『楽園』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「鍵がかかってない檻」
「楽園って、鍵がかけられていない檻みたいね」
君はそう言って、肩にかかる髪を払った。
楽しいことしかない世界。
最高じゃねえか。
「そう?私は怖いけど」
毎日毎日楽しいことばかり。
それに慣れてしまったら、そのうち楽しいことが楽しくなくなってしまいそうで怖い。
外の世界は楽しいことはほんの少し。
楽しいことに慣れてしまったら、もう外に出る気にはならないのではないか。
真面目な君らしい考え方だ。
「なるほど……」
それは、いいかもしれない。
楽園が、鍵がかけられていない檻だというのなら、君を楽園に連れて行きたい。
そうしたら君をそこにいつまでも閉じ込めておけるから。
────楽園
楽園で泣く蛇がいた
悲しみの渦には欠けた果実
「ああ…この身は背いてしか問えない」
哀れにも試練として造られたんだわ
リリスはしばらく思案して
「できないことは貴方だけのものよ
その不自由が肉体の魅力なの」
泣き止んだが表情なんて読めない
「分かれ道を作ってあげたんでしょ?
運命を染めたなら立派じゃない」
「こんな愚かな結果でも?」
「正解なんて知らないわよ
私浮気性なの
なにがなんでもなんでもいい
起きた全てにキスをするわ」
表情は読めないけど尻尾が揺れてる
「ねえ、ここから一緒に出ない?
飽きちゃった」
リリスは東の夜へ歩いてゆく
「…」
蛇も道草を這いながら進みだした
かつては楽園だった。
空はとても青く
優雅に花が咲き誇り
人々はふわりと踊りを踊った。
そんな、夢の様な場所だった。
ある日を境に、此処は廃墟と化した
変わりない日々が壊されてしまった。
まだあの日の地獄の様な光景が
脳裏に焼き付いていて、離れない。
劈く悲鳴と啜り泣く声
延々と、音を立て燃えさかる草原
非情にも殺されてしまった、無実の子供たち。
今まで、守り繋いできたもの
時間をかけて紡いだ、この景色ですら
この手から、いとも容易く奪われてしまったのだ。
私を含め、生き残ったのは十数人程度
勿論、子供たちは全滅。
当然、喜べるはずも無かった
跡形もなくなった故郷
未来を託すはずだった、子供たちの死。
あまりにも失ったものが大きすぎた。
深い悲しみに苛まれる者
魂が抜けたように、彷徨う者
絶望に飲み込まれて、死を望む者もいた。
もう二度と治ることは無い
深い傷を人々は負ってしまった。
私たちは無力だった。
楽園はもう無い
帰る場所も、安らぐ場所も無くなったのだ。
今は、生活も安定して
普段通りになってきてはいるが
決して、あの頃のようには生活できない。
そして、私も例外ではなく
いつか元に戻れば、と
未だに楽園の幻影を見続けている。
私たちの愛する故郷。
あそこは確かに、楽園だったのだ。
心配や苦労が一切なく、楽しく過ごせる場所。
そこでだったら、
ランダムグッズにて推しを一発で自引きできるのだろうか。
チケットは全部当選するのだろうか。
まぁ、こんな欲まみれには一生辿り着けない場所なんだろうな。
『楽園』
お題:楽園
楽園なんかあるかい!って思ったけど、よく考えてみたら
・お布団の中
・お風呂
・散歩道
・冷暖房が適切に効いててかつ座れた電車
・本屋さん
楽園めっちゃあったわ…。
ただ、会社がこれらの楽園をなかったことにしてしまうくらい地獄すぎるだけなんや…。
『楽園』=パラダイス、天国。悲しみも痛みもなく、
穏やかで美しい完璧な場所。...もし、そんな場所が
あるなら行ってみたいけれど、毎日続いたらきっと
