『楽園』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
親友に聞いてみた。
「楽園? ……うーんそうだなぁ」
目を瞬かせてから、彼女は考え込むように天を仰ぐ。そして唇を弧にしてはっきり答えた。
「……今、かな」
僅かに首を傾げてくすりと笑う。薄暗い部屋の中に居る筈なのに、仕草の一個一個が魅力的に映る。
「今?」と反芻すれば、「そう」と肯定された。
正直言って、ここまで彼女が恍惚な表情を浮かべる事なんてなかっただろう。この場にいるとなれば尚更だ。
「それにしても急にどうしたの? ――あぁ楽園ってそうか。昔聴いてた曲に、そんな歌詞あったよね」
どうやら覚えていてくれたらしい。一緒に聴いていたアニソンに自分にとっての楽園を問うフレーズがあったのを、今になって思い出したのだ。
「私にとっての楽園って、ずっとあるようで無かったんだよ」
ぎしり、と軋む音が響く。はっとして下に目をやると、彼女の手には傷だらけの木刀が握られている。
視線に気付いた彼女は、木刀をこちらに掲げて嫌というほど見せつける。
「でもこれを振ってる時ね、もう楽しくて楽しくて仕方なかったの」
軽く振ってから、その先端を無造作に床の大きな塊へ押し付ける。それと同時に彼女の目はひとたび冷酷に染まった。
「謝ればこうはならなかったのにね」
本当に馬鹿、と吐き捨てて塊、もとい彼女の父親を足蹴にする。木刀で何度も殴られ、うずくまるように倒れる身体は、とうに動かなくなっていた。
彼女が日頃から父親の愚痴を溢しているのは知っていた。でもそれは親への反抗から来る、何気ないものだと、深刻には思わなかった。
それがこの惨状になるなんて、一体誰が想像できるというのか。
「だからね」
明るげな声に急変してこちらを見つめ、無邪気に彼女は言う。
「こんなに楽しい楽園に出会えて、今とっても幸せなの」
横で彼女の母親が声を殺して泣く中、段々とサイレンがけたたましく近づいている。それでも彼女の「楽園」は終わる気配を見せなかった。
暗い暗い何も視えない道を…ただ地に足をつく感覚だけで歩いてきた
世界とは何か…真っ白な頭に描いて想像に色を付け足す
少年のように自由な感性と羽ばたく鳥のような世界図
やがてそこに輝き始める一滴の小さな雫に映しだされた
広大な草原と蠢き始めた生命たち
何も視えない闇ならば無となる世界にも
嫌でも苦でも色あるモノはこんなにも美しい
暗い暗い何も視えない道の先に産まれた子供たちは
笑顔という光と涙の音で楽園のような未来を
意図せず作り描いていく
時には霞む感覚さえ勇気に変えながら
あったらいいなぐらいでしかない
無くても困らないし
あってもたどり着けないから
第一、あったとしても
色んな国が独占するだろうね
人間は欲深い生き物だから
もしも楽園があったとしたら
どんなところだろうか
きれいな場所なんだろうな
それか案外ここと変わらなかったりしてね
まあどうでもいいや
私にとっての楽園は
私の空想の世界にあるから
それか布団の中くらいかな
たぶんね
お題:楽園
タイトル:現実なんていらない
楽園
楽園って至る所にある
完全ではないけど
区切られた空間の中にある楽な園
店や部屋が分かり易いかな
楽園には外がある
その外は楽園ではない
でも色々な楽園にはつながっていて
ここがあなたの楽園とは示されてない
そこは誰かの楽園ではある
あなたの楽園を探してるなら
まずは好みと好みでないものがいる
無からは生まれない
在るモノから作ってみるしかない
作るって言うよりは並べたり飾ったり
組み合わせを模索することになると思う
それとは別にして
新たなモノも作られてくから
なかなか完成しないので
ある程度は
ここまでって決めなきゃいけない
諦めなきゃいけないと思う
ゆとりも確保しないと不便だし
いらなくなっていくものもあるから
分別してゴミの日にはゴミ出しも
生活してくんだから当たり前だけど
面倒だけど外にも出なきゃね
理想郷的な意味の楽園なら
私達にとっての楽園ではないけど
この地球も楽園なはずだけど
誰の楽園だったんだろうね
楽園ね、何書こう、と思って布団に寝転んだら、犬たちもやってきてお尻をドンとくっつけて寝転んだ。
そうか、この子達がいたらどこでも楽園になるな、と改めて気付く夜。
あちこちポカポカあったかい。
楽園ってあると思う?
