「日陰」
僕は今、田舎の山奥に来ている。
「やぁ……元気してた?久しぶりだね」と声をかける。
相変わらず無口で、良くも悪くも変わってない様子に安心した。
「1年ぶりかな。どう?そっちの生活はさ」
「僕は元気だよ。あ、そうそう高校に入って友達が増えたんだよ。きっと君も気にいると思う。」
「見て、これ君が好きだった猫の写真。今は飼い猫なんだってさ」
これまでの出来事を話す。
「今日は寒いね。一昨年よりも寒いんじゃないかな。」
「……寒くないといいな。」
(...ねぇ、あの世はどうですか?暖かいですか?寒いですか?...どちらにせよ、君が幸せでいてくれたらそれでいいけど。)
...執筆中
「明日に向かって歩く、でも」
「う……寒い」
「そんな薄着だからだよ。馬鹿」
そんな事を言いながら、たんまりと雪が積もった道を歩く。
僕らの住んでいる街は田舎では無いものの、それなりに雪の降る所に位置する。
「あ〜…だるい。大人しく電車に乗ればよかった」と彼は愚痴をこぼしながら地団駄を踏む。
自分で「電車代節約になるし、何より健康にいい」と自信満々に言い張っていたはずなのに、いつまでもうじうじと文句を言っている。
「だから最初に言ったのに…。置いてくよ?遅刻したくないし」と
仕方なく置いて行こうとすると、焦った様子で彼は駆け寄ってくる。
その時ずるり、と彼は雪に足を取られて盛大に転けた。
べしゃと音を立てて、無様に雪の中に倒れ込み「うぅ……」と情けない声をあげる。それからしばらく待つと、彼はやっと起き上がり僕を見つめる。
「なんで、放置なんだよ…ひっでぇ」と拗ねながらそっぽを向く様子はまるで子供のようで「子供みたいだね」とからかってみると、顔を赤くしてこれまた子供のように騒ぎ出した。
「こ…子供じゃねぇし、お前と違ってモテモテだし…」
「お前こそ俺より小さいじゃん…こ、子供じゃん」といった感じで
表情をコロコロと変えながら、つらつらと話し続けている。
そんな彼を観察していると、とうにホームルームの時間は過ぎており、痺れを切らした先生から電話がかかってきた。
「…おはようございます、今日はどうしたんですか?もう遅刻ですよ、早く来てください」と担任の声が聞こえる。
「忘れ物をしてしまったので取りに戻ったんです。なので、遅れていきます。…すみません」と、それっぽい理由をでっち上げて電話を切る。
「さっき先生から電話きてさ、もう授業始まるってさ」と
未だにブツブツ言いながら腕を組んでいる彼に声をかける。すると「えぇ…まじ?皆勤狙ってたのに…」と残念そうな声が聞こえてきた。振り返ってみるとあからさまに落ち込んでいる様子だった。
もし、この様子に効果音をつけるとするならばきっと「ズーン」とか「ドーン」とか…たぶんそんな感じだろう。
彼はガックリと肩を落とし、かなり落ち込んでいるようだ。
執筆中…。
「冬になったら」
執筆中
「また会いましょう」
今日も当然のように会えると思っていた
君が「またね」と言ったその日を境に
再会は二度と来なかった。
(執筆中)
「時よ止まれ」
……時が止まればどれだけ良かったことか。
私は、ありもしない幻影をいつまでも追い続けている。
もちろん、叶うことが無いことも知っているし
馬鹿げた事だということも分かっているつもりだった。
だけど、辞めることが出来ない。
僅かな光を求めて足掻いてしまう。
傲慢で、醜い。