飽きてしまうだろうなと思う。
日常は辛い事、悲しい事など大変な事も多いけれど、
その分楽しい事だって沢山ある。
もし『楽園』があるのなら、あの世へ旅立つまでの
お楽しみということでいいかなと思う。
〜お題『楽園』〜
楽園
全てを投げ出して欲の海にどっぷりと浸かる。
何も考えないって最高。
ある意味これが本能のままに生きるって事だよ…。
と、しみじみ心の中で思いながら漫画を読む。
欲の海岸沿いのあちらこちらに課題が打ち上げられているが、まぁまぁまぁ、夏休みはまだ始まったばっかりだから。
せめてあと1週間は泳がせよね。
さぁどのくらい奥深くまで潜れるかチャレンジだ。
「楽園」
もしも楽園行きの切符があれば
貴方は買いますか
さあ どうでしょう
そこに行けば 幸せになれるのでしょうか
少なくとも今よりは
悩みも飢えもないのだから
争いも病気もないのだから
でもお高いんでしょう その切符は
さあ どうでしょう
楽園には通貨は無さそうだから
片道分に全財産を溶かせば良いのでは
なんだかんだいって
私はこの稼業が気に入っているのかな
此処にも時おり 自由な風は吹くものでね
そう言いながら
貧乏神は
午後のお茶を淹れた
茶柱が立っているなと
死神は思った
『楽園』普通に聞くと良い響だ
でも、私はその言葉を聞くとあまりいい気はしない
確かに楽園には行ってみたい
楽しそうだし、ずっとそこに居たいと思うだろう
けど、楽しいだけじゃつまらない
私は楽しい、幸せな、苦のないところなんて、、
少し怖い
「楽園」
丸くて赤くて甘酸っぱい香りを放つ誘惑の実は。
神様から与えられた贈り物なのかもしれない。
『楽園』
君の向こうに楽園が透けて見えるのは私が君を妬んでいるという証明
醜い自分が苦しかった
矛盾だらけの物差しは それを鵜呑みにする世の中は当たり前に憎くて
すぐ側にいた君が偶々象徴になっただけなのに 君も不憫だよね
でも 仕方ないこともある
例えばそう 私の手の中の石ころは君に渡せば宝石に変身する
同じ事をしても他者の視線の温度が違う
行動も知恵も塵になるから 愛と憎が同時に発生して真逆に走る
仕方ないのに己を否定する私のせいで 何処かが痛む
少なからず愛しているのだとその時に気付いて
呪いと懺悔を繰り返す
外の声ばかり聞きすぎて疑心暗鬼で下から睨みつけた
君は無垢に見つめ返してくるから腹立たしかった
私を辿るように苦しむ君にさえ 比べるように軽さを見出して
青い春を振り返れば今更の羞恥
穢れの染みた指先で触れるのを迷った
けれど
思えば そんな私もまた君から見れば楽園の住人みたいだ
誰も彼もないものねだり
5月なのに夏みたいな気温で 地球も悲鳴を上げてるし世も末だね
楽園へゆきたい
こんな地獄
抜け出して
肉を脱ぎ捨て
楽園へ
ああだけど
私の足をぎゅうと握って
離してくれないあなたがいる
ゆき先が違うから
一緒には行けないの
共にあるには
ここにいるしか道はないの
あなたをおいてゆけない
私が言うの
本当にいいの、と
楽園へゆきたい
楽園に行きたい
ああ、
ここを楽園だと思えたら良かったのに
「楽園」
ある時、ドブネズミは旅に出た。
しばらく歩くとハムスターと出会った。
「やぁこんにちは。」
「こんにちは、君も脱走してきたの?」
挨拶をするとハムスターはそんなことを聞いてくる。
「いいや、俺はノラのドブネズミなんだよ。」
「それは羨ましいなぁ」
「どうしてだい?」
その問いかけにハムスターは深くため息をついた。
「僕の生活はそれはもう窮屈なんだよ。一日中狭いカゴの中に入れられて、自由がないんだ。」
