『楽園』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
楽園
楽園と聞いて何を思い浮かべるだろうか
私はパチンコ店を思い出す
あるよね、楽園というパチ屋。
真っ赤な看板に白抜きの文字
耳がおかしくなりそうだった
エアコンから吹き出る空気もオフィスとは違う
あの独特な匂い。
アルバイトは初日で辞めたくなった
店長に襟元を直された時のあの目、口元、気持ち悪かった。客に絡まれた。辞めたい
楽園
儲かれば楽園だろう
海。見覚えのない海。人はいない。
「こっちだ。行こう。」
いつのまにか隣にいたこの人は僕の手を取って
どこかへ連れて行こうとする。僕の答えを待たずに。
辺りは木、木、葉っぱ、よくわからない派手な花。
勝手知ったる庭のようにどんどん先に進んで行く。
先導するこの人はシャツの袖を捲ってボタンはひとつも留めていない。森に入る格好じゃないでしょ。
「どこ行くの。」
やっと声が出た。言いたいことはいろいろあったけど何故かこのひとことしか言えなかった。
「楽園だ。」
ちらとだけ僕を見て笑った。
「おや、おはよう。」
…ああ夢だったのか。変な夢。海なんか行ってないし見てもいないのに。いや今はそんなことどうでもいい。
「もしかして昨夜先に寝ちゃった?」
「ああぐっすりな。疲れていたんだろ。」
「ごめん。」
「うん?謝らなくて良い。怒っていないよ。」
やっぱりな。ああこんなこと初めてだ。
「ごめん。…変な夢を見た。南の国みたいな所であんたが楽園だかに連れて行こうとするんだ。」
「はは。面白いな。いつも楽園に連れて行ってもらっているのは私の方なのに。」
あんたいつもそんなこと思っていたの。
じゃあ今夜こそ行こう。
楽園
黄昏に狐の窓を覗き見る 雨は上がるも楽園は獲ず
題目「楽園」
すいませーん!
さっき隣の理想郷を追放された者なんですけどー!
こちらの楽園に入れて欲しいんですう。
扉を開けてもらえませんかーー!
・・・
ちぇっ。
(楽園)
【楽園】5.1
誰もが楽園に行きたいと思った事はあるでしょ
楽になりたいと思った事はあるでしょう、
でもそこがいいとも限らない
世の中は分からないで溢れている
いつなにが起こるのかも分からない、
そんな中生きてる私達は凄いと思う
楽園
気が付いたら知らない土地を歩いていた。
不安に思い、周囲を見渡す。
先程から仄かに甘い香りが漂っていたのだが、やっとその正体を突き止めた。なんと辺り一面に花々が咲き乱れていたのだ。どうやらこの土地には花壇という概念が無く、そのため際限なく花が広がり続けているようだった。
足元に目を落とす。道は存在している。きちんと舗装もされているので間違いない。しかしどうしてだろう。違和感を覚えてしまう。そうだ、あまりにも静かなのだ。
少し考えてからふと気が付いた。いっさい車が走っていないのだ。どうしてだろう。ここは大きな公園なのか?そういったレジャースポットに間違えて入ってしまったのか?ここは一体どこなのか?状況が掴めず、次々と疑問が浮かんでくる。
しかし心配する必要は無かった。
ここは老若男女多くの人々が生活するごく普通の街であり、行き交う人々は皆しあわせそうに笑っていた。その様子を見て私も自然と笑顔が溢れる。一気に緊張が解け、安堵した。
さらに周囲の観察を続ける。
手押し車を押している老夫婦が昔話に花を咲かせて談笑している。そのすぐそばで、蝶々さんだ!と言って走り出した小さな子供を、若い夫婦がニコニコ見守っている。みな世の中のしがらみから解放されているようだ。