じっと長い睫毛の下で俺を見上げている。少々重くなっている様子のそれと、滑舌の甘くなった柔らかい声。就寝前の与太話をご所望らしい。ならば付き合おうと思ってはみたものの、さてどう返そうか。
楽園、楽園。彼女も俺も熱心な信者ではない。楽園など存在しないと言っても叱られはしないだろう。実際、死後の楽園などという不確かなもののために欲求を我慢するというのは俺には耐え難いし、彼女もそれは重々承知のはずだ。ならば、真面目な返答を期待しているわけでもあるまい。
触り心地の良い髪を指先で弄びながら脳内で結論を出し、無言のまま二人で寝転んでいるベッドを指差した。数秒の後に理解した彼女は満足気に、俺の腕の中へ潜り込んで眠りについた。
傍にいるのならば俺が楽園を作ってあげよう。わざわざ言葉にするほど無粋な男ではないが、たまには示してやってもいいだろう。
『楽園』
『楽園』
反芻する。
あの微かな声が。
いくつもの時を越え、
佇むようにひっそりと。
たしかにそこにある、
僅かなぬくもり。
でも絶えることのない、
たしかな存在。
ここに、ただ一言だけ書かせてください。
楽園に行きたい。
楽園
あったらいいな
イメージとしては
暖かくて明るくて
花がいっぱい咲いていて
美味しいものが出てきて
楽しく盛り上がってる感じ
そんな所があったら
花を眺めながら
穏やかに過ごしたい
楽園
人はここをそう言う
狂人、孤児、前科者
どんな者も、人として迎え入れる
衣食住全ての揃った古城のような施設
1人の物好きな子供と、子供の親とも、兄弟とも、使いとも思われる男のたった2人で回されているこの施設はまさに、楽園だ
しかし、ひとつ奇妙なルールが設けられている
この場を利用する者は、目を隠せ
それさえ守れば安全な施設で寝泊まりができる
目を隠すだけだ
なんの目的があるかは分からない
だが、ただ目を隠すだけで安全な衣食住を約束してくれるのなら安い
薄い布を使ったり、細かい穴を開けたり
施設を利用する者は何かと工夫をし、前が見えるようにして施設を利用していた
城を行き来する者全て、目を隠した者だけだ
なにか宗教的なものにも見えるし、城の中に見てはいけない怪物がいるようにも思える
噂は簡単に広がり、施設は誰もが知る存在となった
しかし、あんなに目を隠すものがあまりにも多くいると
本当に目の見えない、盲目の者も、軽蔑の目を向けられず危険なく過ごすことが出来るだろう
届かない。
憧れて伸ばした手も、救いを求めて叫んだ声も。
あの輝きと共に在りたいと思うのは過ぎた願いなのだろうか。
眩しい眩しい、楽園では得られない光。
/楽園
【楽園】
悩みや苦しみのない、幸せな世界。
そんなものが存在するというのは幻想の世界でしかないだろう。人間は、幸せが続きすぎるとそれが“普通”に思えてしまうから。幸せなんて、長続きしないのだから。そうであるからこそ、時には嫌な思いもするし、もやもや考え込んでしまうこともある。けれど、それを乗り越えていけたなら、そこに少しの幸せが待っている。
楽園なんて存在しない、けど、その方がきっと幸せだから。
【楽園】
訪ねればいつも優しく微笑んで俺を迎えてくれた、貴女の暮らす小さなワンルームが俺の好きな場所。
貴女と居ると、自分でも驚く程穏やかな気持ちで居られる。
身の内に潜むどす黒い感情も。
時折暴れ出す、己に対する憎悪にも似た怒りも全て中和されて。
それでいて貴女の前ではいい人の振りすらしなくて良いなんて。
自分が受け入れられていると、素直に信じる事が出来たのは初めてだ。
他人を愛おしいと思えたのも、貴女が初めてだったんだ。
こんなに無数の人間が存在する世界で、俺が欲しいのは貴女だけ。
だから失いたくない。守りたい。
貴女の存在と穏やかなこの場所が、俺の聖域であり楽園なのだ。
あなたの腕の中は楽園。
私の腕の中も楽園。
ふたりでいればいいんだよ。
ね、そうでしょ?
今夜も楽園で眠ろう。
あなたから香るラベンダーは、夢の中でもいい匂い。
▷楽園
楽園
ムーミン好きにとってはムーミン谷は楽園。
でもまだムーミンバレー パーク行ったことない。
ママが好きだから会ったらハグしたい。
あとフレドリクソンのぬい欲しい。
楽園
まだ十代だった頃、楽園は、遠い世界の向こうにあると信じてた。否この歳になっても、未だに分からないけど。でも案外近いような気もしてきた。其れは、現実が現実として受け入れるようになったから?遠い夢物語から、細やかな幸せに気づき始めたから?如何せん自分は…
楽園
空に浮かんだ庭園には、それはそれは美しいひとが暮らしていたらしい。
長く透き通った髪を風に遊ばせて、小鳥も恥じ入るほど澄んだ声で自由気儘に歌い暮らすその日々は、大地から離れられない人間にとって天上の理想そのものだったのだとか。
「けれども、ねぇ。それならなぜ、そのひとは翼を棄ててしまったの?」
私なら、ずっとそこにいたでしょうに。
窓辺から空を見上げて呟いた少女へ、語り部は淡く微笑んだ。
「退屈だったからさ」
「楽園」
楽園って、どんな場所だろう。
苦しみのない楽しい場所って、私にとっては永遠に目覚めないことかも。
好きな人といるのは苦しみを伴う。親でも友達でも恋人でも。
娯楽だって、感情を動かされるから楽しいのであって、どんな映画や漫画やゲームも、すぐに飽きてしまうだろう。
だから、きっと、私の楽園には何もない。
ただ干したての布団でぐっすりと、明日も含め先のことは何も考えないまま眠りにつくだけ。
目覚めたら寂しくて怖くてそこは楽園ではなくなるから、死んだことにも気付かないまま、ただ眠り続けるだけ。
かなしいことや、つらいことが当たり前に起きて、
当たり前の顔をしてやってくる。
だから、楽園行きの切符を買った。
所要時間は分からない、
長い旅路が始まった。
今わたしは揺られながら道中を楽しんでいる。
車窓からは太陽の光が差し込み、照らされる。
景色が流れる。
車内はたくさんの人でにぎわい、互いを気遣い合っている。
色んなことばも飛び交う。
もうすでに楽園を垣間見ているようだ。
楽園とは、どんなに楽しいものだろうなと思いを馳せ、身を乗り出す。
到着のアナウンスが待ち遠しくて、耳をすませる。
そのあかつきには、きっと車内のみんなと手を取り合って喜ぶだろう。
われんばかりの歓声が起こるその時を待っている。
君といた時間は楽園だった
嘘をついていた君が消え去るまでは
それでも願いを残してくれたから
君と見ていた夢の続きをあなたと共に紡いでいく
(楽園)