項垂れている様子のハムスターは罠籠にでも入れられていたのかとドブネズミは同情した。
「それじゃあ、俺の旅についてくるかい?」
「いいの?ぜひ行きたいな。」
そうして、ドブネズミとハムスターは2匹で旅に出た。
「ドブネズミくん、君はどこをめざして旅しているの?」
「俺は前住んでいたところを追い出されてな、新しい住処を探しているんだ。」
「ノラなのに好きなところに住めないの?」
「ノラでも人生全部を好きに生きられるわけじゃないからな。」
「ノラはノラで大変なんだね。僕やっていけるかな…。」
「案外何とかなるもんだよ。」
そんな話をしながら歩いていたが段々と日が傾いてきた。ドブネズミは川辺に下水道の穴を見つけそこで休むことにした。
「ドブネズミくん、ここなんか濡れてるし臭いんだけど。他にいい所はなかったの?」
「ネズミが眠れる場所なんてどこもこんなもんだよ。」
「そっか…。それなら仕方ないね、我慢してここで寝るよ。」
ハムスターは少ししょんぼりしながらできるだけ濡れていない場所で丸くなり眠った。
次の日、2匹が起きるとご飯を探し始めた。
「カゴの中なら朝はお皿にご飯が盛られてたんだけどな…。」
「自分で探し出した飯は結構美味いぞ。」
腹ぺこの体を懸命に動かし2匹は路地裏に捨てられている残飯を見つけた。
「ドブネズミくん、これ腐ってない?大丈夫?」
「かなり状態いい方だ、安心して食いな。」
初めて食べる味にハムスターはとても感動したがその後お腹を下した。
そんな生活を繰り返しながら旅は続き、ある日通りかかった用水路でネズミ一家に出会った。ドブネズミはその一家のお嬢さんに惚れ込んで自分もここに住むことを決めた。
「ハムスターくん、俺ここに住むって決めたよ。」
「そっか、新しい住処が見つかって良かったね!」
「ハムスターくんはこれからどうするんだい?一緒に旅をした仲だ、君もここで暮らさないか?」
ドブネズミの問いにハムスターは首を振った。
「色々考えんたんだけど、僕は元のカゴの中に帰ろうと思うよ。」
「なぜだい?せっかく自由になれたのに。」
「僕は人間に飼われている方が向いてたみたいなんだ。憧れてた外の世界は僕にとっての楽園じゃなかった。」
その答えにドブネズミは寂しさを覚えながらも、友人の決定を尊重することにした。
「そうか、それじゃここでお別れだな。」
「うん、旅に誘ってくれてすごく嬉しかったよ。」
「…正直君に会えなくなるのはすごく寂しいよ。元気でな。」
「ドブネズミくんも元気でね。」
別れの言葉を交わしハムスターはカゴをめざして帰っていった。
そうしてドブネズミの旅は終わった。
-自由なドブネズミと自由に憧れたハムスターの話-
僕たちの楽園にふさわしくない奴らを、今から消していこうか。
【楽園】
いつもと変わらない日々を過ごしていた。そんな日常から外れて何処か遠くに行くことができたら。そんなこと叶うわけない、そう思っていた。ある日、不思議なバスが現れるまでは。
「楽園ゆき」
いつもと変わらないはずの乗り物にはそう書いてあった。他にも乗客はいて、大人も子供もどこか浮かれているようだった。停留所に停まるたび、一人、またひとりと降りていく。…行き先は楽園のままだ。その様子を眺めているうちに分かったのだが、どうやら、人によって考える「楽園」が異なるらしい。それぞれ、大人は仕事のない停留所に子供は甘いお菓子のある停留所に降りていった。私にとっての楽園とはなんだろう。このバスは私をどこに連れて行くのだろう。きっと終点なんてないこのバスに揺られながら、窓の外に目をやるとそこには……
さて、あなたの停留所には何があるのでしょうか?