そんな事を考えていると急に名前を呼ばれた。振り返ると死んだはずの祖父が笑顔で私の元に駆け寄ってきた。いつの間にか、私の体は子供の頃のように小さく縮んでいた。
その瞬間、なんとなく全てを悟った。
ここが天国だと断言できるわけではないが、死者と対面しているという事は少なくとも現実ではないのだろう。時間が戻るという非現実的なことも起きているわけだから。
一滴の涙が頬を伝う。祖父は慌てて私の顔を覗き込む。どうしたら良いか分からないといった表情で私を見つめている。生きていた頃のまんまだ。
ああ、なんて幸せなんだろう。ここは楽園なのかな。この時間は一生続くのかな。この場所が本当に存在していれば良かった。
そんな筈はないと分かりながらも私は祖父の手を取って走り出した。
2000年、あの時代は私たち若者が、
影しか追うことができなかった時代である。
1995年、2002年。この世には稀に
空白の時代が現れる。
その空白は若者には刺激が強すぎる。
私は知らない。その時いなかったから。
私はわからない。
影しか追うことができないから。
≪音を追うもの≫
「かっけぇな」
「だろ? これが2000年代の光だよ」
高校性が二人、
夏休みが始まったばかりというのに
変わらず校舎の一角にたむろするのは
習慣なのだろうか。
「なんてバンドだっけ?」
「それがわかんねぇのよ。レコードは発表するけど、いつもバンド名が書いてないのよ。
だから【影】って呼ばれてる」
「影って...結構ハードなロックだったが、暗いイメージなんてどこにも感じなかったぞ」
「まぁ影ってのはそのバンドの影しか追えないからだろうよ、とっくの昔に解散しちまってるし」
その日は警報が出るくらい暑い日だった。二人は駄菓子屋で買ったラムネを飲んでいた。
空には立派な入道雲、道路にはびこる陽炎たち。野球部の掛け声だけが清々しく耳を通り抜ける。
「こんなアッツイ日でも野球部は通常運転なんだな」
「そりゃ当たり前だろうよ、去年甲子園一歩手前まで行ったんだからな」
「それもそうか、熱血人間たちに敬礼!」
『敬礼!』
二人はそう言って、三階の音楽室へと向かった。
そしてしばらくして鉄線を掻き鳴らす音が
聞こえてきた。
しかし、この青い音も長くは続かない。
校舎に響くのは蝉の音と、
ラムネのビー玉が転がる音だけだった。
楽園なんてものがあればどれだけ救われるか。
ただの神話、おとぎ話でしか存在し得ない。
人間は楽な方を選ぼうとするから、楽園を
探し続けているけれど、楽園は偶像でしかないから。
理想を追い求めすぎてしまうが故に現実の世界を嫌ってしまう。そうなってしまえば楽園こそ、嘘で
塗り固められた苦痛の世界では無いのか。
━━━━━━━━━━━━━━━楽園
この世界を俯瞰で見てみよう
幸せよりも不幸せが目立って見えてしまう
こちらではパーティー、富裕、満腹
はたまたあちらでは戦争、貧困、飢餓
互いが互いを比較対象としては見ていない
それぞれがそれぞれの世界を知らないからこそその差は薄く霧のように見えなくなってしまう
ご飯いっぱいの幸せを感じることは我々にはできない
幸福という地獄を味わっている
楽園は夢のまた夢
楽園
楽園と聴くとリゾートのような所が思い浮かぶが
私は何故か砂漠にある湖が楽園だと思う
-楽園-
しーあわーせーとーはー、星がふーる夜とまぶしぃ朝がァ...
