未明

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かつては楽園だった。

空はとても青く
優雅に花が咲き誇り
人々はふわりと踊りを踊った。

そんな、夢の様な場所だった。

ある日を境に、此処は廃墟と化した
変わりない日々が壊されてしまった。

まだあの日の地獄の様な光景が
脳裏に焼き付いていて、離れない。

劈く悲鳴と啜り泣く声
延々と、音を立て燃えさかる草原
非情にも殺されてしまった、無実の子供たち。

今まで、守り繋いできたもの
時間をかけて紡いだ、この景色ですら
この手から、いとも容易く奪われてしまったのだ。

私を含め、生き残ったのは十数人程度
勿論、子供たちは全滅。

当然、喜べるはずも無かった
跡形もなくなった故郷
未来を託すはずだった、子供たちの死。

あまりにも失ったものが大きすぎた。

深い悲しみに苛まれる者
魂が抜けたように、彷徨う者
絶望に飲み込まれて、死を望む者もいた。

もう二度と治ることは無い
深い傷を人々は負ってしまった。

私たちは無力だった。

楽園はもう無い
帰る場所も、安らぐ場所も無くなったのだ。

今は、生活も安定して
普段通りになってきてはいるが
決して、あの頃のようには生活できない。

そして、私も例外ではなく
いつか元に戻れば、と
未だに楽園の幻影を見続けている。

私たちの愛する故郷。

あそこは確かに、楽園だったのだ。

4/30/2024, 2:20:57 PM