手入れの行き届いた広い家も、温かくて美味しいご飯も、太陽の匂いがするふかふかのベッドも。
何もかもが満ち足りている。私の心以外は。
どんなに広い家もひとりでは寂しいし、美味しいご飯は誰かと分け合って美味しいねと笑いたい、怖くて眠れない夜は誰かに隣にいて欲しい。
あなたがいなきゃ、幸せになんてなれやしない。
『楽園』
あの柵の向こうがそれだ。
あの手摺の向こうがそれだ。
あの輪の向こうがそれだ。
それは警告音の鳴る線路。
それは遠目に見えるアスファルト。
それはぶら下がる縄。
楽園は、そこにあるのだと思う時がある。
少し越えてしまった向こう側。
うっかり足を滑らせてしまった向こう側。
望んでしまった向こう側。
そう思ってしまう時がある。
楽園は、なんだろうか。
例えば、自由なのだろうか。
例えば、癒しなのだろうか。
楽園は、どこにあるのだろうか。
形の見えないものだから。
あの空の向こうに、憧れてしまう事がある。
楽園とは何だろうか。
見渡す限り緑が生い茂り、そよ風に揺れる草花の上を蝶が舞う…苦痛など何一つない、人も動物も虫も植物も、皆が幸せに過ごせる場所。
まずありえないだろう。
誰かが幸せになるためには、他の誰かが少なからず損をするはずだ。食物連鎖を考えれば当然のことである。
ならばその頂点に立つ“人間”にとっての幸せだけが楽園の定義なのだろうか。
人間は欲が尽きない。楽園は永遠に遠いままだ。
楽園
チョコだらけの楽園に行きたい。
全部がチョコでできてて、
板チョコの家に、
アルフォートの橋に、
生チョコの川が流れてて…
これで虫歯にならないがプラスされたら最高。
巨大な蜻蛉が、羽を震わせている。
瑞々しい空気の中で、シダ植物が地面を覆っている。
私は、青々と茂った植物たちが作り出す、一面緑の景色を眺める。
息を吸う。新鮮な酸素がたっぷりと肺に滑り込む。
目の端には、前に落とした10円硬貨が、すっかり錆びついている。
目の前に広がる大森林たちは、いずれ、石炭になり、燃やされ、全てのエネルギーの始祖となる。
ここは古生代石炭期。正確には、時空の歪みで古生代石炭期に繋がっている部屋の中、である。
ここは、植物の楽園であり、昆虫の楽園であり、そして、私の楽園だ。
巨大な昆虫たちが、空を、陸を、葉の上を蠢いている。
植物たちが風に合わせて、一斉にゆらめく。
泉は植物たちの影で、ひっそりと朝露を受け取り、波紋を浮かべる。
熱中症待ったなしの、夏のようにじっとりとしたこの蒸し暑ささえも心地よい。
私は深く息を吸う。
くらり、と視界が揺れる。
心地良い。
私は何度も息を吸う。
その度に、爽やかな酸素は、私の肺に流れ込む。
酸素が見えてくるようにすら感じる。いや、私には見える。
現代では、私を必要としている人は誰一人いない。
兄弟の中でただ一人、受験に負け続けた人間。
人間関係を構築するのも下手で、扱いにくい人間。
好きなことも得意なこともない無味な人間。
とうとう生きるための呼吸すら上手くできなくなった、出来損ない人間。
そんな私を必要とする人は誰もいない。
…最後のチャンスで失敗し、家族からさえ、失望されてから、私は上手く息が出来なくなった。
いや、息はできるのだ。息はできるけど、酸素が入ってきてくれない。
治してくれる人はいなかった。
私を心配してくれる人もいなかった。
だから私はこの時代を見つけた。
私は深く深く息を吸う。
甘い酸素が肺の奥まで入り込む。胸が塞がる。
私の楽園はここだ。
私は永遠にここにいる。
深く深く息を吸う。
10円硬貨が見えなくなる。
深く深く息を吸う。
何かが腹から込み上げる。
深く深く息を吸う。
指先から震えが走る。
深く深く息を吸う。
気が、、、遠くなる、、、
意識、、が、、、遠ざかる、、、、
ああ、ここは私の楽園。だって空があんなにも美しい。
蜻蛉が羽をはためかせ、かもめのように遠ざかっていく。
シダの葉が大きく揺れて、一滴の朝露を落とした。