目がぁぁぁ...(´ฅωฅ`)㍋~㍋~
今まで好きだったe私は叶わないし諦める、他の子に譲る。そして今まで本当に大好きでしたありがとう
夢を、見た。
そこは暑くもなく寒くもなく。
生きていれば自然と欲する物は何でも手に入り。
その穏やかさゆえに、心は凪いで。
余計なことを感じることもなく、ただただ優しい時間の流れに身を委ねられる——
そんな、場所にいる夢、だった。
いやにリアルで。
日々に疲れきっていたその者は、夢に見た場所を探してみようと、旅に出た。
夢で体感した風土をひたすらに探し求め。
少なくない歳月を賭して。
ようやく此処、という場所に辿り着いた。
気候や雰囲気は、確かに夢そのものといえる場所だった。
しかしそこは何もない、
人が暮らす最低限の基盤すら施されていない地だった。
「まあ、こんなものだよな」
辺りを眺めつつ、持参した非常食とお茶を飲み下すうち。
散策中めいた年配者が通りかかり、軽く雑談をかわした。
夢の場所を求めて、ここに辿り着いた——と話したところ。
「では、あなたが造られたらよろしい。
ここは私にも縁がある場所。力を貸しますよ」
という流れになり。
更なる月日をかけて。
その者はとうとう——
夢で見たような場所を、造り上げた。
「……それでは、この世の『楽園』との呼び名も高い、リゾート開発をされた——さんにお話を伺いたいと思います!」
取材に訪れた女性リポーターの声を聞きながら、その者は困ったように後頭部をかいた。
……『楽園』を、探していただけで。
造るつもりは、毛頭なかったはずなんだがなあ……。
楽園、さて楽園とな。
…自分のすみかをそんなふうにできたら。
治癒・回復の拠点、基地。…いや、それじゃまるでRPGの宿(HP回復)とか教会(ステータス異常解除)みたいだ。そうではなくて、もっと深い部分の治癒・回復、パーソナリティの総体を健やかにできる場所…に、できたら。
理想的には、自分の家・すみかを、そのように在らしめることが最良なのだろう。生活の基盤は人生の基盤となる。
最も近い楽園。でもそこに到達することができるかは、深く考えシンプルに取りかかる必要がありそうだ。最も近い楽園…
楽園とは?
ずっと寝ていられる場所?
天国のような場所?
うーん、曖昧だ
しばらく考えて、気づいた
「...!!」
自分の思いを綴れて
皆の呟きを見られる
「書く習慣」
このアプリが
今の私にとって一番の楽園だ
お題を見て、すぐに思いついたのが
『失楽園』だった。
もう大昔の映画すぎて、あまり内容はハッキリとは覚えてないが。
ろくに映画のタイトルについてなど考えた事もないし、どうでも良かったので気にも留めてなかった。
あ、そうか。
あの話は熟年不倫の末に、心中した話だった。家族に内緒でイチャイチャしていて、少ない逢瀬のドキドキにうつつをぬかし、バレて人生終わった!ということで、楽園を失ったから、『失楽園』だったのか。
なんだか大ヒット作品ではあるけれど、なんかアホらしくて鼻で笑ってしまった。
人の価値観はそれぞれなので、それを楽園の時と思うのならそれもあり。
そんな事に楽園など使われたくもないような気がするが。
布団の中とオヤツの時間が『楽園』だわ。
絶対失う事はない至福の時だ。
ずっとここにいたい。
誰も来ないで。
話しかけないで、喋らないで。
お願いだから。
私だけの世界に入ってこないで。
いいよなんて言ってない。
ここは、私の心の中にある世界なの。
なんでもありで、なんでも出来る、好きなものがたくさんある。
私だけの素敵な楽園。
今はだめ、入ってきちゃだめ。
自分を慰めてるんだから。
ここにいるのは二人だけ
一人と一人
他は何にもいらない
お腹がすいたら、木の実を食べる
眠たくなったら、二人身を寄せ瞳を閉じる
暑さも寒さも飢えも乾きも
何も知らない
二人は何も知らない
それが幸せかも知らない
与えられた分だけで、満足するのは幸せか?
知らない
知らない
知らなくて良いと仰ったから
ある時誰かがこう評した
「まるでそれでは家畜のよう」
それでも二人は気にしない
家畜がなにか知らないから
互いがいればそれだけで
ある時誰かがこう聞いた
「お前たちは互いを知っているのか。対はお前をお前は対を、何か知っていることがあるのか。何も知らないのであれば、いつか対やお前が別人になろうと、気付かぬのではないのか」
そこで初めて疑問を持った。
『いやいや真逆、そのようなこと。しかし…さもありなん』
すると相手が恐ろしくなり
一人が一人を絞め殺した
一人はそれを隠したけれど
ある時それにお気付きになられて
一人は追放、二度と戻れぬ夢の国
これにて二人の話は終わり
楽園さえも一時の夢想──
【楽園】
僕が通っている学校は、男にとって楽園だ。
なぜかって?
