忠実に行動した感覚を味わってみたい。
そう考え事をしながらの走行中、道路の割れ広がった溝に自転車を走らせてしまい、チェーンが外れてしまった。
ペダルが空回りし、右足のスネに鈍い痛みが走る。
「っつくぅぅう…!」
突然の痛みで変な声を上げながら、自転車を止める。
痛みを我慢しながらチェーンを直すためしゃがみ込む。
なかなかハマらないチェーンに苛立ちを抑えながら、自然とつぶやいていた。
「くそが…」
一度呟くと、雪崩のように心の中にある憎悪が口から溢れ出る。
「なんで俺がレジの時に毎回あの野郎がくんだよ!ふざげんな!俺はサンドバッグじゃぁねぇんだぞ!」
今までの嫌な思い出が蘇る。
中学の時、やりたくもない委員会に入らされた事。
高校の時、付き合っていた彼女が他校の生徒と浮気していた事。
就活で人格否定された事。
いつのまにか、チェーンを直すのをやめて男の家を目指して走っていた。
男の家の住所は、会員証更新の時に覚えていたので困らなかった。
インターホンを押す。
ドアの隙間から男がのぞいてくる。
ドアのキーチェーンはかかってない。
頭を掴む。
押し倒す。
酒臭い。
何か、叫んでる。
うるせー
拳を叩きつける。
拳を叩きつける。
拳を叩きつける。
泣いてる。
拳を叩きつける。
そうか、これか。
この感覚が…
欲望なんてあってもしんどいだけだよ
だから欲望なんて感情、誰か俺から持ってってよ…
とても好きがすぎるから、あなたの心臓を取り出して生きていることを実感したいし、あなたの脳をぶちまけて、あなたの考えてることを辿りながらひとつひとつかき集めて大事に仕舞っておきたい。
呼吸ひとつでさえも逃すのが惜しい。
愛なんて安い言葉では収まらない。
果てしない尊敬の念と、愛しさと、狂気と、悲しみと、慈愛と、怒りその他もろもろが巡るだけ。
私の中に渦巻く”これ”は、一過性などという言葉で済ませられるようなそんな単純なものではない。
淡くきらめく時期などとうに過ぎ、欲にまみれたひどく醜い、それでいて人間然としたものへと変わったのだ。
飲み込めないほどの魅力に酔いたい。
消化不良で吐いてしまうほど飲ませてほしい。
いい子なんかではいられない。
己を狂わすほどのこの感情。
そうか、これを欲望と言うのか。
あの毎日に戻りたい
あの日から――そう、あの卒業式から1年が経とうとしている。
あの日、私たちはバラバラの道を歩み始めた。
私だけを残して。
『みんないつかはどっかに行っちゃうんだろうなぁ』
不安。
今、私の周りにいる子も?
そうやってどこかに―― 。
あぁ、神様。
昔のような毎日を歩みたい。
貴方がいて、みんながそばにいる毎日を。
<欲望>
お久しぶりです。