悪いね、気分よく飲んで呑まれて、さぁ堂々の幕引きのなるであろう時に話す事じゃないんだが
聞いてくれるかい?
ありがとう、最後まで付き合ってくれて。
こうやって飲んでいた時の話さ。
僕はね、時々、その日の友人を忘れられないんだ。
あぁいや、別段その友人に不幸があって、会えないとかではないんだけども、記憶には残ってる。
常にそいつの事を考えてる訳でもないんだが、
春先の夢よりかはスッと胸の中に居るんだな。
彼はね、特別な事を言ったわけじゃない。
ただ、夢を語ること。
それも睡眠時に起こる夢じゃなくて、自分の胸に秘めて燃えて、燃えて、
冷めなくて、覚めない、醒させてくれないもの。
彼の趣味は、んー。その時はなんだったかな。
星座を見ていた気もするし、何か哲学書にハマっていた気がしなくもない。
あぁ、話が端的すぎるって?いやはや申し訳ない。
語る口には慣れてないが話す言葉は多いもので。
でだ。彼はあの日に僕らに宣言したんだよ。
何だったかな、とても小さく矮小で、でもそれは
豆の木よりずーっと、大きいものだった。
恥ずかしながらあの時の僕は非常に感銘を受けたし、
よしやってやろう!って気分になったんだよね。
手元の甘いりんごジュースみたいにさ、外見は真っ赤に燃えていたが、うちはまだ途中だった。色的にね。
そうして僕らは素面で夢を語ったのさ。
寄って酔われてそうして作り上げたんだけどね。
まぁいつの日か失っちゃったんだ。
原因なんて覚えてないよ。最後の音はギシギシだったか、ギコギコだったか、ガコガコだったかくらいの差だしね。実際は無音だったし感傷もなかったけれど。
出来ることも少なかったし。
やれるって思うことも少なかった。
だから簡単に欲望に負けられた。
まぁ今になっては欲望に満ちて溢れた。ただの人で。
あれしたいーこれしたいーが
ほんとに少し手を足を伸ばせば実現可能なせいで
満ち足りてしまっているんだけれども。
じゃあ何が言いたいかって。
僕はね、だから酔いの力を借りたかったんだ。
雰囲気でも、酒でも、睡眠不足でも。
言ったもん勝ちって事を
今、語って思い出したからね。
明日は早起きしてベランダでコーヒー飲みたいね
きっとそうさ。
ただこれだけでいいや。僕は。それだけでも
欲望に負けられる。そんな人になってる。
君らもそうだろう?そうであって欲しい。
ぼくのふるき友人たちへ。明日は何を変える?
素面で語るのはなかなか恥ずかしかったけど、
楽しかったよ。ありがとう。
変わった事があったら、ついでにさ。
僕をほろ苦い珈琲屋さんに誘ってよ。
それだけで僕には伝わるから。
欲望
3/1/2023, 3:54:31 PM