それは、学校一の美女がいるから。
僕もその美女が好きだ。
でも告白をする勇気はないから、他の男にいつ告白されてもおかしくないと思う。
だから、学園生活が終わるまで見て楽しむ。
言い方がちょっと、悪いけど僕にはこれしかできない。
こんな僕でも楽園を与えてくれる美女は心も美しいと思った。
ペラペラと紙を捲りながら、眼前のパソコンに打ち込む。
電話が鳴り、応対してまたパソコンに向かう。
資料を作っている間は、期限に追われて秒針の針が心臓の音と呼応しているようだ。
「お前、最近ちゃんと休めてるのか?」
「……お疲れ様です」
声がかかり、座ったまま振り向くと背後に立つ先輩が缶コーヒーを差し出した。
お礼を言って受け取ると、早速中身を喉に流し込む。
「顔色悪いの前からだけど、もっと酷いぞ」
ここしばらくトラブル続きで残業が多く、帰ってもゆっくり休めないまま始発で仕事に来ていた。
先輩も同じプロジェクトだが要領か体力の違いか、俺ほど疲れているように見えない。
「休みの日は、比較的寝れてるので大丈夫ですよ」
平日は業務のストレスか交感神経が高ぶっているか、眠りが浅く、ごろ寝のまま長い夜を過ごして気がつくと朝になっている。
「平日は寝れてないのか。ストレスの解消下手そうだもんな」
失礼な。気遣いもコーヒーも有り難くもらうが、余計な一言が玉に瑕だ。
だが、入社当初からお世話になっている先輩だ。業務上でとはいえ、俺のことはよくわかっているのだろう。
「そだ、たまには息抜きしてこいよ。その分の仕事引き継いでやるからさ。この店とか、今イチオシだぜぇ」
そう言いながら先輩が差し出してきたのは、とある店の紹介カードだった。
「『楽園で過ごしませんか』……なんですか、これ」
妙な宗教勧誘とかじゃないだろうな。
寝不足で余裕のない頭で勘繰るが、先輩は手のひらを左右に降って笑い飛ばす。
「ないない、怪しくない。ホテルみたいんなもんだよ。こういう夢見たいな〜って思いながら一人で寝るだけ」
夢なんて操作できるものだろうか。小学生の頃に流行ったお呪いじゃあるまいし。
「何度か行ってるけど普通のビジホとそんなに値段変わんないし、ちょっと変わったビジホで寝ると思って行ってみろよ。このカード持って行けば3割引きだからさ」
「……で? 先輩には何が懐に?」
「なんだよ、疑り深いな。可愛い後輩が目の下で真っ黒なクマを飼ってるのを気にかけてやってんだから、素直に受け取っとけよ」
肩を竦めながら大げさにため息をつく先輩だが、どうも嘘くさい。
「それじゃあ、有り難くいただきます……」
渋々ながら先輩が差し出すカードに手を伸ばし受け取ろうとするが、びくともしない。
顔を上げると、ニッといい笑顔の先輩と目が合う。
「もし店に行ったら、紹介特典で半額クーポン二枚貰えるから一枚くれな」
やっぱり目論見があるんじゃないか。
********
さっそく行ってこい、との後押しで翌々日半強制的に休みを取らされた(勝手に上司に相談された)。
目論見があるとはいえ、お世話になっている先輩の厚意も無碍にできず例のホテルに向かう。
ホテルとは言ってもアパートの様な建物で、各部屋の入口は見えない。外壁は石のようなデザインで、大理石ではないけど、なんというんだろう。
こうしてみると確かに怪しさはない。表に目立った看板もなく、ただの一風変わったアパートのようだ。
正面のくもり硝子の扉を潜り、エントランスの先に受付に向かうと、店員らしき女性が出迎えた。
「いらっしゃいませ。ご予約はございますか?」
「あ、いえ……紹介で来たんですけど」
そう言いながら例のカードを差し出すと、彼女は丁寧に受け取り、慣れた手つきで手元の端末を操作し始めた。
「ご来店ありがとうございます。確認が取れましたので、早速当店についてとシステムをご紹介します」
手元にあったのはタブレットらしい。カウンターにそれを置く。
「人にはそれぞれ、好きなものございます。好きなものに囲まれた空間、私どもはそれを『楽園』と呼んでいます」
