渇くことない飽くなき欲望の瞳と相合傘
私はその日も結局ふつーに家に帰ってゴロゴロして、
テレビをグルっと体をひねりつつ見ていたり、
知り合いと連絡を取りあって居たりしたんだけども、
ただ、どーにもこーにもな陰鬱さと鬱陶しさが胸の中にあったんだ。
やっぱりそーゆーのはどうにもならないしで
煙草でも吸おうかと思いもしたが、お外はヒヤヒヤだし、中で吸ったらそれこそ後の過去が足を引っ張る。
んっーと、とかなんやら考えてる内に
ムカムカしてきて、居てもたってもいられなくって。
その辺のアウターを片腕だけ通して、もう片方の手でぽっけを弄り倒してライターと煙草を掴んで、足元を見ながらのんのんと歩を進めた。
ゆっくりとカーテンを開けた。のんびりと。
外に出るために窓を開けた。ヒヤヒヤとしている。
空けた。あるいは退廃的に。退廃な私
希望を見た。嘘じゃない。
ねむるこの街にみんなの希望が集まってる。
ふわふわ、ゆらゆら、ゆっくりと。
酷く静かな夜だった。
1寸先まで見えるのに、その先に行った音は帰ってこない、手元で燃える小さな優しさは、私とキスをする度に小さくなっていった。
混ざりあった優しさと退廃的な私は白かった。
優しさはほろ苦く、ほころぶ様にホロホロと眠り、
安心感は少しづつ薄くなっていく。
退廃的な私を上へと連れていく。
存外、煙草はおおく、手元にあった。まだ私を慰めてくれる様に揺らいでいた。一緒に向き合おう。
眠る町は水面の様だった。
ただゆっくりと時間が流れていく感覚を感じる。ぐっとまだ生きていける時間が増える。
私は少し安心する。優しさもユラユラと笑っている。
眠る町の住人を急かすたった一つの希望は
水面には映らない。
どこか退廃的な誰かが優しさに包まれて、モクモクと
雲になり、きっとその雲は水面に映れないから。
その奥にあるものも当然。見えなくなる。
眠る街にまだ彼らは眠る。
私はまたこの夜と燃える炎の優しさにキスをする。
ねむる町は海のような優しさに包まれる。
みんなを導く光は届きはしない。たった一つの希望。
今は、今くらいはいいだろう。
たった一つの希望がなくても、もっと大事なものと。
彼らはねむる。彼らをゆっくりにする優しさと。
だからこうして、外に出た私は思ったんだ。
そんなに悔しそうにしなくてもいいだろう。
うさぎさん。
たった一つの希望
悪いね、気分よく飲んで呑まれて、さぁ堂々の幕引きのなるであろう時に話す事じゃないんだが
聞いてくれるかい?
ありがとう、最後まで付き合ってくれて。
こうやって飲んでいた時の話さ。
僕はね、時々、その日の友人を忘れられないんだ。
あぁいや、別段その友人に不幸があって、会えないとかではないんだけども、記憶には残ってる。
常にそいつの事を考えてる訳でもないんだが、
春先の夢よりかはスッと胸の中に居るんだな。
彼はね、特別な事を言ったわけじゃない。
ただ、夢を語ること。
それも睡眠時に起こる夢じゃなくて、自分の胸に秘めて燃えて、燃えて、
冷めなくて、覚めない、醒させてくれないもの。
彼の趣味は、んー。その時はなんだったかな。
星座を見ていた気もするし、何か哲学書にハマっていた気がしなくもない。
あぁ、話が端的すぎるって?いやはや申し訳ない。
語る口には慣れてないが話す言葉は多いもので。
でだ。彼はあの日に僕らに宣言したんだよ。
何だったかな、とても小さく矮小で、でもそれは
豆の木よりずーっと、大きいものだった。
恥ずかしながらあの時の僕は非常に感銘を受けたし、
よしやってやろう!って気分になったんだよね。
手元の甘いりんごジュースみたいにさ、外見は真っ赤に燃えていたが、うちはまだ途中だった。色的にね。
そうして僕らは素面で夢を語ったのさ。
寄って酔われてそうして作り上げたんだけどね。
まぁいつの日か失っちゃったんだ。
原因なんて覚えてないよ。最後の音はギシギシだったか、ギコギコだったか、ガコガコだったかくらいの差だしね。実際は無音だったし感傷もなかったけれど。
出来ることも少なかったし。
やれるって思うことも少なかった。
だから簡単に欲望に負けられた。
まぁ今になっては欲望に満ちて溢れた。ただの人で。
あれしたいーこれしたいーが
ほんとに少し手を足を伸ばせば実現可能なせいで
満ち足りてしまっているんだけれども。
じゃあ何が言いたいかって。
僕はね、だから酔いの力を借りたかったんだ。
雰囲気でも、酒でも、睡眠不足でも。
言ったもん勝ちって事を
今、語って思い出したからね。
明日は早起きしてベランダでコーヒー飲みたいね
きっとそうさ。
ただこれだけでいいや。僕は。それだけでも
欲望に負けられる。そんな人になってる。
君らもそうだろう?そうであって欲しい。
ぼくのふるき友人たちへ。明日は何を変える?
素面で語るのはなかなか恥ずかしかったけど、
楽しかったよ。ありがとう。
変わった事があったら、ついでにさ。
僕をほろ苦い珈琲屋さんに誘ってよ。
それだけで僕には伝わるから。
欲望