タブレットには次々にイラストが表示され、女性はプレゼン資料の様に流していく。
「ストレス社会の現代に必要なのはストレス発散ができる場所……『楽園』はその一助を担えれば幸いでございます」
最後の言葉を締めくくり、一通り紹介が終わったらしい。
タブレットの画面が切り替わり、実際に利用時に選択するらしい画面が並ぶ。
「例えば私は……美味しいご飯がゴロゴ…沢山ある空間こそが楽園たり得ます。お客様にはそういったお好みはございますか?」
「はぁ……」
突然問われると意外と思いつかない。間抜けな声出てしまった。
ここしばらく、趣味らしい趣味ができるほど気力がなかったので全然浮かばない。それに趣味ならば家でもできる。
「お客様は随分とお疲れのご様子。今回は初心者の方におすすめのコースをご提案しますね」
決めかねていると、ニッコリと営業スマイルを浮かべて三つほど画面に表示させる。
「お値段が三段階ございまして、今回各段階から一つずつご紹介いたします」
『ぐっすりリラクゼーションコース』
『イヌ・ネコもふもふコース』
『穏やかティータイムコース』
「リラクゼーションコースはマッサージの中お休みいただけます。もふもふコースはその名の通り、もふもふに囲まれて癒やされます。ティータイムコースはアフターヌーンティーをお楽しみいただけますよ」
「……あの」
ふと疑問に思ったことがあり、始める前に確認したかった。
「はい」
彼女は語尾にハートでも付けんばかりに声高に返事をした。
「もふもふは布団とかあり得るのでいいとして、マッサージとかアフタヌーンティーって、実際にマッサージ受けたり飲めたりするわけじゃないんですよね?」
「…………」
「せんぱ……紹介者の話では夢の中だって聞いたので。なんか、不毛かなって」
「当店は夢の中でお楽しみいただきながら、ストレス発散と疲労回復を目的にしております」
「夢って眠りが浅い状態で見るんですよね。睡眠って浅い深いを繰り返すのが良いとされているし……そんな浅い状態で疲労回復は望めるんでしょうか」
我ながら夢がなく、妙につっかかる言い方になってしまったが、どうにも怪しさは拭えなかった。
すると、タブレットがカウンター側に仕舞われた。流石に言い過ぎたかもしれない。
「失礼ですが、お客様は当店にはそぐわないようです。ご紹介いただいたお客様には、こちらをお渡しください」
まだ利用もしていないというのに、紹介特典の半額クーポンが二枚差し出される。
「えっ……」
ただ門前払いされるだけだと思ったので、意外な対応に面食らってしまった。
「現実主義傾向が強すぎるお客様は、残念ながらご利用いただけませんので」
最後まで欠かさず営業スマイルだったが、有無を言わせず帰れと圧をかけられている気がした。
「またのご利用、お待ちしております」
大人しく踵を返すと、出迎えとは打って変わって無機質な見送りの声を聞きつつ店を出た。
翌日、先輩にはクーポン二枚を渡して、感想をせがむ声にはバツの悪さから微妙な反応で返した。
それにしても、半額クーポンとはかなり破格だ。
数週間後、GWが明けると今度は先輩がやつれて出社してきた。聞くと休みの度にあの店に通っているという。
「お前もまた行けばいいのに」
受付の時点で門前払いを受けたことは言っていないので、先輩は純粋にそう思っているのだろう。
ヘラヘラと笑う姿は以前よりもだらしない。
あれってもしかして、夢魔とかそういうやばいやつだったんじゃなかろうか……。
利用者に夢を見させて、気力だかなんだかを吸うとかなんとか。
昔、好奇心で聞いた怖い話にあった気がした。
まさかな、と頭を振る。
何が現実主義者だ。聞いて呆れる。
気にかけてくれた恩もあるし、何も考えずにクーポンを二枚とも渡してしまったせいで、余計に通いやすくなってしまったのかもしれないと思うと罪悪感が募る。
とりあえず先輩をあの店から遠ざけるべく、次の休みは飲みにでも誘おうと決めた。
「誰のための楽園なのか」
⊕楽園